やはり俺の青春にウルトラマンがいるのはまちがっている   作:ichika

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比企谷八幡は太陽の輝きを知る 後編

side八幡

 

「あれから何か変わった事ある?」

 

翌日、俺は訓練の休憩中に沙希と横並びで彩加の訓練の様子を見ていた。

 

今回はセシリアさんとコートニーさんが相手になってくれている。

二人は主に速さとパワーを備えた戦士だったらしく、組手においてのキレは誰よりも凄まじいように思えた。

 

因みに、大志は家の事が忙しいらしく、昼からアストレイの方で訓練をする事になっている。

チームで動く事になっているとはいえ、流石に個人の事情も見とかないとな。

 

と言うより、沙希さんや・・・。

休憩中とはいえ、訓練の時のタンクトップで屈むのやめません?

眼福、もとい、目のやり場に困るんですが・・・。

 

それは兎も角・・・。

 

「んー・・・、特に変わった感じは無いかな、だけど、これが何よりの証拠かね?」

 

俺は腰に提げていたポーチから形状が若干変わったギンガスパークを取り出した。

 

あの大きな力を受け取ってから、ギンガのスパークドールズを読み込んだ際に顔が現れる部分が、ターンテーブルの様な物に変わっていた。

 

まだ試してはいないけど、恐らくここに6人のウルトラマンの力が記されているんだろう事が窺える。

 

それぞれ、歴戦の勇者たちの力がこのギンガスパークに、俺の手の中にあると考えると、俺は無意識にギンガスパークを握る手の力を強めてしまうほどだった。

 

ホント、とんでもないモノを託されちまった気がするぜ。

俺独りにゃ、重すぎる荷かもしれん。

 

「そっか・・・、でも、無理するんじゃないよ?あたしも彩加も、大志も先生達だってついてるんだから。」

 

俺の怯えが伝わったからか、沙希は優しく微笑みつつも俺の手をギンガスパークごとそっと握ってくる。

その温かさは、彼女の優しさを表しているように思えて、俺の焦りと怯えもあっさりと何処かへ行ってしまうような気がした。

 

独りじゃ御せない力でも、誰かと共にならば正しく使いこなせる。

そう、今の俺は一人じゃないんだ。

 

こんなにも思ってくれる人達が、何人もいるのだから・・・。

 

「あぁ、分かってるよ、もう、あの時みたいにはならないさ。」

 

その手を握り返し、俺は彼女を見詰めながら微笑みを返す。

 

取り繕う事なんて無い、心からの笑顔がこぼれた。

 

ついつい距離感が近くなってる気がするが、これはこれで・・・。

 

「青春、だな。」

 

「青春、ですわね♪」

 

「やっぱりふたりは仲良しだね~。」

 

そんな俺達の様子を、大人二人と宇宙美少年が微笑ましげに見てるのは、やっぱり恥ずかしいし、見てくれてるって言う意味で嬉しいから何かむず痒い・・・。

 

「く、訓練に戻ろうぜ!!」

 

「そ、そうだね!く、組手!組手やろっか!!」

 

ウルトラマン同士の組手も、これから先何度もあるだろうし、いい経験になるからな・・・!!

 

必死に言い訳の言葉を探しつつ、俺は沙希と向かい合って構えを取った。

 

誰かにしっかりと見て貰っている事、そのむず痒くも、今まで渇望すれど得られなかった強さと優しさをそこに感じながら・・・。

 

sideout

 

side沙希

 

「今日はこの辺にしようか、スパークドールズも見付からなかったしな。」

 

「三人とも、お疲れ様でした、お送りいたしますわ。」

 

日も傾いてきたころ、今日一日の訓練が終了した。

 

今日の成果は身体の効率的な動かし方とそれに応じた防御展開を得られたけど、目に見えるスパークドールズは怪獣、ウルトラマン含めて発見する事は叶わなかった。

 

