今回は1万字近いです。
長いですがどうぞ。
「あ、陸くん」
「○○……リク、どこいくですか?」
俺が早足でプロデューサーの所へ向かっていると、反対側からラブライカの二人が歩いてきた。
手にはなにかの資料を持っている。
「ちょっとプロデューサーさんのところに行こうと思いまして。 二人はプロデューサーさんがどこにいるか知りませんか?」
「プロデューサーさんならまだ部屋にいると思うよ。 さっきまで私達と話していたから」
「あ、そうなんですか。 情報ありがとうございます。 じゃあ、俺今からプロデューサーさんのところに行くんで失礼しますね?」
俺は新田さんにお礼を言って、プロデューサーさんのところへと向かおうとする。
すると、アーニャちゃんが話し掛けてきた。
「なにを話しにいく、ですか? ウヅキ達のことです?」
その質問に俺は答える。
さっき前川さん達に言った俺の気持ちや、今からしようと思っていることをもう一度説明する。
それを聞いた二人は、前川さん達と同じように俺達のことを信じてくれた。
….…正直、まともな解決策もない、今までの言動から信頼できるほどの関係性も作れていない、そんな俺やプロデューサーさんが全力を尽くすと言っても、普通ならなにいってんだこいつって突っぱねられるのが普通だと思う。
なのに、みんな俺達を信じようとしてくれる。
……この期待を裏切りたくない。
「じゃあ、そういうことなんで俺はプロデューサーさんのところに向かいますね」
「……頑張ってね」
「○○……待ってます」
俺は二人のエールを聞いた後、またプロデューサーさんのところへと向かった。
ーーーーーーーーーーー
コンコン。
「……どうぞ」
「失礼します」
「……陸さんですか。なにか、ご用ですか?」
「ちょっとお話したいことがあってきました。 今、大丈夫ですか?」
「……大丈夫です」
俺がドアをノックして入ると、プロデューサーさんが椅子に座っていた。
部屋の中は暗い。
電気もついていないし、外が雨だから陽射しも出ていない。
….…暗い気持ちに反映してるみたいだな。
「それで話とはなんでしょう?」
プロデューサーさんが俺の目を見ながら聞いてくる。
やっぱりどことなく元気がないな。
「ニュージェネレーションズの三人についてです」
「やはりそうですか……」
「はい。 今日は渋谷さんが帰宅、島村さんがお休みと聞いたんですけど、なにがあったんですか?」
「……渋谷さんとはさっきお話をした時、怒らせてしまいました。 島村さんは体調不良でお休みです」
「そうですか」
島村さんは体調不良か。
……良かった。 まだ島村さんは亀裂が入ってない。
「プロデューサーさん」
「……はい」
「あなたの正直な気持ちを教えて下さい」
「私の正直な気持ち、ですか?」
「はい。 プロデューサーさん、貴方はこのままでいいと思ってますか?」
「……いいえ」
「なら、どうにかしたいですか?」
「はい」
プロデューサーさんはどうにかしたいと言ってくれる。
でも、顔は暗い。
「プロデューサーさん。 俺もこのままじゃダメだと思います。 だから、この状況を変えたい……一緒に変えていきましょう!」
俺はプロデューサーさんに近づきながら言う。
見つめるのはプロデューサーさんの目だ。
しかし、俺がプロデューサーさんと目を合わせると、プロデューサーさんは下を向いてしまう。
それは叱られた子どもが親から顔を背ける時に似ていた。
「プロデューサーさん、どうして目をそらすんですか」
「それは……」
「……プロデューサーさん。もしかして、過去になにかあったんですか?」
「!!」
「……最初は無口で感情を出すのが苦手なんだって思ってました。 でも、一緒に仕事をするようになってから、どことなくアイドル達を避けている、いや、必要以上に関わらないようにしていると感じました」
「……」
「そして、今回のニュージェネレーションズの件。 俺はプロデューサーさんがアイドル達のことを真剣に考えて、大切にしてくれているのを知っています。だから、今回の件であまりプロデューサーさんが深い所までなかなか動こうとしないのが気になっていました」
「……」
「最初は今までこんな事態体験したことがなかったから、踏み込むのが怖いんだと思っていました。 でも、なんとなくだけど違うとも思っていました。 そして、今の反応を見たら、俺の中では過去になにかあったんじゃないか?って思ったんですが……」
「……はい、ちょっと昔に色々ありまして」
「….…それは聞いていいことですか?」
「……はい、大丈夫です」
それからプロデューサーさんは自分の過去を教えてくれた。
