やはり俺の青春にウルトラマンがいるのはまちがっている 作:ichika
side八幡
「くっ・・・、大丈夫か・・・!?もうすぐだからな・・・!!」
痛みに軋む身体と、エタルガーにやられて負傷した奴らを抱えて、俺達は何とか科特部の部室へと戻ってきた。
俺は傷を負った大和と葉山を抱えて部室に入り、とにかく椅子に座らせて、制服のブレザーで負傷部位を覆う、または固定して一応の応急処置とする。
他の皆も、それぞれ友を抱えながら教室に倒れ込むように入ってくる。
それだけ、皆ボロボロであるという証明であると同時に、俺達が何も出来ずに逃げてきたという事の、なによりの証拠だった。
俺に、もっと力があれば・・・!!
こんな事には・・・、皆が傷つくなんてことには・・・!!
「八幡・・・!コンフォートとシェパードンの力で皆の傷を治すよ!」
「っ・・・!あ、あぁ・・・!」
悔しさに拳を握りしめる俺を叱る様に、沙希が声を張り上げる。
そうだった・・・!今は、皆を癒すことが先決だった・・・!
慌ててギンガスパークを取り出して、等身大のサイズに変身、この部屋全てを包み込むつもりでギンガコンフォートを発動させる。
沙希はビクトリーランサーにシェパードンのスパークドールズを読み込ませ、癒しの光を皆に浴びせていく。
本来これらは、ウルトラマンの体力を回復させるものなんだ。
だが、ウルトラマンが融合する事で人間の体を、それこそバラバラぐちゃぐちゃの状態からでも再生させることの出来る力を持っている事から、骨折程度なら外部からの干渉であるコンフォートなどの力でも癒せるだろうと踏んだわけだ。
その当てが外れない事を祈りつつ、俺はこの部屋にいる全員に向けて光を浴びせた。
「う、おぉ・・・、身体が楽になっていく・・・。」
「すごい・・・、腕が治ってる・・・!」
大和と相模が何とか起き上がり、身体の調子を確かめながらも感嘆の声を上げていた。
まさかこうも簡単に骨折や傷が治ると思っていなかったのだろう、驚きと安堵の表情がそこには入り混じっているように見えた。
「あぁ・・・、でも、終わっちゃいないんだ・・・。」
変身を解き、俺は椅子に沈み込むように腰掛けながらも、歯を食いしばって呻くしかできなった。
皆解っていた。
俺達が、結局は勝てなかった事、そして、先生達が捕まってしまったという事実を・・・。
ゼロさんの、とんでもない威力の技を不意打ちで食らわせて漸く退かせられる様な敵の存在・・・。
俺達では全く及ばないその領域にいる敵に、為す術がなかった・・・。
「言っとくが、手傷を負ったとはいえ、エタルガーは強い・・・、今の状態じゃ俺も仕留めきれる自信はねぇ。」
マイナス面に思考が傾いていた俺に、この部屋にいなかった人物の声が新たに聞こえてきた。
一体誰だ・・・?
そう思いながらも、俺達は一斉にその声の方向、部室の入り口へと目を向けた。
そこには、柱に背を預けて凭れかかる、一人の青年の姿があった。
「ッ・・・!?」
その姿に、俺達は息を飲むことしか出来なかった。
癖のある黒髪に、切れ長な瞳を有する端正な顔立ち。
それは、俺達が見慣れ、追いかけていた人の姿・・・。
「お、織斑・・・、先生・・・!?」
「ど、どうして・・・!?」
なんで、捕まってるはずの先生がここにいるんだ・・・!?
確かにティガは、時空城に囚われてたのに・・・!?
