ギースにガンプラ   作:いぶりがっこ

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第五話「パンギャゴ・ホーホ」

 大阪市内某所。

 

 コーヒーショップのフロアーは、いつ果てるとも知れぬ喧騒に包まれていた。

 時ならぬ賑わいに店内を駆ける店員の姿を尻目に、恰幅の良い口髭が苦笑をこぼす。

 

「やれやれ、会場の熱狂が、よもやこんな所にまで波及していようとはね。

 これでは落ち着ける場所を探すだけでも一苦労だな」

 

「それだけ今大会の注目度も上がっていると言う事ですね。

 まったく、選手権前の調整期間と言う死角を突かれ、良いようにやられてしまったものです」

 

 対面の男、褐色の肌にスーツ姿の青年が、口髭のぼやきに相槌を打ちながら、コーヒーカップを手許へ引き寄せる。

 ゆっくりとスプーンを掻き混ぜる左の指に、銀の指輪が鈍く輝く。

 

「ガンプラ黄金時代に待った! 古のゲームセンターより挑戦者あり、か……。

 まったく、よくもまあメディアも面白おかしく書き立てたものさ」

 

「おや?

 思いの外、大尉は冷静でいらっしゃる。

 三代目メイジン辺りは、何やらえらい剣幕で会場を後にした、なんて話も聞いていますが?」

 

「ふふ、実にメイジンらしい話さ、場面まで目に浮かぶようだ。

 だが生憎と私は、もう彼ほどには若くはないよ」

 

 大尉と呼ばれた口髭は、そう言ってちらりと視線を逸らした。

 つられ、青年が周囲を見渡す。

 

 郊外のコーヒーショップを埋め尽くす人々の声。

 彼らはみな、今日の大会を目の当たりにした、一角のガンダムファンたちである。

 

 運営何やってんだよ、あんな物を大会に加えやがって!

 プラフスキー粒子が通ってんだぜ、何の問題がある?

 けどありゃガンプラじゃない、あんな愛の無い機体はバトルへの冒涜だ。

 今さら、原型が分からないほどに改造を重ねた機体なんて五万とある。

 逆に聞くが、今大会にアレ以上にビルダーの愛着が乗った機体があるかよ?

 また秘伝書の仕業か。

 そもそもすーぱーふみなが悪い。

 あんなもんがが世に出た時点で、公式は手を打っておくべきだったんだよ。

 つーかギースって誰?

 あのビーム、どうやってプラフスキー粒子で再現してんだ?

 シップーケーン シップーケーン オベンジョベイビー!

 カ、カミキ選手だって似たような事やってたし……。

 会場ビリー多すぎィ!

 

 人々の感想は様々であったが、しかし、全ての話題の中心は、一人の『男』に帰結していた。

 

「見たまえ、このガンダムファンたちの熱気、これが答えさ。

 あの試合を見た者全てが、未だ経験した事の無い『敵』に戸惑い、真剣に討論を重ねている。

 シゲル選手の本心はともかく、少なくとも彼の行動は、業界全体で見ればプラスに働いている」

 

「共通の敵の存在が、ガンダムファンの団結を促し、議論を活発化させる、と言う事ですか?」

 

 青年の出した結論に、うむ、と口髭が力強く応じる。

 

「あの『ナイトメア』と言う機体は、確かに強い。

 単純な実力は勿論、何より、全ガンダムファンに対し悪役(ヒール)を務め上げられるだけの華がある。

 シャア・アズナブルやランバ・ラルの存在を否定しては、ガンダムシリーズは存続できまい」

 

「……時の巨隗、ギース・ハワードは悪徳の人だが、彼の巨悪に庇護される形で、サウスタウンは最盛期を築き上げた」

 

「ほう、詳しいな、ゲームの話かね?」

 

『大尉』の感心した風な口調に対し、青年はやや苦笑を浮かべ、カップを口元へと運んだ。

 

