『それで……クロヴィスを殺した犯人を捕まえずに帰ってきたと言うのですか!』
「不確定要素も多かったですし何よりも、あの場では枢木スザクの確保が最優先でしたから」
昨夜の騒動から一夜明けてからリョウトはオデュッセウスとギネヴィアに報告をしていた。その内容は枢木スザクが犯人では無い事と真犯人を名乗るゼロの事だ。モニター越しにギネヴィアは大声でリョウトを叱る。
「ゼロが犯人を名乗りましたが、そちらも証拠が無かったのと……深追いはヤバい気がしましたので」
『ふむ……リョウトがそう言うのならそうなんだろうね』
リョウトの発言にオデュッセウスは頷いた。リョウトの直感はよく当たるもので、過去にオデュッセウスもリョウトの直感に幾度となく助けられた経験があったから納得も早かった。
『ならば、そのゼロとやらを捕まえて尋問しなさい!』
「エリア11は今、混迷の最中でして。それにゼロの所在も不明なので今はエリアの平定を考えていたのですが」
ギネヴィアは最早、ヒステリーと言えるほどに興奮している。これは諭すのに時間が掛かるかなぁ……とリョウトが考えた際にオデュッセウスが口を挟んだ。
『ああ、その事なんだけどねエリア11の平定の為にコーネリアとユーフェミアがエリア11に行く予定なんだ。彼女達の手助けをしてあげて欲しいんだリョウト』
モニター越しに微笑むオデュッセウス。しかし、エリア11に訪れる人材の話を聞いてリョウトは胃がキューと絞まる感覚に襲われた。
それから数日後、ゼロの出現によりスザクは無罪放免となった。今現在、オレンジ疑惑によりジェレミアは軍の統率力を失った。ジェレミアが不正や汚職をしている、というのは公然の事実となっていた。その為にジェレミアがスザクに関して何かしようとしても間に合わず、ジェレミアはオレンジ疑惑を払拭しようと行動しているが、一度かけられた疑惑はすぐに晴れそうにない。
そしてリョウトはコーネリアとモニター越しに面会をしていた。
『クロヴィス暗殺の真犯人ゼロ。そしてジェレミア・ゴッドバルトの汚職か……貴様はどう判断している?』
「クロヴィス殿下暗殺に関しては何とも言えませんね……ゼロと一度会いましたが、口調と雰囲気からゼロが暗殺の真犯人に間違いはないと思ってます。ですが、本当にゼロがクロヴィス殿下を暗殺したと言う証拠はありませんが」
コーネリアはエリア11に着任する前に現在の状況を確認していた。そもそもコーネリアは他のエリアを統括していたのだが、クロヴィス暗殺の件を踏まえて他のエリアからユーフェミアと共に移動する事になったのだ。そしてリョウトがエリア11に滞在している事を知ったコーネリアは、個人的な意見と調査の結果を先に知る為に通信を行ったのだ。
『全ては奴を捕まえれば解る事だ。ジェレミア・ゴッドバルトの方はどうだ?』
「そっちも不可解でして。調べてみましたがジェレミア卿に汚職や贈賄の証拠は何も出ませんでした。それらをやったと言う痕跡もまるでないです」
『なんだと?』
コーネリアはゼロの件に関しては此処までだと打ち切って次の話に進めたが、リョウトからの報告に眉を釣り上げた。
「そもそもジェレミア卿は汚職や贈賄を嫌う人物でした。まあ……強引な政治手腕ではあったようですが」
リョウトの言う強引な政治手腕とは、スザクの件を含めたジェレミアの純血派としての行動の事である。
『ならば何故ゼロの言うことを聞いたのだ奴は?汚職をしていないのであれば枢木スザクを引き渡す意味などなかろう』
「そちらに関してもジェレミア卿に聞かなければ……と思っていたのですが、あの事件の後の調書に依ればジェレミア卿はあの時の事を覚えていないとの事です。ゼロがオレンジ疑惑の話をした辺りまでは覚えているが、気が付けばゼロと枢木スザクが消えていたと」
自身の疑問に答えたリョウトにコーネリアは目を細める。
『ふざけているのか?』
「それが至極真面目な話でして。取り調べをした者の話では嘘を言っている雰囲気では無かったとの事です。データは送っておきますのでご確認ください」
リョウトの返答にコーネリアは溜め息を吐き、自身の端末に送られたデータに視線を移した後、リョウトを見据えた。
『ではジェレミア・ゴッドバルトの件は一時保留だ。私がエリア11に到着次第、尋問を行う』
「承知しました。では失礼します」
コーネリアとの通信を終えたリョウトはフゥと息を吐いた。
「やれやれ……コーネリア様が到着するまでに」
「隊長、失礼します。キューエル卿が部下を引き連れKMFを勝手に持ち出したとの報告が!お相手はジェレミア卿との事です」
背伸びをしようとしたリョウトだが、部下が部屋に慌てた様子で報告しに来た事に再び溜め息を吐いた。
「ケインとクレスにも連絡して。俺達のKMFも発進準備」
「Yes、My Lord!」
リョウトの命令を受けた兵士は足早に退室していく。ケインとクレスはリョウトが本国から呼び寄せていたので既にエリア11に赴任している。その際にリョウトは専用のグラスゴーも運んで貰っていた。
「まったく……トラブルが続くなぁ」
リョウトはコートに袖を通すと格納庫へと急いだ。
頼むからこれ以上のトラブルがありませんように。そう願ったリョウトの思いはこの後、無惨にも打ち砕かれる事となる。