やはり俺の青春にウルトラマンがいるのはまちがっている 作:ichika
noside
『行くぞ!!』
ティガに変身する一夏の掛け声とともに、15のウルトラマン達が一斉にルギエルめがけて迫っていく。
乱れ舞う様に、だが、一つの意志の下、怒涛の勢いで向かってくるその姿は、まさに恐怖以外の何物でもなかった、
『う・・・!お、おのれ・・・!』
恐れていた事態が起きたと、ルギエルは恐怖に染まりきった、声にもならぬ咆哮をあげて、彼らの接近を阻もうと光弾や波動を撃ち掛ける。
『ゼロ!!』
『おぉ!!』
だが、それを阻むかのようにマックスとゼロが前に先行しつつ、頭部よりマクシウムソードとゼロスラッガーを放ち、それらすべてを切り裂いて無効化していく。
そのすべてが正確無比、一つの撃ち漏らしも無いままにルギエルへと襲い掛かる。
『うぉぉぉぉ・・・!?』
『こっちにもいるわよ!!』
スラッガーの乱舞に圧倒されるルギエルに、ダイナが飛び出して殴りかかる。
変身者の玲奈自身が、光線技よりも肉弾戦を得意としているためか、その勢いはとどまるところを知らず、ルギエルの顔面に強烈なパンチを叩き付けた。
『ぬぉぉぉぉ・・・!!』
堪らず踉くルギエルだったが、これで攻撃が終わりではない事など、その場にいる誰の目にも明らかだった。
『行くぞゼノン!!』
『はいっ!!』
追撃の手を休めることなく、ネクサスはゼノンと共に跳ぶ。
『シュトロームソード!!』
『ギャラクシーソードッ!!』
二振りの光の刃が奔り、ルギエルの胸部を抉るように切り裂いていく。
『がぁぁぁ・・・!!』
絶叫と共に血飛沫をまき散らしてのたうちまわっていた。
強烈な斬撃に、傷ついたその身体では耐えられなかったのだろう、相当なダメージを受けているのが窺えた。
『ま、まだだ・・・!まだ負けてはおらぬ・・・!!』
だが、それでも負けられないと、ルギエルは立ち上がろうとしていた。
負けていない、負けてなどいられない。
そんな、最早後の無い状況の者が発する気迫を醸し出しているようだった。
だが、それを理解していても、もう止まらない者たちがいるのもまた必然であった。
『行くよ大志君!!』
『はい!!』
メビウスの掛け声と共に跳びあがったヒカリが、急降下しながらも蹴りを叩き込む
二体のウルトラマンの強烈な蹴りは、ルギエルの体をさらに押し込み、地に倒した。
『ぐぉぉぉ・・・!?』
『今です!』
『はいっ!!』
その隙を見逃さず、コスモスとジャスティスが動く。
最強の合体光線、クロスパーフェクションを放つための動作へと入っていく。
『ぐ…!させぬぅぅ!!』
それを撃たせてなるものかと、ルギエルは倒れ込みつつも閃光を吐き、コスモスとジャスティスめがけて撃ち掛けた。
『『ッ・・・!』』
自分たちが狙われた事と分かっても、彼女たちはその動きを止めることは無かった。
簡単なことだ、自分たちがその力を上回る力をぶつけて打ち勝てば良い。
閃光が彼女たちを捉えそうになった刹那、クロスした最強の光線が二体のウルトラマンより放たれた。
それは閃光と拮抗し、徐々に、だが確実に押し戻していく様が窺えた。
『ぬぅぉぉぉ!?』
押されている事に驚きながらも、それでも負けぬとルギエルは力を込めていく。
闇の力を増した閃光は、徐々にだがクロスパーフェクションの光条に拮抗し、さらに押し返そうと勢いを強めていく。
流石に闇を取り込み、力を増しただけはある。
いかに歴戦の猛者が加わっていたところで、ほぼ互角、いや、死力を尽くしている分、上回っているとさえ言えるだろう。
だが、どれほど強くともそれは所詮、一つの個が出せる力の分でしかない。
