ブリタニア本国に戻ったリョウトはブリタニア宮殿へと足を運んでいた。
理由は先日ギネヴィアから言い渡された新部隊の話を聞くためである。
「新部隊……か」
リョウトは王宮の廊下を歩きながらポツリと呟いた。
ギネヴィアから新部隊へ配属を聞かされた。その新部隊はオデュッセウスの発案で新設された隊でブリタニアに反旗を翻した者やスパイ容疑などが掛かっている者にも温情を与える為の部隊だった。
オデュッセウス自身の発案は無実の罪に問われている者を救う政策の筈だったのだがギネヴィアや他の皇族が絡んだ際に少し案件がズレたのだ。
オデュッセウスは「和解や救いは必要だね」と言っていたがギネヴィアや他の皇族が絡んだ段階でリョウトはこの部隊は『捨て石部隊』『実験部隊』と言った事になるのだろうと予想を付けていた。
事実、前日の囮役も並の軍人ならKMF事、破壊されて死んでいただろう。
恐らく他の部隊にはさせられない作戦や内部告発用に整えられた部隊になるだろう。
しかし内容が変わってしまったとは言えどもオデュッセウス等と協力して作り上げた部隊だ。自分が行かずしてなんとする。そんな思いを胸にリョウトはオデュッセウスの政務室へと向かった。
リョウトが政務室に到着するとオデュッセウスの他に数名居た。ギネヴィア、ビスマルク。
ブリタニアを代表すると言っても過言じゃ無いメンバーが揃う中、リョウトは入るのが気が引けた。
「何をしている早く座らんか」
「アナタを待っていたのですよ」
ビスマルクとギネヴィアの言葉にリョウトは慌てて席に着こうとする。オデュッセウスは「まあまあ」と二人を嗜めていた。
「おかえり、リョウト。危ない任務を任せてスマなかったね」
「いえ、ちょっと死にかけただけですから」
スマなそうにリョウトに話し掛けるオデュッセウスにリョウトは柔やかに返事をした。
「アナタの実力を見込んでの事ですよ?」
「いやぁ、ギネヴィアもリョウトの事を解ってくれて嬉しいよ」
ギネヴィアはリョウトの事を少し睨む。対するオデュッセウスはリョウトとギネヴィアが少しでも仲良くなったのかと勘違いした様だ。その事に気付いたビスマルクは内心溜息を吐いていた。
「では会議に移らさせて貰います。以前よりオデュッセウス殿下が進言されていた新部隊の件ですが部隊名を【レイス】と命名が決まりました」
ビスマルクの進行で会議が始まる。
オデュッセウスもギネヴィアも予め用意されていた資料に目を通し始めた。
「この部隊を構成させる者達はオデュッセウス殿下の進言通り、情状酌量のある物を中心に組んでいく予定です。運用されるKMFや予算組は……」
「部隊運用は私かオデュッセウス兄様の物とします」
ビスマルクの発言を遮る様にギネヴィアが声を上げる。
「部隊を作り動かすなら責任者が必要でしょう?私とオデュッセウス兄様との折半で部隊を動かしましょう。KMFは最新の物は回せませんが改良品や試作品を回します」
「おお、ギネヴィア。スマないね私の為に」
ギネヴィアのやる気にオデュッセウスは喜んでいたがリョウトはギネヴィアの思惑を読んでいた。
この部隊がギネヴィアの指揮下に入ると言う事は先日の囮役の様な役回りが確実に増えるだろう。更に改良品や試作品を回されると言う事は前線に出る確率が高い上にデータ収集の意味も含まれる筈だ。
「最初は小規模な部隊とし、運用に問題が無ければ拡大化を図る……で宜しいでしょうか?」
「ええ、それで構いません」
「僕も異議無しだよ」
ビスマルクの提案にギネヴィアもオデュッセウスも異議は無いようだ。
「では部隊発足は2週間後。ある程度の訓練をした後に戦場へ連れて行きます」
「やけに早い取り決めだなぁ……」
自身が口を挟まずに次々に決まっていく新部隊にリョウトは違和感を感じていた。
「ビスマルクも君に武功を上げさせたいんだよ。勿論、僕やギネヴィアもね」
「………ありがとうございます」
リョウトの発言にオデュッセウスは柔やかにそう告げた。
ギネヴィアやビスマルクも肯定はしなかったが反論もしなかった辺り、その通りなのだろう。
「ゴホン、ではリョウト。これが部隊の資料だ、来週までに覚えておけ」
「うげ、凄い量……」
ビスマルクからリョウトへメモリーチップが渡される。リョウトが中身のデータを確認するとかなりの量のデータが納められていた。
「当然だ。貴様は【レイス】の隊長候補なんだからな」
「ふーん……隊長候補ね………」
データの量にうんざりしていたリョウトはビスマルクの発言を聞き流していた。
「って……隊長候補?」
聞き流した発言を再度口にしながら自身を指差すリョウト。
オデュッセウス達は無言のまま頷いた。
「期待していますよリョウト」
「キミなら、やれるさリョウト」
「精々、励むんだな」
それぞれが口々にリョウトを激励するがリョウトはフリーズしたまま動かなくなっていた。
部隊名【レイス】
オデュッセウスとギネヴィアの指揮下にある部隊。
新規発足された部隊で正規の部隊とは異なり、情状酌量 のある犯罪者やスネに傷を持つ者で構成された部隊。
正規の部隊が出来ない様な危険な任務を任される事が多く、改良品や試作品のKMFや兵器のデータ収集も任されている。