修羅ガイル   作:ブルータス

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 未成年者誘拐という名の強制連行を喰らい、案内されたのは特別棟のある一室だった。そこは空き教室になっており、普段生徒も余り近寄らない場所でもあるのだが、ここに何かあるのだろうか。

「何すか、この部屋? プレートに名前書いてないすけど」

「何、入れば分かるさ」

 平塚先生は全く説明する気が無いらしい。部屋の戸をガラガラと開けた。

 少しは説明してくれませんかね。先程から強引過ぎると思うんですよ。八幡的に強引なのは嫌いじゃないけど、強引過ぎるのはどうかと思うわけで。

 あ......それが原因で結婚が......。

「雪ノ下、居るかー?」

「......平塚先生。開ける時はノックしてからと何回も言っているのですが」

 この部屋の主であるその人物は窓際付近の椅子に座りながら先生を見ると少し呆れた表情で苦言を呈した。

 あれ? 雪ノ下? 何処かで聞いたことがあるような名字だが恐らく気のせいだろう。うん、絶対そうだ。

「君はノックしても返事をした試しがないじゃないか」

「返事をする前に入ってくるんですよ」

 はぁと溜め息を吐く少女。

 長い黒髪をストレートに下ろし、顔つきも美少女と言える程に端正で、物憂げな表情も絵になっていた。

 

 

(あ、なるほど......)

 

 

 どうやら本を読んでいたらしく、近くの机には何冊か本が積まれており、手には読みかけの本がある。だから不機嫌そうなのかと納得したのだ。

 その気持ちは分かる。俺も部屋で黙々と読書をエンジョイしている所を、小町に『遊びにいこ? お兄ちゃん♪』なんて言われたら読書なんぞ放棄せざるを得ないだろう。てか、あんな甘い声で言われたら、誰も抗うことは出来ないって。あれ? 話が違う? まあ、別に良いだろう、どうでもいい。妹最高!!

「......」

「どうした、雪ノ下?」

 すると、少女は何故か少し驚いた表情で此方を見て固まってしまっていた。え、何なの。そんな固まってしまうほどに見るに絶えないってことなの? 本当俺の周り厳し過ぎるわー。

「......いえ、何でもありません。それで、そこに居る不審者は誰ですか? 先程から私のことを下賤な目でジロジロと見ているのですけれど」

 少女はコホンと咳をすると、何事も無かったかのようにそう言ってきた。

 え、何この子。初対面の人に向かってこの態度って。それに自意識過剰にも程があるって。

 いや、確かに見てしまったけれども。でも、可愛い女の子を思わず見てしまうのは男だから仕方のないことで、俺は悪くねぇ。

「彼は比企谷八幡だ。喜べ、新入部員だ」

「どうも、比企谷八幡です。って、マジだったんですね、新入部員って......」

 いやぁ、余りにも然り気無い紹介だった。俺じゃなかったら見逃しちゃってたね。

「比企谷、君にはペナルティとして此処の部活での奉仕活動を命じる」

「嫌で」

「嫌とは言わせん。既に決定事項だ。異論は認めん」

 無慈悲な判決が俺に下された。

 何なのこのアラサー。俺の自由を返せよ! 日本国民誰しもが持っている筈の自由権を一教師がおいそれと奪って良いはずがない。俺は断固抗議の構えを取らせて貰う!

「お断りさせて頂きます。彼からは邪な視線しか感じません」

 物凄く嫌そうな顔をして俺を見る少女は乱れていない胸元の襟を掻き合わせていた。

 都合良く彼女の方が断ってくれたけれども、断り方が酷くないですかねぇ。何なの、邪な視線って。俺はいつも澄んだ視線を送っているつもりなんだよ。流石、俺の腐った目、全てをマイナス方向へしか誘わないな、おい。あと、貴様のその残念な胸には然程興味は無い! あれ、然程ってことは少しはあるのか。

「安心しろ。彼はリスクリターンの計算と自己保身に於いては中々のものだ。万が一にも君に手を出して、刑務所行きになるようなことはない。例えるなら完全悪になりきれない小悪党と言ったところだな」

