やはり俺の青春にウルトラマンがいるのはまちがっている 作:ichika
noside
地上、三体の闇の巨人を相手取る小町達。
アグルダーク、ダイナダーク、そしてガイアダークの三体に、総合力の差から劣勢に立たされていた。
通る攻撃も幾つかはあったが、それでも闇の力で強化されたウルトラマンの力を相手取るには、戦い慣れている小町のアグルが先頭に立って戦っているとはいえ、厳しいものがあった。
次第に追い込まれ、遂にはクリーンヒットが入ったことで、遂に三名とも地に膝を付くまでに追い込まれていた。
『聞こえましたか先輩!!』
『えぇ、しっかりと・・・!』
『届いてるよ・・・!』
その劣勢の中で、彼女達はアストレイの声を聞き、その心に灯る小さな燈火が、大きく燃え上がっていく感覚を覚えた。
こんな所で立ち止まっていられない。
宇宙最強の身体を借りている自分達が、こんな無様をさらす事は出来ないと。
今までより強い意志を全身に滾らせ、しっかりと力を籠めて地を踏みしめ、立ち上がる。
『それじゃあ、行きますよ!小町達の反撃!!』
『『勿論!!』』
ここから大逆転する、その意思を籠めて、三人は構えを取る。
センターのアグルの両サイドに立つダイナとガイアが動く。
タイプチェンジとヴァージョンアップを行い、それぞれの姿を深紅のファイター≪ストロングタイプ≫と、地球の意志たる姿≪スプリームヴァージョン≫へと変えた。
それぞれパワーに特化した姿であり、邪悪を真正面からの力で粉砕する事を目的とした姿だった。
真っ向から戦うと受けてか、三体の闇の巨人は敵意をむき出しに向かってくる。
『はぁぁっ!!』
先鋒、結衣が変身するダイナの右ストレートが、まったく同時に突き出されたダイナダークの拳を真っ向からはじき返し、その顔面に叩き込まれる。
吐血するかと錯覚するほどの勢いで叩き込まれた事で、ダイナダークは大きくよろめいて体勢を崩す。
すかさずそこへ、ダイナは左のエルボーで首の下辺りを強打、黒い巨人の身体を地に叩き付ける。
あまりにも強烈だったからか、ダイナダークは中々立ち上がれずに藻掻くばかりだった。
その隙を逃さんと、ダイナはダイナダークを片手で軽々と持ち上げ、頭上に持ち上げてから地に叩き付ける。
その力、正にストロング。
名に恥じない戦ぶりだった。
『こっちも、負けてられないのよ!!』
その戦ぶりに遅れを取るまいと、ガイアが動く。
それを受け、ガイアダークも駆け出し、一気に距離を詰めていく。
先程まで、ガイアに変身する雪乃は、自分自身が修めてきた合気道の要領で戦ってきていたが、所詮それも護身用でしかなかった。
相手を完全に仕留めるための攻撃を捌き切れる筈も無く、押されていたという訳だ。
そんな相手に、パワーアップしたとはいえ先程までの戦法で勝てる訳はない。
ではどうするか?答えは単純だった、捌き切れないならば、そもそも捌くと言う考えを捨てればいいと。
殴りかかってくるガイアダークの拳を、強化された大胸筋で受け、その腕を掴んで大きく投げ飛ばす。
スプリームヴァージョンになった事で防御力も上がってはいるだろうが、それでもやはり痛みを感じないわけではない。
その証拠に、雪乃は痛みに顔を顰めており、苦悶の呻きに似た吐息が零れる。
だが、それを上回る精神力を以て痛みを無理やり抑え込む。
『この程度の痛みなんて、あの時感じた痛みに比べたらどうということは無いのよ・・・!!』
迫害された痛み、負ける苦しさに比べればどうという事は無い。
今、真に痛むのは戦う事の出来なかった弱さへの後悔ただそれだけ。
戦う力がある今、弱音など吐いている暇など一瞬たりとも在りはしないのだ。
故に、彼女は信念の下に肉体へ掛かる痛みを捩じ伏せ、前を向く。
倒れ込んだガイアダークを無理やり立たせ、体勢を整える前に再び投げ飛ばす。
容赦なく地に叩き付けられるガイアダークを追い、地を踏みしめて駆け出す。
もがきながらも何とか立ち上がったガイアダークに一息で距離を詰め、筋肉で盛り上がった腕を、渾身の力を乗せたラリアットをその喉に叩き込んだ。
正に力の権化、スプリームを体現する戦いだった。
