やはり俺の青春にウルトラマンがいるのはまちがっている   作:ichika

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三浦優美子は求めていた

noside

 

「うっ・・・?お、俺は・・・?」

 

グローカービショップが倒されてからしばらくして、八幡達の手により助け出された隼人が意識を取り戻していた。

 

まだ意識がハッキリとしていないのだろう、その声は弱弱しく、何処か探る様な印象さえ受け取れた。

 

「やっと起きたか。」

 

そんな彼の意識を覚醒させる様に、八幡は何処かぶっきらぼうながらも僅かに案ずるような声で話しかけた。

 

「ひ、比企谷君・・・?それに・・・。」

 

その声に反応した隼人は、八幡とその周りにいた者達を順々に見ていた。

 

その目はまるで、どこか画面の向こう側を見る様な、まだ夢から醒めていない様な印象を受けた。

 

「いい加減にシャキッとしやがれ。」

 

そんな彼に痺れを切らしたか、八幡はいい加減にしっかりと目を開けろと言い放つ。

 

お前がした事を、その結果を目にしろ、そう言っている様だった。

 

「ッ・・・!?」

 

その言葉に、漸く意識がハッキリと覚醒したのだろう、自分のした事を理解し、そして、同時にそれが齎した惨状を目の当たりにした。

 

巨大な何かが通過した後の様に、なぎ倒されたビルや民家、紅蓮の炎と黒煙を噴き上げる、彼が生まれ育った街の、酷い有様が目に飛び込んで来た。

 

自分が加害者とならない状況で見た光景と同じ物だったが、今、それを為したのが自分自身だと受け入れる事は難しかった。

 

「お、俺は・・・、俺はなんて事を・・・!?」

 

その事実を受け入れられず、隼人は飛び上がる様に起き上がり、頭を抱えて頭を振った。

 

そんなバカな事は無いと、自分が街を破壊した罪に押し潰されそうになっていた。

 

「ち、違う・・・!お、俺は、俺はただ・・・!!」

 

違う。

自分はこんな事をしたかったわけでは無い。

 

自分は只、彼女の事を救いたくて、その為に力を欲した。

それは、こんな壊すための力などでは無い、救うための力、護るための力だった。

 

「俺はただ・・・!!」

 

「ただ、なんだよ、結局、何も護れてねぇんだよ。」

 

 

だが、欲した力とその力で為した事は全く違う。

護る事を望んでいたくせに、何故関係の無い物を壊すのだと、八幡の声にはそんな苛立ちが乗せられていた。

 

「お前は間違えたんだよ、力を、その使い方をな。」

 

お前がやった事は他でもない、ただの暴力を関係の無い物に振るった結果なのだと。

 

それを自覚させるために、八幡はただ冷淡に、そして事実だけを述べていく。

 

逃げ道を塞ぎ、それを受け入れるしかない状況へと誘おうとするかのように・・・。

 

「だったら・・・、だったら俺はどうすれば良かったんだ・・・!?」

 

ならば、自分は如何すれば良かったのだと、何をすれば正解だったのかと、その答えを求めるように、隼人は叫んだ。

 

血を吐く様な、そして、助けを求めるかのような悲痛な叫びは、その場にいたすべての者達を耳朶打った。

 

誰も受け入れてはくれなかった。

自分の本当の想いを、そのために進む事を否定された心持になった。

 

自分の何がいけなかったのか。

想いを通す事さえ、間違いだとでも言いたいのか。

 

そんな理不尽に押し潰されそうになる心が、その叫びには現れている様でもあった。

 

自分が抱えるこの問題が、他人に話して良いモノか分からず、それを打ち明けて相談する相手もいなかった。

 

それ故に、自分の想い通りにならない事が起きた時に、それを解消させるための術を見出せ無かった。

 

だから、彼は誰かを人柱にする事で輪を崩さない様にしていた。

それ以外に方法を知らなかったから。

 

だが、そんな問題を、自分が考え付かない方法で解決してしまう者達がいた。

 

