やはり俺の青春にウルトラマンがいるのはまちがっている   作:ichika

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織斑一夏は再臨する 後編

noside

 

『ティガ・・・ダーク・・・!?』

 

一夏が変身したティガが姿を変えた存在、ティガダークの姿に、八幡達は驚愕と共に一体何が起きたのか理解するべく、視線を彷徨わせる。

 

何故こうなったのか。

一夏がスパークドールズを掴み、その力を取り戻した彼が、一度は真なるティガへと変身したはず。

 

だと言うのに、その姿は正に闇の巨人、一切の光を感じさせぬ、闇その物を纏っていた。

 

確かに一夏はその身体に光と闇、その両方を併せ持っていた。

どちらかに偏ることなく、その力を発揮し切れるのは彼の尋常ならざる力の賜物だと言える。

 

故に、幾ら傷付いていたとはいえ、その闇に喰われるはずなど無かったのだ。

 

しかし、現状はどうだ。

彼は一度は光の姿を取り戻しはした。

だが、それも一瞬の事、今は純粋な闇として目の前にいる。

 

一体なぜそうなった?

彼等は、少ない情報から必死に答えを弾き出そうと思考を巡らせたが、一向にその答えは出てくる筈も無かった。

 

『ふははは・・・!ティガダークの復活は、我が計画の内なのだ・・・!』

 

『なんだと・・・!?』

 

哄笑の様に嗤うルギエルの声に、八幡はどういう事だと問う。

 

何が計画の内なのか、その意味を問い質す為に。

 

『我が欲したのは、我が望みを遂行するに足る肉体ッ!!』

 

『テメェ・・・!よくもッ・・・!!』

 

計画が妨げられぬ様、何者も歯が立たぬ究極の肉体を手に入れる。

それが如何いう意味を持つか理解したゼロは、怒りの声をあげる。

 

ゼロは気付いてしまったのだ。

ルギエルは、自身の計画遂行の為に、一夏の身体を欲したのだと・・・。

 

『ウルトラマンティガ、いや、織斑一夏・・・!その者はかつては光の国の英雄たる者だった!』

 

何のつもりか、ルギエルは一夏の過去を語り始める。

それは、ルギエルがティガダークを求めた理由でもあった。

 

『だが、その者は手柄を上げれば上げる程に、ウルトラマン共から疎まれて行った・・・!当然だ、元人間がキングの寵愛を受け、誰よりも手柄を立てれば疎まれもしよう!』

 

『何が言いたい・・・!?』

 

その言葉に、八幡は苛立ちを募らせながらも問う。

一体何が言いたい、その言葉の真理、意味を見出せないがための叫びだった。

 

『分からぬか・・・!?出る杭は打たれる・・・!ただそれだけの事・・・!手柄を立て過ぎたが故に!ヤツは光の国から迫害されたのだ!!』

 

『なっ・・・!?ウルトラマンが、そんな事を・・・!?』

 

新たに突きつけられた、いや、薄々は分かっていた真実を前に、八幡達は固まった。

 

ただ独り、ゼロだけは悔し気に拳を握り締めていた。

知っていたのだ、彼等が迫害を受けた場面を、裏切られた時の彼等の様子を、そして、一夏が闇を手にした理由も・・・。

 

『故に、ヤツは憎しみから闇のパワーを得たのだ・・・!その憎しみは、やがて全てを呑み込む・・・!』

 

故に、ルギエルはその憎しみを元に湧き出る無限の闇を求めた。

 

それが有れば、誰も自分に歯向かう事は無い。

だからこそ、今の自分の肉体を捨て、その沸き上がる闇を持つ身体を使役出来たのならば、彼の望みは最早かなったも同然だった。

 

『ティガの、我に対する憎しみをより深くさせる為に、この世からティガの力を弾き出したのだ・・・!貴様等は、所詮我が手の内で踊っていたに過ぎんのだぁ・・・!!』

 

つまり、ティガダークの力を真に我がものとするためだけに、ルギエルはここまで回りくどい作戦を考えていたのだ。

 

織斑一夏と言う狂戦士の怒りと憎しみを募らせ、それを呑み込む算段を立てていた事となる。

 

それだけ、ティガダークの凄まじい力を欲していたと言う事だろうか・・・。

 

『さぁ行くのだ・・・!星をも殺した魔神・・・!ティガダークよ!!その力、今こそ示すのだ!!』

 

ルギエルは、これまでの怪獣達と同じ様にティガダークへと指示を出す。

完全に使役したつもりになっているのだろう、その声は自身の勝利を微塵も疑ってなどいなかった・・・。

 

『ウォォォォ・・・!!』

 

獣が吠えるかのような声は、聞く者の肌を粟立たせた。

 

悪魔、鬼、恐怖の対象となる言葉や存在は幾つもあったとしても、今のティガダークの纏う雰囲気は、そのどれもが矮小と言わざるを得ない程に強烈だった。

 

『せ、先生・・・!!』

 

『め、目を覚ましてください・・・!!』

 

ティガダークの殺気が自分達の方へと向けられていると悟った八幡達は、一夏に向けて声をあげる。

 

目を覚ましてくれ、貴方はそんな人では無い、と・・・。

 

だが、そんな声など届かぬと言わんばかりに、ティガダークは顔の真横辺りで拳を握り締め、一際強い殺気を飛ばす。

 

『ッ・・・!!』

 

来る・・・!!