『アグルセイバー!!』
アグルはこれまで温存していた蒼い光の剣を発生させて、同じく血の色をした剣を発生させたアグルダークと斬り結ぶ。
我武者羅な、しかし急所を狙う攻撃を仕掛けるアグルダークの刃を往なしつつも、アグルは機を待つ。
防御に徹している訳ではない。
突きやフェイントを用い、攻撃のリズムを崩していく。
幾度それが続いたか、拮抗が破れ、アグルダークの体勢が僅かに崩れたその一瞬に、アグルが動く。
アグルダークの光刃を払い、回し蹴りをその腹に叩き込む。
体勢が崩されていた事も相俟って、防御など出来なかったアグルダークは大きく後ろへと吹っ飛ぶ。
だが、それで終わらせんと、アグルは飛び、エネルギーを収束させた飛び蹴りを、その胸部へと叩き込んで地に叩き付けた。
そして、そのままの流れで足首を持ち、ジャイアントスイングで大きく投げ飛ばした。
剰りにも強烈な連続技に、三体の巨人はなすすべもなく体力を削られていくしかなかった。
そして、彼女達の戦いの決着が訪れる事も、同時に意味していたのだ。
『決めますよ!』
小町の呼び掛けに、雪乃と結衣も頷きで返す。
この戦いを終わらせる、必殺の意志を籠めて。
『ガルネイドボンバー!!』
『フォトンストリーム!!』
『フォトンスクリュー!!』
赤き光弾が、致死の奔流が、蒼き光の渦か、それぞれ闇の巨人達に直撃する。
その強烈な威力に耐える事が出来ず、盛大な爆発を上げて消滅していった。
『『『やった・・・!!』』』
その光景を認め、彼女達は自分達が勝利したと確信する。
だが、同時にエネルギーも限界に近付いたか、胸のカラータイマーが赤く点滅を始める。
これ以上は戦えない。
それを悟らせるには充分過ぎた。
『後は、任せたわよ!』
悔しいが自分達はここまで。
後は先に進んだ仲間達に託す事しか出来なかった。
時空城へ向け、彼女達は自分達の光を祈りとして飛ばす。
この世界の未来を、そして、希望を信じて。
sideout
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時空城下層部。
カオスウルトラマンとカオスウルトラマンカラミティを相手取るコスモスとジャスティスには、余裕というモノが見られなくなっていた。
元々、戦い慣れない隼人のコスモスをカバーしながら強敵を相手取るのは、流石に高い戦闘能力を持つ優美子のジャスティスであっても難しく、次第に後手に回らざるを得ない状況になっていた。
このままでは、近い内に彼等の限界が訪れ、闇に呑み込まれる未来が待ち受けているとさえ思わされるほどだ。
今もまた、カオスウルトラマンカラミティの拳がコスモスの顔面を捉え、大きく吹っ飛ばす。
『ぐぁぁぁっ・・・!!』
『隼人ッ・・・!!』
呻く隼人の傍へ、優美子がカバーに入る。
何とか体勢を立て直す彼等に、闇の化身は一歩、また一歩と間合いを詰めていく。
それは正に、光を呑み込まんと迫る闇の圧力そのものだった。
状況は最悪、今のまま戦い続けても勝機は薄い。
そんな状況でも、彼等の瞳から闘志の炎が消える事は無かった。
何せ、彼等には聞こえていたのだ。
セシリアの声が、彼等の背を押し、前進を肯定する慈愛の女神の言葉が。
彼等の心を奮い立たせるのだ。
『あーし等は、絶対に諦めない・・・!!』
『負けたままで、終わってたまるか!!』
彼等は咆える。
諦めて堪るかと、負けたままで甘んじる訳がないと。
その強い願いに、光は応えるのだ。
コスモスの身体が光に包まれ、その姿を赤い戦士、コロナの姿へと変えた。
受け流すだけでは勝てない、コスモスの中に在るセシリアの意志が、言外に語っている様だった。
『『行くぞ!!』』
それを受け、コスモスとジャスティスは構えを取って駆けだす。
ここからが反撃の時だと、その決然たる意志と共に。
それに呼応し、二体のカオスウルトラマンも彼等を完全に消し去るために向かってくる。
これが最後の激突、そう言わんばかりに。
『ハァァッ!!』
ジャスティスはカオスウルトラマンカラミティが繰り出した右ストレートを、真正面からの左ストレートでぶつける事で相殺しようとする。