「浅学ですが、ミナミマチ選手の事を知ってから、少しばかり興味が沸いてきましてね。

 自分なりに調べてみたと言う訳です」

 

「ふむ……、まるで以前から、彼の事を知っていたような口ぶりだね」

 

 と、何気ない大尉の一言に、カップを下ろしかけた指が、ぴくん、と止まる。

 じっ、と青年を見つめる大尉の瞳に、心持ち真剣な色が宿る。

 

「確か、烈風拳、と言っていたか。

 あの奇妙な技を見た時、私は真っ先に君の事を思い出したよ。

 粒子発勁……、ガンプラバトルの世界に拳法の理念を持ち込んだのは、君が最初だったね」

 

「……ラル大尉も人が悪い。

 僕をここに誘ったのは、それが目的でしたか」

 

「プラフスキー粒子の裏の裏まで知り尽くした自分が、表舞台に出る訳にはいかない、と……。

 いつだったか君はそう言っていたね、ヤジマ・ニルスくん?」

 

「……僕の方だって、これでも今日の展開には驚いているんですよ?

 あの『裏技』の存在に気が付くのは、熱心なプロのビルダーか……。

 あるいはそれこそ、本物の拳法家くらいのものだと思っていましたから」

 

 青年は観念したかのように大きく溜息を吐き、カチャリとカップを戻した。

 

「先月の頭くらいでしたか。

 大尉のご想像の通り、確かに彼、ミナミマチ・シゲルは、ウチのラボに来ましたよ」

 

「ニールセン・ラボへ……?

 そこで君は、あの特異な粒子コントロール方法を彼に教えた、と」

 

「まさか。

 あのナイトメア・ギースの仕上がりは、全て彼の独創によるものです。

 僕はただ、彼の質問に対して、常識の許す範囲で答えてあげただけですよ」

 

「質問、かね。

 それで彼は、一体何を?」

 

 興味深げに身を乗り出して来た大尉に対し、ヤジマ・ニルスは両指を組んで、やや意地悪な笑いを浮かべた。

 

「第7回・ガンプラバトル選手権。

 フィンランド代表、アイラ・ユルキアイネン選手の戦術について――」

 

 

 そんなわけで、俺、ミナミマチ・シゲルは、大阪はガンプラ心形流道場を後にして、一路、香港国際空港へとやって来たのであった。

 

 国際都市香港。

 天然の港湾を抱え、アジアの金融、経済の中心的役割を果たす一大貿易都市であり、映画、ドラマ、小説などの舞台として数多く描かれる東洋の摩天楼である。

 こと、一作品に一人は拳法キャラを要する格ゲー界隈においては、サウスタウン、ESAKAと並ぶ格闘ストリートとして知られている。

 

 シャドルーの闇に関わった捜査官が謎の失踪を遂げ、警官は日常的にヌンチャクを振り回し、闘神三兄弟とまで謳われた拳法家が巨万の富を築き上げる一方、九龍城砦には沖縄出身のヤクザや暗殺成功率180%の仕事人が蠢き、サイキョー流道場の二代目や映画界のスーパースターが格闘技世界最強を志す傍ら、名物拳法兄弟はパンツ一丁のキカイダーから街を守るべく奮迅し、タイガーバームガーデンではスタンド使い達のチュートリアルバトルが繰り広げられ、遥か未来世紀においてはネオチャイナから独立を果たし、デビルガンダムを擁して世界征服を策謀する。

 

 そんな危険な街、ホンコンタウンへ俺は乗り込んで来たのだ。

 

 俺自身、思えばこれが初の海外進出である。

 これまで俺にとっての中国とは、せいぜい母の実家、島根に帰省した際に「ワタシ日本の中国行ってきたアルよー」などとゼンジー師匠の持ちネタを披露するための存在でしかなかった。

 ゲームでの持ちキャラすら、サウスタウンの華僑勢と、清朝の王虎、李師父がせいぜいと言った所で、どこまでも縁が無い国である。

 そんな縁遠い国、中国人口13億人の中から、現代のタン・フー・ルーを探し出そうと言うのだから、我ながら無謀な話だ。

 

