科学の都市の大天使   作:きるぐまー1号

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オリキャラのモデル(外見)はあの子です。ちょうどイタリア娘ですしね!


ep.49 9月30日-3

 午後3時。地下街入口。

 

「あなたが要求を呑まないのなら、あなたごと上位個体を撃ち抜くことになりますがよろしいですか、とミサカは確認をとります」

 

「そんなサブマシンガンとゴム弾程度じゃこの人を撃ち抜くなんて無理なんじゃない? ってミサカはミサカは頭越しに10032号を挑発してみたりー」

 

「ならば確かめてみましょう。今こそ革命の時です、とミサカはここに宣言します」

 

「少しでも撃つそぶりを見せてみろその瞬間がお前の最後だ御坂妹」

 

 存外にドスのきいた声で、勇斗は目の前に立つ御坂妹――――鈍く光るサブマシンガンを勇斗に突き付けている――――に宣言する。

 

「ちなみに打ち止め(ラストオーダー)の言う通り、そんなおもちゃじゃ俺には勝てねえぞ」

 

「……、…………、……ミサカネットワーク内でも同様の結論に達しました。無駄なことはやめて武器を下ろします、とミサカは諦めの意思を表示します」

 

 その様子を見た御坂妹が、突きつけていたサブマシンガンを下ろした。銃弾――――暴徒鎮圧用のゴム弾をマガジンから取り出し、サブマシンガン本体と共に、肩掛けにしていた学生鞄にしまい込む。

 

 そこまで確認して、勇斗は肩~背に抱き付くようにして隠れていた打ち止め(ラストオーダー)を地面に降ろした。

 

 ――――野暮用で支部に戻ることになった固法と別れ、白井と合流することになった勇斗。そんな勇斗に、「物騒な姉妹喧嘩をしている姉妹がいる」という通報が入ったのはつい先刻の事。とりあえず通報のあった場所まで向かっていたその途中、ダダダダダ、ガバッ!と地下街から飛び出してきた人影が背後からジャンプ一番抱き付いてきたのだ。「ぴゃー、助けてー!ってミサカはミサカは安全地帯に抱き付いてみたり―!」という声と共に。

 

 いきなり抱き付かれるし抱き付いてきた人間の髪の毛が首筋に当たってざわざわするしで大分びっくりした勇斗だったが、肩ごしに後ろを振り返ればそこにいたのは、その特徴的な語尾で予想した通りの見た目10歳くらいの少女。体は幼いながら顔つきはさっきシメた某超能力者(レベル5)とそっくり。――――早い話が、ミサカシスターズ検体番号(シリアルナンバー)20001号、打ち止め(ラストオーダー)だったのだ。

 

「おー久しぶりだな打ち止め(ラストオーダー)。っていきなり『助けて』ってどうしたんだ藪から棒に。……追われてるのか?」

 

「うん! そう! ってミサカはミサカは元気よく答えてみたり!」

 

 ――――学園都市の最暗部、ある意味ではこの街の負の側面の結晶ともいえる存在、『妹達(シスターズ)』。そしてその司令塔たる上位個体、打ち止め(ラストオーダー)。彼女1人さえ手に入れてしまえば、1万人ほどの発電系能力者(エレクトロマスター)が形作る生体ネットワーク、『ミサカネットワーク』を操ることができる。それを悪用した結果、それが悪用された結果、発生したのが9月20日の一件。木原幻生、学園都市暗部に蠢く木原一族の1人、SYSTEM分野研究の長老たる彼が、ミサカネットワークを乗っ取り、AIM拡散力場の流れを操作し、捻じ曲げ、収束させ、御坂美琴の体に叩き込むことで能力の暴走/覚醒を促した。結果、御坂は単なる『科学』の範疇を越え、『異世界(まじゅつ)』に足を突っ込みかけたわけだ。

 

 扱い方によっては凶悪な武器となるミサカネットワーク。その司令塔直々の救援依頼にシリアスな空気を感じ勇斗は一瞬身を固くするが、すぐに元気よく微笑んでいる打ち止め(ラストオーダー)の表情が目に入り、拍子抜けしてしまう。

 

「? ……どういう状、」

 

 状況だ? と問いかけようとした勇斗。しかし言い終える前に、そこで次なる登場人物がその場に乱入する。

 

「その背中に乗っているちっこいのをすぐにこちらに引き渡しなさい、とミサカはこのサブマシンガンを突き付けながら要求します」

 

