一話で6.7話終わりませんでした。
なのにこの長さ。
ナンテコッタ。
「今日はよろしくお願いします」
「「「「「「よろしくお願いします!」」」」」」
「ん? アイドル達は分かるけどそこの男の子は何者だい?」
「はい! 私の名前は三村陸と申します! 今、シンデレラプロジェクトのアイドルの皆さんをサポートさせて頂いております!」
「なら君もプロデューサーってことかい?」
「いえ、私はお手伝いさせてもらっている身なので、プロデューサーというわけではないです!」
「プロデューサー見習いってところかな?」
「ええっと……」
「はい、そういう認識で大丈夫です」
「ん、了解。 君もサポート頑張ってね」
「はい、ありがとうございます!」
あのストライキ事件から数日が経った後、プロデューサーさんから俺は正式にお手伝いの許可を貰えた。
お手伝いをする時は肉体的にも精神的にも余裕がある時のみという条件だ。
俺はいらないと言ったのだが、プロデューサーさんの上司である今西部長からお手伝いをしている時、少量ながら給料が出ることも決定した。
カフェの店長にもお手伝いの件は許可を貰っている。
いやー気づいたらアルバイトを掛け持ちしているような状態になってるな。
「それでは皆さん、後は本番を待つのみです。 控え室で待機してください」
俺がそんなことを思っていると、プロデューサーさんがニュージェネレーションズとラブライカにそう伝える。
プロデューサーさんはこれから最終確認をするみたいだ。
「分かりました。 みんな、控え室に行こう」
プロデューサーさんの言葉を聞いて、新田さんがみんなに指示を出す。
さて、俺はどうすればいいのだろうか。
プロデューサーさんに着いていくのか?
それともアイドル達と行動すれば良いのか?
「陸さんは皆さんと待機して下さい」
プロデューサーさんが俺の顔を見ながら指示を出す。
なら言うことを聞いて控え室で待機しとこうかな。
「分かりました! 控え室で待機しておきます!」
「はい、お願いします。 私も最終確認が終わったら向かいますので」
「了解です!」
俺はプロデューサーさんの後ろ姿を見送る。
さて、俺も控え室に行くか。
……ライブをする当事者じゃないけど緊張するなぁ。
俺は緊張を紛らわす為に頬を叩く。
「……よし!」
気持ちを切り替えた俺は控え室へと歩いて行った。
ーーーーーーーーーーーー
「ねぇねぇりっくん! 私可愛い? この衣装似合ってる?」
「うん。可愛くて似合ってるよ本田さん。 勿論渋谷さんも島村さんもよく似合ってる」
「ありがとうございます!」
「……ありがとう」
「○○○○○……リク、ワタシ達はどう、ですか?」
「アーニャちゃんも新田さんも似合ってますよ。 とっても綺麗です」
「綺麗だなんて照れるわ。 でも、ありがとね」
「いえいえ、本心ですから」
控え室に入ると、ニュージェネレーションズの三人と、ラブライカ二人、後はメイクさんとかのスタッフが数人いた。
俺はスタッフさん達に挨拶をした後、今日のライブをするアイドル達と会話をする。
うん、ニュージェネレーションズの三人は緊張があるみたいだけど、そこまでは固くなっていない。
城ヶ崎美嘉のライブで少し慣れたからかな?
でも、この子達がメインのライブは今回が初めてだ。 しっかりサポートしないと。
問題は……
「ミナミィ……」
「大丈夫よアーニャちゃん。 しっかり練習したから大丈夫」
ラブライカの二人だな。
ニュージェネレーションズと違って、ラブライカはライブをしたことがない。
だから、初めてだらけで不安が強い。
二人の顔を見ればすぐ分かる。 二人とも顔が固すぎるもん。
うーん……どうしたものか。
「あの、陸さん」
「ん? どうしたの島村さん」
「あの、陸さんはお手伝い、慣れてきましたか?」
俺がどうしたものかと思っていると、島村さんが話掛けてきた。
顔が少し固い。 誰かと話して気を紛らわせたいのかな?
