やはり俺の青春にウルトラマンがいるのはまちがっている   作:ichika

148 / 160
比企谷八幡は求めていた 前編

noside

 

『そんな・・・!』

 

『こんなことが・・・!?』

 

目の前に映し出された映像を、皆が悪い夢でも見ているかの様に、愕然と、ただ茫然と見やることしかできなかった。

 

ある者は受け入れられずに、ただただ震える事しかできず。

またある者は、嫌々をするように首を横に振り、ただ喘ぐように声にもならない唸りを上げるばかりだった。

 

『フハハハッ!!絶望するがいい!脆弱なウルトラマン共よ!!貴様らもこうなるのだからなぁ!!』

 

そんな彼らを、金色の魔人、エタルガーは嘲笑う様に宣う。

 

無力な者達を、自分に敗れた者達を嗤う、なんとも悪趣味で邪悪なことだろうか。

 

だが、敗者に出来ることなど何もない。

弱肉強食、どの世界でも通ずる、真理。

 

だが、その言葉は、八幡達には聞こえてはいなかった。

 

それは、避難を続けていた大和たちも同じだった。

 

「あ、あれは・・・!?」

 

「あのウルトラマンたちは・・・!?」

 

大和と南が声をあげ、愕然と見上げたままに立ち尽くす。

共にいた姫菜達も、その光景にただただ呆然と見やることしか出来なかった。

 

絶望、悲観、その二言の感情で埋め尽くされた表情であった・・・。

 

無理もあるまい。

何せ、そのウルトラマンたちは、その場にいる彼等にとって、先達、それも師とさえ呼べる者達だったのだから。

 

「先生ーーーッ!!」

 

『織斑先生ーーーッ!!』

 

磔にされたティガ、ダイナ、ガイア、コスモス、ネクサス、マックス、そしてメビウスの7人は、弟子、教え子達の悲痛な叫びも届いていないかのように、そのままの状態でピクリとも動くことはなかった。

 

『そんな・・・!先生が・・・!アストレイが負けるはずがない・・・!』

 

師が捕まったという怒りと、そんなことがある訳ないという困惑に震えながらも、八幡は地を殴り、震える脚に鞭打って立ち上がった。

 

こんなことがある訳がない。

彼の師は、宇宙最強である7人のウルトラマンが負けることなどないと。

 

その師達を捕らえられる方法など、正攻法ではとてもではないが簡単ではない。

それは、はるかに次元が違う八幡達にもわかることである、

 

故に、如何にエタルガーが強大な力を持っていたとしても、一夏達を卑怯な手で絡めとったとしか思えなかったのだ。

 

『貴様、俺が卑怯な手を使ったと、そう考えているな?』

 

そんな彼の想いを嘲笑う様に、エタルガーは映像を掻き消しながらも言葉を紡ぐ。

馬鹿なことを言うなと、見下す色を隠すことなく・・・。

 

『笑わせるな!戦いに卑怯もラッキョウもあるものか!!勝者こそ正義!それが宇宙の真理だ!!』

 

エタルガーが宣う事は、紛れもない真理であった。

 

戦いにおいて必要なのは、勝ち残って生き残る事である。

 

残酷な事のように思われるだろうが、それは恐らく彼らの師であるアストレイも同じことを語っただろう。

 

だから、彼等は八幡達がどんな状況になっても勝ち、生き残れる様に鍛えて来た。

それが真理だと、命のやり取りに身を置く者の運命《さだめ》だと知っていたから。

 

そんなことぐらい、八幡達も解っていた。

勝った者しか生き残れないことぐらい・・・。

 

『だから・・・、なんだってんだ・・・!!』

 

そんなことなど百も承知。

だが、それがどうしたと、八幡は咆えた。

 

『お前がどうやってあの人達に勝ったかなんて、もうどうだっていい・・・!俺が、救い出して見せる・・・!!』

 

最強の師が敗れ囚われたというのならば、その教えを受けた自分が救い出す。

 

それが、弟子として最強を目指す自分の役目だと。

そう啖呵を切り、彼は再び構えを取った。

 

『フンっ!威勢だけは良いようだな小僧!!そんなに師の顔が見たければ、お前も同じようにしてやる!!』

 

それを嘲笑う様に、エタルガーは無数の光弾を作り出し、今にも撃たんとしていた。

 

それを受け、八幡と沙希が立ち上がり、自身が持つ最強の技を発動させる。

 