そう思い、八幡達は腕を咄嗟に動かして防御態勢を取ろうとした。

 

だが・・・。

 

『えっ・・・?』

 

それより早く、ティガダークは彼等を通り過ぎていった。

 

その動きに気付く事すら出来ず、ただ茫然と立ち尽くしていた彼等がそれに気付いた時には、その行動自体が終わっていた。

 

『なっ・・・!?』

 

ギンガが振り向いた視線の先には、信じられない光景があった。

 

彼の驚愕の声に我に返ったウルトラマン達がその方角に向き直る。

それと同時に、彼等は我が目を疑った。

 

『ッ・・・!?』

 

彼等の目に飛び込んで来たのは、ティガダークの拳が、スーパーグランドキングの装甲を突き破り、深々と突き刺さっている光景だった。

 

『嘘だろ・・・!?』

 

長い間共に戦ってきたゼロでさえ、その光景は信じ難いものが有った。

 

確かに一夏のティガのパワーは凄まじいものが有った。

だが、それでも全宇宙で見てもこれ以上ない程の強度を誇るグランドキングの装甲を、拳の一撃で易々と打ち破れる程のパワーなど、これまで一度も見た事など無かったからだ。

 

信じられない場面に硬直する彼等の前で、事態は更に動く。

 

ティガダークの全身から闇のエネルギーが迸り、それが突き刺さった右腕へと集中していく。

 

まるで、迸るエネルギーをスーパーグランドキングの体内でスパークさせている、そんな印象を受けた。

 

それが正しいと証明でもするつもりなのだろうか、送り込まれるエネルギーを受け止めきれなくなったか、スーパーグランドキングの装甲が内側から膨れ上がり、遂にははじけ飛ぶようにして四散、その活動を完全に停止した。

 

『な、なんて力・・・!!これが、同じウルトラマンの力だとでも言うのか・・・!?』

 

その光景をまざまざと見せつけられたXは戦慄していた。

彼も、彩加と出会う前までは一人のウルトラマンとしてそれなりに戦いと言うモノを見て来た。

 

だが、そんなものなど意味を為さないまでに、ティガダークの力は想像を絶するモノだった。

 

『ふ・・・!ふははは・・・!!思った通り・・・!素晴らしい闇のパワー・・・!これぞ我が求めていた力・・・!!』

 

スーパーグランドキングを倒された事よりも、ティガダークの力が自分の想像をはるかに超えてきた事の歓びが勝っていたのだろう。

 

その声は、狂喜に打ち震えている様だった。

 

『これで見届けられる・・・!幸福に満ちた世界を・・・!その行く末を・・・!!』

 

『くっ・・・!!』

 

それは、ルギエルの計画通りに事が進んでいる、それを最早止める事など出来ないと、誰もが悟った瞬間でもあった・・・。

 

『さぁティガダークよ・・・!我がもとへ来るのだ・・・!!』

 

勝ち誇った声で、ルギエルはティガダークを呼び寄せる。

 

その身体をわがものとするために、織斑一夏と言う男を、完全に消し去るために・・・。

 

『せ、先生っ・・・!!』

 

『待って・・・!!』

 

八幡と沙希が、残された体力を振り絞って引き留めようと動くが、それよりも早くティガダークは大ジャンプ、一息でルギエルの下へと向かった。

 

その様子は、手塩にかけていた弟子の声ですら届いていない、そう彼等に伝えるには充分過ぎるモノだった・・・。

 

『よくぞ来た・・・!我が闇・・・!我が魂・・・!全てを受け取るのだ・・・!!』

 

自分の手が届くところに来たティガダークを掴もうと、ルギエルは身を屈め、その巨大化した手を伸ばす。

 

望みが叶う、ただその一心が現れている様だった。

 

その場にいる誰もが、それを止めることさえ出来ない。

ゼロでさえ、下手に動けばルギエルはおろか、ティガダークに瞬時に殺られると感じているのだろう、一瞬の隙を窺いながらも、それを見出せずに歯がみする以外なかった。

 

ルギエルの腕が、ティガダークを掴もうとした・・・、まさにその時だった。

 

突如として、ルギエルの視界からティガダークの姿が掻き消えた。

 

『なっ・・・!?』

 

驚愕するよりも早く、ルギエルは胸部、ウルトラマンでいうカラータイマーのある辺りに強烈な衝撃を感じ、大きく吹っ飛ばされている事に気付いた。

 

『ぬぉぉぉぉ・・・!?』

 

一体何が起こった・・・!?