その者達は、誰かと共にそれを成していた。

それは、彼が理想としていながらも、結局は実現できなかったモノだったのだ。

 

何故そんな事が出来るか、その時の彼には理解出来なかった。

だが、それと同時に希望も見出してしまった。

 

其の者達、奉仕部にいた八幡と、彼の周りにいる者達ならば、自分が救えなかった少女を救ってくれる筈だと。

 

だから、隼人は彼等を見続けていた。

彼等が、その少女を救える人物と見極める為に。

 

だが、それは悉く覆される事となった。

 

救われるべき相手である雪乃と敵対するばかりでなく、相手を立ち上がらせる為に傷付ける様な事を平然とする。

それは、彼が望むモノでは無かったのだ。

 

だから、彼は決めたのだ。

自分の力で彼女を救う、たとえそれが、誰かを利用し傷付ける事に成ろうとも、救いたい相手を救う事が正義だと思い込んだのだ。

 

だが、そんな独り善がりは、これまで共にいたはずの者達にさえ受け入れられるどころか、誰も共感しないまま拒絶されてしまったのだ。

 

それは、彼が最も恐れるモノ、孤独に晒されると言う事だった。

 

その恐怖に耐えかねた彼は、それを求める以外に無かった。

誰かの力に頼る事の無い、自分だけが持つ強大な力を。

 

その力で、その少女を救うのだと。

 

だが、それすらも叶わなかったのだ。

仲間と共に戦う、ウルトラマン達の手によって、それは否定されてしまったのだ。

 

その結果になった今、彼は自分のやった事が正しかったのか。

 

自分の想いが正しかったのか、それすら分からなくなっていたのだ。

 

「俺に聞くなよ、お前がやりたかった事なんて知らねぇし、お前が何を想ってたなんて知りたくもねぇ。」

 

だが、そんな事など八幡にとってはどうでも良い事だった。

 

目の前にいる相手は、散々自分達に迷惑を掛けてきた存在であり、それ以外に関わりは無いと言っても過言では無い間柄なのだ。

 

そんな相手に、自分が何を教えられると言うのだろうか、何を伝えられると言うのだろうか。

 

仮に伝えたとしても、所詮それは上っ面の言葉にしかならない、それを、八幡は誰よりも理解していたのだ。

 

「知りたいなら教えて貰え、伝えたいなら腹割って話せ、お前には、それが出来る相手ってのはいねぇのかよ。」

 

だから、そんな自分が前に出るよりも、もっと適した者がいる。

そう判断した彼は、少し離れて立っていた優美子と翔を前に出した。

 

その二人の表情は、何か言いたげでありながらも、どこか痛みを堪えている様にも思えるモノだった。

 

「と、戸部・・・、ゆ、優美子・・・。」

 

その二人を見た隼人の表情に、何処か怖れにも似た感情が差し込んだ。

 

一体何を言われるのか。

自分に向けられる、感情が怖かったのだ。

 

グループのリーダーとして、羨望以外の感情を向けられた事の無い彼からしてみれば、グループのメンバーからそれ以外の感情を向けられる事は、未知なる経験であった。

 

故に、それが憤怒だったならば、自分はどうなってしまうのかという、自己防衛的な恐怖が頭を過ぎったに違いないのだ。

 

「・・・、なぁ隼人君・・・、俺、そんなに頼りねーべか?」

 

「えっ・・・?」

 

戸部の一言に、隼人は驚いた様に顔を上げた。

 

彼の目に飛び込んで来たのは、何処か寂しそうに笑う翔の姿だった。

 

「俺さ、確かに勢いばっかでさ、隼人君の悩みなんて分かってやんなかったけどさ、それでも、話せないほど信用なかったんか?」

 

その言葉には、小さな憤りと彼なりの苦悩が現れている様だった。

 

自分は頼りならないのか、それが悔しい様子だった。

 

「ち、違う・・・!そんなつもりは・・・!!俺は、自分で救いたかっただけで・・・!」

 