 それはミサカ10032号、通称御坂妹と呼ばれる少女だった。打ち止め(ラストオーダー)同様地下街から飛び出してきた彼女のその手には、鈍い光を放つサブマシンガン。引き金に指を掛けたまま、その銃口を勇斗に真っ直ぐ向けている。――――そんな光景を見た通行人がギョッと驚いた表情を見せ、速足でその場を逃げていった。

 

 ――――そして話は冒頭に繋がる訳だ。

 

 テキパキと銃を学生鞄にしまう御坂妹。それを眺めながら勇斗は気づいてしまった。通報で言われていた姉妹喧嘩、恐らく原因はこいつらなのだと。

 

 ――――無駄に疲れたような気がする。かと言ってこのいたいけな少女たちにキレるのもなんというか違う気がする。

 

 そんな感じのぐったりした感じを込めて、勇斗は口を開いた。

 

「……つーか、何で姉妹喧嘩ごときでそんなゴツイサブマシンガン持ち出してんだよ」

 

「上位個体直々の演習依頼とあれば本気を出すしかないでしょう、とミサカは理由を説明します」

 

 銃をしまい、学生鞄を肩掛けにして、御坂妹は勇斗を――――そして勇斗越しに打ち止め(ラストオーダー)を見つめ、そんなことを言った。

 

「演習依頼…………? 軍事演習でもやってたのかよ…………」

 

「ミサカにゴーグルを取られてー、取り返そうとムキになってただけかも、ってミサカはミサカは10032号の精神的な未熟さを指摘してみたり」

 

 フフン、と胸(平ら)を張ってふんぞり返る打ち止め(ラストオーダー)。確かにその頭には、いつもは御坂妹が持っているゴツイゴーグルが乗っていた。それを見た御坂妹、()()()()()()ムッとした表情を浮かべるという器用なことをやってのけ、

 

「言ってくれますね上位個体、とミサカは静かに怒りをあらわにします。それに精神的な未熟さについてはあなたに指摘される筋合いはありません、とミサカは上位個体の論理的欠陥を指摘します」

 

「べー、だ。ミサカはまだ見た目が幼いからいいんだもーん、ってミサカはミサカは自分の強みを存分に利用してみたりー」

 

「…………やはり今こそ革命を」

 

 目にも留まらぬ早業で再び鞄からサブマシンガンを取り出す御坂妹。しかしその銃口が勇斗と打ち止め(ラストオーダー)に向けられるより早く、勇斗は銃ごと腕を捻り上げ、御坂妹の動きを封じていた。

 

「悪いわアホか。いい加減にしろ」

 

 そして脳天にチョップ。

 

「な…………、『実験』で鍛えられたこのミサカよりも早い……? とミサカは驚愕を露わにします」

 

「すごいすごーい!何でそんなにはやいのー!? ってミサカもミサカもびっくりしてみたりー!」

 

「そしてこの強引な感じ……、嫌いじゃありません。 とミサカは頬を紅く染めてみます。……ぽっ」

 

「ぽっ、じゃねーよ無表情のままじゃねーか。そろそろ反省しろよテメェ」

 

 勇斗のボヤキはむなしく街に溶けていく。

 

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

 

 午後4時。第3学区・喫茶店。

 

『おいテネブラ。お前今どこで何してんのよ』

 

 スマートフォンのスピーカーから不機嫌そうな女性の声が流れてきた。

 

「えーっとぉ、……第3学区ってところにあるカフェでぇ、優雅にティータイム、ってところかしらねぇ。意外とおいしいわよぉ。ヴェントの分も買っていくぅ?」

 

 その声に対し、ふわふわした声の持ち主が応える。

 

 第3学区。外部からの客を多く招くために色々とオシャレなカスタムで装飾された学区。その一角にあるシャレオツな喫茶店。静かでゆったりした時間が流れる空間の中、それをぶち壊しにするような声で――――別にそこまで大声を出しているわけではないのだが――――電話をしている女性が1人。ウェーブがかった腰まで届く長い茶髪を頭の後ろで束ねている。目も同じ茶色。白いノースリーブのシャツと赤いネクタイを押し上げる豊満な胸部、すらりとした腰のくびれ。黒いスカートからは同色のガーターベルトが覗いている。みな口を揃えて『可愛い』と評価するだろう整った顔立ちに、嫉妬すら集めてしまうような女性らしい体つきだ。

 