そこまでは先程までと同じ流れであったが、それで終わるほど今の彼女は甘くは無かった。
拳がぶつかる直前に、そのパワーを数段引き上げる姿、クラッシャーモードへと変える。
出力が上がれば攻撃力も必然的に跳ね上がる。
そのパワーに、カオスウルトラマンカラミティの拳は弾かれ、その弾みで体勢が大きく崩された。
『もう一発!!』
身体の捻りを利用し、背負い投げの様に大きく身体を前方に投げ出しながらも一回転、まるで鎌の如く鋭い踵落としを、頭部に叩き込み地に叩き付けた。
勢いが一度手元に転がり込んだのならば、それを逃がしてなる物かと、彼女はここぞとばかりに叩き込む。
肩を掴んで持ち上げ、バックドロップの要領で後方に放り投げ、地に叩き付ける。
バウンドしたところへ、全身のバネを使って跳ね起き、後方宙がえりからの捻りを加えたスピンキックをその腹に叩き込んだ。
アクロバティックかつ強烈な技の連続に、カオスウルトラマンカラミティはグロッキー状態に追い込まれていた。
その戦ぶり、正に鬼神の如き勢いだった。
『おぉぉっ!!』
カオスウルトラマンを相手取るコスモスは、先程までの捌く動きから、俊敏な体捌きを活かしながらも、次々に拳や蹴りを打ち合う。
コロナになった事でパワーとスピードが増しているのだろう、これまで押され気味だった攻防が嘘の様に、今は互角の戦いが繰り広げられていた。
とはいえ、経験不足から真っ向勝負で戦い続ける事は、何れ押され始めるという事を意味していた。
『俺はもう二度と逃げない・・・!誰かを、大切な人を傷つけさせやしない・・・!!』
だが、それは変身している隼人も承知の上だった。
負けるつもりも、自分だけ逃げるつもりももうない。
ただ、護りたいから戦う、今までの過ちを本当の意味でも清算するためにも。
その強い想いが勇気となって、コスモスの力の源である慈愛と強さに共鳴し、その姿を輝かせる。
組み合ったままエクリプスの姿になったコスモスは、左腕でカオスウルトラマンの右腕を抑えながらも、左足を自分から見て反時計回りに大きく回しながらも蹴り上げ、回し蹴りの要領で蹴り払う。
力を入れていた方向の側面から蹴り入れられたことで、カオスウルトラマンの腕は予想よりも大きく振り動かされることとなり、それは必然的に体勢を大きく崩すという結果を齎した。
『ウォォッ!!』
その隙を逃さず、コスモスは軸足を右から左へと入れ替え、体勢を崩したカオスウルトラマンの胴に前蹴りを叩き込んで大きくよろめかせる。
すぐさま体勢を整えたコスモスは、その場で跳躍、後退るカオスウルトラマンの胸部に跳び蹴りを食らわせた。
連続して繰り出される技に押され始めたカオスウルトラマンは、苦悶の呻きの様な声をあげながらも、何とか踏み止まり、反撃を試みる。
それに対し、コスモスは大きく飛び上がり、残像が幾重にもダブって見える程の速さで縦横無尽に回転を始める。
その動きはフェイントとしての意味合いが強いのだろう、現にカオスウルトラマンは攻撃を躊躇う様に踏鞴を踏んでいた。
そして、その一瞬の躊躇を突くかの如く、残像の中よりコスモスが飛び出し、跳び蹴りをカオスウルトラマンの顔面に叩き込んだ。
その躊躇で防御さえマトモに取れず、あまりの威力に、受け身を取る事すら出来ずに吹っ飛ばされ地を転げまわった。
一目見て大ダメージを与えた事が分かるほどに、カオスウルトラマンは立ち上がる事さえ出来なかった。
『隼人!!決めるよ!!』
カオスウルトラマンカラミティを、カオスウルトラマン目掛けてぶん投げたジャスティスが叫ぶ。
グロッキー状態の二体は最早回避する事も立て直す事も出来ず、折り重なって倒れ込んだ。
『おう!!』
それを受け、コスモスはジャスティスの隣まで飛び、並び立ちながらもトドメの一手に動く。
『ダクリューム光線!!』
『コズミューム光線!!』
二筋の光条が空を切り裂きながらも進み、フラフラの状態で立ち上がった二体の闇の巨人に突き刺さる。
完全なる破砕の光線と、浄化の力を乗せた光線に耐える事が出来ず、二体のカオスウルトラマンは盛大な爆発に呑まれ、完全に消滅したのだ。