でも、色んな意味で有意義な一日だったのは間違いない。

何せ、八幡と彩加と同じ時を過ごせてるんだ、退屈しよう筈も無いしね。

 

「お願いします、今日も一日ありがとうございました!」

 

コートニーさんとセシリアさんに対して、あたし達三人を代表するように八幡が頭を下げた。

 

詳しくは知らないけど、これってアレだよね。

熱血ドラマで見る様な体育会形式礼式だよね。

 

最近、八幡が妙に熱いトコロがあるんだよね。

出会った時は只の捻くれてるだけだったのが、今はこんなにもキラキラした表情を他人に向けるなんてね。

 

でも、そう言う処も好きになっているあたり、あたしも惚れっぽいのかなんて思っちゃうよ。

 

「ははは、一夏が君達の傍にいたがるのも分かる気がするな、俺も英語科の教師で入っとけば良かったかな。」

 

「あら、私のお店ではご不満ですの?」

 

「そう言う訳じゃ無いさ。」

 

コートニーさんの言葉に意地悪く聞き返すセシリアさんの言葉に、コートニーさんは何処か楽しそうに返した。

 

ホント、アストレイのメンバーって仲が良いんだね。

というか、セシリアさんって先生の奥さんなんだよね・・・?

 

コートニーさんと一緒にいても良い物なんだろうか・・・?

 

いや、この人達はそんなちっぽけな関係じゃないんだろうね。

 

「本当に仲が良いんですね?」

 

その様子が羨ましくって、それでいて楽しそうで、あたしはついつい声を掛けた。

 

「何年、何十年と一緒に過ごせば自然とこうなりますわ、食卓を共に囲んだ回数も、身体を重ねた回数も数え切れませんわ。」

 

「は、ははは・・・、年齢の事は考えたくないな・・・。」

 

セシリアさんの言葉に、コートニーさんは苦笑を浮かべながらもタメ息を吐いた。

年齢って、どう見てもあたし達より少し上の世代ぐらいでしかないと思うけど・・・?

 

「ん、まぁ、俺達の事はどうでもいいさ、君達は君達の力で、絆で進んで行け、俺達とは違った方法でもな。」

 

年齢の事などどうでも良いと割り切ったか、コートニーさんはその表情に笑みを浮かべてあたし達を励ます様にガッツポーズを取る。

 

それは、あたし達に対する何よりのエールだった。

 

「「「はい!!」」」

 

あたし達は顔を見合わせ、三人そろって頷き返した。

 

この絆を、何時までも。

あたしはそう願った。

 

その時だった、それはあたし達の前に降り立った。

「ッ・・・!」

 

「こんな所にまで・・・!?」

 

宙から現れた四体の飛行体の様な物体が、一体のロボットに合体し、盛大に土埃を巻き上げながらも着地した。

 

金色の装甲がまぶしいそれは、無機質故の不気味さをこっちにダイレクトに伝えてきた。

 

「キングジョー・・・!厄介な敵ですこと・・・!」

 

「火力も機動力もあるロボット怪獣だ、捕まれたらまず終わったと思え。」

 

セシリアさんがそのロボットに歯がみし、コートニーさんが冷静に戦力を教えてくれた。

 

特訓の成果、見せてみろって事?

それならあたしが・・・!!

 

「俺が行きます!!ウルトラの勇者たちから貰った力、ここで正しく使って見せます!!」

 

飛び出そうとするあたしと彩加を押し留め、八幡がギンガスパークを構えつつ走った。

 

「「八幡!!」」

 

手に入れたばかりの力をいきなり使いこなせるはずない・・・!

厄介な敵が相手なんだ、せめてあたし達も・・・!

