やはり俺の青春にウルトラマンがいるのはまちがっている 作:ichika
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『うぉぉぉ!!』
光が晴れ、頂上に降り立ったのは一人のウルトラマンだった。
ギンガとビクトリー、二人の意匠を合わせ、力強い雰囲気を纏うその姿は、まさに究極の力を得たと言外に語っていた。
左腕にギンガが付けていた青いブレスを、右腕にビクトリーが付けていた赤いブレスを装着し、より二人のウルトラマンが合体した姿であることを強調するものとなっていた。
『『こ、これは・・・、この姿は・・・?』』
『上出来だ、それが究極の力、お前たちが辿り着いた、お前たちだけの力だ。』
融合という奇天烈な事態に困惑する八幡と沙希に、ゼロは拍手しながらも答えた。
『本来なら、心を一つにするための訓練だったが、まさかフュージョンするとは思わなかったぜ、だが、これで百人力、負けることは無いだろうぜ。』
ゼロにとっても、二人のウルトラマンが融合し、新たな戦士となるとは予想だにしなかった事態ではある。
だが、元々の訓練の意味が二人の心を一つに重ね合わせる事であることであり、そしてブレスが元々左右に分かれる様に配置されていた事からも、二人の気持ちの持ちようで引き起こせる事象を引き起こした、とでも考えられる事だった。
足し併せるのではなく、掛け併せて一つの強大な力となる。
これならば、エタルガーをも退けることが出来る、そう確信していたのだ。
『それじゃあ行くぞ、他の奴らがヤバいみてぇだ、お前たちが助けに行くんだ。』
ウルトラ念力の応用か、それとも別の手段か。
ゼロは彼等に、彩加達が、いいや、もっと言えば大和達が良くない状況に追い込まれている事を伝える。
無論、それは八幡と沙希も知覚している事だ。
彩加達はエタルガーに戦いを挑むが歯が立たず、大和達は嘗ての自分達の所業を見せつけられて苦しんでいる。
誰がどう見ても、危機的な状況であることに変わりは無かった。
だが・・・。
『『いいや、その必要は無いよ。』』
『なっ・・・!?』
ギンガビクトリーの答えに、ゼロは絶句し息を飲む。
まさか、助けに行かないとでも言うつもりか?
彼の驚愕は、まさかと言わんばかりの様子だった。
『皆、立ち向かっている、強大な敵と、そして自分自身と。』
『打ち破るには、自分の力を、そして、傍らに寄り添ってくれている力を、信じる事だよ。』
皆、自分の力で戦おうとしている。
そして、それを傍らで見守っている者が在ると、彼等は感じ取っていたのだ。
囚われていても、戦うことが出来なくとも、その唸りをあげている者達の叫びを、心を・・・。
『『だから、皆を信じてる、ゼロさんが信じてくれたみたいに!!』』
胸に手を当て、彼らは強く祈る。
友が、新たな力で未来へと進むことを・・・。
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時空城、その最深部とも言える空洞空間にて・・・。
「やめろ・・・!俺は、俺は・・・!」
「やだ・・・!やだ・・・!」
未だに過去の残滓に囚われ、もがき苦しむ大和達を、大志はただ一人変身し戦い続ける事で護っていた。
とはいえ、多勢に無勢である事は依然変わりなく、むしろ時間が経つにつれて状況は徐々に悪くなりつつあった。
それも致し方あるまい、如何に鍛えられたと言っても、長時間戦い続けるなど生物である限り遅かれ早かれ限界は来る。
『くそっ・・・!皆さん・・・!しっかり・・・!!』
頭を抱え蹲り、震え続ける者達へ、彼は檄を飛ばしながらも戦い続けた。
諦めなければ、戦い続ければ何時か打開できる時が来る。
それを、そして大和達が立ち直ると信じ、戦う事で状況を変えようとしていた。
その時だった。
『皆、聞いてくれ、比企谷八幡だ。』
時空城内部、いや、その場にいる者達だけに向けて、声が響いた。
その声の主は、彼等の友である比企谷八幡のモノであり、その声色は、どこまでも落ち着いた、聞く者を安心させる温かみが含まれていた。
『お兄さん・・・!!』
その声に、大志は歓喜の声を上げる。
テレパシーであるとは分かっている。
だが、それでも、最も信を置く相手の声は、無条件に彼に安心感を与えるモノだった。
『俺達は試練を乗り越えた、自分に打ち克つ事で、新しい力を手に入れる事が出来た。』
「比企谷君・・・?」
「ヒッキー・・・?」
強く、熱く、想いを籠めて発せられる言葉は、呻く大和達にも届き始めていた。
闇を、苦悩を、嘗てのトラウマをすべて覆い隠してしまえるほど強い意志が、そこにはあった。
『だから負けないでくれ、闇に、そして自分自身に、自分達の想いで立ち上がってくれ。』
負けないでくれ、自分に勝てと、彼は友へエールを送る。
希望、それが闇を祓う力になると。
