やはり俺の青春にウルトラマンがいるのはまちがっている 作:ichika
side八幡
「・・・、つまり、俺が君らに稽古するために部活作れってか・・・。」
奉仕部連中に絡まれた翌日、俺と沙希、彩加と先生は、偶々使われていない空き教室に集まり、俺が考えていた計画を聞いていた。
とはいえ、大層なもんじゃない。
昨日、雪ノ下たちに宣言した様に、先生を顧問にした部活を作って、スパークドールズ集めと戦闘訓練をする口実とするのが俺の腹積もりだ。
「けどさ八幡君、俺その話何にも聞いてないんだけど・・・、せめてさ前々から計画位は報せといてくれよ、準備にも時間かかるしさぁ・・・。」
俺の宣言を聞いた織斑先生が、何処か苦笑しながらも宥めてくる。
あ、そう言えば言ってなかったんだっけ・・・?
あの時合わせてくれたのは、同じ事考えてたからじゃなくてハッタリだったのね・・・?
「ま、その腹積もりでいたから良いさ、近い内に君達三人に切り出す筈だったが・・・。」
あ、やっぱり考えてたんだ・・・。
それなら安心して話し続けらるわ。
「存在だけしてれば奉仕部に対する牽制にもなります、顧問が先生ともなれば、誰も口出し出来ませんよ。」
「確かにね、良い牽制の仕方だよ、同好会程度なら学校側の承認も比較的寛容、実績を残せば部への昇格も有り得る・・・、良く出来てる話だ。」
俺の説明を受けて納得いったと言わんばかりの沙希は頷き、俺の説明に補足まで入れてくれた。
頭が柔らかくて回転の速い奴は本当に良い、否定するよりも先にメリットを見付けてくれるからな。
「でも、僕は如何したらいいの?一応、テニス部に入ってるし・・・。」
「「あっ・・・。」」
そういえば、最近彩加といる事が増えてたから忘れてたな・・・。
戸塚はテニス部の正式な部員だし、それこそ勝手に部活に入れてしまえば引き抜き、ひいては奉仕部と同じ独善とみなされてしまう。
それだけは、何としてでも回避しなければいけないポイントだ。
「裏道なんて幾らでもある、それに、ウチの学校は部活関連に関してはかなり甘く見積もっている節がある、奉仕部が存在していられるのもそのためだろうな。」
「なんすかそのザル審査・・・。」
あの雑用係の役目も果たせてないような部活が今だに存在させられているのにも納得出来るな・・・。
とはいえ、それのお陰で俺達の部活も作り易いってなもんだ。
「申請さえすれば、明日にでも部活として活動を開始できる、それに、俺達の活動は予算も要求しないと来ている、認めない訳無いさ。」
「そこに先生の脅しがあれば、彩加の参加も認められる、ですね!」
脅しは言ってやるなよ、沙希さんよ・・・。
ほら、先生ちょっとしょげて・・・、無かったわ。
まぁ、この人は色々ずれてるしぶっとんでるから言われ慣れてる節はあるんだろうね・・・。
「表向きの活動内容は、千葉に現れる怪獣や宇宙人の情報を集め、それを広報誌に纏める事にしよう、この学校の奴等に、スパークドールズの事を知られない様に、印象操作しながらな。」
「なるほど、宇宙人が連れてきている怪獣が暴れている事を強調する事で、真実から目を逸らす、中々に考えている・・・。」
だが、それが上手くいくとは思えない。
何せ、既に一人、スパークドールズを使って怪獣にライブして暴れたし、変身の瞬間を目撃した奴もいる。
ソイツ等はウチのクラスのトップカーストのメンバーだから、影響力も計り知れない。
そんな奴等をどう抑えるのかも、これからのカギになってくるんだよなぁ・・・。
「ま、表向きってだけで、そんなに多くの頻度で出すもんでもないさ、まずは、次の文化祭で出す展示物程度だろうな。」
「案外と、時間は無いですね・・・。」
しかし、表向きの活動なら噛み付くだけで済むだろうから、一応警戒だけにしておくか・・・。
下手に動けば色々と厄介な事になるだろうしな。
「幸い、もうすぐ夏休みだ、沙希ちゃんと彩加君は兎も角、八幡君は集中して鍛えてやれるし、ウチのメンバーと同行してスパークドールズを探してもらっても良い。」
そういえばそうだったなぁ・・・・。
しかし、夏休みか・・・。
去年までは家で膝抱えながら課題やってほとんど家から出ないままだったなぁ・・・。
今年は殆ど家に帰る事ないんだろうなぁ、常に課題は持ち歩いとかないとな・・・。
「君達がまだ会った事の無いウルトラマンの力が戻って来ている、いずれ相見えるだろう。」
「それじゃあ・・・!」
ウルトラマンの力が戻って来ているって事は、アストレイメンバー全員が、ウルトラマンとして蘇ったって事なのか・・・!?
