やはり俺の青春にウルトラマンがいるのはまちがっている   作:ichika

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比企谷八幡は瞠目する

noside

 

『なんだ・・・!?これは・・・!?』

 

光の巨人、ウルトラマンギンガとなった八幡は、目の前に聳えるそれに対し、愕然と呟くしかなかった。

 

八幡達はそれぞれウルトラマンに変身し、それを取り囲むように滞空していたが、対面にいるはずの仲間を目視することが出来ぬほど、視界を覆いつくされたそれにただただ圧倒されるばかりだった。

 

身長50mを超えるウルトラマンの身長よりも更に巨大で、成層圏をぶち破らんと聳えるそれは、最早圧倒的な威圧感と共にそこに存在していた。

 

それは、超巨大な城、それも中世ヨーロッパでの城や、創作物の中で描かれたドラキュラ城を彷彿とさせる造りのモノ、としか形容できない見てくれながらも、この世のものではない様な異質さを持っていた。

 

『こんなデカブツ・・・、いったい何処から・・・!?』

 

沙希が口にした疑問は、その場にいた全員が感じる疑問だったに違いない。

 

この地球のモノではない事は一目瞭然、彼らの経験上、見たこともない規模の存在だった。

 

『どうするし・・・!?壊す・・・!?』

 

だが、このままではよくないことが起こると勘が告げている。

優美子が変身するジャスティスが攻撃するかどうか問いかける。

 

邪悪なものか、それともただ紛れ込んだ異物かどうかは判断しかねるところだが、何か起きてからでは遅いのも事実。

 

リーダーである八幡は、この巨大な城をどうすべきか、その決断を下せずにいた。

 

迷い込んだだけの、友好的な相手がいるかもしれない。

 

そう考えると、彼は攻撃するという手を選べなかったのだ。

 

だが・・・。

 

『ッ・・・!?』

 

そんな彼らの頭上から、途轍もない数の光弾がばら撒かれるように降り注ぐ。

 

『うわぁぁぁ!?』

 

全員がその近くにいたことが災いし、その光弾を躱す事さえ出来ずに直撃を食らう。

 

一発一発は大したことのない威力だろうが、数が数だ、すべてを躱し防ぐ事は不可能だった。

 

『ぐぁっ・・・!!』

 

『あぁッ・・・!!』

 

勢いを殺しきることが出来ず、七人は地に叩きつけられ呻く。

この程度の痛みには最早慣れ切っているのだが、食らいたくないというのもまた事実。

 

だが、同時に確信も得た。

 

この城は、いや、この城にいる奴は敵だと・・・。

 

『やってくれるぜ・・・!』

 

何とか立ち上がりながらも、彼は上等だと言わんばかりに拳を握りしめる。

 

そっちがその気なら、こっちもやってやると。

 

『これでも食らえ・・・!ギンガサンダーボルトォッ!!』

 

天に掲げた右腕に雷が集まり、それを放つ技、ギンガサンダーボルト。

八幡が十八番とする技で有り、それなりに自信を持つ光線であった。

 

ウルトラマンになってから二年が経とうとする彼の技は、弛まぬ鍛錬の成果もあって、当初よりもその威力を増して、己が敵を粉砕すべく突き進むのだ。

 

眼前に聳える城へ、雷のエネルギーは一直線に突き進み、ついにはその距離をゼロに縮めようとした。

 

正にその時だった。

 

『がぁぁ!!』

 

城から飛び出した何かがその間に割り込み、その雷をあっさりと受け止め、、数瞬の拮抗もなく霧散させた。

 

『な、なんだ・・・!?』

 

自慢の技が掻き消された事に驚きを隠せないのか、八幡は愕然と声を上げ、硬直する。

 

そんな彼の目の前に、その何かは勢いよく降り立ち、盛大に土埃と瓦礫を巻き上げた。

 

『人の城を壊そうとするとは無粋な奴らだ!』

 

如何にも不愉快と言わんばかりに言い放つは、金色の体表と、翼の様にも見える突起物を背負う、魔人だった。

 

口元は身体の左右に垂れるマフラーのようなもので覆われている為に、正確な表情までは分からなかったが、声の調子から察するに、自分の居城を攻撃されたことを快く思っていない事は明白だった。

 

『先に攻撃しといてよく言うぜ・・・!お前は誰だ・・・!?』

 

