リョウトがビスマルクの義息子になってから数日が経過した。当初は何かしらの問題が起きるかと思われたが概ね良好に親子関係を築いていく二人だが、リョウトは困惑していた。
まず、ビスマルクが顔に似合わず意外と子煩悩だった事。屋敷に着いたと同時にビスマルクはリョウトの部屋を用意させ、お付きのメイドまで準備させた。
そして屋敷に到着から数時間でビスマルクの屋敷にリョウトの部屋とリョウトが今までで住んでいた所の荷物全てが運び出された。
お付きになったメイドから話を聞くと『ヴァルトシュタイン卿は結婚もしていないし、子供も居ないから嬉しいんですよ』との事だった。
そしてリョウトを一番困惑させたのはリョウトがビスマルクの子供になってから次の日だった。
いきなり王宮に連れて行かれたかと思うとブリタニア皇帝に謁見する事になった。混乱するリョウトを後目に玉座に座ったブリタニア皇帝は口を開く。
「リョォウトォ・T・ヴァァルトォシュタアィィンよぉ!」
突然のブリタニア皇帝の言葉にリョウトはポカンとする。正直何を言われたか解らなかったからだ。もしや名前を呼ばれたのかとビスマルクの方を見ると、こちらを向いて小さく頷いていた。舌を巻くような喋り方だからリョウトは気付かなかったのだ。
「は、はい!」
「貴様がビスマルクの子になると聞き及んでおる……精々励むが良いだろう」
一先ず返事をした後にブリタニア皇帝は一言リョウトに告げると、さっさと玉座から離れて行ってしまう。
リョウトは「いや、普通に喋れるんならなんで俺の名を呼ぶときに舌を巻いた?」とツッコミを入れそうになったがギリギリで踏み止まった。それを言ったら最後間違いなく首が飛ぶだろう物理的に。
そして謁見の間から退室したリョウトは廊下に座り込む。
「き、緊張したぁ~」
「何を情け無い事を言っているか馬鹿者」
力無く座り込むリョウトにビスマルクは一喝するがリョウトはビスマルクに食って掛かる。
「なんの説明も無くブリタニア皇帝に謁見する事になれば誰でもそうなるわっ!」
「今後は陛下や皇族の方々とも接する機会が増えるから馴れるには最適だろう。陛下も私が子供を引き取った事を報告したら会いたいとの仰せでな」
リョウトの苦情にもしれっと答えるビスマルク。しかもブリタニア皇帝と結託してドッキリに近い状況を作ったらしい。
「ドッキリってレベルじゃねーよ……」
「気後れするなよ?来週からはオデュッセウス殿下の下で仕事をするのだからな」
リョウトはビスマルクの言葉にピタリと動きを止める。
オデュッセウス・ウ・ブリタニア。世界の三分の一を支配する神聖ブリタニア帝国第一皇子。
その殿下の下で働けとはこれ如何に?
「オデュッセウス殿下はスラム街の者達の社会復帰やテロリスト等の犯罪者の温情を政策に出しておられる。リョウトの意見が最適であろう?」
「おいおい……」
確かに子供ながらリョウトはスラム街やテロリストに関する知識は豊富だ。それ故にビスマルクもリョウトを連れてオデュッセウスの下で働けとの事なのだろうが。
「俺なんかをオデュッセウス殿下の所で働かせたら他の皇族がなんか言ってくるんじゃねーのか?」
「だから私の義息子としての肩書が役立つのだろう。励んでこい」
最初にビスマルクが説明した通り、スラム街の者に直接話を聞けぬのならそれに関わった権力のある者の身内で有る事が重要になってくる。
最初からビスマルクはその気だったし、リョウトもそれを受け入れたのだからある意味、当然の采配とも言えた。