どうやらプロデュースしていたアイドルが、プロデューサーさんの元から去ってしまったらしい。
……それが原因で今回の件に深く踏み込めないのか。
「そうだったんですか」
「はい、お恥ずかしながら……」
「あの、プロデューサーさん。その子達のこと後悔してますか?」
「はい……もっと上手くできたのではないかと何度も思いました。次こそは同じ過ちを犯さないようにと決意もしました。 でも、実際に同じような状況になった今、私は過去のことがトラウマになってなかなか踏み込めないんです……私は、臆病者なんです」
「……」
「……失望、しましたよね……すいません……」
プロデューサーさんは頭を下げる。
プロデューサーさんの大きな身体が、今はとても小さく見える。
….…どことなく、怯えている子どもに見えるな。
「正直、失望しました」
「……」
「でも、俺が同じ立場になったらって思うと、プロデューサーさんと同じようになったと思います。 かな子の兄としては、かな子が不安になるようなことをしやがってって責めたいんですけど、俺個人としては、そこまで責めようとは思いません」
「……」
「……プロデューサーさん。 過去のアイドルが自分の元から去る時、周りの人はどういう反応でしたか?」
「……今西部長と千川さんは私を励ましてくれました。 力も貸してくれました。周りの人はあまり私に良い反応をしなかったです……私がアイドルのみなさんをまたプロデュースすることができたのは、あの二人のおかげです……感謝しかありません」
「あの二人はプロデューサーさんの力になってくれたんですね」
「はい」
「ならーーーー俺もプロデューサーさんの力になります」
そう言うとプロデューサーさんは驚いた顔を見せる。
お手伝いしたいって言った時も驚いてたな。
「プロデューサーさんが踏み込むのが怖いなら、一緒に踏み込みましょう。 どうすれば良いのか分からない時は一緒に考えましょう」
「陸さん….…」
「プロデューサーさん、貴方は一人じゃないです。もっと周りの人を頼りましょう! 俺も千川さんも今西部長も力になります!」
「……なんで陸さんは私にそう言ってくれるのですか? なんで、私にそんなに協力してくれるのですか?」
俺の言葉を聞いたプロデューサーさんは、不思議そうな顔をしながら聞いてくる。
なんで協力してくれるのかって?
「前まではかな子のためだっていうのが一番でした。 でも今は違います」
そんなの単純だ。
「ただたんに、俺がシンデレラプロジェクトのみんなのことが好きだからですよ」
ーーーーーーーーーーー
「私は本田さんの家に行った後、渋谷さんの家に行こうと思います。陸さんには島村さんのお見舞いに行ってもらってよろしいですか?」
「全然オッケーです」
「本田さんの説得が終わったら、こちらから連絡させて頂きます」
「了解です!」
俺が協力する理由を言った後、プロデューサーさんはポカーンとした顔を見せた。
しかし、その顔は直ぐに崩れ、どこか笑いを堪える顔へと変わった。
それを見た俺もなんか笑いが込み上げてきて、二人で静かに笑ってしまった。
そして、ひとしきり笑った後、プロデューサーさんはどこか憑き物が落ちた感じになっていた。
そこからの行動は早いもので、ニュージェネレーションズの三人を連れ戻す方法を二人で考えた。
今は方法が決まって、それぞれが自分の役割を果たすために行動に移すところだ。
「「あ……」
「あ……」
俺達は部屋を出て、それぞれの目的地に向かおうとする。
すると、ドアを開けた先にはシンデレラプロジェクトのみんながいた。
「プロデューサー、陸チャン……」
みんなは俺達の姿を見た瞬間、色々聞きたいことを聞いてくる。
それに対してプロデューサーさんは、ちゃんとみんなの目を見て答えた。
そして、三人を連れ戻すとプロデューサーさんがはっきりと宣言したことにより、みんな待ってくれることになった。
「では、私達は今からニュージェネレーションズの皆さんのところに向かうので!」
プロデューサーさんがそう言った後、俺達は部屋を出る。
途中今西部長にぶつかりそうになったり、城ヶ崎さんを見つけたりしたが、特に問題なく美城プロダクションを出ることができた。
「では、また会いましょう」
「プロデューサーさんも気をつけて」
俺達は互いにエールを送る。
さて、教えてもらった住所に早く行こうかな。
俺はスマホのマップを頼りに、島村さんの家へと向かった。
ーーーーーーーーーーー
「ここが島村さんの家か」
俺は今島村さんの家の前にいる。
綺麗な一軒家だなぁ。
そんなことを思いながら、インターホンを押す。
あれ? 今、テンションハイになってるからあれだけど、同い年の女の子の家くるの初めてじゃない?
