やはり俺の青春にウルトラマンがいるのはまちがっている   作:ichika

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織斑一夏は再臨する 前編

noside

 

『ウルトラマン・・・ゼロ・・・!?』

 

新たなウルトラマン、ゼロの登場は、その場に居たすべての者を驚かせるには十分な出来事だった。

 

闇を切り裂く閃光の如く、異空間から現れたその光の巨人は、まさに堂々たる威厳を持ったままルギエルと対峙していた。

 

『おう!ヒカリやゼノン・・・、いや、感じが違ぇから別人か?まぁそんな事は良いか!初めましてだな!!』

 

軽口とも取れる挨拶と共に、彼はギンガ達の方へと向き直った。

 

『俺はゼロ!一夏達のダチだ!よろしくな!』

 

『せ、先生達の、ダチ・・・?』

 

ゼロの話す内容に困惑する八幡だったが、その一方で何処か納得もしている様だった。

 

何せ、彼が一夏に抱いた感覚と同じモノが、ゼロからは強く感じ取れたのだから。

 

『お、俺・・・、ウルトラマンギンガ、八幡です・・・!』

 

『なるほど、見たところ一夏の弟子みてぇだな、よくここまで頑張ったな!後は任せとけ!!』

 

八幡が自己紹介すると、ゼロはへへっと笑いつつ肩を軽く叩き、そのままルギエルに向き直った。

 

『テメェが闇の支配者って奴か・・・、どんな化け物かと思えば、アイツのパクリみてぇな姿しやがって・・・、拍子抜けだぜ。』

 

『き、貴様・・・!!』

 

ゼロから発せられる威圧に、ルギエルは自身の計画の綻びがさらに広がって行く事と共に慄くばかりだった。

 

こんな展開が来るなど予想もしていなかった。

せいぜい、この世界に残ったウルトラマンからの反撃があるだけで、それ以外のモノがあるとは露程にも考えていなかったのだ。

 

だが、ゼロはそんな事などお構いなしに、八幡達と一夏、そしてルギエルを交互に見ていく。

 

そして、状況を悟り、怒りに拳を握り締めた。

 

『テメェにはドデケェ借りがあるんだ、2万倍にして返してもらうぜ!!』

 

そう言うが早いか、ゼロはウルトラ念力を使い、頭部のスラッガーを取り外し、それを華麗にキャッチ、二刀流の要領で構え、ルギエルに向かって飛び掛って行く。

 

『デェェリャッ!!』

 

斬りつける、と言うよりは叩き付けると言った方が適切か、ルギエルの頭部、正確には目を狙ってスラッガーをもちいて攻撃する。

 

その切れは凄まじく、軽い身の熟しと相俟って、まさに神速とさえ形容できる動きだった。

 

『ぬぅっ!?』

 

巨大化しすぎたその巨体では避ける事さえままならないのだろうか、ルギエルは切羽詰まった声をあげ、顔を逸らす。

 

だが、スラッガーの端に掠めたからか、人間で言う頬のあたりに傷がつけられた。

 

『な、なんて速さ・・・!』

 

『それに、あのスラッガーは、マックスと同じ・・・!』

 

如何に闇の力が幾分か弱まっているとはいえ、その攻撃力は推して測るべきモノであり、八幡達では傷一つ付けられなかったルギエルの強固な体表にダメージを与えたのだ。

 

それを見ていた者にとてっては、それがいかなる意味を持つかなど、最早語るまでも無かった。

 

『その図体で逃げてんじゃねぇよ!!』

 

しかし、それで満足はしないと言わんばかりに、ゼロはスラッガーを投擲、それに追い付きつつも蹴り飛ばし、より勢いを高める。

 

『嘗めるな・・・!!』

 

それを喰らっては拙いと、ルギエルはチャージし切っていない熱線を吐き、迫るスラッガーを何とか押し返そうと

試みる。

 

だが、ウルトラ念力で強化されたスラッガーの破壊力は予想以上に強く、それは熱線の奔流を切り裂きながらも突き進んで行く。

 

『ぬ、ぉぉぉぉ・・・!?』

 

これではマズイと本能的に察したか、ルギエルは手を払う様にしてスラッガーを弾き飛ばす。

 

『へっ!やるじゃねぇか!!』

 

『お、おのれぇ・・・!!ヤツを始末するのだ!』

 

今の状況が好ましくないと感じているのだろう、ルギエルはスーパーグランドキングにゼロを攻撃するよう命じた。

 

それに応じ、スーパーグランドキングは咆哮をあげ、ゼロに対し、腹部からレーザーの様なモノを放って攻撃する。

 

『ウルトラゼロディフェンダー!!』

 

