すいません。
一話で終わらなかったので二話構成にしました。
「島村さん、そこちょっと早いわよ」
「は、はぃ!」
「渋谷さんはもっと腕を動かして」
「はい……!」
昨日のライブから1日が経った。
今はレッスンルームで島村さんと渋谷さんが練習中、数人が休憩している。
〜♩ 〜♩ 〜♩ 〜♩ 〜♩〜♩
ニュージェネレーションズの曲が耳に流れてくる。
一緒に聞こえるのは靴と床が擦れる音。
……レッスン見てて思うけど、二人ともいつもよりキレがない。
でも、しょうがないか。
昨日のライブで本田さん、やめる宣言したもんな。
実際、今日はレッスンに来ていない。
「未央ちゃん、来ないね……」
「昨日のライブの疲れがあるのかな…?」
隣で座っているかな子と緒方さんがそう言うのが聞こえる。
でも、言ってる本人達も分かっているはずだ。
今日本田さんがいないのは、疲れが原因じゃないことぐらいは。
「……未央ちゃんやめちゃうのかな?」
「「「「「……っ!?」」」」」
みりあちゃんが不安そうな顔をしながらみんなに聞く。
みんなは暗い顔だ。 俺も自分の顔が暗くなってるのが分かる。
「未央ちゃんやめたらニュージェネレーションズ解散になっちゃうよ!」
「昨日デビューしたばっかりなのに……」
「「「「「「…………」」」」」」
……このままじゃやっぱり駄目だな。
みんな、気持ちが沈んでる。
ここはどうにかしないと。
俺は口を開こうとする。
しかし、それよりも早く前川さんが口を開いた。
「そんなのないにゃ……プロ失格にゃ……! みく達より先にデビューしたのに……!!」
前川さんは悔しそうに言う。
みんなもどことなく、悔しそうな顔だ。
……そりゃそうか。
自分達よりも後に来たのに先にデビューが決まる。
しかも、デビューしてすぐにこんな問題が起こって、前川さんが心の底から望んでいるアイドルデビューを簡単に捨てようとする言動を取ったんだ。
そりゃ悔しいよな。
「ねぇ、陸チャンは今回の未央ちゃんの事件のことどう思うにゃ?」
俺が前川さん達の気持ちを考えていると、前川さんが俺の方を見ながら質問してくる。
みんなの視線が俺に向いているのが分かった。
俺がどう思うかね……。
「……俺は今回の本田さんの件、正直本田さんの考えが甘かったと思うし、アイドルとしての覚悟が足りなかったと思う」
「……それは、未央ちゃんが全部悪いってことにゃ?」
俺の発言を聞いたみんなは驚いた顔をする。
しかし、前川さんはすぐに切り替えて俺に再度質問してくる。
その目は真剣だ。
「本田さんも悪いとは思ってるよ」
「「「「「「えっ?」」」」」」
「でも、本田さんが全部悪い訳じゃない。 プロデューサーさんも悪いと思うし、勿論、俺も悪いと思ってる」
最初の発言を聞いた時、みんなは驚いた表情になった。
しかし、次の言葉を聞いた瞬間、戸惑いの顔を見せた。
まぁ、驚くよね。
「本田さんだって悪いと俺は思う。本田さんが原因でシンデレラプロジェクトは今、とても暗い状態だ。 でも、その原因を作ったのはプロデューサーさんや俺も関係してる」
「「「「「「…………」」」」」」
「普段からプロデューサーさんは言葉が足りない。 本田さんがやめる宣言した時だって、もっと言い方はあった筈だ。 俺だって、本田さんがライブ前元気だったから、本田さんは大丈夫だと信じ込んじゃったし、やめる宣言した時に動くことができなかった。 本田さんが全部悪い訳じゃない。 本田さんも、プロデューサーさんも、俺も悪いんだ」
「「「「「「…………」」」」」
「……これが俺の考え方だけどみんなはどう思う?」
俺がそう聞くと、前川さん以外は難しそうな顔をする。
前川さんは俺の考え方どう思うのかな。
「……みくは仕事で未央ちゃんの時居なかったにゃ」
前川さんは少しずつ話始める。
みんな考えるのをやめて前川さんを見る。
「でも、話を聞いて思って最初に思ったのは、ふざけるなだった」
「それはなんで?」