『なら、これでどうだ!!』
『ザナディウム光線!!』
その光条に加わるかのように、Xも並び立ち、必殺のザナディウム光線を交わらせた。
その光条は一気に力を、勢いを増して閃光を押し返していく。
『な、なにぃぃ…!?』
『『『いっけぇぇぇ!!』』』
三人の叫びと共に光条は勢いを更に強め、ついにルギエルの口部を撃ち抜く形となった。
『ぬぉぉぉぉ・・・!!』
あまりに強烈なダメージに、ルギエルは口部からも出血しながらも叫ぶ。
その度に、大量の血が地面に落ち、血だまりを作った。
あまりにも凄惨な光景に、それを見ている者達は目を逸らすか覆うかして、それを見ない様にしているようだった。
だが、ウルトラマン達は動じることは無い。
何せ、戦うと決めた時から覚悟は決めていた。
『ルギエル、分かったか・・・?お前が勝てない理由が、その意味が!!』
『なんだとぉぉ・・・!?』
一夏の言葉に、ルギエルはその真意を理解したか、やめろと言わんばかりの声で咆える。
自分の何を見透かしている。
ルギエルが真に恐れているものを見透かすような声に、その神経はかき回されていく一方だった。
『お前は強い、だが、それは所詮、自分一人きりの強さでしかない!』
それを見透かし、煽りつつも彼は叫ぶ。
お前は所詮一人でしかない。
自分達とは違い、周りに誰もいない。
いるのは、操り人形にしかならぬスパークドールズのみ・・・。
『だまれ・・・!』
『俺たちのように、誰かと力を合わせれば、お前が想像する以上の力を引き出せる!』
遮ろうとするルギエルの叫びを無視し、彼は続ける。
自分が強いのは、誰かが傍らにいるからだと、その誰かと手を携える事で、その力は何倍にもなると。
『一人きりの強さなんて、いつか必ず打ち砕かれる運命なんだよ!貴様がどれだけ力を振り絞ろうと!俺達はそのはるか上を行く!!』
金色の光を完全に開放し、いつでも最強の光線を放てると言わんばかりだったティガだが、ふと何かを思いついたか、その光をギンガに譲り渡す。
『先生・・・?』
その意味が理解できなかったか、八幡は師に意味を求めて目を向ける。
ティガはグリッターの金色を解いた姿、マルチタイプに戻っており、先ほどまでの圧倒的な力を表面的に感じることは無かった。
『君にすべて任せる、露払いは俺たちが引き受ける、心置きなくやれ!』
この世界を護るのは、自分たちアストレイではない。
この世界に生きる、お前達がケリを着けて、また新しい一歩を踏み出せ。
彼は、そう伝えたかったのだろうか・・・。
『はい・・・!』
本当ならば、自分がケリを着けたかったのは八幡も同じだった。
それを譲られたからには、必ずやり遂げてみせる。
そんな決意の炎が、彼の瞳の奥では燃え盛っているようだった。
『皆・・・!皆さん・・・!!俺に力を貸してくれ!!この世界を、あんな奴の好き勝手にはさせねぇ!!』
仲間たちに、師達に、自分に力を貸してくれと彼は頼んだ。
誰かと手を携え、この世界の危機を撥ね退ける。
それが、今の彼が思う、強さの形の一つだった。
『任せて!!』
それに一番に返したのは、隣にいたビクトリーに変身する沙希だった。
愛する人の一番の助けとなりたい、彼女が八幡といたいと思った時から抱く想い、愛の強さだった。
『任せておけ!』
『俺達も手伝うべ!!』
コートニーと翔も、やってやるぜと返す。
自分たちがやることは敵を倒すこと、それを果たせるならば、手を貸すことなどたやすいものだった。
『私達も参りますわよ!!』
『はいっ!!』
セシリアの掛け声に、他の者達も勇んで応じ、各々の光線技の構えに入っていく。