だが、そのレーザーもゼロが腕のブレスから呼び出した盾の様なものに防がれ、全くの意味を為さないまま霧散する。

 

『お返しだ!釣りはいらねぇぜ!!』

 

その盾は様々な武具へ形を変えられるモノだったのだろう、彼はすぐさまそれをランス状に変形させ、グランドキング目掛けて投擲する。

 

それは大気を切り裂いて進み、スーパーグランドキングの頭部の一部を貫いて行く。

 

あまりのダメージに、これまで何の反応も示さなかったグランドキングは絶叫に近い叫びをあげ、地に倒れ伏した。

 

『す、すごい・・・!』

 

その見事なまでの戦ぶりに、彩加は感嘆の声をあげた。

自分達では傷一つ、半分の力しか出せていない一夏ですら抑え込むのがやっとだった敵を、二体纏めて相手しているのにもかかわらず、それを圧倒してしまっていたのだから尚の事だった。

 

『へへっ!こんなもんかよ!!』

 

『嘗めるなっ!!』

 

余裕を見せていたゼロに、ルギエルが再び攻撃を仕掛ける。

 

今度は肥大化した腕で直接殴りに掛かったのだろう、その攻撃範囲は広かった。

 

『チッ・・・!いい加減大人しくやられてろっての・・・!!』

 

それを回避しつつ、ゼロは舌打ちしつつもボヤいた。

 

いい加減やられてしまえば良いモノを、こうも抵抗されると少々疲れると言わんばかりの様子だった。

 

『これで往生しやがれ!ワイドゼロショットォッ!!』

 

L字に組まれた腕から閃光が迸り、光線がルギエル目掛けて突き進んでく。

 

その奔流は凄まじく、そこにあった空気を切り裂いたのが視認できるほどだった。

 

だが・・・。

 

『ほざけぇぇ!!』

 

ルギエルは身体に纏わりついていた闇を障壁とし、その光線の奔流をかき消してしまう。

 

『なにっ・・・!?』

 

自慢の一撃が押されている筈の相手に防がれるとは思いもしなかったのだろう、ゼロは驚愕に硬直する。

今まで押せ押せの状態で戦っていたのならば、その驚愕も多きなるのはまた必然だった。

 

だが、それは戦闘においては大きな隙となる。

 

体勢を立て直していたグランドキングからレーザーが放たれ、一直線にゼロへと突き進む。

 

『しまっ・・・!?』

 

反応が一瞬遅れたが、何とかバリアを形成し直撃だけは回避する。

 

『余所見をしている暇があるのか!!』

 

しかし、それはルギエルに対して無防備な背を晒す事に他ならない、放たれた閃光は違わずゼロの背を焼いた。

 

『ぐぁぁぁぁ・・・!!』

 

閃光に焼かれたゼロは大きく吹っ飛ばされ、八幡達の近くに叩き付けられる様に墜ちた。

 

『だ、大丈夫ですか・・・!?』

 

『あ、あぁ・・・!何とかな・・・!』

 

ギンガに起こされ、大丈夫だと返すが、先程までの余裕はその表情には無かった。

 

ギンガ達は兎も角、ゼロ自身の体力は今だ有り余るほどあり、これからもう一戦交えた所で何も問題は無い。

だが、出て来た時の、ルギエルの体勢が整い切る前にケリを着ける事が出来なかった。

 

これは言い換えてみれば、ギンガ達をこれ以上戦わせずに勢いで押し切る事が出来なくなった事に等しく、時間が経つにつれて此方が不利になる事を如実に表している様なモノだった。

 

『やっべー・・・、どうすっかなぁ・・・!!』

 

どうすればこの状況を打開できるか、彼等にその妙案が浮かぶはずも無かった。

 

「ぜ、ゼロ・・・!!俺も戦う・・・!!俺と融合しろぉ!!」

 

その時だった、血を吐く様な叫びと共に、一夏が立ち上がり彼等を睨む。

 

もうじっとしている場合では無い。

このままでは本当にこの世界は終わりを告げる。

 

そんな事はさせない、自分が落とし前を着ける。

その為に自分も再びウルトラマンとなり戦う、それが最善手だと・・・。

 

『そ、そんな・・・!無茶です先生・・・!!』

 

その表情から途轍もない覚悟を感じた八幡が、変身してはならないと制止をかける。

 

ファイブキング戦の傷や他の古傷が癒えぬままに戦い続け、大和達を庇い閃光を浴びたその身は最早ボロボロだと想像するのは容易かった。

 

いや、ボロボロなど最早生易しい、瀕死と形容するが正しい状態なのだ。

 

故に、これ以上一夏を戦わせてはならないと、彼等は感じてならなかったのだ。

 