 とは言え、さすがに俺も無為無策で香港くんだりまで来たワケではない。

 漢の高祖・劉邦は言いました。

「策が無いならコネを使えば良いじゃない」と。

 

 俺と中国を結ぶ共通項、それはやはり格ゲーである。

 ガンプラバトル界隈においては、未だ現代のサイ・サイシーを生み出す事に苦戦している中国勢であるが、これが格ゲーとなると少々事情が異なる。

 元々、日本では余技、娯楽の一環としか見られていないゲーマーであるが、海外ではeスポーツと言う競技として認知されており、職業としての『プロ』が存在する。

 メジャーなタイトルともなれば天井知らずの賞金が発生し、有力選手には企業のスポンサーがつき、各々にチームを組んでゲームの攻略を目指すと言う。

 と言うか、まんまガンプラをゲームに置き換えた盛り上がりを見せているワケだ。

 

 ネトゲ事情に強いお隣り中韓においても非常に人気が高い分野である。

 こと中国においては『ザ・キング・オブ・ファイターズ97’』が、もはや国技と言っても過言ではないレベルで浸透していると言われる。

 決してバランスの良くない本作を、ローカルルールでガチガチに縛った上でやり込んでいると言うのだから、修羅の国も極まれり。

 ギース様がいない、死ぬまでパワーチャージ、ザキさんがオロチ、などの理由で97を敬遠していた俺は、こんな所でも置いてけぼりを喰った形であるが、とにかくSNKのアジア拡張路線は決して無駄では無かったと言う事なのだろう。

 金雄載も草葉の陰で喜んでいるに違いあるまい。

 

 ともあれ、そんなKOF大国と俺の仲立ちをしてくれるのが、そう、誰あろう。

 小学校の時に香港に転校した、お隣さん家のヤマダくんである。

 その後、エリートゲーマーとして順調に成長を重ねたヤマダくんは、高校卒業と同時にお父上の会社のアミューズメント事業を引き継ぎ、今ではアジア十数カ国にアーケード事業を展開する、香港でも指折りの敏腕経営者になっていると言う。

 幼少期より卓越していたプレイ技術も円熟の域に達しており、現地ではリアル闘神三兄弟とまで称えられる程の伝説的ゲーマーとして名前が通っている。

 駄菓子屋の片隅で二人してライデンをボコったヤマダくんがこの出世とは、時の流れを感じずにはいられない。

 

 転校以来、ヤマダくんとは絶えず連絡を取り合っていた。

 事業主としての忙しさもあろうに、ヤマダくんは「一度こちらに遊びに来てくれ」などと気さくなメールをくれたものであるが、その度に俺は、曖昧に回答を濁していた。

 一社会人として立派に大成したヤマダくんと、ダラダラとゲーセンの店員を続ける俺。

 二人の間に立ちはだかる、圧倒的社会格差の壁を前に、中々会いに行こうと言う踏ん切りがつかなかったのである。

 

 だが、事、ここに至っては、もはや恥も外聞も無い。

 烈風拳を自在に操れるギースを作る。

 その為にだったら、利用できるものは何だって利用しよう。

 ヤマダくんは良い友人だったが、君のお父上がいけないのだよ(意味不明)

 

 そんな感じで、俺は面の皮を通常の三倍くらい分厚くして、香港国際空港へと降り立った。

 だが、その自慢の頬は、わずか十分と経たぬ内に札束でブチのめされるハメになった。

 

 空港の玄関に立つ俺を出迎えたのは、かのドロシー・カタロニア嬢似の金髪美人秘書が運転する、これまた黄金色に輝くリムジンであった。

 絶対に笑ってはいけないガンダムW24時の中でも、ダイレクトに腹筋を狙ってくる迷シーンであるが、その後部座席から飛び出してきたチン・シンザンにいきなり全力でハグされたとあっては、思考の追い付く暇も無い。