警戒心を露わにしながらも構え、八幡は何者だと問い質す。

 

攻撃をあっさり跳ね除けてしまうその強さに、並の手合いではないと察したのだ。

 

それは、沙希たちも同様だった。

皆、いつでも戦闘に移れるよう構え、その瞬間に備えている様だった。

 

『誰だと聞かれたならば、答えてやるが世の情け!我が名はエタルガー!!ウルトラマンを滅ぼす、超時空の魔人!!』

 

『なんだと・・・!?』

 

その魔人、エタルガーが放った言葉に、七人のウルトラマンたちは一斉に警戒レベルを、各々が持つ最大限へと引き上げた。

 

ウルトラマンを滅ぼす。

それは、自分たちを討ち取る、殺すと宣言しているようなものだ。

 

はいそうですかと受け入れるわけにはいかない。

殺されてたまるかと言わんばかりに、彼らは構えを取る。

 

七人のウルトラマンがそれぞれ構え、その脅威に立ち向かう覚悟を見せた。

 

『掛かってくるがいい!ウルトラマン共よ!血祭りにあげてやる!!』

 

深紅のマフラーを靡かせ、エタルガーは挑発するように手招きする。

 

貴様らに攻撃の機会を与えてやる、そういわんばかりの態度だった。

 

『上等だべ!!』

 

『これでもあーし等、強いかんね!!』

 

真っ先に飛び出したのは、スピード戦法を得意とするゼノンと、パワーファイトに重きを置くジャスティスだった。

 

ムエタイなどに見受けられるアクロバティックの体術から繰り出される蹴り技で、ゼノンは金色の魔人へと攻め立てる。

その速さは一年前の、覚醒した当初とは比べ物にならぬ速さと切れが在り、翔自身の成長を伺わせた。

 

だが、エタルガーは身を逸らし、または受け流すことでそれらをすべて躱し、逆にカンターとして蹴りを食らわせて、ゼノンを大きく吹っ飛ばした。

 

この程度のスピードの蹴りなど取るに足らない、そういわんばかりだった。

 

『ぐっ・・・!くっそ・・・!当たんねーッ!!』

 

『ならあーしが!!』

 

攻撃が当たらぬと苛立つ翔を下がらせ、優美子が変身するジャスティスは猛然と突っ込んでいく。

 

スピードで通じぬなら、真っ向から力で押し切ればいい、そう考えての吶喊だった。

 

『どぉおりゃぁぁ!!』

 

『ふんっ!』

 

裂帛した突き出される拳を、エタルガーは容易く受け止めるが、それだけで往なされるほど、ジャスティスはヤワではなかった。

 

すぐさま体勢を整え、フリーにしていた左手も握り込み、顔面を捉えんと拳を突き出す。

 

だが、其れも織り込み済みだったか、エタルガーはそれさえもあっさりと受け止め、軽くひねり上げるついでに回転を付けてジャスティスを吹っ飛ばした。

 

『きゃぁっ・・・!?』

 

『優美子さん・・・!!』

 

『今助けます!!』

 

窮地に立たされるジャスティスを救うべく、ヒカリとアグルが動く。

 

二人とも、光の剣を展開し、金色の魔人へと斬りかかる。

その切れ味は最早語るに及ばず、コンビネーションプレイも相まって、切り裂けぬものなしとさえ思われるほどだった。

 

上段、下段、突き、袈裟斬り、あらゆる角度から連続して斬りかかり、時折蹴りや拳も織り交ぜるが、エタルガーはマフラーを靡かせる余裕を持ったまま、その剣戟を躱し続ける。

 

『なんて身の熟し・・・!!』

 

『全然当たらない・・・!?』

 

攻撃が当たらない事に驚愕しながらも、彼らは攻撃の手を緩める事はなかった。

 

止まれば、どうなるか分かったものではないという、本能から差し迫った恐怖があったのだろう。

 

『小賢しいぃ!!』

 

嵐の如き剣戟を掻い潜り、エタルガーはヒカリとアグルの首を掴み、軽々と宙に持ち上げてしまう。

 

その力、そのパワーには誰もが驚愕を禁じえなかった。

 

『くたばれっ!!』

 

誰が止める間もなく、エタルガーは二体のウルトラマンを地に叩きつけ、追撃と言わんばかりに闇の波動を叩き付けた。

 