「はいはーいってあら?」
そんなことを思っていると、ドアが開いて島村さんのお母さんらしき人物が現れる。
やっぱり似てるな。
「貴方は……?」
「私はシンデレラプロジェクトのプロデューサーのお手伝いをさせてもらっている者で、三村陸と申します」
そう言って、俺は名刺を渡す。
「あら、卯月から話は聞いたことがあるわ。それに名刺にも書いてあるし本物みたいね。 もしかして、卯月のお見舞いかしら?」
「はい、そうです。あ、これお土産の品です」
「あらあら、気を遣わせてごめんなさいね。 雨が降って寒いでしょう? 家の中に入ってもらえるかしら」
「はい、お邪魔します」
俺はお土産の品を渡し、家に上がらせてもらう。
なんか良い匂いがする……。
俺って今、同い年の、しかもアイドルの家にいるんだ。
……あ、そう思うとなんかお腹痛くなってきた気がする。
「卯月ー! 三村陸くんがお見舞いに来てくれたわよー!」
「え、ええええ!?」
「今からリビングにお通しするから、早く降りてきなさーい」
「わ、分かったー!」
島村さんのお母さんが、部屋にいるであろう島村さんに声を掛ける。
俺が来たことを聞いて慌てているのか、ドタバタしているのが分かる。
「ごめんなさいね、ちょっと待ってもらえるかしら」
「いえいえ、全然大丈夫ですよ」
「あら、そうかしら。あ、そうだお茶淹れるわね」
「あ、お構いなく〜」
俺はリビングに通された後、お茶をもらう。
うん、美味しいな。
「ご、ごめんなさい陸さん。待たせちゃいました?」
「あ、そんなことないですよーー」
俺がお茶を飲んでいると、ドアから島村さんが現れる。
それを見た瞬間、俺の中で雷が落ちた。
ピンクの可愛らしいパジャマにカーディガン、もじゃもじゃの髪を照れくさそうに抑える島村さん。
俺にはインパクトが強すぎた。
……島村さんのもじゃもじゃ状態凄く可愛いな。
本田さん風に言うなら、今の島村さんはもじゃむーかな?