「俺は一夏じゃねぇ、ゼロだ、気配で読めって一夏達から教えられてねぇのか?」
驚き固まる俺達に呆れたように、先生によく似た人は嘆息しながらも俺達に向き直り、閉じていた目を見開いた。
そこにあった輝きは、黒曜石ではなくイエローサファイア。
ウルトラマンの時の目を想像させる目をしていた。
なるほど、落ち着いて気配を探れば、確かにさっきまでウルトラマンの姿で俺達の目の前に居た巨人のモノだ。
それに、よくよく見れば見た目も先生よりかは幾分か若い。
幾ら焦っていたとしてもそれぐらい見抜けなかった自分を恥じ入るばかりだよ・・・。
「ぜ、ゼロさん・・・?なんで・・・?」
とはいえ、どうして先生の姿でそこにいるのかはまるで分らないんだけど・・・。
「生まれついてのウルトラマンな俺には、ニンゲンとしての姿はないから、一夏の姿を参考にしたんだよ、最強の男の姿をな。」
俺の問いに、ゼロさんは少しだけ照れ臭そうに、だけど誇らしげに語ってくれた。
この人も、先生の事を尊敬していて、愛しているんだと、こんな短い言葉の中からでも伝わってくるようで、俺も心に温かい想いが灯った。
だが、今の状況を考えれば、そんな思いに浸っている場合じゃない。
今は、この状況をどうにかしないと・・・!
「だが、そんなことはまた今度だ、今はエタルガーの事をお前たちに話しておく。」
今は昔話をしている暇じゃない、そういわんばかりに彼は表情を引き締める。
刹那、肌がピリピリと痛むような感覚が部室を包み込む。
皆、誰も動くことなく彼の言葉の続きを待っていた。
尤も、相当やばい話だってことは、もう、解り切っていたけどな・・・。
「超時空魔人エタルガー、俺達の前に突然現れて喧嘩、いや、戦争吹っ掛けてきた奴だ、単純な強さは、もうお前らも解ってるだろ?」
ゼロさんの口ぶりと、俺たちが実際に戦ったからこそ解る感覚から、奴が相当強いことは解る。
「正体は分からないんですか?」
だが、強さが分かったところで、その正確な能力や特性が分からない事には、手の打ちようがなかった。
俺の問いに、彼は渋面を作り、拳を握りしめた。
悔し気で、そして何かを呪うような、そんな表情で・・・。
「正体は、時空を超える能力がある以外は何も分からない・・・、だが、奴にはとんでもない能力がある。」
「そ、それは・・・?」
その能力が、先生達を捕らえるに至った能力だとでも・・・?
「奴の能力、それは、相手のトラウマを直接見せたり、具現化させる能力だ、それも奴の体力の続く限りほぼ無限にな・・・。」
「相手のトラウマを具現化・・・?精神攻撃の類ですか?」
「いや、実態を持たせて攻め立てる事もして来やがる、たった一人で何十何百の兵隊を出してくるようなもんだ、正直、囲まれたら俺でもやばい事になるだろうな。」
具現化までさせてくるって、なんて厄介な・・・。
しかも、幻を見せれるって結構キツイな・・・。
ちょっと待て・・・、まさかとは思うが・・・?
「ゼロさん、もしかして・・・、先生が負けた原因って・・・?」
俺が感じた嫌な予感を感じていたのだろう、彩加は震える声で尋ねていた。
そうだ・・・、まともに戦えば、先生達アストレイが負ける道理なんてない。
それは俺達が間近で見続けたから分かってることだ。
だが、それでも彼らは敗れ、囚われている。
その原因は、恐らく・・・。
「あぁ、一夏達は、具現化した嘗ての敵を相手にしながら、見せられ続ける悪夢と戦っていた・・・、決して逃れられない、過去と・・・。」
やっぱり・・・、先生たちのトラウマは、どんな敵よりも強く、御しがたいものなんだ・・・。
だから、エタルガーの強さなら不意を突いて倒すことも出来る・・・、という事か・・・。
それでも、その不意を突くことは容易ではない。
ゼロさんも、またそれを理解していて、不意を突く攻撃を仕掛けたんだ・・・。
それは、俺達では正攻法で勝てないという事を、如実に示していた。
「僕達じゃ・・・、勝てないのかな・・・?」
不安げに、だけど何かに縋る様に問う彩加の言葉に、俺は何も言えなかった・・・。
勝たなくちゃいけない、弱気になっちゃいけないって事ぐらい、解っていた。
でも、まったく勝てる気がしなかった。
このままじゃ、さっきと同じように、いや、それ以上に悪い結果になるなんて目に見えていた。
でも・・・、だからって・・・!