それを否定すべく、隼人はすかさず声をあげた。

そんなつもりは無かった。

 

だが、彼もまた、自分が自覚していないだけで、ある一線から人を踏み込ませない強がりが有ったのかもしれない。

それが、周りの人間に弱みを、ありのままの自分を見せない、謂わば鎧の様なモノだったに違いない。

 

しかし、その鎧しか見ていなかった者からしてみれば、剥がれた金メッキのように価値を失くし、幻滅に値するモノだったに違いない。

 

それは、本当の友情では無かったのだ。

 

「自分で救いたいって何だべ、結局、俺達なんて頼りにならねーって言ってんの、分かってるんか?」

 

そんな上っ面の言葉を聞きたいわけでは無い。

翔が聞きたかったのは、それ以上の言葉だった。

 

「俺に頼ってくれたら、俺は出来る限りの事は手伝うつもりだったべ、俺は、隼人君の事友達だと思ってたかんな。」

 

友人だと思っていた相手にそう思われていなかった。

それほど辛い事は無いだろう。

 

「戸部・・・、俺は・・・。」

 

「謝んな、俺以上に、謝んなきゃいけない相手、いるんじゃねーの?」

 

隼人が何かを言う前に、翔は優美子を前に出した。

 

自分よりも先に話し合うべき相手がいる、それが優美子だと言いたいのだろう。

 

「・・・。」

 

「ゆ、優美子・・・。」

 

隼人の前に立った優美子は、言葉を発する事は無かったが、それでも彼から視線を逸らす事は無く、真っ直ぐ射抜く様に見据えていた。

 

その沈黙は重苦しいモノだった。

だが、それを破る様に、彼女は口を開いた。

 

「あーしはさ、優しいアンタが好きだった、前までは何にも、知らなかったから・・・。」

 

隼人に宣言するように、そして、自分に反芻させるように、彼女は呟いた。

 

自分は何も知らず、ただ上っ面を見ていた。

だから、何も知らず、何も知ろうともせず、ただ自分に都合の良い葉山隼人を見ていた。

 

それが知らず知らずの内に隼人自身を傷付けていたと、後々になってから、それが分かる様になったのだ。

 

「でも、だからって何も話してくないんは、ズルいよ・・・。」

 

「優美子・・・。」

 

隼人がやった事よりも、隼人が自分に打ち明けてくれなかった事の方がショックだったのだろう。

優美子は何処か、寂しげに呟いていた。

 

自分は恋愛対象どころか、相談相手、友人とすら思われていなかった。

元想い人の行動からそれを察してしまえる心苦しさは、最早図り知れないモノだっただろう。

 

「だから、あんな嘘っぱちは此処で御終い、意味無いけど、グループももう終わらせるし。」

 

「そう、か・・・。」

 

だから、こんな嘘に塗れた集まりは解散しようと、彼女は宣言する。

嘘の付き合いはしたくない、彼女の出した結論だった。

 

「でも、嘘だったからってあーしはアンタを見捨てやしない、アンタに頼りになる女って思わせてやるし。」

 

だが、それで離れていくほど、三浦優美子と言う少女は欺瞞を抱えてはいなかった。

 

ここで離れれば、今の自分も所詮は上っ面の響きがいい所を見ている事になる。

それは、彼女が否定した嘘そのものだった。

 

だからこそ、友人として頼れる存在になる、それが、彼女の出した答えだった。

 

「ま、そう言うことだべ、よろしくな隼人君。」

 

優美子の言葉に続ける様に、翔もまた自分も友でいると笑った。

 

赦す赦さないでは無い。

それ以上に、分かり合う事で乗り越えようとする、確かな歩み寄りがある様に思えた。

 

「戸部・・・、優美子・・・!ゴメン・・・!ありがとう・・・!!」

 

二人の強さに、本当の意味で救われたのか、彼は大粒の涙を零し、その場にうずくまっていた。

 

子供のように泣くその姿もまた、彼の本当の姿だった・・・。

 

「み、皆さん・・・!」

 