 

ウルトライブの光に包まれて行く八幡を追おうとするけど、セシリアさんとコートニーさんがあたし達の前に立った。

 

「コートニーさんっ・・・!?」

 

「行かせてやれ、八幡君なりの、託された想いへの一つの返答なんだ、危なくなったら助けに入ってやれ。」

 

あたしを止めたコートニーさんの表情には、八幡への揺るぎ無い信頼だけがあって、助け合わなきゃと言う想いが先走ってしまっていたあたしには出来ない表情を浮かべていた。

 

そうだ、何時も一緒に戦える状況ばかりじゃないのは百も承知。

だけど、それでも見ているだけは、あたしは嫌なんだよね・・・!

 

「君の愛する人の強さをもっと信じてやれ、彼は強い、君達と過ごしていく中で得た強さで、きっと使いこなせるさ。」

 

「・・・、はい・・・。」

 

信じる。

言葉にするのは容易い、だけど、本当に行うのはなんて難しい事か・・・。

 

でも、あたしも信じてみようと思ってる。

八幡が、あたし達と過ごした時間を愛しいと思ってくれているなら、きっと・・・。

 

小さく、心の中で祈るあたしの目の前で、ギンガはその姿を新たな物へと変えた。

 

sideout

 

side八幡

 

『行くぜ、ギンガ!!』

 

変身し、キングジョーと向かい合った俺はすぐさま構えを取り、一気に距離を詰める。

 

『ショウラッ!!』

 

跳躍しながらも繰り出した右ストレートは、鈍い衝突音を上げながらもボディに突き当たった。

 

『か、硬っっ・・・!?』

 

殴った腕が痺れるような鈍い感触が伝わってくるは、留まると言う愚行を避けるためにも何とか後ろへ下がる。

 

反撃しようとしたキングジョーの横薙ぎは空を切るが、頭部より放たれた光線が俺の肩を掠めていく。

 

『くっ・・・!』

 

なんだこの硬さ・・・!?ハンパねーぞ!?

ゴメスでも少し怯んだパンチが効かないって相当タフだぜ・・・!?

 

それに加えて、光線まで持ってやがるとは・・・、厄介だぜ・・・!!

 

いや、コイツロボットだったよな、そう言えば・・・!!

硬くて当たり前、打撃に対する反応も無くて当たり前だったな・・・!!

 

だが、だとすれば、超強力な光線技当てる以外ないんだけどな・・・。

 

さて、どうしたもんか・・・!

 

距離を取り、攻めあぐねていたその時・・・。

 

『八幡!』

 

『タロウ・・・!?どっから話しかけてんだよ!?』

 

急に脳内にタロウの声が反芻してきたもんだから、驚きのあまり飛び上がりそうになってしまう。

 

いや、どこからなんて分かってる。

新たに力を宿してもらった、このギンガスパークだよな・・・!

 

『いまこそ一つになる時だ!私達ウルトラ戦士のパワーをその身に纏え!!』

 

『そんな事が出来るのか!?』

 

それって、リーカさんのメビウスがやった、強化フォームが出来てるって事だよな・・・?

 

だとすれば、俺にも新しい力があるって事か・・・!!

 

『仲間との絆を誰よりも感じている君ならば出来る筈だ!さぁ、ギンガスパークをもう一度掲げるんだ!!』

 

『おう!やってやるぜ!!』

 

タロウの指示通り、俺はギンガスパークのブレードを一旦収納し、柄頭の部分を叩きつつ再度展開する。

 

それに呼応するように、ギンガの身体が太陽の様な輝きを放つ。

 

『ギンガに力を!!ギンガストリウム!!』

 

ギンガとタロウの姿が重なり、光が一際強く瞬く。

その光が晴れた時、ギンガの姿は大きく変わっていた。

 

胸にはタロウの胸部プロテクターに似たモノが、額にはネオスとセブン21のモノに似たビームランプが新しく出現し、身体にはグレート、パワード、そしてゼアスを思わせる模様が現れていた。

 

姿だけじゃない、身体の奥から、6人のウルトラマンの力が湧きあがってくる!

これが・・・!

 

『これが、ギンガストリウム・・・!俺の新しい力か・・・!!』

 

いや、まだ与えられただけで物にはしちゃいない、自惚れるなよ俺!