 

 いったい何が起こっているのか。

 頭の中に香港ステージBGM『パンギャゴ・ホーホ』が最大音量で鳴り響く。

 上等そうなスーツに身を包んだ現在のチン、もといヤマダくんは、呆然と固まる俺をリムジンへと放り込んで、そのまま香港の夜へと車を走らせた。

 

 辿り着いた繁華街で俺が目にしたものは、いかにも格式ばった中国宮廷風の建物であった。

 

 ヤマダくん曰く、かのおフランスのナントカにおいて世界最高峰の七つ星を頂いた、中国国内でも最高の歴史と伝統とナントカを誇る料亭のカントカ楼とか言うナントカらしい。

 ヤバイ予感がビンビンする。

 うっかり飲茶の一つでも頼もうものなら、その金でネオジオが全ソフト丸ごと定価で買えそうな圧倒的オーラだ。

 

 んなモン知った事かとばかりに、ひょいひょい進むヤマダくんの背中を慌てて追う。

 待ってヤマダくん! 一人にしないで!

 こんな店、ちょっとオシャレした王覚山みたいなファッションの俺が入れる場所じゃない。

 入店と同時にベノムストライクで追い出されたとしても文句は言えねえ。

 

 だがどうした事であろうか?

 お店の方々はまるで国賓でも迎えるような恭しさで、我々を奥へ奥へと招き入れるではないか?

 何と言うヤマダパワー。

 知らず、生まれたての小鹿のようにガクガクと膝が震える。

 

 その後、俺は百万ドルの夜景が一望できる望楼の一角で、まるでラクス・クラインめいた、すっげー良い匂いのするチャイナドレスのお姉さんを右に左に侍らせながら、かのナントカ朝の楊貴妃がナントカの折にカントカ厨士を一同に集めナントカカントカ作らせたと言う、ナントカ全席をナントカカントカ貪るように喰った。

 

 100メガカルチャーショックで馬鹿になった俺の脳味噌がかろうじて思い出せたのは、花京院典明から教わった、お茶のお代わりの頼み方だけであった……。

 

 

 楽しいような楽しくないような時間も、とにかく人は平等に過ぎていく。

 宿へと向かうリムジンの中で、俺は呆然と時の流れに想いを馳せていた。

 

 魯迅の短編『故郷』を読んだ時、俺は時間の残酷さに心を震わし、決してルントウのような卑小な男にはなるまいと思ったものであった。

 しかし現実はどうか?

 今だって、傍らのヤマダくんは、のべつ幕なしに小学校時代の話を並べ立ててくるが、大切な筈であった思い出は全て、俺の心を上滑りして行くではないか?

 

 大人になったヤマダくんは、未だ友誼を忘れる事なく、俺の突然の来訪に対して最高のもてなしで応えてくれた。

 そんなヤマダくんに対し、しかし俺は、うまく心を開く事が出来ない。

 別世界の住人になってしまった彼に対し、どうしても心の壁を感じてしまう。

 否、あのルントウのように卑屈になって、自ら壁を築いてしまう。

 

 自己嫌悪であった。

 今はただ、一刻も早く蒲団に潜って、泥のように眠りたかった。

 

 しかし、最後の事件は、まさにその夜に向かった宿舎に残されていた。

 

 

 

 香港はポートタウンの一角にそそり立つ、ギースタワーめいた伽藍の摩天楼。

 この不夜城でも一等高級なロイヤル・スイートの最上階こそが、ヤマダグループ総帥のプライベートルームであると言う。

 

 その豪華絢爛なる扉を開いた俺の目に最初に飛び込んできたのは、ラミネート加工の施された、一枚の色褪せたポスターであった。

 

 ささくれだった心を癒す、閑静な湖畔の風景。

 物憂げに一人佇む、裸足の少女。

 白い爪先から水面へ向けて、澄明な波紋が静かに広がっていく。

 爽やかな風にそよぐ長い黒髪に、落ち着いた色合いの赤のリボン。

 キャッチコピーは『コップ一杯の自然を大切に』

 