『ギンガエスペシャリー!!』

 

『ビクトリウムエスペシャリー!!』

 

単体最強の力を持つ技を二つ纏めて放てば、打ち破れぬモノなどない。

そう信じ、ギンガとビクトリーは全身全霊を籠めて技を放った。

 

それと同時に、エタルガーも光弾を放ち、ギンガたちを撃ち滅ぼさんとする。

 

強烈な光線と無数の光弾がぶつかり合い、目も眩む閃光を発しながらも拮抗する。

 

はた目から見れば互角に見えるそれでも、ギンガとビクトリーには余裕など一切見受けられなかった。

 

それもそのはずだ、ギンガエスペシャリーの光線が、ビクトリウムエスペシャリーの光弾が、エタルガーの光弾に押し負けるようにしてギンガとビクトリーの手元まで迫っていた。

 

負けるかと、いくら力を籠めても掻き消すことも押し返すことも出来ない。

そんな状態だった。

 

他の者達も、何とか援護に回ろうとするが、よほどヤラれたダメージが大きいのだろう、未だに立ち上がることが出来ていなかった。

 

そして、ついにその瞬間は訪れてしまった。

 

光線を掻い潜った光弾が、ギンガとビクトリーの腹に突き刺さる。

 

『がっ・・・!?』

 

『うぁっ・・・!!』

 

あまりにも強烈な一撃に、二人とも光線を撃ち続ける気力を一瞬逸らしてしまう。

 

そうなってしまえば、あとは防ぎようもない。

いくつもの光弾が彼らに襲い掛かり、その身体に突き刺さる。

 

『うわぁぁぁ・・・!?』

 

だが、其れだけに留まらず、その光弾はX達をも襲い、爆炎の中にその姿を呑み込んでいく。

 

ウルトラマン達は、そのあまりの威力にカラータイマーを点滅させることもなく、光の粒子となって消えていった。

 

「み、皆ーーーっ!!」

 

その光景に、大和は絶叫し、友の身を案じて走り出した。

 

「大和!?戻れ!そっちは危険だ!!」

 

一人走り出した大和を制止せんと、隼人達もその方向へと走り出す。

 

彼等からさほど離れていない場所に落ちてきたからか、少し走った大和たちの目に、地に倒れ込んで呻く八幡達の姿が飛び込んでくる。

 

そうとう手酷くやられているのが、その様子から痛々しいほどに伝わってくる様だった。

 

「比企谷君!!」

 

「川崎さん!!大丈夫・・・!?」

 

「優美子・・・!戸部っち・・・!!」

 

「皆しっかりして・・・!!」

 

友に、後輩たちに駆け寄り、彼等は身体を揺すりながらも呼び掛ける。

 

「うっ・・・!み、皆逃げろ・・・!!」

 

何とか意識を保てていたのだろう、八幡が呻きながらも大和の肩を掴み、退避を促す。

 

こんなところにいては命を落としかねない、ウルトラマンである自分たちでさえこうなのだから、ただの人間である大和たちが、この場に足を踏み入れて無事で済むはずがないと分かっていたのだ。

 

「何言ってんの・・・!友達置いて行ける訳ないだろ・・・!!」

 

馬鹿なことを言うなと叱責しつつ、彼は何とか八幡を担ぎ起こそうと試みる。

逃げなくてはならない、生き延びるためにも。

 

それは、南たちも同じ想いだった。

それぞれ手近にいる友たちを退避させるべく動いていた。

 

だがしかし、ウルトラマンでもない彼らが、如何に若年とは言え、人間一人を抱えて素早く動くのは不可能な事であった。

 

それでも、彼らの瞳からは諦めることのない、強い光だけが窺えた。

 

『フハハハッ!無様だな!矮小な人間という者は!!』

 

変身も解除され、ただ逃げることしか出来ない彼等を見下ろしながらも、エタルガーは嘲笑を振りまいた。

 

威勢よく掛かってきた割には、あっさりと敗走し、地を這うように逃げようとしていれば、彼でなくとも嘲笑いたくなるものだろう。

 

だが、そんなことなどついでとしか聞こえぬほどに、悪意を籠めたものである事に疑いはなく、悪辣に過ぎると言わざるを得なかった。

 

『逃げろ!何処まで逃げ続けるがいい!地を這いつくばり!己の弱さを恨むが良い!!』

 