『ぐぁぁぁ・・・!!』

 

『きゃぁぁッ・・・!!』

 

その尋常でない力を前に、大志と小町は受け身を取ることすらままならずに吹っ飛ばされ、ビルに叩き付けられるようにして倒れ込んだ。

 

『大志・・・!小町・・・!!』

 

『ヤロォ・・・!!よくもやりやがったな!!』

 

『今度は僕たちが相手だ!!』

 

弟妹、仲間をやられた事に激高し、強化形態を持つギンガ、ビクトリー、そしてXがその姿を変え、金色の魔人へと突っ走っていく。

 

ギンガストリウム、ビクトリーナイト、そしてエクシードX、現時点でこの地球に残る最強戦力である。

 

力のギンガ、速さのビクトリー、技のXとして、この一年間、更なる修練を積んできたのだ。

 

『強そうな奴らが来たな・・・!いいだろう、掛かってこい・・・!!』

 

八幡達を強敵と見たのか、エタルガーは今までの様な受け身をやめて、しっかりと構えのようなものを取り、猛然と距離を詰める。

 

『ショオゥラッ!!』

 

『がぁぁ!!』

 

まったく同時に繰り出されたギンガとエタルガーの拳がぶつかり、力と力による強烈なソニックブームが周囲を襲う。

 

その凄まじさたるや、倒壊しかけていた周囲のビルや建造物をその衝撃で破壊していく。

 

『ほう?やはりやるな!だが、この程度!!』

 

『がっ・・!?』

 

拮抗状態から一瞬で抜け出し、ギンガの腕をホールド、至近距離からの蹴りを胴に叩き込む。

 

その威力は、衝撃を逃すことのできないギンガの全身に伝播し、余すことなくダメージを与えた。

 

あまりの威力に呻くが、腕をホールドされている為に抜け出すことが出来ずにいた。

 

ビクトリーとXが死角から攻撃しようと動くが、それを察したエタルガーはギンガを盾にするように動き、その剣戟を鈍らせていた。

 

迂闊に味方を巻き込むわけにはいかない。

そんな彼らの友情、意識を利用した手だった。

 

だが、捉えられているという事、それは八幡もエタルガーを間合いに捉えていると同義だった。

 

『くっ・・・!なら、これでも食らいやがれ・・・!!』

 

しっかりとエタルガーを抑え込みつつ、クリスタルを紅に輝かせる。

 

それは、ギンガが持つ必殺技の一つが発動する証左だった。

 

『ギンガファイヤーボールッ!!』

 

火炎を纏う弾丸が無数に放たれ、そのすべてがエタルガーに襲い掛かる。

 

そのすべてが直撃し、硝煙を巻き上げた。

 

並みの怪獣なら最早爆散していても可笑しくのない威力だ、至近距離から受ければ堪ったものではない。

その筈だった。

 

『なんだぁ?その攻撃は?』

 

それが晴れた時、そこにいたのはただただ悠然と立つ、金色の魔人の姿があった。

 

『む、無傷・・・!?』

 

『があぁッ!!』

 

自慢の一撃が全く意味をなさなかった事に愕然とする八幡の、その隙を突くように、魔爪がギンガの首を締め上げる。

 

『がっ・・・!?』」

 

『八幡ッ・・・!放せ・・・!!』

 

恋人の危機に、ナイトティンバーをソードモードに切り替えたビクトリーナイトが迫る。

 

アクロバティックな身体の捻りを加えた斬撃を叩き付ける。

 

だが、エタルガーはそれがどうしたと言わんばかりに打ち払い、ビクトリーを一蹴する。

 

『どうした?貴様らの力はこの程度かぁ?』

 

『くっ・・・!!』

 

嘲笑うエタルガーに対し、ビクトリーナイトはナイトティンバーを3回ポンプアクションして繰り出す大技、ナイトビクトリウムシュートを放つ。

 

『小賢しいわ!!』

 

『なッ・・・!?』

 

ギンガを拘束していない腕を翳すだけで、その凄まじい威力の光線をあっさりと受け止め、掻き消してしまった。

 

苦し紛れとはいえ、大火力光線が防がれた事に、沙希もまた、驚きを隠せずに硬直する以外なかった。

 

『こいつもお前も弱いな!くだらん!!』

 

『がっ・・・!?」

 