「あ、ああ……!」

 

 思わず感嘆がこぼれた。

 知っていた。

 あの時代を共有する、どうしようもないゲーム少年たちの中には知っている人も多いであろう。

 

 ナコルルのポスターだ。

 自称硬派なゲーマー達を一瞬にして魔道に陥れ、三鷹市各所で凄惨な強奪事件を巻き起こしたとまで言われる、あのナコルルの伝説的ポスターだ。

 

 ヤマダくん家に遊び行くと「僕のパパが三鷹市水道局員と知り合いでね」などと殊更に見せつけられてきたポスターである。

 その度に俺は「いや、俺の嫁はタムタムだから」と強がって見せたものであったが、内心やはり喉から手が出るほどに欲しかった。

 そんな醜い嫉妬の炎も、今は鮮やかな郷愁となって胸元にこみ上げる。

 

 とっさに後ろを振り返る。

 ヤマダくんは「いやあ」と照れたような笑いを浮かべ、ポリポリと頭を掻いた。

 瞬間、じわり、と視界が滲んだ。

 ボロボロと大粒の涙がこぼれ、情けなくも嗚咽が漏れるのを抑えられなかった。

 

 何と言う事であろうか。

 何と言う事であろうか!!

 

 功成り名を為し、同期の誰もがうらやむスーパーセレブの仲間入りを果たし、今やすっかり身も心も丸くなってしまったヤマダくん。

 そんな彼が、未だリアルに嫁も作らず、遥かカムイコタンの地に眠る永遠の少女を、今なお想い続けているなどと、誰が想像出来ようものか。

 

 俺は泣いた。

 下らぬわだかまりで彼に寂しい思いをさせ続けた己を恥じ、次いで、斬サムが発表された途端にチバレイチャムから桜井リムへと乗り換えた、自身の過去の行いを恥じた。

 

 泣きながら思い出していた。

 94年11月――。

 俺はヤマダくんをチャリの荷台に乗せ、一路、近場の薄汚れたゲーセンを目指していた。

『真サムライスピリッツ-覇王丸地獄変-』のリリースである。

 

 ED、カムイコタンの地に消えて行く少女の姿に、ヤマダくんは周囲の目も憚らず号泣した。

 崩れ落ちる彼の背に、どんな言葉をかければ良いのかも分らぬまま、俺はただ漠然と、ナコルルはもう自分の恋人では無いのだと知った。

 

 

 

 それから二人、その日は夜を徹して真サムをプレイした。

 ヤマダくんの紫ナコは、相変わらずダイヤグラムを引っくり返したかのような凶悪な性能で、結局、俺のズィーガー卿は、一度もコップを決める事無く夜明けを迎えた。

 

 

 ――別れの朝。

 

 ヤマダくんは俺に対し、このまま香港に留まって事業を手伝ってくれないかと持ちかけて来た。

 じくり、と胸が疼いた。

 逡巡の後、しかし俺は静かに首を横に振った。

 

 あの日のヤマダくんの痛みを理解できたのは、後の95年、リアルバウト餓狼伝説の稼働した年末の事であった。

 

 きっとあの日、二人の目指す未来は、少しだけ変わったのだと思う。

 ヤマダくんの事業ほど立派なものではないが、しかし、今の俺にもささやかながら夢がある。

 

 ヤマダくんは少し寂しそうな笑みを浮かべ、すっ、と左手を差し出して来た。

 マメ一つない、相変わらず綺麗な指先だった。

 俺はぐっ、と力強く握り返し、朝焼けのビル街に踵を返した。

 

 

 

 大陸の朝が、始まろうとしていた。

 

 中国探邦、二日目。

 無事にヤマダグループ総帥の協力を取り付けた俺は、揚々と香港の街並みへ溶け込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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