「それは当たり前です。ですが、なるほど。中途半端なんですね......理解しました」

「今ので理解したのかよ......」

 何だろう、別に小悪党でも構わないんだけど、この二人に対して納得のいかない俺がいる。

 いや、平塚先生の言うことは正しいんだよ、間違えちゃいない。自覚はあるから。でも言い方ってものがあるでしょう。小悪党に失礼だわ。あと、黒髪の美少女、てめぇは駄目だ。初対面の人物に対して余りにも失礼過ぎるだろ。俺じゃなかったら即座にキレてるレベルだ。

「まあ、兎に角。彼のことは頼んだ。期待している」

 平塚先生は良い笑顔でサムズアップをすると、スタスタと部屋を出ていってしまった。

 え、この状況困るんですけど。紹介だけしておいて、後は若い二人に任せるとかお見合いなの? 寧ろ先生がお見合いしろよって感じだ。

「......取り敢えず、座っていいか?」

「ええ、構わないわ。そこに突っ立っていられても邪魔なだけなもの」

 そう言って彼女は溜め息を吐くと、持っていた本に目を戻した。

 一々毒を吐かないと駄目なのこの子は。

 そんなことを思いつつ、俺は椅子を引っ張り出すと、彼女と大分距離を離したところに設置して座った。

「なあ、ええと、雪ノ下?だっけか。此処って何の部活動しているんだ? 平塚先生に拉致られて来たからわかんねぇんだよ」

「だっけかは余計よ。......そうね、クイズよ。当ててみなさい」

「当てるって......部員は何人いるんだ?」

「私だけよ」

 それは最早、人数的に部活動ですらないじゃないか。個人活動でいいじゃん。

「えーと......読書部?」

「その心は?」

「本、読んでただろ? 俺が此処に連行されてくるまで、あんたは読書をしていた。何を読んでいるか知らないが、この部活動に関するTodo本でも無いだろう。それにここの教室が部室だとしたら、見たところそれらしい道具も無い。部員も一人。出来ることを考えたら、それくらいしかないだろう」

 まあ、判断材料が少なすぎるし、ほぼ第六感めいたものが働いたのだが。

 ちなみに第六感って第六感(シックス・センス)ってルビを振るとカッコいいよな。どうでもいいけど。

「外れよ」

 あらあら、外れてしまったか。てか、凄い良い笑顔してんな、おい。明らかに俺のこと『こんなことも分からないなんて、なんて馬鹿なのかしら』とか思ってる顔だ絶対。

「ヒント無いのかよ、ヒント」

「今、私がここに居ること自体が部活動よ」

 うん、ますます分かんない。何、俺自身が部活動になることなの? 最後の部活動なの?

 てか、ヒントがヒントじゃねぇ。何処か、ヒントになるもの......あっ。

「奉仕部とか?」

「......あら、どうして?」

 おや、さっきとはうって変わって興味深そうな表情をしている。

 これはもしかして当たりか?

「いや、別に。さっき平塚先生が俺に奉仕活動を命じるって言っただろ? だから、もしかしたらって思ってな」

 まあ、適当な考えにも程があるが、彼女の反応を見る限り間違いではなさそうだ。

「......正解よ」

 凄い驚いている表情ではあったが、納得いかないというものが見てとれた。まあ、理由が余りにも直感過ぎて推理も考察もないからな。難しい三択クイズを出したのに勘で正解されてしまうようなものだ。ソースは俺。妹に雑学を披露しようとクイズ形式で出したのに一発で正解されて、何とも微妙な空気になってしまったのだ。まあ! 小町は優しいから! その後、ちゃんと聞いてくれたんだけどね! 小町超可愛い!!

「持つ者が持たざる者に慈悲の心をもってこれを与える。人はそれを奉仕活動(ボランティア)と呼ぶの」

 彼女______雪ノ下は高らかにそう宣言すると、此方をジッと見詰めた。

「ようこそ、奉仕部へ。歓迎するわ。比企谷君」

「その割りには余り歓迎しているようには見えないんだが」

 雪ノ下の表情は、本当に本当に嫌そうな顔をしている。ごめんね、入ってきちゃって。俺も抗ったんだけど駄目だったんだよ。

「そんなことないわ。確かにこの空間に貴方がいることによって、空気が濁り始めて酷く不愉快なのだけれど。全く問題ないわ」

 それを問題って言うんですよね。俺はダイオキシンか何かなのか。誰かーここに空気清浄機持ってきてー。費用は全部この子持ちでー。

「......そうかよ。随分と高尚な部活動をされているようで。で、雪ノ下よ、具体的活動を教えてくれ」

「あら、目は腐っているのに随分とやる気なのね。その意気、褒めてあげなくもないわ」

「腐っているは余計だっつーの。それと何で上から目線だ。......あの人が、一度言い出したことを改めるわけがないだろ? 諦めだよ諦め。それなら、さっさとその奉仕活動とやらを終わらせるんだよ」

