マギの世界に転生?したようです。 作:フお
【ジャーファル】
高い位置にある暗い森を進み、抜けた先、海の見える場所にアマカはいた。
大木に身を寄せるようにして小さくなっているものだからいつもだったらわからなかったかもしれない。
「アマカ…、見つけましたよ」
お酒の匂いでなんとか気がつくことができた。ここに来るまでも転々と残る匂いでなんとか来れたが、ただ運が良かっただけだろう。
「大丈夫ですか?帰りましょう、」
小さくうずくまって両手で身を守るようにして座るアマカに手を伸ばす。
小さく、触れた瞬間だった。
「うわあああああああああああああああ」
「っ?!アマ、」
「やめっ、来るな、くるっ、な!」
ガチガチと震え、それ以上の言葉が出ないというようにアマカの声が途切れ、喉の奥から出た唸るような叫びだけが残る。
拒絶するように腕を振り回していた。
「ちょ、落ち着いてくださ、」
「やめっ!僕に触るなぁ!!」
一瞬見えた、引き込まれるような瞳に魅せられるが、次の瞬間体全体に重い圧がかかり吹き飛ばされる。
アマカの得意な魔法だ。
「ぐっ、う、」
二度三度小さな木にぶつかったがそのままなぎ倒し大きな岩に叩きつけられてやっと止まる。
背中の激痛に顔が歪む。目の前は暗く、月明かりでどうにか自分の手が見えた。
「なる、ほど、」
こんな威力で吹き飛ばされたらただの男性じゃ内臓や骨がぐちゃぐちゃになっても仕方ない。
口の中が鉄くさく一つ小さく吐き出す。
ふらふら立ち上がってアマカの側に近づいていくが、それを察したアマカが座ったまま後ずさる。
「アマカ、帰りましょう」
はっはっはっはっ、と、短い呼吸音がアマカの焦りと連動してるように思う。
…、これは、触られたりするのが苦手、なんていうレベルじゃない。
「はっ、はっ、くるなっ、こないで、嫌だ、思い出したくない、」
「…………思い出したくない、?」
膝をついてゆっくりアマカに近づく。
「アマカ、私ですよジャーファルです、あなたの前にいるのは私ですよ」
「来ないで…、いやだ…」
「お酒を被って混乱してるんですか…………」
「痛い、…、」
「え?」
がりっと、引っ掻く音がした。
「いたい、いたいいたいいたいいたい!!!」
「ちょ、アマカ!!そんなに掻いたら血が!」
「わあああ!!」
触ったらまた吹き飛ばされるかもしれなかったが思わず両腕を掴み上げ後ろの大木に押し当て掴む。すると自然に隠れていた顔がみえて、ぼろぼろと泣いているアマカが目に入った。
腕を掻き毟り、泣きわめく姿に、どうしてこんなことになってしまっているんだろうとついに混乱する。
「アマカ、アマカ!!しっかりしてください!何故こんなっ、」
「やめろっ!!はなせ、僕は男だぞ、触るなっ!!」
「〜っ、」
「わあああ!!」
「っあなたは、あなたは本当に男なんですかッッ!!」
ばたばたと暴れ、泣きわめく姿に、思わずずっと思っていた事を吐き出してしまう。
「そんな整った顔で、いつもいつも側に居られて!!私は私で大変んなんですから!!」
「ふーっ!ふーっ!」
「しっかりしてください…、男だ男だというなら行動して見せてくださいよ…、アマカ」
ブンブンと首を振るアマカは、こちらの声は全く聞こえていないようでもあるし、何かを認めないよう拒んでいるようにも見えた。
「アマカ…アマカ本当にすいません、私の所為ですか、あの時あの場所に置いてって、あんな事に巻き込まれて、」
もしかしたら、お酒のせいで一時的に昔の嫌な記憶を思い出していまこうやって叫んでいるのだろうかとも、いろんなことを思うが、けど、可能性なら…、あの、初めて会った日が引き金になっている方が高い。
アマカがあの男たちに襲われかけたのは知っているから。
「ごめんなさい…、こんなにまで酷くなっている事を知りませんでしたっ…、っ、すいません…、」
あの時、仕事を優先していた。…………、と、言いたいところだが、私は嘘をついている。最低だ、本当に最低でクズだ。
浜辺で眠るアマカを見つけた時、急いで駆け寄り安否を確認した。死んでいるんじゃないかと思ったからだ。
