やはり俺の青春にウルトラマンがいるのはまちがっている   作:ichika

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比企谷八幡は手を挙げる 後編

noside

 

「この気配は・・・。」

 

喫茶店営業中のアストレイのカウンターにて、アストレイ名物となっている紅茶の準備をしていたコートニーが、何かに気付いた様に店外に目を向けた。

 

何時ぞや感じた、地肌に氷を直接当てられる様な不快感、その拭いがたい感触は、彼が良く知っているモノだった。

 

「スペースビーストッ・・・!!」

 

自身が何度も対峙し、何度も辛酸を舐めさせられた因縁の敵種、スペースビーストが現れた事を教唆する感覚だったのだ、他のメンバーが見落としたとしても、自身が気づかない事は無いとコートニー自身は自負していた。

 

彼はティーポットとカップを置き、店外に駆け出した。

 

見れば、彼の眼前数Kmの所で、触手を振り回しながら暴れるフィンディッシュタイプビースト、クトゥーラの姿が有った。

 

その動きは、苦悶の叫びをあげながらももがく様で、彼が知っているクトゥーラの動きとはいささか異なっている様にも見えた。

 

「誰かがライブしていると言うのか・・・!?これはマズイぞ・・・!」

 

その動きから、誰かがライブしている、若しくはさせられている事を感じ取った彼は、事の重大さを理解して青ざめていた。

 

冗談では無い。

只でさえスペースビーストは危険な存在だ。

 

人間の心を食い荒らす事に定評のある存在にライブするなど、自殺行為に等しいものが有るのだから。

 

その被害を食い止める為に、ギンガとXが光の柱と共に現れるが、それでもコートニーの心には不安の陰りが増すばかりだった。

 

何せ、彼等は知識としてスペースビーストの事を知っていたとしても、交戦した事が一度も無かったのだ。

 

それを鑑みれば、罠に嵌り、敗北を喫する事も充分に考えられた。

 

「セシリア、店番を頼む!!」

 

その可能性を考慮した時、自分が何をすべきかを把握した彼は、同じく店から出て来たセシリアに任せて走り出す。

 

「お気を付けて。」

 

その言葉に、彼女は短く返しつつも友の背を見送った。

 

やるべき事を見届ける、それも自分の役目だと分かっているから。

 

彼女の目の前で、コートニーは店の前の車道を一瞬で渡り切り、その向こう側の崖へと身を舞わせた。

 

常人ならばまず以てやらない事だろうが、生憎コートニーはそう言った事に括れる領域に居なかった。

 

「うぉぉぉぉっ!!」

 

重力に引かれて落下しながらも、懐からエボルトラスターを取り出し、一気に抜刀するようにして自身の眼前に掲げた。

 

因縁の相手を倒すために、そして、今危険に晒されている命の灯火を護るために・・・。

 

sideout

 

noside

 

『行くぜ彩加!』

 

『うん!!』

 

ギンガとXに変身した八幡と彩加は、目の前で吠えるビースト、クトゥーラに向かって走る。

 

必ず止めてみせる、その強い意志が脚を前に踏み出させていた。

 

雪乃が囚われた姿であるクトゥーラは、何処か悲鳴のような声をあげながらも、無数に生える触手を使って攻撃を開始した。

 

明確な殺意を以て振り回されるそれは無尽蔵に動き回り軌道が読みづらく、尚且つ破壊力もある非常に厄介な物だ。

喩えウルトラマンと言えども、おいそれと喰らいたくない攻撃である事に間違いはない。

 

だが・・・。

 

『そんなもんに当たるかよ!!』

 

ギンガスパークランスを呼び出したギンガは、向かってくる触手を捌きつつ前進する。

 

この程度の攻撃が、修行を重ねている自分に届く筈も無い。

 

軽やかな槍捌きは、自分に降り掛かる致死の攻撃も、一切が届く事無く切り払われていた。

 

『行け、彩加!!』

 

『うん!』

 

ギンガが足止めしている最中に、Xは高く飛び上がり、クトゥーラの頭上を取る。

 

そして、急降下の勢いそのままに、エネルギーを纏った蹴り、エクスクロスキックを叩き込む。

 

目の前にいる怪獣、スペースビーストの特性は彼等も把握している所であり、浄化の効き目も出るかどうか分からない。

その為、まずは抵抗できる体力を奪い去ってから浄化を行うと決めたのだろう。

 

あまりに強烈な攻撃を前に、クトゥーラは吹き飛ばされて大地に叩き付けられる。

 

『よっしゃ!俺も行くぜ!!』

 

クトゥーラが起き上がるのを待たずに畳み掛けるつもりか、ギンガはランスを構えて突っ込んで行く。

 

邪魔な触手から切り落とすつもりなのだろう、その切っ先は的確に触手を切り落として行った。

 

切り落とされるたびに、クトゥーラは悲鳴のような叫びをあげるが、それに八幡が構う事は無かった。

 