 つまりは急がば回れ、というやつだ。まあ、諦めの境地とも言うが、気にしてはいけない。

「マイナス方面にやる気なのね。そういうところ、人としてどうかと思うのだけれど」

「うるせぇよ。さっさと教えろよ。何すんだよ、この部活動は。近場の川原とか行ってゴミ拾いでもすんのかよ」

 この雪ノ下という少女のデフォルトを知らないが、俺に対しては偉く罵倒を混ぜ込んで来るというのだけは分かった。俺が言うのもなんだがコミュニケーションに欠陥を抱え過ぎだろこいつ。

「この部活動の名前の通りよ。貴方の言うゴミ拾いも正しいわ。発展途上国にはODAを、ホームレスには炊き出しを、人格に問題を抱えている人間には性格の矯正を、それが奉仕部の活動よ」

「規模がでかすぎる気がしなくもないが、まあ、分かったよ。だがな、最後の奴。何で含んだ言い方した。俺のこと見て鼻で笑ったよな?」

「自意識過剰じゃないかしら。私は貴方のことなんて眼中に無いわよ」

 逸そ清々しいまでの冷笑をこちらに向ける雪ノ下は偉く楽しそう、いや愉しそうだった。ノー眼中とか、ランエボ乗って公道でも走ってろよ。

「はぁ......はいはい、そうですか。もう自意識過剰でも何でもいいわ、めんどくせぇ。何でそれ説明されるだけでこんな疲れなきゃいけねぇんだよ」

「あら、貴方が勝手に疲れているだけでしょう?」

 雪ノ下さん、さっきから表情が凄い生き生きしてるんですが。良かったね、楽しそうで。俺は全然楽しくないけどな!

「実際、平塚先生が此処に連れてきたということは貴方には大分問題があるということなんでしょう?」

「あれは平塚先生が勝手に言っているだけだ。人の性格なんぞ簡単に変えられるものでもないし、それを強制される所以もない。余計なお世話だっての」

「それは貴方が問題のレベルを自覚していないのではないのかしら? そういうことを言っている時点で、貴方には大分問題があると思うのだけれど」

「自覚はしているっての。只、変える気はねえってことだよ。人に言われて変わってしまう性格なんざあれだ、プログラミング次第で自在に変わるロボットみたいなもんだ。そんなの量産型良い人間みたいなんもんで嫌だろ」

「確かに量産型の人間というのは見ていて気持ちの良いものではないわね。でも、私は良い人間になれとなんて一言も言っていないわ。社会に適合出来る人間になりなさいということなのよ」

「それはこっちの台詞だ。お前(・・)も自分の性格を省みやがれって話だ。初対面の人間相手に謂れの無い罵倒をしまくるとか、まともじゃないからな、お前」

「......初対面、ね」

 言い合いの最中、雪ノ下の様子が少しおかしいことに気付いた。何故だかショックを受けているような、そんな表情だ。え、まともじゃないとか言ったから? 攻撃力高い癖に防御力は低いとか、どこのアタックフォルムだって話だよ。紙にも程があるだろ。ダブルニードルで落ちるのかよ。ちなみに俺はディフェンスフォルムが大好きです。