『くははは・・・!見苦しいぞティガよ・・・!貴様は、最早終わった存在!!大人しく闇に沈めぇ!!』

 

だが、それを見逃すほどルギエルも愚鈍では無い、口から吐く閃光では無く、腕の爪から放つ光弾を、一夏目掛けて撃ち掛けた。

 

一撃一撃がそれでも致死のエネルギーを持っており、直撃を受ければそれこそただでは済まないと予感させるには十分すぎる程だった。

 

『ッ・・・!先生っ・・・!!』

 

その危険を察し、彩加は痛みに軋む身体に鞭打って跳躍、一夏の前に降り立ち、バリアウォールを展開してそれを防いだ。

 

だが、それも一進一退、力の大半を持っていかれた今のXの状態では、長くは持たないというのが事実だった。

 

他のウルトラマン達も、何とか援護に回りたい所だったが、最早力の大半が失われ、立つ事さえやっとなのだ。

 

最早、手の内様は無い、誰もがそう思っていた・・・。

 

『まだ終わってねぇぜ・・・!』

 

ゼロが立ち上がり、口もとの血を拭う様なしぐさを見せながらも笑った。

 

まだ終わってない、それなのに何を勝ち誇っているのか、そう言わんばかりの姿がそこにはあった。

 

『なに・・・!?』

 

『切り札ってヤツはなぁ・・・!最後まで取っておくもんなんだよ・・・!!』

 

言うが早いか、ゼロは右手の掌に小さな光を発生させ、それを掲げるかのように見せ付ける。

 

その光の中心には、一体のスパークドールズの存在があり、まるで自己主張するかの如く佇んでいる様にも見えた。

 

「それは・・・!」

 

『ま、まさか・・・!?』

 

それを認めた一夏とルギエルが驚愕の表情を揃って浮かべた。

 

その存在が何であるか、合点が行ったのだろう。

 

『一夏・・・!お前の力、ティガの力を持ってきたぜ!!』

 

その力の正体、ティガのスパークドールズを掲げ、彼は得意げに宣う。

 

やってやったぜこの野郎と謂わんばかりの勢いだったが、強ち間違いでもないだろう。

 

「お前・・・!なんで早く渡さねぇんだよ・・・!!」

 

そんなゼロの様子に苦笑しながらも、一夏は何とか足腰に力を入れて立つ。

 

どうでも良いから早く渡せと言わんばかりの様子から、彼の呆れが伝わってくる様だった。

 

それは、彼の覚悟も同時に伝えて来ていた。

 

『とっておきだっての・・・!そんなに言うんだったら、受け取りやがれ・・・!!』

 

一夏の覚悟を受け取って、ゼロはそれを渡そうと振りかぶった。

 

だが・・・。

 

『さ、させぬぅ・・・!!』

 

ティガを復活させてしまえば自身に勝利は無い事を理解しているのだろう、ルギエルは閃光を吐き、周囲にいたギンガ達諸ともゼロを撃った。

 

『うわぁぁっ・・・!?』

 

『おわっ・・・!?』

 

その威力は今までとは比べ物にならない程だったのだろう、ギンガ達は盛大に吹っ飛ばされていく。

その直撃を受けたゼロは、不意を突かれた事もあってか声をあげ、大きく吹っ飛ばされて地に倒れ伏す。

 

しかも運の悪い事に、彼の手からティガのスパークドールズが弾かれる様にして離れ、宙を舞う。

 

このままでは何処に行くかもわからず、最悪ルギエルに奪われる可能性もあった。

 

『し、しまったッ・・・!』

 

倒れ込んだゼロは自らの失態に歯がみしつつもそれを目で追った。

 

このまま見ているだけではいけない。

だが、それを防ぐ手立ては、もう・・・。

 

「ッ・・・!彩加ッ・・・!!俺をぶん投げろ!!」

 

その時だった、一夏がXに向かって叫ぶ。

 

自分を掴んで、スパークドールズ目掛けてぶん投げろと。

 

奪われる位なら、空中で受け止めてみせると言わんばかりの気迫だった。

 

『し、しかし・・・!!』

 

だがそのやり方は、人間に凄まじい負荷を掛ける事と同義である。

如何にウルトラマンであったとは言え、今は力を失ってる上に重傷を負っている一夏にその方法は酷であると感じているのだ。

 

故に、XはすぐにYESとは返せなかったのだ。

 

「良いからやれっ!!この世界、終わらせはせん・・・!!」

 

『はいっ・・・!!』

 

一夏の叫びに押され、彩加は彼を掴んで立ち上がる。

 

