異世界の少女と絶望のデッキ   作:仕舞獅子舞

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遊戯王が好きなので、こんなものを書いてみました。
特に何も考えずに書きはじめたので、これから主人公のデッキは変わるかもしれません。
基本的にアニメオリカ、オリカはなしの方向で考えてます。
残酷な描写はするかもしれないので一応警戒してください。


ファーストバトル!現れろ、私たちの切り札!

遊戯王デュエルモンスターズ。

私がはまったカードゲームである。

モンスターカード、魔法カード、罠カードの三種類のカードを使って相手のライフを0にする、とても単純なゲームだ。

そんな遊戯王は世界でも大ヒットを記録し、アニメ化まで果たしたのだ。

 

そのアニメの世界に私はいた。

意味がわからないだろう。私も意味がわからない。

わかっていることは、ここが紛れもなくアニメの世界であるということだけだ。

なぜそれがわかったか。そんなの簡単だ。

 

私が住んでいた町はデュエル一色に染まり、持っていたはずの教科書やノートには遊戯王のことが所狭しと書かれている。

 

「なんなのよ、これ」

アニメ世界での私の最初の言葉は、そんな戸惑いの声だった。

 

どうしてこうなったのかは、心当たりは一切ない。

朝起きたらこうなっていた。それだけだ。

私が住んでいるアパートの様子や服、自分の体や記憶には一切の違和感がない。

当然、押し入れにしまってある大量のカードにも異状はない。

融合、シンクロ、エクシーズ、ペンデュラム、儀式に関するカードも全てそこにあった。

昨日学校に持っていったデッキも、ちゃんと学校のカバンに収まっていたし、私の制服ちゃんとハンガーにかけられていた。

だが、テレビ番組が異常だった。全て遊戯王関連の番組だったのだ。

CMもLDSだとか、新パックについてだとか、なんとかカップの話だとか、私の記憶にある世界とは全く違う何かがそこに広がっていた。

私は机の上に置かれたスマートフォンを手に取る。

 

「……今日が日曜日で助かったわ」

 

中学二年生の私が、もしこの状況で学校に行っても、ただ混乱するだけだっただろう。

 

「……あれ?」

 

連絡先がなかった。

何と言えばいいのかわからないが、とりあえずこう言うことしかできない。

連絡先がなかったのだ。

SNSのアプリも、電話もメールもWebやゲームさえも、外部に連絡できるようなものは全て画面上から消滅していた。

 

これはまずいことになった。

バカな私でもこの状況のヤバさくらいはわかる。

カードゲーム友達の高校生の言葉を借りるなら、異世界に飛ばされた系、だ。

 

一旦状況を整理してみる。

ここはアニメの遊戯王の世界。私の所持品は特に変わりない。

 

「とりあえず、外に出て見れば何かわかるかも!」

 

その時だった。私のスマートホンに何かしらの通知が届いた。

私は手早く指を動かし、スマホのロックを解除した。

 

「……えっ、何これ」

 

知らないアプリからの通知。怪しみつつも、そのアプリを開く。

数秒のロード画面ののちに現れたのは、デフォルメされた男性のキャラだった。

 

『ようやく開きやがった。通知しないと開かないとか、こっちから話したい時はわりときつくなるなこれ』

 

喋った。デフォルメされた変なのが喋った。

 

「……あの、あなたは……」

『何おどおどしてんだよ。俺だよ、白井だよ』

 

白井。私の知ってる白井は一人しかいない。

 

「白井って、毎週カードショップで遊戯王やってる……」

『そう、その白井だよ。全く、どうして俺がこんなことになってるのか聞きたかったんだが、いい回答は得られそうにないな』

 

白井さんは毎週私と遊戯王をやってくれてる大学生だ。

私のイメージだと金持ちで、ほぼ全種類のカードを持っているイケメンなのだが……

 

「白井さん、私のスマホになんかしました? 場合によっては訴えますよ?」

『何もしてねぇし、この状況でどこに訴えるっていうんだよ』

 

彼が言うことも最もだ。

この意味不明な状況下では、どこにどう訴えると言うんだろう。

 

『とりあえず、一回俺の部屋に行ってくれないか?』

「どうしてです?」

『お前は遊戯王初心者だし、俺ほどカードを持ってるわけじゃない。それに、この状況下で最適なデッキを持ってるわけじゃない。アニメだと融合、シンクロ、エクシーズはかなり珍しいんだろ?』

「それがどうしたんですか?」

『お前が持ってるデッキ言ってみろ』

 

彼に促され、私は指をおりながら数える。

 

「EM、ファーニマル、サイバー、グレイドル、列車、サイフレームです」

『ペンデュラム、融合、融合、シンクロ、エクシーズ、シンクロ。グレイドルはシンクロ使わなくても戦えるが、他のは無理だな』

「あの、どうしてシンクロとかしちゃいけないんですか?」

 