「っ・・・!」
居ても立ってもいられずに、俺は部室を飛び出そうとした。
この際、玉砕覚悟でも何でも構わない、アイツを止めないとこれ以上の被害が出てしまうから・・・!!
「待ちやがれ、どこに行くつもりだ・・・?」
それは必然的にゼロさんの脇を通り抜ける事になり、俺は彼にあっさりと止められる事になる。
彼の言葉を完全に聞き終えるより早く、俺の身体は宙を舞って後方に吹っ飛ばされ、そのまま背中から床に叩き付けられた。
「ぐっ・・・!?な、なにするんです・・・!?」
「聞いてなかったのか?今のお前たちでは、またエタルガーにやられるだけだ!」
俺を睨みつける様に、彼は俺を止めた。
分かってる…!そんなことぐらい分かってる・・・!!
だけど、だけど・・・!!
「じゃあどうしろってんです・・・!?俺達が戦わないでどうするんです・・・!?」
身体を起こし、せめてもの威勢で食ってっかかるが、解ってしまっていたんだ。
今の俺達じゃ、何も出来ないって・・・!!
それが堪らなく悔しくて、俺はただただ、拳を握りしめて呻くことしか出来なかった。
涙が一筋零れ落ちた、その時だった・・・。
「その顔はなんだ・・・?その目は!?その涙はなんだッ!?お前たちのその涙で、この地球が守れるのか!?一夏達が救えるのかッ・・・!?」
ゼロさんが、さっきの冷静さはどこへ行ったか、途轍もない熱量を籠めた怒声を上げた。
だけど、それはただ怒っているというよりは、俺達に向けて、発破を掛けたような声でもあった。
それを分かったとしても、俺には何もできない、させてもくれないじゃないか・・・!!
「じゃあ・・・!じゃあどうしろって言うんですか・・・!?」
ウジウジしてる暇なんてないのは分かってる、だったら・・・!
食ってかかろうとした俺を制するように、ゼロさんはにやりと笑う。
まさに、我が意を得た、そんな印象だった。
「俺に考えがある、ギンガとビクトリーは着いてこい、他の奴は身体を休めてろ。」
「ゼロさん・・・!?なんでですか・・・!?」
「小町達も・・・!!」
ゼロさんの言葉に、大志と小町が食って掛かる。
恐らく、殴り込みにでも行こうと思ってたんだろうな。
だが、彼の雰囲気からは、そんな気配を感じることはなかった。
「まだ殴り込みには行かねぇよ、この二人を鍛えてくる。」
「鍛えるって・・・、何をするつもりなんです?」
鍛えると一言で言ったって、それこそ一刻の猶予も無い今の状況で出来ること何て、たかが知れている。
だというのに、ゼロさんの言葉には自信が溢れている。
それこそ、俺に考えがある、そう言わんばかりの勢いがあった。
「着いてこい、話はそれからだ。」
まともに取り合ってくれそうもないな・・・。
なら、今は少しでも可能性の大きい方に賭ける以外、選ぶ手はないって事だな。
「エタルガーが動いたら、俺達も直ぐに駆けつける、皆は身体を休めてくれ。」
少しでも体力を温存しておかないと、勝てるものも勝てなくなるしな。
それに、ここからは俺自身が新たな殻を破るための戦いでもあるんだ。
だから、立ち止まってなんかいられるか・・・。
沙希と目配せし、俺達三人は部室を後にする。
その先に待つ、更なる力のために・・・。
sideout
noside
八幡達三人が出ていった後の部室内は、異様な沈黙に支配される事となった。
まぁ、無理もない。
ゼロが肝いりで鍛えるのは八幡と沙希だけ、残りはここで待っていろと言われ、それは、足手纏いと言われたにも等しい事だったのだ。
「くそっ・・・!俺達は、何にもできねーんか!?」
苛立つ気持ちを鎮められぬまま、翔は語気も荒く机の脚を蹴り飛ばす。
彼とて、もうわかっているのだ。
今、自分たちに打つ手はない。
出来る事といえば、ただこうやって、何も出来ずに悶々とする時間を過ごすだけだった。
それを、他の者達もまた理解し、憤っていた。