「うん。 まだ分からないこと多いけど、やればやる程慣れてきてるって実感があるよ」
「そうなんですか」
いやー本当に慣れてきたよ。
最初は分からないことだらけだったもん。
アイドル達の送迎兼ボディーガード、作成された書類を指定の場所に片付ける、アイドル達とのコミュニケーション。
どれも最初は分からないことだらけだった。
特にアイドル達の送迎兼ボディーガード。
別に送迎兼ボディーガードは別に良かったんだ。女の子だけだと不安だから、男の俺を近くに置いたのも分かる。
でも、目的地になかなか着けないんだ。
知らない場所だと土地勘とかないし、都会だとごちゃごちゃしてるから目的地が分からない。
地図とにらめっこしながら目的地を探したよ。 辛かったなぁ。
「私二回目のライブなんですけど、まだまだ緊張しちゃって……えへへ、慣れないといけないって思うんですけど、なかなか難しいです」
そう言う島村さんは笑顔を見せる。
何時もの可愛らしい笑顔ではなく、固い笑顔。
……よし!
「島村さん」
「は、はいっ!」
俺が声を掛けると、島村さんはビクッと反応する。
別に怒るわけじゃないんだけどね。
ただ、俺の考えを伝えるだけ。
「別に緊張することは悪いことじゃないと思う。 それに、まだライブは二回しか出たことないから、経験不足だとも思う」
「はい……」
「でも、今までしてきた練習は嘘をつかないと俺は思う。 島村さん、君達は今回のライブに向けて練習してきたけど、その練習がダメだったと思う?」
「そ、そんなことありません! しっかり練習してきました、大丈夫です!」
「でしょ? 今回のライブに向けて一生懸命練習してきたのは俺も知ってるし、プロデューサーさんも知ってる。 練習してきた島村さん達だって勿論知ってるはずだ。 だから大丈夫。練習は嘘をつかない。 練習通りすればきっと成功するよ」
俺は島村さんの目をしっかり見ながらそう伝える。
すると、島村さんの固かった笑顔が少しずつ緩んでくる。
うん、どうやら緊張少しは溶けてきたみたいだな。
「そうですよね……あんなに練習したんですもん、きっと大丈夫ですよね」
「うん、大丈夫大丈夫」
「えへへ、なんか緊張溶けてきた気がします……島村卯月、頑張りますね!」
そう言う島村さんの笑顔は何時もの可愛らしい笑顔。
よし、島村さんは大丈夫そうだな。
後は……
「ラブライカのお二人もですよ。 後、さっきから若干静かな渋谷さんも」
「「「え?」」」
俺がそう言うと、さっきまで話を聞いていた三人が驚いた顔を見せる。
いや、俺が言ったこと貴女達にも当て嵌りますからね?
「渋谷さんとラブライカのお二人も島村さんと同じです。 さっき言った様に練習は嘘をつかないと思います。 なので、練習通りすればきっと成功します」
そう言うと、渋谷さんは島村さん同様、緊張が少しは溶けたみたいだ。
でも、ラブライカのお二人は緊張が溶けてはいるもののまだ固い。
うーん、どうしようか……そうだ!
「ライブが終わったら、俺ができる範囲なら一つ願い事を叶えますよ 」
そう言うと、みんな驚いた顔を見せる。
あれ、ラブライカのお二人に言ったつもりなのに、何故ニュージェネレーションズの三人も反応するのかな?
「○○○○……それは本当ですかリク」
「で、でも悪いんじゃあ……」
「大丈夫ですよ」
「りっくんりっくん! ラブライカの二人だけズルい! 私達にもご褒美頂戴!」
さっきまで興味津々な様子で話を聞いていた本田さんが、不公平だぁーと駄々をこねる。
確かにニュージェネレーションズだけなにもないってのは可哀想だよなぁ。
よし!
「うん。 ニュージェネレーションズの三人もライブが終わったらできる範囲で一つ願い事叶えよう!」
「やったー!」
「ほ、本当にいいんですかぁ!?」
「……ありがとう」
俺の言葉を聞いて、三者三様の反応を見せる三人。
うん、このご褒美は結構良いみたいだな。
「じゃあ、今日のライブみんな頑張ってね! 俺も応援してるから!」
そう言うと、みんな返事を返してくれる。
さっきまでの緊張した顔とは大違いだ。
良かった。 なんとかなった。
トントン。
「はい?」
「きたよー」
「オッスオッス☆」
俺が安心していると、ドアがノックされる。
入って来たのはシンデレラプロジェクトのみんなだ。
応援に来たのかな?