彼等をいたぶるつもりなのだろう、エタルガーは光弾をいくつも作り出し、逃げる彼等のすぐ脇に着弾させる。

 

何とか逃げんとしていたために直撃だけは避けられたが、それでも余裕はない。

 

『ほらほら、逃げろ逃げろ、死にたくなければ走り続けるのだな。』

 

容赦なく、それでも弄ぶ様に、エタルガーは逃げるしかない彼らに威力を絞った光弾を撃ち続ける。

 

まるで、蟻を蹂躙する巨像の如き、絶望感を与えるために遊んでいるかのように・・・。

 

しかし、いくらエタルガーが遊んでいる状態だとしても、力の差は絶望的なまでに開いている。

 

そんな状態で、いつまでも八幡達が逃げられるわけがなかった。

 

「うわっ・・・!?」

 

「ぐっ・・・!!」

 

光弾が着弾した衝撃で巻き上げられる爆風と粉塵に、彼等は皆吹っ飛ばされるように宙を舞い、受け身を取ることすら出来ぬままに、地面や瓦礫に叩き付けられる。

 

その際に、妙にいやな音が鳴った者もおり、途轍もない激痛に唯々呻くことしか出来なかった。

 

『おやおや?もう逃げるのは終わりか?』

 

「ぐ・・・、くそ・・・!」

 

嘲笑うエタルガーに、八幡は敵意と怒りを籠めた目で睨みつけた。

 

負けて堪るか、まだ終わってない。

変身できる体力が既になくとも、彼の闘志はまだ折れていなかった。

 

『フン!一々癪に障る目だな、いいだろう、最早用はない!これで消えろぉ!!』

 

その目に嫌悪を抱いたか、先程までの見下したような物言いから、僅かに苛立ったような声色で、先程とは明らかに桁違いのエネルギーを籠める。

 

直撃すれば即死、巻き込まれても命はないと悟らせるほどのエネルギーが収束されていた。

 

エタルガーの叫びと共に、その光弾は八幡達を狙って放たれた。

 

自分たちを焼き尽くすであろう、その致死なる光がいくらその距離を詰めようとも、八幡だけはエタルガーを睨み続けていた。

 

絶対に倒す、そういわんばかりに、殺気の籠った目だった。

 

その気迫などないものと言わんばかりに、光の渦が彼等を呑み込もうとした、正にその時だった。

 

突如として銀の光が煌めき、その光の渦を真っ二つに切り裂き、その進路を明後日の方向へと無理やりに変えさせた。

 

『なっ・・・!?』

 

一番驚いたのは、そんな事が起きるとは露ほどにも考えていなかったエタルガーだった。

 

目障りな八幡達を消せると思い放った一撃が不発に終わったのだから、それも当然と言えるだろう。

 

「一体、なにが・・・!?」

 

何が起きたのか。

自分たちの目の前までに迫っていた死が、あっさりと跳ね除けられて消えたことに、大和は驚きを隠せずに周囲を見渡した。

 

「ッ・・・!あれっ・・・!!」

 

彼と同じく周囲を見渡していた結衣が何かに気付いたのか、声を張り上げて空の彼方を指さした。

 

その方角へ目をやると、いつぞや見た時空の歪み、ワームホールがぽっかりと穴開いていた。

 

『なんだぁ・・・!?』

 

エタルガーもそれに気付いたのだろう、忌々し気に叫んだ。

 

姿を見せろ、そう言わんばかりの怒声だった。

 

『ファイナルウルティメイトゼロォォォ!!』

 

その返答と言わんばかりに叫ばれた声と共に、光を纏う矢が、それこそ光の速さで飛来する。

 

『なッ・・・!?これはっ・・・!?』

 

その技の正体を知っているからだろうか、エタルガーは危機感を露わにし、回避を試みようと動く。

 

だが、ほぼ不意打ちに近い形での攻撃を躱すことは至難の業であった。

 

『ぐ、おぉぉあぁぁぁっ・・・!?』

 

まともに回避する事さえ出来ずに、エタルガーはその光の矢、ファイナルウルティメイトゼロの直撃を受けた。

 

その威力はあまりにも凄まじく、エタルガーは断末魔にも似た叫びをあげ、途轍もない光に飲まれ、盛大な爆炎を巻き上げた。

 

「い、今の技は・・・!?」

 

その突然すぎる助太刀に、八幡は呆然と呟く以外無かった。

一体誰が・・・?