「あ、あれ? どうしたんですか陸さん?」
「あ、なんでもないよ」
俺は島村さんの姿を見ながら変なことを考えていると、島村さんが不安そうに声を掛けてくる。
危ない危ない……意識を持ってかれるところだった。
「そ、その……こんな大事な時期に風邪なんてごめんなさい。後、この格好も……」
「いや、気にしなくて大丈夫だよ」
「この子アイドルとしてちゃんとやってます? おっちょこちょいなところがあるから心配なのよ〜」
「いえ、全然大丈夫ですよ。ちゃんとアイドルやってます」
「あら、そう? でもねーこの子ったらこの前ーー」
「マ、ママ! もう良いから!」
「あらそう? なら若い二人の邪魔をしないように、お母さん退散するわね」
「マ、ママ〜!!」
島村さんのお母さんは、お茶のお代わりとお菓子を置いた後、キッチンへと向かっていく。
な、なんか嵐みたいな人だな。
「ごめんなさい……ママ話好きで……」
「あ、そうなんだ。 やっぱり親子なんだね」
「え?」
「だって島村さんの趣味って長電話でしょ? お母さんと一緒で話好きなんだなーって」
「あ、確かにそうかも……」
「うん、やっぱり親子だよ」
「えへへ、なんか照れるなぁ」
島村さんはお茶を飲みながらはにかむ。
あ、ヤバい。 本当に可愛い。
「陸さんはお見舞いに来てくれたんですよね?」
「え、あ、うん」
「ごめんなさい。大切な時期なのに迷惑かけちゃって……前のステージだって笑顔でやりきることができなくて迷惑かけちゃったのに……」
「え?」
「でも、次はちゃんと最後まで笑顔でステージに立ちたいなって思ってるんです。凛ちゃんと未央ちゃんと一緒に」
そう言うと、島村さんは両手を握りながらこっちを見てくる。
その目には諦めが見られない。
「えへへ、明日には体調も直っていると思います!だから陸さん、明日からもまたよろしくお願いします!」
……島村さんの笑顔が眩しい。
正直、渋谷さんの時みたいに責められるかもって思ってた。
でも、島村さんは俺達のことを責めてこない。
むしろ、前回のステージを反省して次のステージで頑張りたいと言ってくれる。
……この子には敵わないなぁ。
「うん、明日からもよろしくね。 頑張っていこう!」
「はい! 島村卯月頑張りましゅ!!」
そう言いながらくしゃみをする島村さん。
まだ体調が万全じゃないみたいだし、そろそろお暇するか。
「じゃあ、俺はそろそろお暇するね。 島村さん、しっかり休んで元気になってね」
「はい! ありがとうございます!」
「あら、話は終わったのかしら?」
「あ、はい終わりました。 お茶とっても美味しかったです。 ありがとうございました!」
「どういたしまして。また来てね」
「はい! ありがとうございます!」
俺は島村さんのお母さんにお礼を言い、島村さん親子に見送られながら家を出る。
島村さんの家が見えなくなった辺りで、ポケットに入っていたスマホが震えた。
取り出してみるとプロデューサーさんから連絡がきている。
どうやら本田さんの説得に成功したみたいだ。
あの写真達が役に立ったんだな。
俺はプロデューサーさんに電話する。
電話に出たプロデューサーさんは息を切らしていた。
「あの、どうしたんですか?」
『今、渋谷さんを探すために、走っているところです』
『りっくん私もいるよー! 今回の件、本当にごめんねー!』
電話の向こうから息使いと本田さんの声が聞こえる。
「謝罪とかも問題全て片付けてからまたしよう! 今は渋谷さんの問題が先!」
『うん! 分かった!』
『私達は今渋谷さんを探しています。 犬の散歩に行ったそうなので、今は家にいません。 私の予想では○*公園にいると思うので、陸さんも来てください!場所は分かりますか!?』
「分かりますけど、なんでそこに渋谷さんがいると思うんですか!?」
『犬の散歩のコースであり、渋谷さんと島村さんが、アイドルについて公園で話したことがあるからです!』
なら、いる可能性は高いな。
「分かりました! 俺も今からそちらへと向かいます!」
『公園まで後もう少しで着きます。 公園に渋谷さんがいない場合はすぐに連絡を取りますが、もしいたら連絡取る暇がないかもしれません! なので、ある程度経っても連絡が来なかったら、その公園に私達がいると思って下さい!』
「分かりました! 俺も直ぐに向かいます!」
俺は電話を切ってスマホを仕舞う。
後、少しだ! 後少しでこの問題が解決するかもしれない。
早く公園に向かわないと!
俺は全力で○*公園へと向かう。
そこに渋谷さんいてくれよ……!