これが最後の一撃になる。
ここで力を使い果たしても、必ず倒す。
その強い意志が、彼らの想いを一つとしたのだ。
『コスモストライク!!』
『ダクリューム光線!!』
『オーバーレイ・シュトローム!!』
『ソルジェント光線!!』
コスモス、ジャスティス、ネクサス、ダイナの四人からそれぞれの力を込めた光線が放たれ、ルギエルの胸部に殺到する。
『ぐ、ぬぅぅ・・・!!』
それを浴び続けながらも、ルギエルは彼らを薙ぎ払おうと歩みを進める。
その程度では負けぬ。
ルギエルにも、意地があった・・・。
だが・・・。
『行くよ大志君!!』
『小町ちゃん!合わせて!!』
『『はいっ!!』』
メビウスとガイアに促されたヒカリとアグルが、師の技に合わせるために動く。
一つの技では及ばないかもしれない。
だが、合わせれば必ずその力は何倍にもなるのだ。
『『メビュームナイトシュートッ!!』』
『『ダブルストリームクラッシャー!!』』
二筋の合体光線がルギエルの首に突き刺さる様に放たれる。
威力は凄まじく、ルギエルの歩みを押し留め、押し返さんばかりだった。
『おぉぉぉ・・・!?』
『俺達も負けてられないな・・・!翔君!!』
『はいっ!宗吾さん!!』
唸るルギエルに対して、この勢いに遅れて堪るかと、マックスとゼノンのコンビも動く。
ルギエルの足元に滑り込みつつ、マックスギャラクシー、ゼノンギャラクシーを呼び寄せ、その腕に装着、すぐさま技の体勢に入った。
『『ダブルギャラクシーカノンッ!!』』
ギャラクシーカノン二つ分のエネルギーが真下から放たれた事で、それまでぶつけられていたエネルギーも相まって、150mを優に超えるルギエルの巨体を上空へと打ち上げていく。
『う、うぉぉぉぉ・・・!!』
そうなれば、空を飛べるわけでも無いその巨体では逃れる事さえ出来ないのだろうか、ルギエルは光線の奔流から逃れようと躍起になっていた。
『ゼロ!!』
『おっしゃぁ!!』
それだけでは終わらせないと、ティガとゼロも光線の体勢に入る。
ティガは腕を一旦胸の前で交差させ、ゆっくりとエネルギーを迸らせながら開いて行く。
ゼロは胸のカラータイマーの両サイドにスラッガーを装着、エネルギーをどんどん膨れ上がらせていく。
『ゼぺリオン光線!!』
『ゼロツインシュートォォォ!!』
絶大な威力を誇る二筋の光線が迸り、ルギエルの腹に突き刺さってその巨体を空、いや、その遥か先、成層圏の向こうへと運んで行く。
『ぐ、あぁぁぁ・・・!負けて、なるものかぁぁ・・・!我は・・・!我はッ・・・・!!』
宇宙へ押し出されてもなお、ルギエルは抗おうとしていた。
負けてなるモノかと。
自分の理想を叶える為に、こんな所で消える訳にはいかないと・・・。
『今だッ!ウルトラマンギンガァ!!』
『はいっ!!』
師の声を受け、金色の光を纏ったギンガは、手を携えたビクトリーとXと共に、ルギエルを追って宙へと駆けあがって行く。
その勢いは凄まじく、わずか20秒に満たない時間でルギエルを目視できる距離、成層圏へと到達した。
『沙希・・・!彩加・・・!行こうぜ・・・!俺達の・・・!!』
『うん・・・!あたし達の・・・!!』
『明日へ・・・!!』
繋がれた手からグリッターの光がビクトリーとXにも流れ込み、その身体を金色に輝かせた。
それは、明日へ生きるという、彼等の抱く希望の光そのものだった。
『ま、負けぬぅ・・・!!我は、闇の支配者なるぞぉぉぉ・・・!!』
意味を為さない絶叫と共に、ルギエルは最後の一撃と言わんばかりに、これまで以上のエネルギーを持った閃光を吐き出す。
地球ごと消し去ってやる。