「何だ、随分と白熱しているみたいだな」

 がらがらと戸が開く音がすると、入ってきたのは件の平塚先生だった。

「どうだ、雪ノ下。比企谷の更正(・・)は?」

「ええ、中々難しいですね。特に彼自身が問題を理解出来ていないところが厄介で」

 雪ノ下は顎に手を当てながら、深刻そうにそう話す。

 って、ちょっと待てよ。

「先生、今更正って言いましたよね? どういうことですか?」

「そのままの意味だよ。というか連れてくる前に言っただろ? 君の性格は社会に出た際に致命的なものになりかねん。故に今のうちに更正させねばと思ってな」

 だから、此処へ連れてきた、そう言うと平塚先生は雪ノ下の方を見た。

 おいおい、あれお茶目なアラサージョークじゃなかったのかよ。

「そういうことよ。実は(・・)以前から、と言っても三日程前だけれど、貴方のことについては聞いていたわ(・・ ・・・・)。話を聞いているだけでも大分とも思ったけれど、実際に会って話してみると想像以上(・・・・)だったわ」

 そう言って雪ノ下は、はぁと溜め息を吐いた。

 いやいや、それはおかしいだろ。プライバシー云々かんぬんも訴えたいところではあるが、それよりもだ。

「どうして、お前にそこまで言われなきゃいけないわけ? 俺が今日お前に対しておかしなことを言ったか? 寧ろお前の態度の方が矯正すべきだろ」

 少なくとも、今日の俺は随分とまともな対応の仕方だったと思っている。まあ、それは少なからず目の前にいるこの雪ノ下という女のコミュニケーション能力の欠陥のおかげ(・・・)ではあるのだが。

 故に今回、この女にそこまで言われる所以等一つも無いのである。

「......気付いてない(・・・・・・)のね。......まあ、良いわ。私の態度の矯正よりも貴方のそれ(・・)を矯正するのが先決だと私は思うのだけれど」

「さっきから気付いてないだのあれだの、抽象的な言葉ばっか並べやがって。分かるように話せよ」

 こいつが何を言いたいのか俺にはさっぱり分からない。いや、分かりたくもなかったが。

 只、どうして初対面の人間にここまで言われなくてはいけないのかという純粋な疑問であった。

「......はぁ。それは______」

「待て、雪ノ下。言わんで良い」

 遮ったのは平塚先生だった。

 雪ノ下は途中で言葉を遮られた為か少しムッとしてはいたが。

「比企谷には真の問題(・・・・)の自覚を行って貰わなければならない。此処でそれを指摘しても理解して貰わなければ意味が無い」

「真の問題って......雪ノ下に何処まで俺の説明をしたか知りませんけど、別に俺は(・・)今のままで問題はありませんよ」

「そうだな。その問題が致命的(・・・)でなければ私も関与はしなかったさ。だが、そうである以上関与せざるを得ないのだよ」

 だから、問題って何なんだよ。日本語を喋れよ。何で分かんないんだよ。ふざけんなよ。

「......はぁ、もういいです。分かりました。更正でも何でもドンと来いですよ。今なら何でも受け止められる気がしますよ」

「ほう、比企谷もやる気みたいだな。どうだ雪ノ下?」

「既に依頼は受諾済みですから、断る理由もありません。間違いなく彼を矯正してみましょう」

「いやいやいや、逆にお前を矯正してやるって。お前人の事ボロクソ言うがな、お前のそれ(・・)も普通に社会的に問題なんだよ」

 社会不適合者の俺が言えた言葉ではないが、少なくとも一般論的に言ってもこいつの性格が問題なのは確実だ。

 変な女だ、本当に。

「貴方にそれを言われるなんてね。屈辱にも程があるわ。どうしてくれましょうか」

「へぇ。どうしてくれるんだよ?」

 ビリビリと電撃が俺と雪ノ下の間に飛び散った。無論比喩ではあるが。

 しかし、雪ノ下という少女は偉く挑発に乗りやすいらしい。いや、負けず嫌いと言った方が正しいのかもしれないが。

「実に私好みのジャンプっぽい展開になってきたじゃないか」

 と、一人でワクワクしているアラサー教師を冷めた目で俺と雪ノ下は見た。

 良い歳して、何言ってんだよ。うちの親父かよ。いや、親父の場合は空も飛べるはずとか言って本当に空を飛んだ頭のおかしいサラリーマンだが。しかも自力で。いや、飛ぶというより走るだったが。流石に真似は出来ないなと思ったが、ほんとうちの親父狂ってる。