ーーーーーーーーー
「もうこのままは嫌。困った時に誰を信じたら良いか分からないなんて、そういうのもう嫌なんだよ……!」
俺が公園に着いたら、渋谷さんがそう言ったのが聞こえる。
よし、みんないるな。
「努力します。 もう一度皆さんに信じてもらえるように」
俺が息を整えていると、プロデューサーさんが渋谷さんに手を差し伸べる。
その手を渋谷さんはなかなか掴もうとしない。
しかし、本田さんによって手を掴むことになる。
「しぶりん……!」
「もう一度、一緒に見つけに行きましょう。 あなたが夢中になれるなにかを……!」
それを聞いた瞬間、渋谷さんの顔は弱気だったものから決意を固めた顔へと変わった。
ベンチに座ってる渋谷さんを二人が立たせる。
そして、プロデューサーさんが明日からもよろしくお願いしますっと言うと、二人とも元気に返事を返していた。
……あれ? これ俺いらなくない?
なんか疎外感凄いんだけど 。
除け者にされたみたいで寂しいんだけど。
「あ、陸」
「陸さん!」
「りっくん!」
俺が三人を見ていると、みんなが俺の存在に気付いてくれた。
良かった。 このままだったらどうしようかと思ったよ。
「りっくん!今回の件本当にごめんなさい! 色々みんなを振り回しちゃって、嫌な思いをさせて本当にごめん!」
「私も悪かった……ごめんなさい」
俺が三人に近付くと、本田さんと渋谷さんが謝ってくる。
さて、俺も言っとくか。
「俺ももっとやれることがあったのに、それに気づかなかった。 ごめんなさい」
「いや、私の方がごめんなさいだよ!」
「私もピリピリしててみんなの雰囲気悪くしちゃったし、私も悪いよ」
俺の謝罪を聞いた二人はまた謝ってくる。
もうここだけで謝るのは終わった方が良いな。
「なら、三人で、いや四人でみんなに明日謝ろう。 そして、これからまたみんなで頑張っていこう」
俺は渋谷さん、本田さん、プロデューサーさんの顔を見ながら言う。
俺の言葉を聞いた三人は頷いてくれた。
「ふぅ……これで一件落着か? 最後俺全く役に立ってないけど」
「そんなことないよ!」
俺がため息を吐いて安心していると、本田さんがそう言ってくれる。
それに続いて渋谷さんとプロデューサーさんも話始めた。
「プロデューサーから聞いたよ。 りっくんが私達のために頑張ってくれたって!」
「陸は私達の気持ちを聞いてくれたし、自分の気持ちも教えてくれた。 プロデューサーのことも教えてくれた。 陸のおかけで私達は救われたところ、ちゃんとあるよ」
「陸さんのおかげで私は一歩先にやっと進めるようになりました。 陸さんのおかけです」
「「「ありがとう(ございます!!)」」」
三人がお礼を言ってくれる。
それを聞いて、俺も役に立ったんだと実感することができた。
良かった、三人ともまた戻ってくる。
ニュージェネレーションズは解散しない。
また、シンデレラプロジェクトのみんなで活動ができる。
それを実感すると、たまらなく嬉しい気持ちになった。
「くしゅん!」
「ん?」
俺が嬉しさを噛み締めていると、横でくしゃみが聞こえる。
確かめてみるとくしゃみしたのは本田さん。
よく見たら服装がこの時期にしてはやや薄い。
「……このままだと皆さん風邪を引いてしまう可能性があります。 なので、今日は解散しましょう」
プロデューサーさんが本田さんを見ながら言う。
明日謝るのに風邪引いたら台無しだもんな。
「じゃあ、私は家近いからハナコと帰るね……また、明日」
そう言って、渋谷さんは犬を連れて公園から出て行った。
また明日、か……
「渋谷さんも帰ったことなので、私達も帰りましょう。 本田さんは私がお家まで送って行きます」
「え、プロデューサー悪いよ!」
「いえ、送らせてほしいんです」
「なら、いいけどさぁ……」
「陸さんはどうしますか?」
「俺も本田さんを送りますよ」
「分かりました」
「うわー! 私両手に華だね!」
「「……」」
「なにか反応してよ!」
本田さんは地団駄を踏む。
その光景がなんか可笑しくて笑ってしまった。
「あ、なんでりっくん笑うの!? え、プロデューサーもちょっと笑ってる!?」
「あはは、じゃあ本田さんを送って帰りますか」
