良くも悪くもハリー・ポッター 作:吟遊詩人(トルバドゥール)
「クリーチャー。レギュラス・ブラックのロケットを差し出すんだ」
「ご、ご主人様、それは……」
クリーチャーは渋っている。まあ、レギュラスの命令だもんね。
仕方ない、原作ハリーを真似するか。
姿眩ましでクリーチャーごとロケットの隠し場へ移動する。ソウルさえあれば、血のゲートなんていう不気味なものを通らなくて済む。
で、この薬を飲むんだっけ?それは嫌だな。ソウル発動、薬を一瞬で消し去る事が必要だ。
薬の処理完了。水盆から偽ロケットを掬い上げ、ポカンとしているクリーチャーに向かって放った。
「ほい。レギュラスのロケットだ。僕には、レギュラスがお前に頼んだ事をやり遂げる力がある。そのロケットをやるから、僕にあのロケットを渡してくれないか?」
クリーチャーの眼が潤み出し、涙がポロポロと溢れでた。そして、土下座し、レギュラスのロケットを握り締めながら叫んだ。
「お願いします!ご主人様!レギュラスお坊っちゃまが、クリーチャーめにお命じになった事を、やり遂げてください!」
姿眩ましでブラック屋敷に戻り、ロケットを持って来るように命じる。クリーチャーは直ぐに持って来た。
ソウルで圧縮して固めた空気で小さな一つの空間を作る。周りに被害がいかないか確認してから、僕は手に魔力を込めて紫と黒と赤が混ざった様な炎を作り出した。分霊箱を破壊する手段の一つ、悪霊の火。それを、分霊箱に押し付ける。
分霊箱は、人とは思えない悲鳴を上げながら破壊された。じわじわと、端から舐める様に、痛め付ける様に。拷問の様に。炎は分霊箱を焼き尽くした。
「……クリーチャー、僕の本名はハリー・ポッターだ」
「は、ハリー・ポッター様!?ご主人様の本名はハリー・ポッターなのですか!?」
「ん。それでも忠誠を誓ってくれるか?」
ドス黒い炎を見つめながら問いかける。
クリーチャーは深々と頷いた。
「ご主人様の名前がポッター様であっても、トルバドゥール様であっても、クリーチャーめのご主人様である事には変わりないのです」
僕はソファに深く座ると、目を閉じた。
悪霊の火。ヴォルデモートにぴったりな呪文だと思う。しかし、僕が使うには何か違う。もっと素早く、正確に対象を破壊しなければ意味無いのだ。
まあ、それは開いた時間に新しい呪文を作るか、ソウルを使えばどうとでもなるだろう。
あー、疲れた。原作ハリーは、よくもあんなに呑気に過ごせてたなぁ……。
マグル政府も我が手の内。
“この世をば 我が世とぞ思う 望月の 欠けたることも 無しと思えば”
——そこまででは無いが。
念のため、ドイツやフランス、イタリアやアメリカなどの国の魔法界・マグル界の政府も押さえた。本当はまだまだ浅いのだが、気付いた時にはもう僕が居なければ魔法界は上手くいかなくなるだろう。
闇祓いや高官は、ひっきりなしに呪文が掛けられていないかチェックされているので、あまり大きく呪文を掛けてしまうと、いくら悪性服従の呪文でもバレてしまうのだ。
だから、下っ端から順々に、少しずつ深く、広く掛け、かなりの数と精度になったらチェック係を一気に落とし、其処からはこの間掛けた小さめな呪文に重ね掛けすれば問題無いだろう。五年生になるまでに英国魔法省は手中に収めたい。
……別に大した意味は無いけど、ロンとハーマイオニーの負担を減らすにはそのくらい必要そうだし。あとは自己満足かな。ほら、結構痛い目にあったしね。