私怨が無いとはお世辞にも言えないが、少しぐらいは我慢しろと言わんばかりの勢いが窺えた。

 

飛び蹴りからの着地後、加勢に行こうとした彩加だったが、その苛烈さと彼の想いを酌んで、一足先にエクシードへと変身する。

 

『(八幡ならきっと大丈夫、負ける事なんて無い。)』

 

そしてそれ以上に、八幡の力を知っているからこそ、見守る事にしたのだった。

 

だが・・・。

 

『ィ・・・、ィタイ・・・。』

 

『『ッ・・・!?』』

 

唐突に発せられた言葉に、ギンガは攻撃の手を緩めてしまう。

 

何せ、聞こえてきた声は、今クトゥーラに囚われている雪乃の声、其のモノだったのだから。

 

『(まさか、今の攻撃で意識が戻った・・・!?)』

 

今迄、闇に囚われていた者達が発しなかった苦痛に呻く声に、経験した事の無い事態に戸惑い、攻撃する事を躊躇った。

 

だが、戦闘において、その一瞬の躊躇いは敗北への片道切符ともなる。

 

勢いよく突き出された触手が握っていたギンガスパークを弾き飛ばした。

 

『し、しまった・・・!罠か・・・!?』

 

それが罠だと気付いた時には既に遅かった。

クトゥーラはギンガを打ち倒さんと触手による打ち払いを繰り出し、ギンガを大きく吹き飛ばした。

 

『まさか、雪ノ下さんの事を利用して・・・!?』

 

彼等はビーストの特性を知ってはいたが、それでも勉強不足と言わざるを得なかった。

 

ビースト、特にクトゥーラやノスフェルが該当するフィンディッシュタイプのビーストは、特に残虐かつ残忍な性質を持っており、正しく悪魔と呼ぶに相応しいやり方をしてくるのだ。

 

その中には、殺した相手に自分の細胞を埋め込むことでビーストヒューマンへと変貌させ、操り人形として使役する個体もいる事を考えれば、先程の雪乃の声は、クトゥーラがその悪質な性質で利用したのだと推測できた。

 

だが、まだまだ経験の質量を考えれば、豊富とは決して言い難い八幡達がそれに対処できる筈も無い。

 

ビルに突っ込んで倒れたギンガは、呻きながらも何とか立ち上がろうとする。

 

しかし、クトゥーラの動きの方が遥かに速かった。

 

新たに触手を伸ばし、ギンガの首と腕を締め上げ、その身体を宙に持ち上げた。

 

『ガッ・・・!?』

 

『や、やめろッ・・・!!』

 

苦悶の声をあげるギンガの救援に駆けつけようとしたXだったが、幾重にも迫る触手の攻撃に、中々前へ進む事が出来ずにいた。

 

だが、一瞬でも気を逸らす事が出来れば、八幡ならば脱出できる隙となり得た。

 

『ッ・・・!ぎ、ギンガスラッシュ・・・!!』

 

なんとか頭部から放つギンガスラッシュで攻撃し、クトゥーラの頭部を狙った。

 

それは違わず命中し、盛大な火花を散らした。

 

クトゥーラが絶叫すると同時に、ギンガを拘束する触手の力が弱まった。

その隙を逃さず、全身に力を籠めて拘束を振り解き、Xの下まで後退、距離を取った。

 

『なんて厄介な・・・!雪ノ下の声使ってくるなんて聞いてねぇよ・・・。』

 

肩で息をしつつも、八幡は悪態を吐いていた。

 

こんなに厄介な敵は初めてだと、そう感じていたに違いない。

 

実のところ、アストレイのメンバーに語らせれば、クトゥーラは触手の厄介さだけなもの、そこまで強力なビーストでは無い。

八幡も薄々はそれに気付いてはいるだろうが、そう感じたかと聞かれれば首を横に振らざるを得なかった。

 

何せ、クトゥーラから迸る殺気や悪意が留まる所を知らずに、彼等に向けてダイレクトに伝わってくるのだから。

 

恐らくそこには、スパークドールズに封印されていたクトゥーラが元から有していた性質と、ライブした雪乃が持っていた闇が合わさった事で、その強さを何倍にもしていたのだ。

 

『どんだけ根深い闇持ってんだよ雪ノ下の奴、刺激し続けた俺が言えた義理じゃねぇけどさ。』

 

呆れつつも、人が抱え得る闇を知っている八幡は素直に恐怖を禁じ得なかった。

 

これまで対峙してきたどんな闇よりも深く、濃い悪意をぶつけられて初めて、雪乃が置かれていた状況を鑑みれ他のだろう、その口元は、真一文字に結ばれていた。

 

だが、だからと言って退いてやるわけにはいかない。

 

このまま放っておいたら、必ず雪乃は戻れなくなる。

八つ当たりにも似たやり方で全てを壊させるなど、幾ら敵視していた相手とはいえしてほしくなかったのだ。

 