後は頼みます、そう言わんばかりの想いと共に、彼は一夏を優しく、だがそれでも強烈な勢いと共にぶん投げた。

 

「うぉぉぉぉぉ・・・!!」

 

遠ざかるティガのスパークドールズ目掛け、一夏はミサイルの様に突き進み、手を伸ばす。

 

「帰ってきやがれ・・・!ティガ・・・!テメェ散々人に迷惑掛けた癖に・・・!こんな所でトンズラ決めこんでんじゃねぇ・・・!!」

 

文句は星の数ほどある、だが、今はそんな事よりも自分の下へ帰って来い。

話はそれからだと言わんばかりに、怒声を上げた。

 

この世界を護れずして、一体何の力だと言うのだ。

もし、その力を振るえるならば、自分と共に在れと叫んでいたのだ。

 

その間にも一夏とそれの距離は縮まり、今にも手が届きそうになっていた。

 

『さ、させぬぅっ・・・!!』

 

まさかそのような手段に出て来るとは思ってもみなかった為に、呆気にとられていたルギエルだったが、そんな場合ではないと、すぐさま闇の波動を飛ばす。

 

それは球形でも波状でもない、闇のオーラの様なものではあったが、それは真っ直ぐ一夏を狙って突き進んで行く。

 

『ッ・・・!』

 

それに何か嫌な物を感じたか、彩加はすぐさまコスモスのカードを読み込ませ、技の使用に踏み切った。

 

『『コズミューム光線ッッ!!』』

 

慈愛と強さを内包した勇気の光線、コズミューム光線の奔流が迸り、それを防がんと急ぐ。

 

其々が交錯する直前、遂に一夏の手がティガを掴んだ。

 

「ティガーーーッ!!」

 

闇と光、そして、一夏の想いが交錯した時、見る者を圧倒する程の閃光が周囲を包んだのであった。

 

その瞬間、眩いばかりの光の柱が立ち上がり、その中に光の巨人の姿が現れた。

 

『ッ・・・!!』

 

『こ、これが・・・!?』

 

『これが、先生の・・・!』

 

見る者全てが、その姿に息を呑む。

 

赤、紫、そして銀の体色に纏う神性とも取れる雰囲気に、只々圧倒されるばかりだった。

 

『う、あぁ・・・!!』

 

ルギエルに至っては、それがどんな意味を持つか分かっているのだろう、恐怖に慄くばかりだった。

 

『へへっ・・・!戻ってきやがった・・・!!』

 

その姿に勝利を確信したゼロが歓喜の声をあげる。

長きに渡り、共に戦ってきた仲間の復活を、最強のウルトラマンの再臨に歓喜していた。

 

『ウルトラマンティガ・・・!!』

 

光の中から現れた巨人は、変身者の威厳をそのまま纏ったかのごとく力強く、その存在感を表していた。

 

だが、変身を完全に終えても、ティガは動かない。

 

まるで、何かを堪えるかのように微動だにしなかったのだ。

 

『どうした・・・!?一夏・・・!?』

 

何かがおかしい事に気付いたのだろう、ゼロが声を掛ける。

 

その異様さに八幡達も気付いたのだろう、気遣わしげに彼を見ていた。

 

そんな彼等の目の前で、事態は動く。

 

『う・・・!おぉぉぉぉ・・・!!』

 

突如として身を捩ったティガの身体を闇が包み込み、その体色を変えていく。

 

トリコロールに彩られていたその身体は黒に覆われて行き、遂には一切の光を感じさせない姿となった。

 

『ふ、ふははは・・・!遂に・・・!遂にやったぞ・・・!』

 

その姿を認め、ルギエルは勝ち誇った様な笑い声をあげる。

 

まるで、本当の望みが叶った。

そう言わんばかりに・・・。

 

『遂にその姿を見せたな・・・!ウルトラマンティガよ・・・!待っていた・・・!待っていたぞ・・・!!』

 

『ルギエル・・・!テメェ・・・!!』

 

その様子から何かを察したのか、ゼロが怒りに震える声をあげる。

 

だが、狂喜に染まるルギエルに、その怒りは届かない・・・。

 

『我が望みは潰えぬ!!最凶の戦士・・・!全ての光を闇に還す究極・・・!ティガダークの復活だッ・・・!!』

 

その哄笑は、新たな脅威を呼び込む鐘の音だったのだろうか・・・。

今まさに、悪夢が舞い降りようとしていた・・・。

 

sideout




次回予告

闇に負けない心、それさえも支配者の前では無力なのか。
希望は、永劫に失われてしまうのか・・。

次回やはり俺の青春にウルトラマンがいるのはまちがっている

織斑一夏は再臨する 後編

お楽しみに~。

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