バトルスピリッツ~恋する太陽と輝きの剣~   作:東雲楓

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ノったので連投。
ストックなんてものはないので、亀投稿のスタンスは崩しません。


早い話、男は単純なのだ。女性を前にすれば。

進道 帯刀という人間は、浮いていた。

高校一年生という時分にありながら、身長は155.1cmと中学1年生の平均身長より程度しかない。

黒髪は肩のあたりまで伸びており、制服を変えてしまえばそのまま女子としても通用するのではないかと思わせられるほどには顔も整っている。

 

それでいて、その目つきは鋭く威圧感がある。

身長と顔立ちの所為で子供が背伸びしているようにしか思えないのだが、それでも大人を怯ませる様な目を向けてくることもある。

態度もそっけなく、人と群れることを嫌うかのように誰とも話すことはない。

よしんば話したとしてもそれは連絡等の事務的なもの程度。

 

そんな彼は高校生活から僅か1週間と少しでまるで腫れ物のように扱われるようになる。

 

故に、浮いている。

実際問題として、食堂に来てから今までもクラスメートとすれ違うことはあっても声をかけられるようなことはなかった。

彼のクラスメートらとしてはもう暗黙の了解みたいなモノで、いつもの仏頂面を見て無関心を貫くことに決めていた。

彼は感情を表に出さない、話すだけ価値のない、マシーンのような人間だと。マシーンなのだから、いてもいなくても変わらない。関わる必要もなければ、むしろ関わらないほうがいい。

それが、進道帯刀のクラスメートの総意にして、現実だった。

 

だからこそ、だろう。

 

誰か――女生徒――にぶつかり、その女生徒が落としたパスポートを見て拾い渡すまでの間にあった表情の変化、そそしてその後の幾分か優しい声色で放った一言は、彼らを戸惑わせるのには一役買った。

 

 

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「バトスピ、やってるの?」

 

そう言われて、陽菜は言葉を発する前にまず混乱した。

視線を下げると、目の前で自分のパスケースを差し出している誰か。

制服を見れば男子生徒だと解る。

 

ぶつかった拍子にパスケース落としてそれを拾ってもらうなんて。

 

ちょっとしたテンプレ過ぎて、頭が混乱した。

そんな混乱の中、次にその人物が発した言葉の意味を考える。

バトスピ。ああそうだ、彼はたぶんパスケースの中のカードを見たのだろう。

後生大事にするかのようにカードを持っているように見えてしまえば、その人物がそのカードゲームをやっているというふうに推測するのは確かに間違ってはいないだろう。

 

「あ、ぇ、その……」

 

だからこそ…言い淀む。

ここで期待される答えは、どんなものなのだろう。

陽菜自身としては、デッキは持ってるけど対人なんてしたことがなくさらに言えば馬神弾が好きなだけでゲームそのものに楽しさを見出しているわけではない。

 

やっているかと言われると限りなくNoに近いYes。

 

そんな状態をどう説明しようか悩むことでさらに混乱。

その状態が数瞬――陽菜にとっては数秒――、思考回路がショート寸前になりかけたとき、彼女のお腹がくぅ、と可愛らしく鳴いた。

 

「「……」」

 

双方の間に、言い表せない沈黙が訪れた。方や視線を逸らし、方や顔を赤く染める。

そこで緊張がふっと解けた陽菜は、ありのまま話すことに決めて目の前の男子生徒からパスケースを受け取り話し始めた。

 

「やってると言われると、微妙です。デッキは持ってるけど、対人戦なんてやったこともないし……アニメ見てて、面白かったから」

 

陽菜がそう言うと、目の前の男子生徒はん、と何かを考える素振りそして、言い放った。

 

「……バトル相手を、探してたんだ。よかったら、やってみないか?」

 

 

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渡りに船って、こういうことなのではないか?

目の前の女子生徒にバトルのお誘いをかけながら、進道帯刀はそう思った。

常々に母から言われていた「友達を作りなさい」という言葉を思い出し、目の前の女子生徒はその条件にぴったりと合致するような直感があった。

 

自分も最近やり始めた、バトルスピリッツというTCG。

それをやっている…というには語弊があるが、そんな人物。

対人戦は初めてだということは、自分と同じ場所からスタートすること、わからないところをお互いに話し合ったりもすれば会話のネタにもなる。

ゲーム中の駆け引き、ゲームが終わったあとの反省会、それ以外の雑談もそこから派生させていけば割といい線も行くかもしれない。

そういう意味では、やはり目の前の女生徒は初めての友人としてしは申し分ないと考える。

 

正直として、こんな打算的な考えで友人を作るというのは、何か違うと考える自分もいながら、きっかけというのはそういうものでいいのではないかと肯定する自分もいる。

結局は人との繋がりの最初というのはそういうものだというのは、いつの間にか帯刀が持ってしまった持論なのだから。

 

しかし、彼女を一目見た時に、仲良くなりたいと思ったのも事実なのだ。

後々からよく考えてみれば、一目惚れというやつなのかもしれない。

背が高く、姿勢も良く、顔立ちも整っていれば長く下ろされた黒髪。

可愛いと言うよりは、綺麗と言ったほうがしっくりくる。言ってしまえば自分の好みのような女性。

早い話、男は単純なのだ。女性を前にすれば。

 

「え、と。わかり……ました。いつ、ですか?」

 

そして、女性から肯定の返事をもらえれば、さらに嬉しい。

目の前の女生徒から告げられた言葉に内心安堵しながら、言葉を続けた。

 

「今日が暇なら、放課後ここで待ち合わせよう」

 

帯刀のその言葉に、女生徒は了解の意を示した。

そして二人はまた後で、と言葉を交わし各々行動をとり始める。

 

こと帯刀に関しては内心でやはりどこか浮ついていた。

初めての友人になれるかもしれない人物との出会い、それが自分の好みのような女性。

初めての対人戦のことを抜きにしても心の浮つきは抑えられない。

 

何度でも言おう。

早い話、男は単純なのだ。女性を前にすれば。

 

 

 

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