それを理解する間も、受け身を取る事すら出来ないままに、地に叩き付けられた。

 

『え・・・?』

 

八幡達も、一体何が起こっているのか分からない様子だった。

ただ茫然と、それを見ている事しか出来なかった。

 

漸く理解出来たのは、ルギエルと向かい合っていたティガダークが、拳を突きだした状態でそこに居た、という事だけだった・・・。

 

『ふん、この俺も嘗められたモノだな・・・、こんな程度で俺は屈しない!!』

 

皆が見守る中、ティガダークが声を発する。

 

不遜、自らへの自信を感じさせる強い意志に満ちた声、それは、その力の真なる主のモノだった。

 

『せ、先生・・・?』

 

不安げに、だがそれでも、何処か確信を以て八幡は尋ねた。

 

貴方は織斑一夏か・・・?自分達を鍛えてくれた師か、と・・・。

 

『なに心配してやがる、俺がこんな程度でくたばるか。』

 

その心配を一蹴するかの如く、自身がそれだけ強いと物語るその姿勢は、間違いなく、アストレイの真なるリーダーにして、究極の力を持つ戦士、織斑一夏のモノだった。

 

『先生・・・!!』

 

『あのヤロ・・・!心配させやがって・・・!!』

 

彼の帰還に、弟子たちは声をあげて歓喜し、友人は笑みを浮かべながらもガッツポーズしていた。

 

待っていたぞ、そんな雰囲気が彼等からは喜びと共に伝わってくる様だった。

 

『き、貴様・・・!何故我が闇を受けて・・・!?今の貴様では、逃れ得ぬ闇をぶつけたと言うのに・・・!?』

 

何故貴様が此処に居る、そう言わんばかりに叫びながらも、ルギエルは何とか体勢を立て直す。

 

有り得ない、理解出来ない、そんな困惑が透けて見える様だった。

 

『何故?簡単な事だ、貴様程度の闇に支配される程、俺の中の闇は鈍らじゃないて事だ!!』

 

判らないかとせせら笑う様に、彼は拳を握り締めながらも叫んだ。

 

お前如きに支配される程、自分は弱っても無いし折れてもいないと。

 

『闇の力をフルパワーで使えるのはほんの一瞬なんだ、その間にグランドキングだけはぶっ殺しておきたかったんだ、だまして悪かったな。』

 

『ぐっ・・・!!』

 

煽る様な一夏の言葉に、ルギエルは怒り心頭と言わんばかりに地団駄を踏む以外に無かった。

 

利用しているつもりでいたが、それさえも打ち破ってしまう狂戦士の、その理不尽なまでの強さに憤慨していたのだ。

 

『尤も?彩加の手助けが無かったらヤバかったがな、ま、今回は俺の悪運が勝ったってこった。』

 

だが、それでもギリギリ危なかったのも事実であり、Xが放ったコズミューム光線が無ければどうなっていたかは分からなかった。

 

しかし、それでも理性を確固たるものとし、敵を欺けたのは一夏の精神力の強さがモノを言っていたのだ。

 

『へへっ・・・!俺まで騙されちまったじゃねぇか・・・!イイ趣味してやがるぜこの野郎・・・!』

 

『お前は昔っからこういうのには弱かったな、ま、もっと勉強しろってこった。』

 

騙されたぜこの野郎と言わんばかりに、近寄りながらも肩を叩くゼロに、一夏は苦笑しつつもまだまだ青いと返す。

 

彼にとって、身内以外との騙し騙されなど既に茶飯事になっている事だ、取り立ててどうこうする程では無かったが、若いゼロにはそこまで染まれていないと言うのが事実だった。

 

『だが、お前の力は信用している、いつも通り手を貸せ、ゼロ。』

 

『へへっ!おうよ!!』

 

ダチから手を貸せと言われれば断れないだろと、ゼロは笑いながらもティガダークの隣で構えを取った。

 

『おのれ・・・!!何処までも足掻きおって・・・!良かろう・・・!貴様等は、我が幸福の箱庭には不要だ・・・!消し去ってくれよう・・・!!』

 

最早自分の幸福を押し付ける事よりも、身の危険を振り払うと言う事へ思考がシフトしているのだろう、ルギエルは余裕の無い声で叫ぶ。

 

形振りなど構っていられない。

何が何でも勝たねばならない、そんな強迫観念にも似た何かがあった。

 

『押し付けようとしておいて、負けそうになった途端に排除に動き出すとは・・・、全く情けない・・・!』

 

だが、その往生際の悪さは、ある意味でストレートな一夏の生き方からしてみれば、鼻で笑いたくなるようなモノだった。

 

『八幡、なるべく体力を回復させておけ、〆はお前達に任せる。』

 

八幡達に声を掛けつつ、彼は大きく息を吐き、構えを取った。

 

ここで本当に終わらせる、自分一人では無く、仲間と、弟子と共に・・・。

その意思が、彼の姿勢からは窺う事が出来た。

 

『行くぜ・・・!これで本当のエンドマークだ!!』

 

今、真なる最終決戦の火蓋が、切って落とされたのであった・・・。

 

sideout

 

 




次回予告

闇から帰還した一夏は、ゼロと共に闇へと挑んで行く。
弟子たちの未来を護るため、そして、その道へと進ませてやるために・・・。

次回やはり俺の青春にウルトラマンがいるのはまちがっている

織斑一夏は取り戻す

お楽しみに

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