自分たちは、何のために力を得て、ここにいるのか。
「このまま、待つだけなんて・・・!!」
優美子もまた、力を持ちながらも何もできない自分自身への怒りに打ち震えていた。
戦えない事、師を救えない事。
その二つの壁にぶつかり、藻掻く事さえ苦しいと感じるのだから。
「いや、待つだけなんてことはない、かも・・・!!」
誰もがうつむき、言葉を失くしていた時だった。
何かを思いついたか、大和が声を上げた。
「た、猛くん・・・?どういうこと?」
どういう意味か分からずに彼を見る一同を代表し、南がおっかなびっくりながらも尋ねた。
一年前の苗字呼びではなく、下の名前で呼んでいるアタリ、彼らの関係性の深さを物語っているのだが、今は割愛するとしよう。
そんな一同の疑問に答える様に、大和はしたり顔で部室に備え付けられていた収納棚からアタッシュケースを取り出す。
それは、一般的な大きさのモノよりも一回り程大きく、内容物もそれなりの大きさであると推測できるものであった。
彼はそれを皆に見える様に置き、ロックを外して蓋を開けた。
「お、おい・・・!?これって・・・!?」
彼のすぐ脇で見ていた隼人が驚いたように、それの正体に声を上げた。
その声に釣られ、他のメンバーもケースの中に目をやる。
彼等の目に飛び込んできたのは、7つのアイテムの姿だった。
そう、それはスパークレンス、リーフラッシャー、エスプレンダー、コスモプラック、エボルトラスター、マックススパーク、そして、メビウスブレス、それぞれが対応するウルトラマンへと変身するためのモノだったのだ。
「これは、一年前に先生達から預かった、一度だけ先生たちのウルトラマンの姿に変身できるアイテムだ。」
「ウルトラマンに・・・?まさか、私たちただの人間がなれるとでも言うの?」
大和の説明に、雪乃は少し驚くと同時に、何処か怪訝の色を隠す事無く問うた。
直接ウルトラマンに選ばれてない自分たちが、ダミースパークの助けなしに変身出来るのか分からないというのが本音だっただろう。
それに、ダミースパークはダークルギエルが滅びた際に、消滅ないし一夏達が処分と称して持ち去ったために、もうこの世界に残る物はないと考えられる。
故に、本当に戦えるのかという不安を感じるのも、当然の反応と言えた。
「俺の想像だけどこれは、先生たちの力の一部を分けたモノ、つまりは分霊器でもあるってことだ。」
「要するに、先生たちの力で構成されてるって事で良いんですよね?」
小町の問いに、大和は頷き肯定する。
その考えは外れではない、そういう意味での首肯だったのだろう。
一夏達の力の一部というならば、ある程知り合いである彼等ならばそれこそ一度きりの変身ならば出来なくはないと考えるのが自然だった。
だが・・・。
「あぁ、だけど、何の訓練もしてない俺達が変身したところで、戦力になるどころか比企谷君達の足手纏いになるだろうね・・・。」
「そ、それは・・・、そうだけど・・・。」
現実は甘くはないと語る大和の言葉に、結衣は只々項垂れるしかなかった。
分かっているのだ。
如何に武道の心得がある者が居ても、現実に相手を真に撃ち滅ぼす術を持つ者はいないのだ。
だから、今の状況で変身して戦おうなどと、言える筈もなかった。
精々出来たとしても、一撃を撃てるかどうかも分からない、というのが実情だった。
「でも、一つだけ、実現可能な方法があるんだ、ちょっときついけど、俺達が頑張れば何とかなる方法がね。」
しかし、それで諦めるかと言われれば、大和はNoと答えるだろう。
何せ、直接戦うことが出来なくとも、出来る事があると知っているから。
「こいつは先生の力の一端で出来ている、なら、これを先生たちに返せば、先生達も復活できるかもしれない!」
大和の提案に、一同は驚愕に目を見開いた。
一夏達が捕らえられているのは、敵の本拠である時空城。