それなら、これ以上ない戦力に・・・!
「あぁ、俺を除いた三人が新たに復活、ウルトラマンのスパークドールズ達も徐々に手元に集まっている。」
「凄い・・・!でも、先生は・・・。」
確かに凄い、凄いがしかし・・・。
先生の復活は、まだ成らないのか・・・?
「いいさ、所詮俺の傷は当分塞がらん、世界が滅ぶ瀬戸際にならん限り変身は控えるよう言われてるんだ、戦闘面で俺はアテに出来ん事を覚えておいてくれればいいさ。」
先生をアテに出来ないとか、そんな事で落ち込む事は無い。
ただ、この世界のピンチに真っ先に戦いたいのは先生の筈だ。
それを見ているだけなんて、どれ程苦しい事か・・・。
「ま、それは兎も角、部の名前ぐらいは決めとこうじゃないか、案があればよろしく頼む。」
辛気臭い空気を振り払う様に、彼は少し声を張り上げて俺達を見た。
気にするなと言う様に、そして、前へ進もうと言う様に。
じゃあ、もう気にしないさ、先生の命位、俺が護り切ってみせるさ。
ま、先に部活名決めちゃおうか。
「はい、じゃあ俺はウルトラマン部が良いと思います!」
「「そんなバレバレの名前にしてどうすんの!!」」
「あれー?」
ボケたつもりはないけど沙希と彩加に突っ込まれるとは思ってなかったなぁ。
まぁ、確かに某宇宙キター!な部活から拝借してるけどさ。
こっちは宇宙どころかマルチバースキター!!だけどさ。
「じゃあ沙希は何かあんのかよ?」
「任せときな、あたしに良い考えがある。」
それ、大抵失敗するフラグじゃあありませんか。
ってか、なんでそんな小ネタ知ってるんだか・・・。
というより、胸張るのやめません?服が引っ張られてすんごい事になってるから。
「隣人部なんてのどう?」
「「アウトォォォ!?」」
よりによってなんでその部活の名前出てくんだよ!?
あそこ、真面目にボッチの巣窟じゃねぇか!!
勘弁してくれよ、折角脱ボッチしたと思ってたのにさ!!
「えっ?だ、ダメ?大志が買って来た小説にそんな名前があった様な・・・?」
「それだからダメなんだよ!!」
やっぱアレから持って来てたか!!
拒否っといて正解だったわ!!
「次!彩ちゃん!真面なの言っちゃいなYo!」
「彩ちゃん!?」
『八幡、暑さで脳が破壊されてしまったか・・・。』
彩加が驚き、Xが憐れむ様に言ってくるけど無視だ無視、今はそれよりも大切な事が有るんだよ!!
「え、えっと・・・、SOS団は、どう・・・?」
「「お前もかぁぁぁ!!」」
それパルプンテな現象が現実になる奴の部名じゃねぇーか!!
そんな部名だと怖くて迂闊に発言出来ねーよ!?
「あれ!?凄い織斑先生の部の略だったんだけど、だめ・・・?」
「いや、俺だけの部活じゃないんだよ、彩加君、気持ちは嬉しいけどさ。」
嬉しいんかい、ってツッコミは心の奥底に閉じ込めておこう。
けど、このままじゃ何時まで経っても決まらないんだよなぁ。
「ま、これ以上決められなければ仕方ない、俺が世話になった人達の名を借りて良いか?」
先生が世話になった人って、相当な人達だよなぁ。
こんな人が世話になったって、怪獣関連か・・・?