「特にこの『ほうじ茶ティーラテ』ってのがいいわねぇ。店員さんに勧められた通り『オールミルク』にしたんだけどぉ、正解だったわぁ」

 

 店内に彼女以外の客がいないわけではない。それどころかむしろ午前授業だったということもあり、普段の平日と比べると、客――――ちょっと背伸びしたがりな女子中高生たちの姿が目立つ――――は多いくらいだ。しかしその大勢の客の誰もが、そして店員ですら、何の反応も示さない。()()()()()()、彼女は周囲の世界から隔絶されていた。

 

『……………………それ、ちょっとウマそうなのが腹立つ』

 

「あらぁ、ヴェントも素直じゃないわねぇ」

 

 電話口、たっぷりと沈黙した後にとびっきり不機嫌そうな声でそう返事をした『ヴェント』に対し、『ヴェント』から『テネブラ』と呼ばれたその女性は、優雅にクスクス笑いながらそう返答した。

 

「…………そういえばヴェント、今さらっと流しちゃったけどぉ、やっぱり『テネブラ』って呼ばれるのは慣れないわねぇ。前までみたいにぃ、『ルーチェ』って呼んでほしいなぁ」

 

『いや……どう考えても無理があるだろそれ。中年過ぎたオバサンを「女の子」って呼ぶくらい無茶だと思うわよ』

 

 溜息と共にそんな辛辣なセリフが返ってきた。しかし『テネブラ』はそれに対して怒るわけでもなく、優雅な笑みを崩すこともなく、

 

「あー、やっぱりぃ? 確かに私もぉ、今は『ルーチェ』より『テネブラ』の方がしっくりくるって思ってるんだけどぉ」

 

『今だろうがそうじゃなかろうが間違いなくお前は「テネブラ」の方があってるよ。そんなにおっとりした見た目なのに、心の中に一体何を隠してんだか』

 

 電話の向こうで、やれやれ、と肩をすくめている姿が目に浮かんでくるような、そんなわかりやすい声色だった。

 

「あー、そうやってすぐ人を腹黒女みたいに言うんだからぁ。そういう風に口が悪いのがヴェントの悪いところだよぉ」

 

『いや……「腹黒女みたい」っていうか、要するに「腹黒女」ってことだからな』

 

「…………腹に一物抱えた女ってぇ、何かこう、ミステリアスっぽくて魅力的よねぇ」

 

『…………お前がそう思ってるんならそうなんだろうよ』

 

「そういうことにしておいてぇ~」

 

 ふふ、とやはり上品に1つ笑って彼女はその話題を打ち切った。そして、改めて、

 

「そういえばぁ、()()()()()ぅ?」

 

『…………術式の調整に時間がかかってる』

 

 そんな彼女の一言で、一瞬にして電話の向こうの雰囲気が変わった。和やかな空気は霧散し、張り詰めた空気が漂い始める。

 

『しばらくこの霊装を使ってなかったからな。()()()は強力な分、繊細な調整が必要なんだよ』

 

「うーん、……それはぁ、あとどれくらいかかるのぉ?」

 

『あと1時間半から2時間ってとこ。終わり次第派手に突っ込んでやるわよ』

 

「もちろんいいわよぉ。その方が『天罰』の効果も上がるだろうしぃ」

 

 そして彼女(テネブラ)は、口元をキュッと吊り上げる。

 

「ヴェントが好き放題暴れてくれるとぉ、私も私の目的が果たしやすいからぁ、もうどーんとド派手にやっちゃってねぇ」

 

『……言われなくてもそのつもり』

 

 再び溜息と共にそんな言葉が聞こえてきて、そして通話が途切れる。それと同時に、オーディオのボリュームを上げたかのように、周囲の喧騒――――ごくごく小さな話し声や食器を持ち上げたり動かしたりした時のちょっとしたカチャっという音くらいだが――――が戻ってきた。

 

 その変化を耳で感じながら、彼女は目の前に置いたふた付きの紙カップのふちに優しく指を這わせる。

 

(ふふふ……やっとあなたに会えるのねぇ、千乃勇斗くん。楽しみだわぁ)

 

 実に楽しげに、少なくとも表面上は一転の曇りもなく、しかし心の中を窺わせることのない、そんな素敵な微笑みを浮かべて、

 

(こんなに長い2時間っていうのも、そうそう無いでしょうねぇ)

 

 テネブラ、という名で呼ばれる『5人目』は、今はまだ優雅な時間を過ごしているのだった。

 

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