「差し入れ持ってきたよー!」
そう言ってかな子はマカロンが入った箱を渡す。
やっぱり応援に来たみたいだな。
でも、いくらなんでも数多すぎない?
「あ、ありがとう」
「こんなに食べたら衣装入らなくなるよー」
俺の気持ちを本田さんが変わりに言ってくれる。
そうだよな、こんなに食べたら衣装入らなくなるよな。
そう思っていた俺だが、かな子が発した言葉によって戦慄してしまう。
「美味しいから大丈夫だよ〜」
……我が妹ながらなんて言葉を吐くんだ。
美味しいから大丈夫? それならみんな四六時中美味しいもの食べてるよ。 なんて暴論なんだ。
緒方さん笑ってるけど笑い事かこれ?
俺は妹の知らない一面を知って度肝を抜かれた。
「あ、みくちゃんと莉嘉ちゃん、みりあちゃんはお仕事で来れないけど、ムービメールを貰ってきたんだ」
そう言って、緒方さんはみんなにムービメールを見せてくれる。
今のご時世にガラケーとは珍しいな。
『ライバルとして応援してやるにゃ!』
『『みんな頑張れー!』』
三人が346カフェの前でエールを送る。
あの、なんで安倍さんもちゃっかりムービメールに入ってるの?
「じゃじゃんー! きらりも杏ちゃんからメッセージ貰ってるよぉ〜!」
今度はきらりちゃんがみんなにメッセージを見せてくれる。
きらりちゃんはスマホなんだな。
『あ〜まぁ、頑張ってね〜お土産は飴でよろしく〜』
……杏ちゃんは本当にブレないな。
みんなもそう思ったのか、苦笑いを浮かべている。
まぁ、杏ちゃんがみんなを一生懸命応援してる方が珍しいか。
「お、みんな来てんじゃんー!」
他のメンバーがライブに出る人に声を掛けている姿を見ていたら、そんな声が聞こえてきた。
ん? この聞き覚えのある声は……
「やっほー☆」
「あー! 美嘉ねぇだ!」
きらりちゃんの後ろから出てきたのはカリスマギャルであり、莉嘉ちゃんのお姉さんである城ヶ崎美嘉さん。
衣装露出激しいなと思ってたけど、私服も露出激しいんだ。
「ん? みんなといるその男の人は誰?」
俺が私服を見ながらそう思っていると、俺の存在に気付いた城ヶ崎さんが尋ねてくる。
そういえば、みんなが入ってきてから一言も言葉喋ってないな。
「俺はそこにいる三村かな子の兄で陸と言います。 シンデレラプロジェクトの皆さんのお手伝いをさせて貰っています」
そう言うと、城ヶ崎美嘉さんは驚いた顔を見せる。
どこの部分で驚いたんだ?
「莉嘉から話は聞いてるよー! 予想以上にかな子ちゃんに似てるから驚いちゃった! あ、別に敬語じゃなくて良いからねー!」
城ヶ崎美嘉さんは人懐こい笑顔を見せながら俺に話しかけてくる。
莉嘉ちゃんから話聞いてたのか。
「じゃあ、お言葉に甘えて。 うちの妹共々よろしくね、城ヶ崎さん」
「あたしのことは美嘉でいいよ〜莉嘉のことも名前で呼んでるみたいだし」
「いや、それはえーと……」
「ダメだよ美嘉ねぇ〜りっくん、年が近い女の子の名前呼ぶの緊張するからダメなんだって!」
そうなのだ。
基本的に妹のかな子としか喋ってなかったせいか、血縁関係のない同年代の女の子とはあまり話したことがない。
会話する分はかな子のおかげで大丈夫なのだが、名前呼びとなると緊張してしまうのだ。
ちなみに杏ちゃんは見た目でセーフ、きらりちゃんは圧力が凄かったから言わざるを得なかった。
「ふーんそうなんだ。 まぁ、よろしくね陸くん」
「よろしくね」
「じゃあ、そろそろ本番だと思うけどみんな頑張ってね! 袖でしっかり見てるからさ、ぶちかましちゃいな!」
そう言って、城ヶ崎さんはVサインを作る。
みんな気合いを入れ直した。
ライブの時も思ったけど、城ヶ崎さんって後輩の面倒見いいな。
トントン。
「間も無く開演時間です。 スタンバイ、お願いします」
「「「「「はい!」」」」」
さて、プロデューサーさんも来たことだし、俺ももっとサポートしよう。
確かラブライカが捌けてから、改めてニュージェネレーションズの出番だったっけ?