何度か呼びかけて、アマカが薄っすらと瞳を開けた時、
『________』
呟いた声と表情に酷く心が揺れたんだ。
「ごめんなさい…………、あなたはぱっと見本当に少年なのか少女なのかわからない……、男じゃないかもしれないとも思った、けど、カマをかけたらあなたは男だと否定しなかった………」
震えるアマカの細い腕を木に押し当てたまま、もうどうにでもなれと吐露する。
「私は最低ですよ、あの時あなたが男だとわかってなぜか酷く悲しくなって、あなたの側からはやく去りたくて、ろくに確認もせずに…………」
どんなに平和な国を目指しても、悪い者は居なくならない。
過信していたんだ。
顔の整った奴なら男でも女でも構わない輩がいるとは思ってもなかったんだ。
もしも、アマカに大量の魔力もなく、普通の子だったとしたら、あの日、襲われ、…………殺されていたかもしれないと、
「何度も夢に見ました……、」
積み上がった死体の中にアマカが加えられていたらと思うとゾッとする。
「ごめんなさいアマカ…、」
掴んでいた手を離しぎゅうと、一つ抱き締める。
小さい、震えている体は子供のようだ。
だんだんと喚きやわあわあという泣き声が減っていることに気がつく、抵抗もない。
「…………アマカ?」
離れて、顔を見ると酷く疲れた顔をしていた、そしてまだ涙を零している。
体の水分が全部出て行ってるんじゃないかと思うほどぼろぼろ溢れて、何を喚くでもなく小さく震え、諦めたように涙を零す。
その様子に、さっきよりもずっと…、
「おい、!!」
背後で息を切らす声と手を木に打ち付けたようなドンっという鈍い音がした。
「…………シン?!」
「ジャーファ、ル、やっと、見つけたぞ……」
「どうして…、」
木に腕をついて肩で息をする王がそこに居た。
汗を流し息を切らす姿に走ってきたのはわかる、だが、なんでだ。意味がわからず停止する。
「アマカ、は……」
「み、見つけました…、なんでここ…、いや違うな、なんでシンが追いかけて…」
「約束してたんだよ…、思い出して可愛い子達置いて走ってきちゃ、おえええ」
「ええええ、ちょっと大丈夫なんですかあんた!!」
思わず倒れかけたシンに駆け寄る。
「ウッ、酒飲んで走ってうう、きもぢわる」
「なんでここにきた阿保シン!!」
「ウッ約束をだな…、」
「いや、だから約束とは…」
すっ、と体をどかされる。
ふらふらとシンがアマカに近づいて目の前に膝をついて座り込む。すると小さな袋から粉?を取り出して手の平に乗せるとそれをアマカにふっと吹きかけた。
アマカが力無くぐだっとシンにもたれかかる。
「シン?!何を、」
「だから、約束だったんだよ、……ふぅ、ジャーファルお前戻っていいぞ、後は俺がみる」
「ど、どういう事ですか!!」
シンはそのままアマカを両腕に抱え立ち上がる。
こちらを向いた時、シンはやけに真剣な顔つきだった。
「…………、アマカに口止めされててな。まぁいずれジャーファルにも言うんじゃないか?」
「な、何を………」
本当にシンがそのままこの場を後にしようとして思わず駆け寄ってつかみかかる。
「説明を、」
「おい、離せ」
「っ!」
冷たく低い声。
「…………ジャーファル、クーフィーヤ向こうに落ちてたぞ、気づいてないだろ」
「えっ、」
ハッとして確かに無いのを確認する。
「ちょっと頭を冷やしてから戻ったらどうだ。お前酷い顔色だぞ」
そう言うとシンは振り向くことなくアマカを連れ、ゆっくり暗闇に去っていく。
「…………酷い顔色って、こんな暗闇で見えるわけが、……」
シンの後ろ姿が見えなくなり、立っていてもしょうがないとクーフィーヤを拾いに行く。
ふらふらと歩いていると側に小さく水の落ちる音がして、向かうと月の浮かぶ黒い水湖があった。
綺麗な水でそのまま顔を洗う。冷たくて気持ちのいい水が指の隙間を流れていった。
…………。
「…………ああなる程、これはひどい顔だ」
水に写る自分の表情は、誰にも見せたくないと思うような表情をしていた。
醜い、これに名前をつけるなら。
「___ 、だろうか」