『『よしっ・・・!!』』
それを認め、自身の勝利を確信した時だった。
コスモスとジャスティスのカラータイマーが赤く点滅を始めた。
それは、彼等の活動限界を知らせるものであり、これ以上戦えない事を示していたのだ。
『あとは頼んだよ、皆!!』
先に進んだ者達の無事と勝利を祈り、彼等は時空城から脱出するのであった・・・。
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時空城中層部においても、激戦が繰り広げられていた。
陽乃が変身する銀色の巨人、ネクサスは因縁の相手である闇の巨人、ダークメフィストと一進一退の攻防を繰り広げていた。
殴打の応酬が幾度も繰り返され、それでも決め手にかけるのか、クリーンヒットは中々出ない様子だった。
現に、たった今、ネクサスはダークメフィストのメフィストクローを食らうまいと両腕で抑え込んではいるが、練度の差が表れているせいか、徐々に押し込まれている様にも見受けられた。
このままでは、戦い慣れない彼女が膝をつき、敗北する事はそう遠くない時間で訪れるだろう。
だが、彼女の闘志は折れていなかった。
『まだだ・・・!まだ、何も返せてないんだ!』
自分の命を、そして自分と妹の仲を繋げてくれた人への恩を、まだ自分は返せていない。
そのために今戦っているのに、このままおめおめと負ける訳にはいかないのだ。
さっき聞こえた、自分の背を押す男の声に、その想いに応えるためにも。
『こんなところで・・・!終わってたまるかぁぁぁ!!』
刹那、ネクサスの胸部、エナジーコアが彼女の想いと共鳴し、強烈な光を放つ。
それは凄まじい力のエネルギー波となってダークメフィストへと突き刺さり、その巨躯を大きく弾き飛ばした。
光は、そのままネクサスを包み、その姿を銀色の巨人から赤き戦士、ジュネッスへと変えていく。
『はぁぁっ!!』
ファイティングポーズを取り、ネクサスはダークメフィストに向かって飛び掛かる。
それを受け、メフィストも先程と同じように迎え撃つが、戦況は徐々に変わっていっている様だった。
ネクサスの拳がダークメフィストの胸部を捉え、その威力に仰け反り無防備になった腹にすかさず身体の捻りを加えた肘鉄が叩き込まれる。
だが、このまま勢いを逃さんと、ネクサスは猛攻を仕掛ける。
すぐに身体を起こし、捻りを加えつつ飛び上がり、旋風脚を肩口に叩き付ける。
その威力は凄まじく、大きくよろけながらも後ずさる。
攻撃後に着地したネクサスはすぐさま地に手を付き、側転の要領で回転しながらも、メフィストを蹴り飛ばした。
迅速、疾風、その速さについてこれる者はいなかった。
地を踏みしめ、前方へ飛ぶ勢いを利用して空中で一回転、その勢いを殺す事無く飛び蹴りをダークメフィストの鳩尾に叩き込む。
怒涛の連撃に、立つことすら怪しくなってきたメフィストはその一撃で大きく吹っ飛ばされ、地を何度も転げまわった。
最早これまで、そう言わんばかりに、陽乃は最後の一手を切る。
『オーバー・レイ・シュトローム!!』
L字に組まれた腕から放たれる、全てを消し去る光の奔流が、何とか立ち上がったダークメフィストに突き刺さる。
その光の奔流に呑まれ、抗おうとしたメフィストだったが、その威力と乗せられた想いには抗う事が出来ず、青い光の粒子となって消えていった。
それは、彼女の勝ちを意味するものであった。
だが、その代償とでもいうべきか、大技を撃った反動でエネルギーを殆ど使い果たしたのだろう、エナジーコアが点滅を始め、これ以上戦えない事を示していた。
『ふぅ・・・、どうやら、ここまで見たい、かな・・・?あとは、頼んだよ・・・!!』
先に進んだ者へ後を託し、彼女のネクサスは突入してきた穴から外へ飛び出したのだった・・・。
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次回予告
負けそうな時こそ反撃のチャンス。
孤独に耐えながらも勝利を掴むのだ。
次回やはり俺の青春にウルトラマンがいるのは間違っている
若人達は英雄だった 中編
お楽しみに