俺は頭の中でスケジュールの確認をしながらみんなの後を着いて行った。
みんな頑張れ!
ーーーーーーーーーーーーーー
「陸さん」
「はい、なんですか?」
「最初はラブライカから始まって、その次がニュージェネレーションズの皆さんです。 なので、まずはラブライカのライブを見た後、ニュージェネレーションズのライブを見ます」
「はい、分かりました」
「後、これをお渡しします」
プロデューサーさんがそう言って渡してきたのはカメラだ。
これは一体……?
「陸さんには私と一緒にライブ姿を写真で撮ってもらおうと思います」
「写真ですか?」
「はい。 撮った写真は宣伝などに使う予定です」
「分かりました」
カメラで写真撮るのか……しかも、宣伝とかで使うやつ。
しっかり写真撮らないとダメだな。
……そう考えると緊張してきた。
「では、袖の方に皆さんいるので私達も移動しましょう」
「了解です!」
俺はカメラをしっかりと握る。
このカメラでみんなの姿をしっかり撮るぞ。
俺とプロデューサーさんは袖の方へ移動する。
着いた頃にはラブライカの二人が歌い始めようとしていた。
メロディが流れてくる。
さて、しっかりと仕事するぞ。
俺はカメラを構えて、歌い始めた二人を撮り始めた。
「二人とも綺麗だね」
「うん」
「女神二人の唄はまるで天へと導く天使のよう!」
「ここまで特に悪いところないね」
「このまま成功してほしすぃ….…」
写真を撮っている横で、みんなが小声で会話をする。
みんなが言ってるように、特に悪い所などない。
むしろ、初めてのライブでこんなに上手くいってるのは凄いことだと思う。
隣にいるプロデューサーさんも良いライブですって言いながら写真を撮ってるし。
「「ありがとうございました!」」
俺がそんな事を思いながら写真を撮っていると、ラブライカの二人の初ライブが無事に終わる。
お客さんの反応も良い感じだ。
これは成功したと言えるだろう。
一つ、肩の荷が下りたな。
「ラブライカが終わりましたので、直ぐにニュージェネレーションズのライブが始まると思います。 陸さん、もうちょっと頑張ってくださいね」
「了解です!」
俺は浮かれていた気持ちを入り替える。
まだニュージェネレーションズの三人が残っているんだ。
気を抜いちゃダメだ。
俺は自分の頬を叩く。
ジンジンとした痛みが広がっていくのが分かった。
よし、気持ちも入れ替えた。 頑張るぞ!
俺は出てきた三人に向けてカメラを構え、シャッターを切った。
ーーーーーーーーーーー
「〜♩〜♩〜♩〜♩」
シャッターを切ってからニュージェネレーションズの歌が流れ始めた。
それを聞いて歌い、踊り始める三人。
しかし、直ぐに違和感を感じた。
なんか三人とも心ここに在らずといった感じなのだ。
特に本田さん。
始まる前は友達に連絡したりしてリラックスができていたし、テンションも高かった。
なのに、なんで本田さんの顔はあんなに暗いんだ?
俺はカメラのシャッターを切りながらそう思う。
プロデューサーさんはこの異変に気付いているのか?
俺はプロデューサーさんの顔を見る。
どうやらプロデューサーさんも異変に気付いたみたいだ。
さっきまで熱心に写真を撮っていたのに、その手が止まっている。
「「ありがとうございました!」」
結局、三人とも練習の成果を存分に発揮することができないままライブが終わってしまった。
島村さんも渋谷さんも本田さんの様子が気になっていたからか、動きが固かったように思う。
本当にどうしたんだ……?