そこに突入するという事は、必然的にエタルガーの懐に飛び込む事になる。
正直言って、今よりも悪い状況に飛び込みに行く事になるのは目に見えていた。
怖気づいて当然、反対の意見も出て然るべきだ。
だが・・・。
「大丈夫、皆に強制するつもりは無いよ、俺は助けられてばかりで、何も出来なかったから、こんな時ぐらいカッコつけたいから。」
それでも、大和は自分一人で乗り込むつもりだった。
カッコつけたいというのはもちろん建前、本当は怖いに決まっている。
だが、それでも一番に行くと叫んだのは、一重に彼等への敬意と、自分自身が感じる恩義のためであった。
「大和君、一人で行ってどうするの?あの城まで結構遠いし、無謀も良いとこじゃない?」
その大和に対し、無謀も良いところだと声がかかる。
一体誰だと、室内にいた者達が目をやると、そこには真剣極まりない表情を見せる雪ノ下陽乃の姿があった。
「陽乃さん・・・。」
どうしてここにいるのかという、一同の無言の問い掛けに、彼女は静かに頷いた。
果たしたい事がある、そんな強気な意志と共に。
「コートニーさん達には、何度も助けてもらった・・・、だから、今度は私達が助ける番、だよね?」
茶目っ気たっぷりにウィンクしながらも、それでも口調は真剣そのもの、緩みは一切無かった。
陽乃はそのまま彼等のもとに歩みより、アタッシュケースからエボルトラスターを模した分霊器を掴む。
それは、自分も戦う、そう意思表示したに他ならなかった。
「姉さん、一人だけ抜け駆けはさせないわ。」
「先生やヒッキーに恩返ししたいですし!」
陽乃一人だけに格好付けさせて堪るかと、雪乃と結依も声をあげ、エスプレンダーとリーフラッシャーを手に取る。
このままでは終われないと、そういわんばかりに。
「なら、俺はセシリアさんへの恩返しだ、助けられてばかりじゃいられないな。」
「じゃあ私は宗吾さんへの恩返しだね、京都じゃ助けてもらったんだから!」
隼人はコスモプラックを、姫菜はマックススパークを掴み、決然とした意志を見せる。
助けられた恩もある。
しかし、一番は負けられないという強い意志のみだ。
「猛君、皆想いは一緒だよ、独りで行くなんて、もう言わないでね?」
先に行こうとした事を窘める様に、南は優しい笑みを浮かべつつ、メビウスブレスを手に取り、抱いた。
きっと皆、助けたいと言う思いだけは一緒なのだと。
「皆・・・、ありがとう・・・!」
友の強い想いを受け、大和は最後に残されたティガの写し身、スパークレンスを掴んだ。
これで参加者は集った。
後は、討ち入るだけだと。
「皆・・・、本当に、もう・・・!」
その光景に、彩加は俯き加減ながらも、震えた声で呟いた。
バカな事を、等とは思わない。
ただただ、師への想いを、このままじゃ終わらないと言う意志を受けて、彼の燻っていた闘志が、再び燃え上がったのだ。
「戸塚君、今のリーダーは君だ、俺達に指示を頼んだよ。」
「彩加さん、行きましょう!」
大和と大志の言葉に、彩加は今一度面を上げ、友の顔をそれぞれ見つめていく。
皆、強い意志の光をその瞳に宿し、彼の言葉を待っていた。
何時でも行けるぞ。
俺達はまけないぞと、無言で訴えかけて来ていた。
ありがとう、と誰にも聞こえぬほど小さく呟き、彼は前を向いた。
「これから、僕達で先生達を助けにいこう!」
『おう!!』
走り出しながらも突き上げられた彼の拳に倣うように、皆、拳を突き上げ、部室を。飛び出していく。
共に行こうと、その苦難に立ち向かう為に。
師より受けた想いを、今こそ彼等に届けるために・・・。
sideout
次回予告
彩加達の作戦が始まろうとする最中、八幡と沙希はゼロの手により、究極の力を手にする為の特訓に臨もうとしていた。
次回やはり俺の青春にウルトラマンがいるのはまちがっている
八幡と沙希は想いを重ねる 前編
お楽しみに