「あぁ・・・、そうだよな・・・!!」
その想いに、最初に応え叫んだの大和だった。
負ける訳にはいかない、嘗ての自分にも、そしてこの街に、友に害を齎そうとするエタルガーを倒すためにも。
「ウチらは・・・!!」
「負けないんだ・・・!!」
南も、姫菜も、隼人達も立ち上がって声を張り上げる。
「そうだよ・・・!皆・・・!」
それを受け、陽乃も立ち上がる。
見ているだけの自分は嫌だからとここまで来たのだ。
若い彼等に負ける訳にはいかなかった。
その想いに呼応するように、彼等それぞれが持つ、アストレイの現身であるアイテムが、金色の光を放つ。
その光は、彼等に纏わりついていた闇を祓い、包み込むようにして広がっていく。
どこまでも強く、それでいて暖かいその光は、彼等に語り掛けている様だった。
そのまま進めと、彼等を肯定する想いが在った。
『皆さん・・・!!今こそその力を解き放って・・・!!』
向かってくる無数のチブロイドを、必殺の光線、ナイトシュートで薙ぎ払いながらも叫ぶ。
今こそその時。
ここに来た目的を果たす時だと。
その光に、想いに背を押される形であっても、決めるのは、想いを遂げるのは彼等だ。
故に、彼等は皆強く頷き、それをしっかりと握りしめ、磔になっている7人のウルトラマン達に向けて掲げ叫ぶ。
『光よーーーーーっ!!』
刹那、それぞれのアイテムから発せられる強烈な光に、その空間は包まれていく。
希望を、この世界に振りまくために・・・。
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『ガァァァ!!』
獣の咆哮の如く叫びをあげ、エタルガーが刃の様に形どられた闇の波動を打ち出す。
それは何物にも遮られる事無く突き進み、X、ゼノン、そしてジャスティスを襲い、盛大な爆炎を巻き上げる。
『うわぁぁぁっ!!』
あまりの威力に、三人は大きく吹き飛ばされ、ビルを幾つも破壊しながらも地に倒れ込んだ。
かなりの時間を戦い続けていたからだろう、三体のウルトラマンのカラータイマーは既に点滅しており、最早長時間の戦闘は出来ない事を物語っていた。
『しぶとい奴らだ・・・!もう諦めろ、貴様らに勝機は無い!見えるだろう、貴様の仲間達とやらが悶え苦しむサマがなあ!!』
そんな彼等へ、エタルガーは哄笑と共に自身の勝利を宣言する。
勝ち目などない、だからもう負けを認めてしまえと・・・。
それを知らしめるために、エタルガーは彼等に時空城の中の様子を、孤軍奮闘するヒカリと、その後ろで蹲り震える大和達の姿を見せつけた。
皆、恐怖に表情が引きつっており、苦悶を浮かべ続けていた。
如何し様も出来ない、そう理解させるには十分すぎる材料だった。
『それ、でも・・・!』
彩加は叫ぶ、それでもと。
これからを生きる自分達は・・・。
『絶対に諦めない・・・!!』
決して逃げない、諦めないと。
強い意志と、未来への希望を籠めて、彼等は魂の叫びをあげたのだ。
その時、光は瞬いた。
『これは・・・。』
彩加自身を囲うように、7枚のカードが意志を伝えるかの如く輝き舞う。
まるで、彼の意志に応える様に、道を切り開くかのように。
『アストレイ達の光・・・、そして・・・!!』
『僕達の、道標・・・!!』
その強い光に、彼等は目を逸らす事無く真っすぐ見据えた。
真っすぐ進む、信じてくれた師に、その想いに報いるためにも。
『アストレイの力、お借りします!!』
その言葉と共に、突き出されたエクスデバイザーへダイナ、ガイア、コスモス、ネクサス、マックス、メビウス、そして、ティガのサイバーカードが読み込まれていく。
それは虹よりも強く輝く7色の光の渦を作り出し、剣の様なものへと形取られていく。
西洋に伝わるロングソードの様な見た目のそれは、刀身にプラチナ、ディープブルー、オレンジ、ブラック、レッド、モーブ、ライトピンクの7色のライン、一夏達の嘗てのパーソナルカラーが走っていた。
その柄を手に取り、天に掲げる様に突き上げる。
刹那、Xの身体にも変化が生じ始める。
基本形態から強化形態であるエクシードの姿となり、その上から新たに鎧のようなものが装着されていく。
右肩部にコスモス、右腕部にネクサス、左肩部にガイア、左腕部にマックス、右足にメビウス、左脚にダイナ、それぞれの紋章を模した装甲が現れ、最後に胴を覆うようにティガを模した装甲が現れ装着される。
その姿はまるで重装騎士の如き雄壮さを以て存在し、すべての闇をはね除ける力の鎧を纏う者のそれだった。
『『これが、アストレイの力だ!!』』
更に深いユナイトを果たした彩加とXが、力強く宣言する。
アストレイより与えられた力の、その具現化を知らしめる様に。
『『アストレイアーマー!!』』
新たなる鎧、アストレイアーマーを纏うXは7色に光り輝く剣を構え、一気にエタルガーへと突っ込んで行く。
