「まったく……無茶をしおって……」
「開口一番がそれかよ」
模擬戦を終えたリョウトをビスマルクは出迎えたのだが蜂の巣にされたグラスゴー・カスタムを見上げながら呟いた。
「いやぁ、まさかあんな手で来るとは思いませんでしたよ」
「死に物狂いでやらなきゃ負けると思ったからなー」
フルバレットから降りてきたケインは、まいったまいったと言わんばかりに歩いてきた。
今回、リョウトの取った作戦はシンプルな物だった。
先ずは破壊され落ちていた左腕をアサルトライフルで撃つ。左腕にはまだ弾が残されたアサルトライフルが握られている。コレを破壊した事で暴発して粉塵が巻き上がる。
粉塵でフルバレットの視界を封じたリョウトの次の行動はグラスゴーカスタムの肩に収納されている可変式トマホークを右側からカーブを描くようにフルバレットに投擲する事だった。
投げた後に案の定、フルバレットからの弾幕は少々落ち着いた。更にリョウトは正面からアサルトライフルを一斉射撃を行った。直ぐに弾切れを起こすが、それと同時にリョウトはグラスゴーカスタムを大きくジャンプさせた。
今までの行動はフルバレットにリョウトの動きを覚えさせる為の物だった。
左右から攻撃を仕掛けて揺さぶりを掛けるように見せ掛ける。そして相手が周囲を警戒し始めた所で上空から強襲。
これがリョウトの考えた戦術プランだった。
「甘いですよ隊長殿!」
「げ、ヤバっ!?」
しかしケインにはこの戦術を読まれていた。フルバレットのガトリングの照準は既に上を向いている。
しかしリョウトの策はまだ終わりでは無かった。
「秘技太陽落とし!」
「眩しっ!?」
リョウトはグラスゴーカスタムをジャンプさせた際に機体が太陽に重なる様にジャンプさせていた。
これにより照準を合わせようとしたケインは太陽の光でグラスゴーカスタムを見失ってしまう。
「貰ったぁっ!」
「くっ!?」
そしてフルバレットの眼前に着地したグラスゴーカスタムはフルバレットのコクピットにスタントンファを叩き込んだ。
此処までが先程の戦いの流れである。
「模擬戦だから出来た戦い方だ実戦じゃ使えねーわな」
「いえいえ、実戦慣れをしている者には有功でしょうね。事実私はしてやられた訳ですし」
苦笑いのリョウトにケインはリョウトの戦術を高く評価していた。
「戦い方は兎も角としても二人とも見事な模擬戦だ。だが……」
ビスマルクは先程の模擬戦を評価していたが辺りを見回すと溜息を零した。
「部隊発足早々に機体を駄目にするとはな」
「あー……」
ビスマルクの発言にリョウトもケインも機体を見上げた。
グラスゴーカスタムは蜂の巣状態でフルバレットは弾切れ状態に機体の至る所に傷が刻まれ、先程の戦いでコクピットは一部破損していた。
「どーしよ……」
「この位なら問題はなかろ」
呆然と呟いたリョウトにグランが液晶パネルを操作しながら歩み寄る。
「むしろ此処でレイスの整備班の仕事振りが分かるんじゃから願っても無い状況じゃよ。ホレ、お前さん等仕事を始めんか!」
「「Yes、My Lord!」」
グランの叱咤に整備班は総出でグラスゴーカスタムとフルバレットの修理に取り掛かった。
「ま、今回はレイス全体の仕事の流れを見る為なんじゃからやり過ぎって事は無いじゃろ。良いデータも揃ったしの」
ヒラヒラと液晶パネルを振るグラン。グラスゴーカスタムを蜂の巣状態にした甲斐も有った様だ。
「博士の言い分も尤もだがお前達は模擬戦のレポートを作成しておけ。後で私がチェックするからな」
「うげ、了解」
「Yes、My Lord」
ビスマルクの言葉を受けてリョウトは怪訝な顔付きになり、ケインはキチンと礼を取った。
「見てみいビスマルク。リョウトの戦闘データじゃ」
「コレは……」
リョウトとケインがその場を離れた後にビスマルクはグランからリョウトの戦闘データを見せられていた。
「先程の戦闘データ。コレを一般兵と比べても差は歴然じゃな」
「まさかコレほどとは……」
リョウトの戦闘データと比較してブリタニア軍の一般兵と比べてみるとリョウトのデータはずば抜けていた。
「現段階で親衛隊クラスの実力じゃ。しかもグラスゴーに乗った状態でな」
「まだ……伸び代があると?」
グランは上機嫌でビスマルクに話し掛ける。対するビスマルクは少々複雑そうだ。
「お主はリョウトの事になるとその推眼も鈍りがちじゃな。ワシはリョウトがナイトオブラウンズにまで上り詰めると見るがの」
「リョウトがラウンズに……?」
笑いながらグランはビスマルクにデータを渡すとグラスゴーカスタムの修理に勤しむ整備班の方へと行ってしまう。ビスマルクはグランの言葉を反復し想像を働かせていた。
其処には皇帝に仕えるナイトオブラウンズの中に自分とリョウトが並び立つ光景。
「何を……馬鹿な……」
ビスマルクは自笑すると先程の模擬戦を含めたデータや書類を纏める為にその場を後にした。
ビスマルクのいつもは『への字』になっている口元は僅かに緩んでいた。