「怪獣や宇宙人に対して地球を護る防衛隊の名前、それが科学特捜隊、俺達はそれにあやかって科学特捜部、略して科特部だ、良い名前だろ?」
「科特部・・・。」
そんな隊が、別の地球にはあったんだ・・・。
俺達も、そんな人達の名を借りるからには、この世界を本気で護って行かないとな・・・。
「良いですね!すっごく良い!!」
「科特部、うん、しっくりクルね・・・。」
「頑張らないと、な・・・。」
彩加も沙希も、その名を借りる覚悟が瞳の奥で輝いていた。
俺も、俺もやんなきゃ嘘だよな・・・!!
「よし、ここに科特部の設立を宣言する!特に規約は設けない、好きにやってくれ。」
「「「はい!!」」」
先生の宣言に、俺達は揃って声を上げた。
これから、俺達の新しい戦いが始まるんだ!!
sideout
noside
「・・・、という訳だ、彼等の歩みを、俺達全員でサポートしていきたい、皆にはこれまで以上の助力を乞いたい。」
その日の深夜、一日の営業を終えたアストレイの店内では、一夏を含めた7人の男女が一つのテーブルに着き、何か会議の様に話し合いの場を持っていた。
一夏の表情には、何処か覚悟にも似た想いが滲み出ており、その迫力は凄まじいものが有った。
「分かってるさ、俺達の力は、この世界を護る事と、彼等を導くために戻って来た。」
彼の言葉に、対面する形で席についていた宗吾は神妙に頷き、自身の懐よりクリスタルがはめ込まれたようなアイテムを掲げた。
その表情からは、決意が読み取れ、命を掛ける覚悟が出来ていると言いたげだった。
「これでウルトラマンに戻れたのは、一夏様を除いて全員、ですか・・・。」
それを聞いていたセシリアもまた、蓮の蕾をイメージさせる装飾品が先端に取り付けられたスティックのようなモノを取り出し、一夏を気遣わしげに見ていた。
妻であるからこそ、一夏の苦悩が誰よりも分かるのだろうか、その表情は冴えなかった。
「あぁ、だが、それでも止まる理由にはならないさ、一夏の力と、あいつが戻ってくるまで、俺達が彼等を導こうじゃないか。」
それを見ていたコートニーもまた、鞘に収まった短刀の様な物を取り出し、戦うだけだと意思を固めた。
喩え一夏が戦えなくても、自分達がやるべき事は只一つ、巻き込んでしまった世界の為にも、死ぬ気で戦う、ただそれだけだと。
「そうだな・・・、とは言え、帰れない事も覚悟しとかないとな・・・。」
妻と盟友たちの言葉を聞き、それを頼もしく思うと同時に、二度と元の世界に帰れないかもしれない。
それは、自身達の命と引き換えにこの世界を護ると宣言したも同義だった。
その言葉を受け、メンバー達もまた、表情を強張らせ、哀しみに目を伏せた。
元の世界に戻りたいと思えど、そのための手段が無いに等しいのだ、幾ら希望を持てど、その先が見えなかった。
「それは兎も角、この二か月で俺達の力の大半が戻ったと言う事は、あの邪神の復活も近いと言う事、か・・・。」
「そうね、コルネイユを倒したからって、全てが終わった訳じゃ無いもんね。」
一夏の言葉に頷き、玲奈は状況の悪さに歯がみした。
封印を抑えていた7人のウルトラマンの内、6人のウルトラマンが手元に戻って来てしまっているのだ。
それはつまり、封印の完全なる決壊も同然と言う事だった。
だからこそ、うかうかしていられないのも事実だ。
これ以上被害を増やす訳にもいかない、だからこそ、この世界で命を落とす事も厭わない、一夏は暗にそう語っていた。
「この世界の、未来在る少年少女だけに背負わせるなんざ出来やしない、俺達が、大人として戦うんだ。」
彼の強い想いを受け、アストレイ達は力強く頷き、席を立った。
これからの戦いに備える為に。
自分達もこれから、表舞台に立つために・・・。
sideout
次回予告
夏休みに入った科特部のメンバーを待ち構えていたのは、何よりも過酷な特訓の日々だった。
次回やはり俺の青春にウルトラマンがいるのはまちがっている
川崎沙希は驚愕する
お楽しみに~