ギンガをビクトリーに向かって放り投げながらも、エタルガーは追撃と言わんばかりに光弾をいくつも放ち、ギンガを狙い撃つ。

 

それを防ぐことが出来ず、ギンガは大きく吹っ飛ばされ、受け止め損ねたビクトリーもろとも倒れ込んだ。

 

『八幡!沙希ちゃん・・・!!』

 

『よくもッ・・・!!』

 

激高し、エクスラッガーを展開したXが斬りかかっていくが、エタルガーは軽やかにそれを回避し続ける。

 

単調な太刀筋にあたるはずもない、そう言わんばかりだった。

 

『ハッハッハッ!闇の支配者を滅ぼした者達と聞いてきたが、とんだ期待外れだな!!』

 

『何をッ!?』

 

挑発するような言葉に、彩加はさらにいきり立つ。

考える間もなく、エクスラッガーのスライドパネルに指を二度走らせ、必殺の剣技、エクシードスラッシュを見舞う。

 

虹色に輝く無数の剣戟が叩き付けられるが、それを物ともせず、エタルガーはむしろ、エックスの腕を直接掴み、その剣を止めた。

 

『貴様らごときの腕で、この俺がやれると思うなぁ!!』

 

『うわぁぁぁっ!!』

 

闇の波動を纏った拳が、エックスの胴に叩き付けられる。

 

その威力に耐え切れずに,Xは大きく吹っ飛ばされギンガたちのそばに背中から叩き付けられた。

 

強すぎる。

 

七人のウルトラマンが同時に挑んでも傷一つ付ける事さえ叶わない、その圧倒的な耐久力に戦慄する他なかったのだ。

 

だが、自分たちが敵わないと分かっていても、逃げ出すことなど出来ない。

護るべきものが、護らなければならない者達が、この世界にはいるのだから。

 

だがから、彼らは無理をしてでも、何としてでも立ち上がる。

この脅威を、自分たちの世界から退けるためにも。

 

『ほう?まだ向かってくるか・・・?貴様らも奴らと同じく、愚かだな!!』

 

『黙れ・・・!俺達は約束したんだ・・・!この世界を、俺達が切り拓いていくと・・・!!』

 

自分たちを鍛えてくれた師との誓いを護るためにも、立ち上がらねばならない。

 

何時か追いつき、肩を並べるためにも、こんなところで躓く訳にはいかないのだ。

 

『クックック・・・!ハーッハッハッハッ!!』

 

だが、それを嘲笑うかのように、エタルガーは哄笑をあげ、痛快だと言わんばかりに天を仰ぐ。

 

愚かしい、実に愚かしいと、彼らの覚悟を嗤っていたのだ。

 

『ならば貴様らもこうなるがいい!!俺に挑んだ愚か者の末路になぁ!!』

 

見せつけるように、天に手をかざすと、天に浮かぶ城から何やら光が発せられる。

 

それは、宙に映像を投影するものであったのだろう、何かが、映し出されようとしていた。

 

その映像は、どうやら城の中の様子であり、何処か殺風景な印象を与える広間の様な場所を彼等に見せていた。

 

いったい何を見せるつもりだと訝しむ彼等だったが、続けて現れたその映像に、ありえないと息を飲む以外なかった。

 

そこには、磔にされた七つの影があり、そのどれもが、彼らが見知ったモノだったから。

 

『そ、そんな・・・!?』

 

『そんな筈が・・・!?』

 

声を上げた沙希や彩加だけではない、皆、あり得ないと、悪い夢だと、受け入れることを拒否していた。

 

何せ磔にされているのは・・・。

 

ダイナ、ガイア、コスモス、ネクサス、マックス、メビウス・・・。

 

そして、ウルトラマンティガ・・・。

 

それは彼らがよく知り、導かれた者達の姿をしていたのだ。

 

『嘘だ・・・!嘘だぁぁぁ・・・!!』

 

不気味なほどに蒼く澄んだ空に、八幡の絶叫が響く。

 

それは、この世を覆う、新たな絶望への鐘であった・・・。

 

sideout

 




次回予告

囚われた者達の姿は、八幡達に絶望を突きつける。
だが、まだ戦いは終わってはいなかったのだ・・・。

次回やはり俺の青春にウルトラマンがいるのはまちがっている

比企谷八幡は求めている 前編

お楽しみに

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