『でも、助けるんでしょ?』

 

『勿論、こんな醜い姿で威張られても気色悪いだけだからな!!』

 

彩加の言葉にジョークで返しつつも、彼は再び立ち上がった。

 

必ず倒して助ける、そのシンプルな行為を成すためにも。

 

『行くぜ、彩加!!』

 

『うん!!』

 

ギンガストリウムとなった八幡と、エクシードXとなった彩加は構えを取り、再びクトゥーラへと向かって行く。

 

振るわれる触手を、ギンガは素手で、Xはエクスラッガーで打ち払いつつ前進する。

 

互いの背を護りつつも進んでいくその姿からは、バディとしての信頼感が窺う事が出来た。

 

『ショォウラッ!!』

 

『イーッ!サァーッ!!』

 

懐に飛び込んだギンガとXは、光を纏わせた拳を叩き込む。

 

あまりの威力に、クトゥーラは大きく吹っ飛ばされる。

 

『よしッ!!』

 

『トドメを・・・!!』

 

その隙に決着を着けんとエクスラッガーを操作し、最強の浄化技を放とうとする。

 

これで因縁とも完全にケリを着ける、彼等の動きからはその想いが滲み出ていた。

 

だが、クトゥーラはやられてたまるかと言わんばかりに触手を乱舞させる。

 

それは、周囲のビルを狙った様にも見えたが、他の目的が在るようにも映った。

 

『これは、まさか・・・!?』

 

その意図に気付いたのだろう、八幡は咄嗟に横っ飛びし、触手が伸びる先へ急いだ。

 

『ウァァッ・・・!!』

 

「きゃぁぁっ・・・!?」

 

そのポイントに飛んだ瞬間、クトゥーラの攻撃がギンガの背中にクリーンヒットし、堪え切れずに倒れ込む。

 

巻き上げられる土埃を含んだ突風が巻き上げられ、その付近に居た陽乃が悲鳴を上げる。

 

突風が叩き付けられた事では無い、彼女が狙われていた事に気付き、その恐怖で悲鳴を上げていたのだ。

 

囚われている雪乃の、陽乃に対するコンプレックスを憎しみだと解釈したクトゥーラが、陽動の意味合いも込めて

 

『なっ・・・!?や、やめろぉぉッ・・・!!』

 

その意図に気付いた彩加が慌てて止めに入る。

 

だが、そうはさせないと言わんばかりに、クトゥーラの歪んだ口から火炎弾が吐き出され、Xへと殺到する。

 

『う・・・!あぁっ・・・!!』

 

怒涛に押し込まれる火炎弾を捌き切れず、胸部への直撃を許したXは大きく後方へと吹っ飛ばされる。

 

その合間にも、陽乃がいる方向への攻撃の手を夜目る事は無く、陽乃を護るために動けないギンガは、容赦のない攻撃に晒され続けた。

 

『や、やめろ・・・!自分の姉貴殺してまで貫きたいプライドなんてあるのか・・・!?』

 

痛みに耐えながらも、陽乃を腕の中で護りながらも、八幡は呻くように叫んだ。

 

このままやれば、十中八九陽乃の命の保証はない。

その結末を迎えてしまった時、開放された雪乃が真面でいられる訳が無かった。

 

そんな未来を迎えて欲しくないからこそ、幾ら嫌っている相手とはいえ、声を張り上げる。

 

だが、心そのものを囚われている雪乃に届く筈も無く、攻撃の嵐は止む事が無かった。

 

動けないギンガにトドメを刺すつもりなのだろう、一際勢いのついた触手の突きが迫る。

 

Xが手を伸ばすが、助けに入るのは間に合わない。

無慈悲なる一撃が直撃するに思われた、まさにその時だった。

 

赤い光の球が飛来し、ギンガに迫っていた触手を断ち切った。

 

攻撃が遮られた事と予想外のダメージに、、クトゥーラは苦悶の叫びをあげて倒れ伏した。

 

『『ッ・・・!』』

 

その光が地に降り立った時、八幡と彩加は息を呑む。

 

纏っていた光が晴れた時、そこに姿を現したのは、銀色の巨人・・・。

 

『『コートニーさんっ・・・!!』』

 

彼等の師の一人、ウルトラマンネクサスに変身する、コートニー・ヒエロニムスだった・・・。

 

『二人とも下がっていろ、コイツは、俺が相手をする!!』

 

弟子を下がらせ、コートニーは構えを取る。

 

スペースビースト退治の専門家として、彼は戦いを挑む。

 

己が使命のため、そして、悲劇を繰り返させないためにも・・・。

 

sideout




次回予告

スペースビーストの持つ特性から少女を救うため、彼は立ち上がる。
この世で本当に大切な物を伝えるためにも、彼は退く訳にはいかないのだ。

次回やはり俺の青春にウルトラマンがいるのはまちがっている

コートニー・ヒエロニムスは見据えている

お楽しみに

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