「……はい、そうですね」
「なんか納得いかないんですけどー!」
本田さんの声が公園に響く。
俺はまた明るい声が聞けるのがとても嬉しかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「「「「ごめんなさい(申し訳ありません!!)」」」」
次の日、俺達はみんなの前で謝罪をした。
謝った瞬間、島村さんが渋谷さんと本田さんに抱きついたのが目に入る。
「良かったですぅ〜〜!」
「ごめんねぇ〜」
三人が肩を寄せ合う。
それをみんなで見つめる。
良かった……本当に良かった。
「戻ってきて安心したにゃ……でも、次はないからね!」
俺達がニュージェネレーションズの三人を見ていると、腕を組んで仁王立ちをしている前川さんがいた。
そりゃ言いたいこと一つは二つはあるよね。
「ごめんねみくちゃん」
「ごめん」
「本当に今回の件、みくムカついたんだからね! みくが欲しくてもまだ手に入らないものをすぐに手にいたのに、諦めようとするか言語道断にゃ! しかも、三人の影響でシンデレラプロジェクト全体の雰囲気が暗くなったし……本当に迷惑したにゃ!」
「「「……ごめんなさい」」」
「もうこんなことないようにしてほしいにゃ! もっとプロとしての自覚持ってほしい!」
「「「……はい」」」
前川さんは三人に対してきついことを言う。
でも、誰も止めない。
みんなすくなからず前川さんに共感する部分があるし、ここで怒らないわけにはいかないのだろう。
「今回のこと、ちゃんと三人とも反省すること! プロデューサーも陸チャンもだからね!」
「「「「はい!」」」」
「ふんすー……まぁ、でも、ちゃんと三人とも戻ってきて、またみんなでアイドルができる。それはとっても嬉しいにゃ!」
そう言って前川さんは顔を背ける。
少しだけ耳が赤い。
そんな前川さんの様子を微笑ましそうにみんなで見る。
……なんだかんだ優しいな。
「みなさん、待っていて下さってありがとうございました。 改めてシンデレラプロジェクトを進めていきたいと思います」
前川さんを見ながらほんわりとしていると、プロデューサーさんが話始める。
みんなプロデューサーさんの方を見つめる。
「一歩ずつ階段を上がっていきましょう……!」
それを聞いたみんなは元気よく返事をする。
やっと……プロデューサーとアイドルが一つになったな。
「あのさ、プロデューサー!」
本田さんが片手を挙げる。
みんなが注目しているのが分かる。
なんだなんだ?
「試しに丁寧口調、やめてみない?」
「え……」
「確かにちょっと固すぎるかもにゃ!」
「険しき壁を越えるときか……」
「きらりもそれがいいと思うにー!」
「あたしも賛成ー!」
「私も私も!」
「その方が私も……」
「お話しやすくなるね」
本田さんの提案にみんな賛成する。
プロデューサーさんは首に手を当てて困っていた。
あはは、プロデューサーさん。
こんなに賛成されたらこれは断れないですね。
「努力しま、す……する」
プロデューサーさんが丁寧口調をやめて喋ってみる。
それを聞いて俺達は笑ってしまった。
「あ、りっくんも私達のこと名前で呼んでよ!」
「えぇ!」
「この流れだと断れないよね〜」
「とっても良いと思います!」
「ま、いいんじゃない?」
「○○……素敵、です」
「うー〜ん杏はどっちでもいいや〜」
「私も賛成かな」
本田さんの提案にまたしても賛成するみんな。
まさか俺にも流れ玉がくるとは思わなかった。
プロデューサーさんも俺のことをじっと見ている。
うぅ……
「努力しま、す……する」
プロデューサーさんと同じ感じで言うと、またみんな笑い始める。
前までの暗い雰囲気が嘘のようで、明るい雰囲気が流れた。
恥ずかしいけど、こんなに賛成されたら断れないよな。
プロデューサーさんもこんな気持ちだったのかな?
俺はそんなことを思いながら、これからのことを考えた。
これでアニメ7話は終わりです。
本来ならアニメ8話、蘭子回なのですが、8話はなしにして蘭子のオリジナル話を書こうと思います。
それからはラブライカのオリジナル話⇨ニュージェネレーションズのオリジナル話⇨アニメ9話に入ろうと思います。