最早幸福などどうでも良いと言わんばかりの、自分が敗北しない為だけの力を振るっていた。
だが・・・。
『『『おぉぉぉぉ!!』』』
三人の光はそれを真正面から受け止め、掻き消しながらもその奔流の中を一直線に進んで行く。
『何故・・・!?何故お前達は折れぬ・・・!?何故・・・!?我は、勝てぬのだぁぁ・・・!!』
掻き消される閃光を見つつ抵抗していたルギエルは、自問自答するかのように叫ぶ。
何故、ウルトラマン如きちっぽけな存在に負けるのか。
何故、人間という闇を抱えた脆弱な者共に敗れるのか・・・。
何故、自分は・・・。
『お前は一人だ・・・!誰かと繋がれる喜びを知らないんだ・・・!!』
その問いに答える様に、八幡は声の限り叫んだ。
お前が勝てないのは、一人だからだと。
八幡自身、どれだけ強くなろうとも、自分はちっぽけで弱いと解っている。
だから、隣にいてくれる誰かと共に歩み、一人の力では成し得ない力を出せる。
これが何と幸せな事だろうか。
彼は、この一年の間に起きた、温かい心を持つ者達との邂逅で、その幸せを、歓びを知った。
だから、ウルトラマンに、超人となったキッカケは同じだったとしても、その方向を違えたルギエルとは真逆だと、そう言い切れる自信があった。
『その喜びが、俺を強くしてくれたんだ!!』
『だ、黙れぇぇぇ!!』
八幡の言葉に、誰かと繋がれなかった虚無と共に、ただ滅ぼすだけの閃光を吐く以外なかった。
『『『これで最後だ!!』』』
それを物ともせず、本物の絆で結ばれた3人のウルトラマンは金色の光を纏い、一気に速度を上げ、強烈な光のエネルギーを纏った拳を同時に突き出した。
『『『ウルトラグリッターストライクッ!!』』』
『ぬぉ・・・!?』
一気に光となったその拳は、ルギエルの胸に突き刺さり、一気に貫通して背後へと突き抜けた。
『やめろ・・・!嫌だ・・・!我は・・・!掴めぬのか・・・!?』
明らかな致命傷を負ったルギエルは、何故勝てないのか、何故自分は幸福を掴めないのかと、その手を伸ばした。
如何に大きくなったその腕でも、彼は何も掴む事は出来なかった。
『お前は・・・、たった一つ間違えただけなんだ・・・、誰かを信じられなかった、ただ、それだけ・・・!』
だが、八幡はその手を取った。
自分とルギエルの違いが、誰かを信じられたか否か、という違いしかない事に気付いていたから。
最後の最後まで、拒絶するのは寂しい事じゃないかと、彼はそう言っている様にも聞こえた。
『だからよ・・・!!今度は・・・!一人でも愛し合えるヤツを見付けられる奴に生まれ変わって来いよ・・・!!』
だから、生まれ変わったら仲間になろう。
誰かを愛し、その誰かを護り合える様な、本物と言う存在に・・・。
『我は・・・、俺は・・・、そうか・・・、そうだったのか・・・。』
闇として消えゆく最中、彼は何を見たのか・・・。
その表情はとても安らかで、それでも、後悔だけが浮かぶモノだった・・・。
ルギエルの身体が崩れ、核となっていたダークスパークも、まるで霧が晴れるかの如く闇となって宇宙に散って行った・・・。
『・・・、あばよ・・・。』
それを見送り、八幡は俯いて小さく呟いていた。
自分の事の様に、痛みを抱えながらも・・・。
こうして、光と闇の戦い、大決戦の夜から続いた長い闘いは、一つの幕を降ろしたのであった・・・。
sideout
次回予告
遂に闘いの終わりが訪れ、彼等にも安息が齎されていた。
だが、それは、別れを意味するもの以外の何物でもなかったのだ・・・。
次回やはり俺の青春にウルトラマンがいるのはまちがっている
織斑一夏は決断する
お楽しみに