「…………ふぅ」
リョウトとビスマルクが会ってから数日後、ビスマルクは部下に命じて調べさせたリョウトの経歴を読み終えてから溜息を吐いた。
天川リョウトは日本人の父とブリタニアの母を持つハーフ。
父はジャーナリストで世界を股に掛けて貴族の様々な不正を暴く正義のジャーナリストとして有名だったが、ある日事故死した。これを調べさせたら不正を暴かれる事に危機感を感じた貴族の一派が彼を暗殺したらしい。
とりあえず、この貴族は後ほど逮捕して処罰の対象だとビスマルクは再度溜息を吐いた。
更に日本とブリタニアの戦争で日本はエリア11となり日本人はイレブンの名を変えられた際に母親は『イレブンと子をなした痴れ者』と蔑まれ病気になり、数週間前に死歿している。
他に兄弟も居ないリョウトは住んでいた家や財産を売り払い、金に換えた後にスラム街に住む場所を変えた。
その後にリョウトは弱者を虐げる貴族や意味も無くイレブンを虐げるブリタニア人と喧嘩の日々に明け暮れたらしい。
ブリタニア本国にも仕事の関係で来ていた日本人は複数居た。しかし日本とブリタニアの戦争により日本に帰れなくなった日本人は戦争中はブリタニア本国に滞在せざるを得なくなった。そして戦争に負けてから日本人からイレブンとされてしまい、しかも日本改めエリア11にも帰れなくなったと不幸な者も居る。
そう言った者達がブリタニア本国に居て迫害を受け、帝都ペンドラゴンから離れた街のスラムで生きていると聞くがリョウトもそこに居たのだろう。
そしてイレブンを差別したブリタニア人がイレブンを迫害をしていたのを見たリョウトがブリタニア人を叩きのめし今回の一件となったのだろう。
EUにもそんな形のイレブンが居るとも聞く。
「ブリタニアとエリア11の戦争の影響がこんな形で浮き彫りになるとはな……」
ビスマルクは椅子に深く腰を掛けると眉間を抑えながら呟いた。
ブリタニアの基本主義として弱肉強食とは言ってはいるが、それは弱い者虐めの意味では無い。
むしろそれを良い事に汚職、公害、詐欺etc.の様々な悪事を行う者も居る。
「…………良い機会となるか」
ビスマルクは思案した後に椅子から立ち上がるとリョウトの居る牢屋へと向かった。
道中ビスマルクは思っている事をどう伝えるか悩む。
そして牢屋に到着するとビスマルクはリョウトの居る牢屋の扉を開けると中に居るリョウトに目を向ける。
そこには数日前に会った時よりも衰弱している様子のリョウトだった。
「遂に処刑?貴族様殴ったんだから当然か……」
「いや……処刑でない。貴様に生きるチャンスを持ってきた」
リョウトは拘束衣で身動きが取れないまま顔を上げてビスマルクを睨むがビスマルクは意にも介さない 言葉を返す。
「私の子にならないか?」
「……………………………はい?」
ビスマルクの言葉にリョウトは何を言ってるのか解らずにフリーズした。
「アンタ……何言っちゃてんの?」
「私は本気だ」
リョウトは胡散臭い物を見る目でビスマルクを見るがビスマルクは本気だと表情を変えずに答えた。
「ブリタニア本国でも貴様が嫌う様な貴族の不正や公害がある……それを潰す為にも力を貸せ」
「それが……アンタの息子になるのとどう関係があるんだよ?」
リョウトの言葉にビスマルクはリョウトの近くに歩み寄り片膝を付いた。
「今のまま話を聞いても皇族の方々はスラム街の平民の言葉と笑うだろう。だが私の息子の話ともなれば話は聞いて下さる。それに貴様は見所がある。鍛え上げれば良き騎士になると思ってな」
「…………」
そう語るビスマルクにリョウトは話に聴き入る。
「名を捨てろとは言わん。だが貴様と同じように苦しんでいる者を救いたいとは思わんか?」
「……その言い方はズルいだろ」
語り掛けるビスマルクにリョウトは溜息交じりに答えた。
「一つ……条件っつーか頼みたい事が有る」
「言ってみろ」
リョウトの発言に目を細めるビスマルク。
「父さんと母さんの墓を作ってやりたい」
「……いいだろう」
リョウトが出した条件と言うよりお願いを聞き入れるビスマルクは片手でリョウトの襟を摑むと立ち上げる。
「では貴様は今日からリョウト・T・ヴァルトシュタインだ」
「……Tって?」
リョウトはビスマルクに担がれたまま聞く。
「名を捨てたくないのだろう?」
「ああ……天川のTね」
ビスマルクの言葉に納得したリョウト。
天川リョウトとビスマルク・ヴァルトシュタイン。
奇妙な親子関係はこの日より始まったのだった。