 

ここで大切な人の為に使って初めて認められるんだ、気合入れてくぜ!!

 

『行くぜ、ギンガ!』

 

もう一度構えを取り、俺はキングジョーとの距離を一気に詰めていく。

 

『ショウラッ!!』

 

意表を突くべく繰り出した回し蹴りはキングジョーの胴部に突き刺さり、大きく弾き飛ばす。

 

すっげぇ・・・!普通のギンガのパワーとは比べ物にならんぜ・・・!!

 

だが、ここで感激している暇は無い。

俺はもう一度ギンガスパークの柄頭に出来たスイッチのようなモノを二連続で押し込む。

 

一度目は力の選定、二度目は確定だ!

 

『ウルトラセブン21の力よ!!アドリウム光線!!』

 

ギンガストリウムと同じ動きをするセブン21のイメージが重なり、額のビームランプから21の必殺光線の一つ、アドリウム光線が放たれた。

 

空気を切り裂きつつも光線は進み、キングジョーのアンテナを破壊する。

 

『よっしゃ!』

 

これ牽制技なんだよな・・・?

部位破壊ぐらいならお手の物って何気にヤバくないか?

 

だが、これで勝てる見込みもあるってもんだ!!

 

『次だっ!!』

 

次の行動に移ろうとした時、キングジョーは四基のUFOのような姿に分離し、俺の周囲を飛び回る。

 

これは、まさかっ・・・!!

 

『シュワッ!!』

 

地を蹴り、上空へ飛んだ直後、元いた場所に四基のUFOより破壊光線が放たれる。

 

飛んで正解だったぜ・・・!!

あんなの喰らったら一貫の終わりだ・・・!

 

『けどな、そう何度も喰らうか!!』

 

『ウルトラマングレートの力よ!!グレートスライサー!!』

 

ギンガセイバーとは異なった輝きを持った光の剣が現れ、UFOの内一機を紙でも切るように容易く切り裂いて撃墜した。

 

身体を構成するパーツがやられて焦ったか、キングジョーは再び合体し、俺達目掛けて破壊光線をぶっ放してくる。

 

向こうも死に物狂いって事か?

ロボットなのに人間臭いトコ有るじゃねぇか!!

 

だけど、だからといって負ける訳にはいかない。

俺だって護りたい人がいるんだからな!!

 

『ウルトラマンタロウの力よ!!』

 

これで、トドメだッ!!

 

手を頭上で組み、腕を畳みながら脇まで降ろしながらも光の力を溜めていく。

 

これが、これが俺の新しい力だっ!!

 

『『ストリウム光線ッ!!』』

 

腕をT字型に組んで放つ光線、ストリウム光線がキングジョーの破壊光線を一気に押し返し、その金色の装甲をあっさりと貫き爆散させた。

 

『これが、ウルトラの勇者たちの力・・・、俺が、使いこなしていくのか・・・。」

 

託されたモノは大きい。

でも・・・。

 

俺は地上に降りながらも変身を解除、沙希達の下へと戻る。

 

「八幡・・・!よかった・・・!」

 

よっぽど心配していてくれたのか、沙希が真っ先に駆け寄ってくる。

 

彼女も俺と肩を並べられる力を持っているからこそ、見ているだけじゃなく、共に戦いたかったんだろうな。

 

でも、こんな俺でもプライドと言うモンはある。

 

護れる力を、護りたい人の為に使う。

それが、俺が決めた事だから。

 

だから、見ていてくれよ、タロウ、ウルトラの勇者たち。

 

俺は、貴方達から貰った力で、俺の事を想ってくれるひとを護ってみせる。

 

きっと、それが俺のすべき事だから・・・。

 

sideout




次回予告

力を着けていく八幡に遅れは取らない。
共に戦う為に、沙希と大志の力が共鳴する。

次回やはり俺の青春にウルトラマンがいるのはまちがっている

川崎沙希は勝利の旋律を奏でる

お楽しみに

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