「......よし、こうしよう。どちらが部員として貢献出来たか、その勝利者には絶対命令権(・・・・・)を与えよう。無論、判定は私だが」

 ドヤッと平塚先生は有る胸を貼って言ってくる。

 本当、何言ってやがるんだこのアラサー。その胸揉みしだいてやろうか。本当に。

「実に下らないですね。それに貴方にそのような権限は無いと思うのですが」

「あれ? もしかして、雪ノ下は俺に負けるのが怖いのか?」

 その瞬間、恐ろしいまでに冷たい目を此方に向けてくる雪ノ下。残念ながら俺はMではないので、それは嬉しくないですヨ。

「ま、そうだよなぁ。絶対命令権なんて何を言われるか分かんないからそりゃあ怖いに決まってるよな。悪い悪い。女だから(・・・・)ちゃんと気をつかってやらないといけなかったな。マジで悪かった雪ノ下」

 うん、こんだけ煽っておけば乗るだろ、絶対。いやぁ、美少女を好きに出来るとか最高じゃん。プライドの高そうなこいつのコトだからもしそうなったとしても(・・・・・・・・・)逆らえねぇだろうし。メリットしかねぇ。

「......先生、その案受けましょう。この男、絶対に自害させてみます」

 うわぁ、怖っ。肝なのは殺すではなく自害させるということだ。自分の手を汚さずに相手を消すという何だこの策士は!? いや、全然策士でも何でもないけどさ。てか、自害させるって普通に自殺幇助じゃね? 殺人と同じでね?

「......いや、やる気になってくれるのは嬉しいのだが。それを許容することは出来ないのだよ」

 あの平塚先生が雪ノ下に対しドン引きしていた。普段なら年寄りの冷や水ばかりな言動を取りがちで俺が内心で引いているのに。うん、気持ちは分かる。俺も引いたから。

「......取り敢えず活動は明日の放課後からだ。比企谷今日は帰っていいぞ。雪ノ下もくれぐれも頼む。あと殺しは駄目だ。それ以外なら、まあ許そう」

 よし、帰れると思った矢先にこれだよ! やべぇ、雪ノ下もだが先生も先生でやべぇ。何だよ殺し以外なら大丈夫って。何なのこの二人、精神狂ってるの?

「ありがとうございます、先生。取り敢えず帰ってこの男をどう処理するか決めてきます」

 それではさようならと先生にだけそう告げると、雪ノ下は自身のバッグを持って去っていた。

「......先生。雪ノ下って俺が言うのも何すけど相当欠陥だらけすよね」

「......ああ、本当だ。お前が言うな」

 そう言った平塚先生は酷く複雑そうな表情をしていた。

「じゃ、俺帰りますね。愛しの妹の居る我が家へ」

「ああ、気をつけて帰れよ。また同じような目には会いたくないだろう? あと最後の別に言わんでも良くないか?」

「そんなことないですよ。寧ろ伝えたかった部分はそこに全て込められてますから」

「お前は妹しか頭に無いのか......」

 深い溜め息を吐く平塚先生。

 失敬な。脳内の約七割程ですよ。ほら、割りと少ない。

「比企谷。まあ、そのあれだ。......雪ノ下のこと(・・・・・・)、頼んだ」

 平塚先生は少し考えてから絞り出すようにしてそう言った。

「あーはいはい。そういう魂胆だったんですね。了解です。分かりましたよ。もう帰りますね」

 また明日、そう言って俺は奉仕部の部室を後にした。

 さあ、早く帰って晩飯の準備をしないとな! お腹を空かせて待っているに違いない!

「っと、メールか。また欲求不満な人妻からか?」

 スマホを開いてみれば、そこには件の愛しの妹からのメッセージがあった。

 

 

 

『小町、お兄ちゃんが居なくて寂しくなっちゃった♡ 早く帰って来てね? あ、今の小町的にポイント高い! あと、今日のご飯はハンバーグが良いなって。

 

 

 

S.P.五分以内に帰って来てね♡』

 

 

 

 取り敢えず、全力疾走で帰ることにする。それなら家まで五分もいや、三分も掛からないだろう。よーし、早く帰ってハンバーグを作ってやるぞぉ! あと、小町には追伸についてちゃんと教えないとな。何だよSPって、革命編かよ。正しくはP.S.、プレイステーションだってことを。

 

 

 

 こうして俺は風になった。

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