「だってみく達よりも先にデビューしたんだよ? 元々、ニュージェネレーションズの三人はプロジェクトが始まってから、アイドルの道を順調にトントンと進んで行った。本当に羨ましかったし悔しかったんだよ? なんでみく達にはチャンスが回ってこないんだろうって真剣に考えた。 でも、カフェの時、プロデューサーからデビューの話を聞いて、みく達にはチャンスはあるんだって分かって、頑張ろうと思えた。 エールだって送った。 なのに……なのに、なんでみく達が欲しかったものを先に貰えた人が直ぐに諦めて欲しかったものを捨てようとするの? 納得いかない……!」
そう言う前川さんは口元をきつく結ぶ。
目には涙を溜めている。
レッスンしていた島村さんと渋谷さん、トレーナーさんやみんなが前川さんをジッと見ているのが分かる。
「みくは未央ちゃんに多分ムカついているにゃ。 みくが欲しくてもまだ手に入らないものをすぐに手に入れたのに、すぐに諦めようとしているから」
「前川さんの怒りは当たり前のことだと思う。 俺だって前川さんの立場に立ったら同じ事を思うと思う」
そう言うと、渋谷さんと島村さんが暗い顔をする。
カフェの時、前川さんの発言を聞いたCDデビュー組は後ろめたい気持ちがあったに違いない。
顔を逸らしていたし、気まずそうにしていたしね。
今の前川さんの気持ちは、傷心中な二人にも重くのしかかるだろう。
「でも、プロデューサーにも怒ってるにゃ。 理不尽かもしれないけど、陸チャンにも多分怒ってるんだとみくは思う」
「それも間違ってないと思う。 実際に俺だってプロデューサーさんも俺も悪いと思ってるからね」
「……プロデューサーは無口すぎるにゃ」
前川さんは視線を下に下げる。
……ここは他のみんなの気持ちも聞いとくべきだな。
「みんなはプロデューサーさんのことどう思うの?」
「「「「「「「え?」」」」」」」
「別にプロデューサーさんには言わないから、自分の正直な気持ちを答えて」
「……なに考えてるか分からない」
「みりあも……」
「私も」
そう言うのは莉嘉ちゃんとみりあちゃん、多田さん。
「わ、私は怖いです」
そう言うのは緒方さん。
「私も怖いけど、悪い人じゃないと思う」
そう言うのはかな子。
うん、みんなのプロデューサーの評価は怖い、悪い人じゃない、なに考えてるか分からないか。
……俺の第一印象通りだな。
「そこの二人はどう?」
「え、えっと……私はアイドルになれたのはプロデューサーさんのおかげなので感謝しています!」
「……私もなにを考えてるのか分からないよ」
島村さんは焦りながら、渋谷さんは目を逸らしながら答えてくれる。
プロデューサーさんあんまりよく思われてないんだな。
好意的なのはかな子と島村さんぐらいか?
かな子は俺と一緒に話を聞いたことがあるし、島村さんはプロデューサーさんが燻ってたところをスカウトしてくれたんだっけ?
「そっか。 みんなそう思ってるのか」
「……あんたはどう思ってるわけ?」
渋谷さんが俺の方を向きながら聞いてくる。
俺だけ言わないのはやっぱり不公平だよな。
「俺の第一印象は怖い、悪い人ではない、ちょっと無愛想でなに考えてるか分からないかな。 今はアイドルの事を真剣に考えていて大切にしてくれている、凄いプロデューサーで尊敬してる。でも、もっと相手の事を考えて喋れば良いのにって思う」
「アイドルの事を真剣に考えている?」
「そうだよ。 あんなに真剣に考えてる人見たことないよ」
「想像つかなーい」
俺の言葉を聞いたみんなは驚く。
莉嘉ちゃんが言った言葉にみんな頷いた。
「プロデューサーさんね、夜遅くまでみんなのこと真剣に考えてくれてるんだよ。 デビュー案とか考えてる時も、いつもの無表情じゃなくてちょっとワクワクしてるんだ」
「プ、プロデューサーさんがですか?」
「そうだよ。で、色々な人にアドバイスを貰って必死に考えてる。 駄目だと言われた時はちょっと悔しそうな顔をして、褒められた時はちょっと嬉しそうに微笑むんだ」
「あの強面で? そ、想像できない」
「俺も最初はビックリしたよ。 でも、プロデューサーさんの近くで一緒に仕事してみたり、話したりしてみるとあの人の人柄が分かるよ」
「ふーん……あいつ私達のこと、考えてるんだ」
