根源への到達。
魔術師として生まれたからには、一度は目指す目標となるだろう。優秀な魔術師ほど捕らわれてしまう呪いのようなものである。
パンドラの箱、禁断の果実、賢者の石、オーパーツ様々なものがあるがそれらを手に入れたらどうなってしまうか誰も知らないのと同じで、聖杯を手に入れたからといって根源に到達出来るとは限らない。
それなのに魔術師達はなぜ聖杯戦争を起こすのか、それを知っているのは、始まり御三家だけなのだろうか?
また、聖杯戦争の被害規模は次第に大きくなる可能性もあった。
一人の男は考えて結論を出す。聖杯に願い聖杯の存在を魔術師から完全に奪い、その結果聖杯の出現を無くそうと試みる。
いくつもの困難が彼を襲うだろうが、命が続く限り何度でも挑もうとするであろう。
第五次聖杯戦争が終わり二ヶ月過ぎた冬木市に、一人の魔術師が車で向かっていた。
「ふぅ~~、前回の聖杯もまたは破壊されたみたいだな」
男は後部座席でくつろぎながら、窓を開けてタバコを吸い一息ついてから前方の運転手に話したかけた。
「マスターよかったじゃありませんか。わざわざ確認にいかなくても……」
車の中だと言うのに何故か麦わら帽子を深く被り、白いワンピースを着た、体の一部が大きい女性が運転しながら答えた。
「聖堂協会からは何も詳細は聴けていないが、根源への到達を目指した魔術師は居なかったらしい。だからかは分からないが、聖杯の破壊を目的に動いたマスターが結果的に勝ち残った」
「なんですのそれ?いんげんだかこんげんだか知りませんが、玉藻~~そういうのみぃこっと信じておりませんですぅ」
「おいおい、根源を目指すのが魔術師として聖杯戦争に参加する意味らしい。その根源がないと言いたいのか?」
「マスターはその根源ってのがあって欲しいのです?」
「別にどっちでもいいが……」
「なら気にせずレッゴーーですわね」
「いや、一応そう言うのってサーヴァントして召喚されたら、基本知識として分かるものじゃないか?」
男は呆れた顔で問いかけた。
「よくぞ聞いてくれましたマスター、では説明させて頂きます……なんて言うと思ったのですかぁ?普通には召喚されてない私は、知識皆無なただの良妻スキルしかない最強の嫁サーヴァント」
バックミラー越しに写った彼女の満面の笑みに、男は更に呆れる。
しばらく走っている車が民間の目の前で停車した。
「着きましたよ。ここが私達のマイホームになるのですねぇ?」
車の扉を勢いよく開けてから、お尻でドアを閉めて小走りになった。
「あまり家の中を乱すな」
「まずは寝室とお風呂場をみこっと確認してきますねマスター」
そう言って玄関で靴を脱ぎ、急ぎ部屋の中を確認しに行った女性。
「うげぇ……マスターなんですのこれは?私の夢みたマイホームはどこに……?」
部屋の中には家具は一切なく、部屋は一つでトイレやお風呂場すらない。至るところに魔術を行使するのに必用なアイテムが置いてあった。しかし、大規模な装置等はない。
「ここは俺が臨時で作った魔術工房になる。もちろん聖杯を造る為だけだから、ここは直ぐに破壊する。活動拠点はホテルを転々とする予定だ」
「あ~~夢の台所で調理が出来なくて、玉藻なんだか泣いちゃいます~~。今からでもマイホーム買いませんか?マイホーム」
「お金ないから無理。この悪妻」
「ふふふふぅ、お金ならいくらでも……ふがぁ、なんで叩くですの~~?」
女性が喋っている途中で男が頭にげんこつを落とした。
「錬金はヤバいだろ」
闇の中であった。蝋燭の明かりでかろうじて、何かが動いているのが分かるぐらいだった。
ここは洞窟の中であろう。その事はここにいる本人達が、一番理解してると断言していい。
ぽつりぽつりと水が滴り落ちる音が微かに反響していた。
「愛しのエリザベート貴女は最高だわ。こんなにも私を激しく壊すなんて……。」
「なんで?なんで?こんなにぐちゃぐちゃにしてるのにあんたは死なないの?」
ぐちゃぐちゃと何かを練り潰している様な音が、次第に大きくなっていく。
「エリザベート、満足するまで愛して頂戴。拷問することしか知らない純粋な姫。ああ最高に可愛いわ」
「いやぁ~~もうあんたなんか知らない」
そう言って狂乱して飛び出して行った一人の少女が、ランサークラスのサーヴァントであった。