「……では、皆さん。 ライブをした五人と合流しましょう」
プロデューサーさんがみんなに指示を出す。
その顔は少し固いような気がする。
「次は他のメンバーも頑張んないとね!」
前を歩いている城ヶ崎さんがそんなことを言ってるのが聞こえるが、今はニュージェネレーションズのことで頭が一杯だ。
とにかく早く三人に会わないと。
「あ、お疲れ〜良かったよ〜って……あれ?」
城ヶ崎さんが本田さんに声を掛けたがスルーされる。
明らかに様子が可笑しい。
「ちょっと失礼」
プロデューサーさんも可笑しいと感じだのか、本田さんを追い掛けていく。
ニュージェネレーションズの二人も、ラブライカの二人も、他のメンバーもどこか不安そうな顔だ。
「俺達も追いかけよう」
俺はみんなにそう言ってプロデューサーさん達の後を追う。
みんなが後ろからついてくるのが分かる。
「前のライブと全然違うじゃん!」
俺が二人に追いついた瞬間、本田さんがそう言う。
前のライブと全然違う?
「前のステージみたいに盛り上がると思ったのに……!」
「それってあたしのライブに出た時のこと?」
前のステージみたいに盛り上がる?
城ヶ崎さんのライブに出た時みたいに?
『クラスの友達全員呼んだんだ』
『もっと早く来てって言えば良かったなぁ。 立ち見だと見えづらいかも。 大丈夫かな?』
…………………まさか、前のライブとのギャップの差がこんなにあるとは思わなかったのか?
あれは城ヶ崎美嘉っていう一流のアイドルが行ったから、あんなにお客さんが来たんだ。
まだデビューして間もないアイドルにそんなにたくさんのお客さんは来るはずないんだけど……。
最初があんなに凄いライブだったから、それが当たり前っていう認識になっていたのか?
……ありえそうだ。 最初から他のアイドルに比べて下積みがあまりなかったし、辛いことよりも楽しいことを先に知ってしまった。
だから、お客さんがあまりいない中ライブをするっていう、多くのアイドルが通るであろう最初の困難な壁にぶっかった今、他のアイドルに比べて精神的にくるものがあったのか?
楽しいことを知ってから辛いことを体験をすると、辛いことを知ってから楽しいことを体験するじゃ、全然精神的にくるものが違うもんな。
「つまり、あの時と比べて盛り上がりが足りないと……?」
「……ッ!」
プロデューサーさんの言葉を聞いた本田さんは顔を背ける。
どうやら、俺が考えたことと似ているようだ。
「……」
プロデューサーさんは首を摩る。
あの仕草はプロデューサーさんが困っている時によく使う。
プロデューサーさん困ってるな……どう対応するんだ?
俺はプロデューサーさんの背中を見る。
首を摩るのをやめたプロデューサーさんは本田さんと向き合う。
そして、プロデューサーさんは本田さんにとって辛い言葉を言ってしまった。
「今日の結果は、当然のものです」
「えっ…………!」
「「……ッ!?」
隣にいる渋谷さんと島村さんが息を呑むのが分かる。
プロデューサーさんが言いたいことはなんとなく分かる。
でも、言葉が相変わらず足りなすぎる!
それだとプロデューサーさんが伝えたいことが本田さんには伝わらないよ!
俺はプロデューサーさんの足りない言葉を補おうと思い、本田さんに話し掛けようとする。
しかし、それよりも先に、本田さんは俺達が聞きたくない言葉を言ってしまった。
「私……アイドルやめる!」
「……ッゥ!?」
本田さんの言葉を聞いたみんなが固まってしまう。
本田さんがアイドルをやめる……?
「……ッ!」
本田さんが鳴らす足音がドンドン遠くなっていくのが分かる。
俺も、プロデューサーさんも動くことができない。
少し遅れて渋谷さんと島村さんが、本田さんを追い掛けるのが視界に映る。
渋谷さんはプロデューサーさんをひと睨みした後、本田さんをまた追い掛け始めた。
ニュージェネレーションズの三人が消えた後、俺達は誰も動くことができず、言葉を発することもできなかった。
ただ俺は、目の前にいたプロデューサーさんの呆然とした姿が、強く強く、印象に残った……
書いていて思う。
蘭子の言葉が難しすぎる。