「そうだよ。 でも、今回の件は言葉が足りなかったし、今までの関わりを考えると、みんなが不信感を持つのはしょうがないことだと思う。 でも、俺はプロデューサーさんを信じる。 今はちょっと頼りないかもだけど、きっと本田さんを連れ戻してくれるって」
そう言うと、みんなは静かになる。
どうやら考えてるみたいだ。
「……私も信じるよ」
みんなが考え始めて少ししてかな子が言う。
みんなの視線がかな子に向くのが分かる。
「私も話していて悪い人とは思わなかったよ。 それに、兄さんがそう言うなら私は兄さんの言うこと信じるよ」
「かな子……」
「みりあはよく分からんない。 でも、信じてみたい!」
「みりあちゃん……」
かな子の言葉を聞いてから、何人かは信じてみたいと言ってくれる。
でも、多田さんと渋谷さんは違った。
「私はまだ信じれないかな……話を聞いても実際に見た訳じゃないし」
「……私は分からない。 信じたいけど信じられない」
「……まあ、そう思うのもしょうがないよ」
「……ごめん。 ちょっと風に当たってくる。トレーナーさん、いいですか?」
「う、うん」
「……失礼します」
そう言うと、渋谷さんはレッスンルームから出て行った。
……やっぱりすぐに信じるのは難しいか。
俺はレッスンルームの扉を見続けた……。
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「えっ!? 渋谷さんが帰った!?」
「はい……」
「卯月ちゃんもお休みらしいにぃ……」
「えっ!?」
レッスンをする為に着替えたみんなが、俺に渋谷さん達がいないことを報告してくれる。
昨日いたニュージェネレーションズの二人がいない?
島村さんは分からないけど、渋谷さんは帰ったってことはなんかあったのか?
……プロデューサーさんに聞いてみよう。
「そっか……俺はプロデューサーさんになにかあったのか聞いてくるよ。 みんなは……気分乗らないだろうけど、レッスンをしていて欲しい」
俺はそう言うが、みんなは暗い顔だ。
そりゃそっか…昨日の今日だもんな。
でも……
「俺はまたニュージェネレーションズのライブが見たい。 だから、三人には戻って欲しいと思ってる!」
「でも、戻ってくるの……?」
「戻ってくる! 戻ってきてもらうために俺もプロデューサーさんも今まで以上に行動する! 」
「行動するってなにするの……?」
多田さんが不安そうな顔をしながら聞いてくる。
みんなもどことなく不安そうな顔だ。
「まず、俺はプロデューサーさんと話してくる。 男同士だと話しやすいこともあるしね。 そして、プロデューサーさんと話した後は……渋谷さんの家に行こうと思う」
そう言うと、みんな驚いた顔をする。
まあ、確かに驚くか。
「俺も全力を尽くす。 だから、待っていて欲しい! いや、待っていて下さい!」
俺はみんなに頭を下げる。
お手伝いのくせになに言ってんだって思われるかもしれない。
でも、どうにかしたいんだ!
「陸チャン頭上げて欲しいニャ」
前川さんが俺に声を掛ける。
ゆっくりと顔を上げると、みんなの視線が俺に集まっていた。
「みくはどうすればいいか分からない……でも、陸チャンもプロデューサーも、三人の為に頑張ってくれるんでしょ?」
「うん、頑張るよ」
「なら、みくは最後まで信じてみようと思う。 三人を連れ戻して欲しい……みんなはどう思う?」
前川さんがみんなに聞く。
すると、みんなは口を揃えてこう言った。
『まだ三人と一緒にアイドルやりたい』
それを聞いた瞬間、俺は三人を連れ戻したいという想いが、とても強くなったのが分かった。
……絶対に連れ戻す。
「ならその為に俺はプロデューサーさんとまず話してくるよ」
「ならみく達は戻ってくるって信じてレッスンするにゃ! みんなもそれでいい?」
前川さんの言葉を聞いたみんなは頷く。
よし、みんなだって待っていてくれる。
早速行動に移そう。
「じゃあ、俺はプロデューサーさんのところに行ってくるね。 みんなレッスン頑張って!」
「陸くんも頑張ってね〜!」
俺はきらりちゃんのエールに片腕を上げて答える。
よし、プロデューサーさんのところに早く行こう。
俺は早足でプロデューサールームへと向かった。
書いていたら凄い量になりそうだったので、ここで一旦区切りました。