速さこそ劇的な進化は無い、だが、気迫と圧力、その両方は重さを増し、叩き付ける様なモノを感じるほどだった。
『舐ぁめるなぁ!!』
それがどうしたと、所詮は借り物の力、畏れるに足りん。
そう言わんばかりに、エタルガーは構えを取り迎え撃つ。
『『Xカリバー!!』』
輝く剣を振るい、Xはエタルガーに斬りかかる。
エクスラッガーの様な浄化の光ではない、純粋な攻撃の光が乗った刃は、空間その物を斬り裂かんばかりに唸りをあげた。
『ぬぉっ・・・!?』
その勢いに気圧されたか、それともマトモに受けてはならないと直感で察したか、堪らずエタルガーは防御体勢を取る。
それを薙ぐ様にXカリバーがエタルガーの腕を掠め、鮮血と見紛う火花を散らした。
その切れ味たるや、正に筆舌に尽くし難し。
ゼロの渾身の一撃以外、モノともしなかったその身体に傷を与えた何よりの証左だった。
『もう一撃!!』
返す刀で逆袈裟に斬りつけ、防御体勢を崩し、がら空きの胴に横薙ぎの一撃を叩き込んだ。
『ぐぉぉぉ・・・!?』
あまりに強烈な一撃に、エタルガーは堪らず呻く。
今までの様な余裕がある様な呻きではない、真にやられたと言わんばかりの様子だった。
脇を通り抜けたXは振り向きながらもXカリバーを突き出し、迎え撃とうと振りかぶったエタルガーの喉に刺突を叩き込み、退かせる。
技の鋭さが冴え渡っており、強化された力を難なく使いこなしていた。
『『はぁぁぁっ!!』』
それだけで終わらせないと、大きく仰け反ったところへ、切り上げを叩き込んだ。
『がぁぁぁ・・・!!』
あまりの威力に、エタルガーは初めて吹っ飛ばされる。
想定外、まるで理解できないと言わんばかりの色が、その悲鳴からも窺い知ることが出来た。
だが、そこで手を緩めるほど、彩加は甘くは無かった。
Xカリバーを器用に振り回して顔の真横辺りまで持ってきて、更なる力を開放する。
『セレクト!ウルトラマンマックス!!』
その言葉と同時に、Xカリバーの刀身がマックスの変身者である神谷宗吾のパーソナルカラー、ブラック一色に染まる。
それは、彼の力を使うという事。
『ウルトラマンマックス、ロードします!』
『『マクシウムカリバー!!』』
技の名を叫ぶと同時に、黒いXカリバーが輝き、幾つものXカリバーが複製されたかの如く宙に滞空する。
その内の一本を掴み、二刀流に構えたXの指示か、残りの滞空していたカリバーが一斉にエタルガーに殺到する。
『ぬぉっ・・・!?』
意表を突かれたのだろう、エタルガーは闇の波動を焦ったように撃ち掛け迎撃するが、撃ち漏らした数本が襲い掛かり突き刺さる。
それはまるで、マックスのマクシウムソードの様に幾度も切り刻むような攻撃だった。
『おぉぉっ!!』
二本のカリバーを握るXが怯むエタルガーの懐に入り込み、流れる様な剣捌きで斬り続ける。
反撃の暇など与えない、防御さえさせないと言わんばかりに、その斬撃は止むことは無かった。
『がぁぁっ・・・!お、のれぇ・・・!!』
だが、みすみすヤラれるほどエタルガーも大人しくはない。
体内から爆発させるような闇の波動を放ち、その圧力で周囲のXカリバーとX自身も吹き飛ばした。
これで仕切り直す、そう考えていただろう。
だが・・・。
『これでトドメだよ・・・!!』
宙に跳んで後退しつつ、彩加はもう一度力を選んでいた。
これでケリをつける、その想いを籠めて。
『セレクト!ウルトラマンコスモス!!』
『ウルトラマンコスモス、ロードします!!』
黒の刀身が、コスモスに変身するセシリアのパーソナルカラー、ディープブルーに染まる。
その力を、仇敵に叩き付けるために。
『『これが、アストレイの力だッ!!』』
Xカリバーを操り、エネルギーで形成した三日月型の刃を作り出し、カリバーに纏わせる。
それは、コスモスの技、そして、彼等が受け継ぐ技の力だった。
『『エクリプスカリバーァァァッ!!』』
横薙ぎに振られた勢いで三日月型のエネルギー刃が空間を切り裂きながらも飛び、エタルガーへと迫る。
『うぉ・・・!?』
技を出した直後の硬直か、動けなかったエタルガーは咄嗟に防御態勢を取ろうとする。
だが、目前に迫ったそれを受け止められる筈も無い。
それはエタルガーに突き刺さり、その威力をスパークさせていく。
『こんな・・・!馬鹿なァァァ・・・!!』
その言葉を吐き、エタルガーは爆炎へと包まれた。
アストレイを継ぐ者の、想いと力を受けて・・・。
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次回予告
復活する7人のウルトラマンと、新たな力を得た八幡達は、ついにエタルガーとの決着を着けるために戦いへと赴く。
未来を、その手に掴むために。
次回やはり俺の青春にウルトラマンがいるのは間違っている
比企谷八幡は走り出す
お楽しみに