「ちょ、ちょっと・・・!休んでないとダメだって・・・!」

 

一件落着したその時だった。

大ダメージを受け、離脱していた大志が姫菜に肩を貸されながらも彼等の傍に寄って来た。

 

まだ回復出来ない程に消耗しているのだろう、その表情は限界を超えたモノが見えていた。

 

「た、大志・・・!!」

 

「大丈夫か・・・!?」

 

沙希と八幡が慌てて駆け寄り、その身体を支えた。

 

「へ、へへ・・・、大丈夫っスよ、俺、強いんで・・・。」

 

「バカ野郎、無茶しやがって・・・。」

 

強がりな笑みを浮かべた大志に、八幡は安堵と共に苦笑していた。

 

強がり言えるなら大丈夫、そう信じたのだろう。

 

「アンタは・・・。」

 

そんな大志に、優美子は不安げな表情を浮かべて駆け寄った。

 

本当に大丈夫か、そんな心配が察する事が出来た。

 

優美子の反応に、八幡と沙希は一体何事かと首を傾げており、その関係性を知りたがっているようにも見えた

 

「あ、あの時のお姉さん・・・。」

 

「大丈夫なの・・・!?無茶して・・・!!」

 

だが、そんなまわりの事など脇に置いて、彼女は自分に気付いた大志の頬を両手で包み、その身体を案じた。

 

自分を庇って傷付いた少年を、痛ましく思っているのだろうか、それとも・・・。

 

「お姉さんが無事なら、大丈夫ッすよ・・・!」

 

全身に走る激痛を堪えながらも、彼は笑った。

貴女が無事なら、自分は平気だと、笑って言ってのけた。

 

その様子に、怒るつもりだった優美子は二の句を告げる事が出来なくなった。

 

あぁ、どうしてこんなにも・・・。

 

思うより早く、彼女が動いていた。

 

大志の顔に自分の顔を寄せ、彼の額に口づけを贈った。

 

「「「えっ・・・!?」」」

 

まさかの行動に、見ていた八幡と沙希、そして姫菜は驚きのあまり短く声をあげ、目を丸くしていた。

 

「えっ・・・?」

 

しかし、それを一番理解できていなかったのは、くちづけを贈られた大志本人だった。

 

「二回も助けてくれてありがとね、これは前の時の分だから。」

 

「え、あ・・・?」

 

少し頬に朱が指す優美子の言葉の意味を理解した大志の表情にも、彼女と同じ様に朱が指した。

 

先程までの激闘の余韻での紅潮では無い、思春期の少年少女が抱く、淡い想いにも似た何かだった。

 

「あーしは三浦優美子、アンタは?」

 

「か、川崎大志、ッス・・・。」

 

名乗り合った二人には、最早他の事などどうでも良くなっていたに違いない。

何せ、世界に二人だけになったかのような、そんな雰囲気を醸し出していたのだから。

 

「そっ、これからよろしくね。」

 

それだけ言い残し、彼女はどこか満足した様に微笑んでその場を立ち去って行った。

 

「ゆ、優美子さん・・・。」

 

そんな彼女の、可憐な姿にノックアウトされたのだろうか、彼女の名前を呟いて、張り詰めていた何かが切れた様に身体から力が抜けていった。

 

「大志・・・!全く、上手くやりやがって・・・!」

 

そんな彼を抱き留めながらも、八幡はこの野郎と言わんばかりに苦笑しつつ、その頭を優しく撫でていた。

 

一つのグループの崩壊と、真なる友情の芽生え、そして、少年と少女の出会いを含んだ事件は終息と相成った

 

だが、これは一つの章の終わりでしかなかったのだ。

本当の悪夢は、密かに、着実に、彼等の背後に迫っていたのだった・・・。

 

sideout




次回予告

悪夢。
それは望まざる現実に直面した事を言うのか、それとも、この世の終わりを意味する物なのだろうか・・・。

次回やはり俺の青春にウルトラマンがいるのはまちがっている

戸塚彩加は気付き始めた

お楽しみに
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