 

その疑問に答える様に、それは姿を現した。

 

困惑に固まったままの彼らの目の前に、それの正体は盛大な地響きを上げながらも姿を現した。

 

『だ、大丈夫か・・・!?お前ら・・・!!』

 

「あ、あなたは・・・!?」

 

目の前に現れた、銀赤青の体表を持つその巨人の姿に、彩加はまたしても驚愕の声をあげさせられる。

 

その巨人は、彼らの師である一夏達の仲間であり、彼等にとっては兄弟子にも近い存在であるウルトラマン・・・。

 

「ウルトラマンゼロ・・・!!」

 

アストレイと彼等を繋ぐもう一人の巨人、ウルトラマンゼロの登場に、八幡達の目にも再び希望が宿る。

 

勝てるかもしれない、そして、一夏達を救えるかもしれないという、希望だった。

 

現にエタルガーは爆炎に飲まれていった。

倒したかどうかは分からなかったが、深い傷を負わせたことは確かだろうとアタリを付けていた。

 

今の隙に、救出を・・・。

そう思った八幡の期待を裏切る様に、ゼロはよろめき、膝をついた。

 

『ぐっ・・・!』

 

「ぜ、ゼロさん・・・!?」

 

一体どうしたのか。

そう尋ねるよりも早く、点滅するゼロのカラータイマーが、もう限界であることを示していた。

 

もうゼロは傷つき、倒れる寸前であると理解するのに、時間など必要なかった。

 

『がぁぁぁ・・・!!』

 

そこから先を八幡達が問うより早く、爆炎を切り裂く様に、エタルガーがその姿を現した。

 

「っ・・・!?」

 

『くっそ・・・!』

 

倒せなかった。

その姿に、八幡達は希望を砕かれたかの如く膝をつき、ゼロも悔し気に唸っていた。

 

だが、ノーダメージという訳ではなかったのだろう。

先程までの余裕と、身に着けていたマフラーと仮面が剥がれ落ち、怒りと憤怒に歪む魔人の姿がそこにはあった。

 

その顔は、まるで髑髏のような印象を受けるが、彼らが思ったのは、悪魔の様だという感想だったに違いない。

 

『お、おのれぇ・・・!このくたばり損ないがぁぁ・・・!!』

 

俺の顔を見たなと言わんばかりに、エタルガーは怒りに任せて光弾を乱射、最早狙いを付ける事すらせずに手当たり次第に撃ち放った。

 

『ぐっ・・・!ウルトラゼロディフェンダー・・・!!』

 

八幡達を護るために、ゼロは腕のブレスレットから盾を呼び出し、その光弾を防ぎ続けた。

如何に乱雑とはいえ、人間が受ければ即死なのは分かり切っていた。

 

故に、八幡達も余波から逃れるべく、地に伏せ頭を抱えて蹲るばかりだった。

 

どれぐらいの時間が過ぎた時だろうか、光弾は止み、何かがはぜる様な音もまた、消えてなくなっていた。

 

『畜生・・・、逃げ、られた・・・。』

 

忌々し気にゼロが呟く。

その声に釣られて八幡達が顔を上げた時、そこにエタルガーの姿はなかった。

 

戦術的撤退とでもいうべきだろうか、手傷を負ったから逃げた。

そうとしか考えられない状況だった。

 

「先生・・・。」

 

呆然と呟く八幡の視線の先には、天を突き破らんばかりに聳え立つ異形の城、エタルガーの居城である時空城があった。

 

いや、見えているのは城ではない。

そこに捕らえられているであろう、彼等の師の姿だった。

 

その姿を見て、八幡はまた拳を握りしめる。

悔しさと不甲斐無さ、その両方からくる無念に、爪が掌に食い込まんばかりに拳を握りしめていた。

 

「俺が・・・、必ず助けます・・・、あなたから受けた恩、今こそ・・・。」

 

決然とした意志を籠め、小さく呟かれた言葉は、彼の友にさえ届くことなく霧散するばかりだった。

 

ただ一人、彼を見ていたゼロ以外に、届くことなく・・・。

 

sideout

 




次回予告

及ばない力と、反撃を望む心
相反する理想と現実のジレンマに苦しみながらも、彼等は進む以外の道を残されていなかったのだ

次回やはり俺の青春にウルトラマンがいるのは間違っている

比企谷八幡は求めていた 後編

お楽しみに
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。