かってに一人で考え出した彼にそう尋ねると、デフォルメキャラがあからさまなほどに驚いた表情になった。

 

『目立たないために決まってるだろ!』

「どうして目立っちゃいけないんですか?」

私の問いに、彼はため息を付いた。

『ここは異世界だ。異世界で生き抜くためにはまず、ルールを理解しないといけないんだよ。この世界のルールを。その前に面倒ごとを起こされたら、厄介なことに巻き込まれる可能性も増える。おわかり?』

 

私がうなづくと、彼は満足そうにこう続ける。

 

『そんなわけで、このアパートの三階、俺の部屋からデッキケースとってこい。ウィクロスのスリーブに入ってるデッキが入ってるやつ』

「えっ、そのデッキって……」

『いいからとってこいって。あのデッキはエクシーズしなくても戦えるんだよ。俺の部屋の場所はわかるだろ? 鍵? かかってないから』

 

 

 

「持ってきましたよ。でも、本当にこれ、私が使うんですか?」

 

彼が私に持ってくるように言ったデッキは、レベル一のモンスターを主軸にしたデッキ。本来ならエクシーズやシンクロをして場を整えつつ、切り札となるカードを出すデッキだ。

だがそこに入っているカードに若干の問題がある。

 

「このカード、アニメ世界で使っても大丈夫なんですかね?」

『わからんが、ためしてみないことにはなんとも言えないだろ』

 

デフォルメされた白井さんが口笛をふく。

 

「それにこのデッキ、回し方がよくわからないんですけど……」

『わからないなら教えてやるから。とりあえず外に出てみようぜ。俺がどんな世界に来ちゃったのか、かなり気になるし』

 

白井さんは楽しそうにそう言ったが、私の心は沈む一方だった。

どうしてこんなことをしないといけないのか。どうしたら元の世界に帰れるのか。そんな疑問だけが頭の中に巣食っていた。

 

『そういえば、清澄』

 

彼が私の名前を呼ぶ。

この世界にきてはじめて私の名前を呼んだのは、人間じゃなくて機械だった。

 

「どうしたんですか、白井さん」

『この世界ってアニメの中の世界、でいいんだよな』

「おそらくは、ですが」

『なら、デュエルディスクが必要になるんじゃないか?』

 

そのこと全く考えていなかった。

デュエルディスク、そういえばそんなものもあったなぁ、程度の感覚だ。

 

「デュエルディスクって、売ってるのかなぁ?」

『なんとも言えないが、きっと売ってるんじゃないか? この世界の必須アイテムだしな』

 

とりあえずは今日の目標が決まった。

デュエルディスクを手に入れる。

まずはそれをしないと話にならない。

 

 

 

デュエルディスクは簡単に手に入った。

一つ135円いう驚きの価格で、だ。

カードショップで手にはいったことも驚きだったが、それ以上に驚いたことは、町が私の知っている町ではなかったことだ。

アパートには何も問題などなかったが、それ以外の場所が全て変わっていた。近くのコンビニは消滅、牛丼チェーンも消滅。その代わりにカードショップが大量発生していたのには、さすがアニメの中の世界、と言わざるを得ない。

私は近くにあったカフェで珈琲を買い、空いてる席に腰掛ける。

 

『カードショップの中、確認しなくてもよかったのか?』

 

私が家を出てからずっとつけっぱなしにしていたワイヤレスイヤホンから、白井さんの声が聞こえてくる。

スマートフォンはポケットに入れているにもかかわらず、彼には外の世界が見えているらしく、何かあるたびに頻繁に私に話しかけてきていた。

 

「ショップの中で気になるようなものはなかったから、別にいいかなって思って」

『禁止制限とアニメオリカの確認は?』

「それはまた後でってことで。それより先に確認したいことがあったし」

 

私の世界の道具、スマートフォン等がこの世界では一般的なのか調べたかった。

街を歩いてわかったが、スマホはできるだけ隠した方がいいだろう。

 

「さてと、とりあえず第一目標はクリアね。さてと、次はどうしようかな」

『デュエルしようぜ。デュエルディスクが正常に作動するか調べたいし』

「そうね。それが一番いいかもね。白井さんのデッキの回し方とか知りたいし」

 

ついでに、デッキについていたスリーブは全てカードショップではがした。この世界では、スリーブを付けているとデュエルディスクが誤作動を起こすことがあるらしい。

帰ったら私のデッキと白井さんのデッキのスリーブを全部外さないといけないと思うと、少しだけ億劫だ。

 

「それで、早くデュエルしたいんだけど、どこに行ったらデュエルできるのかな?」

「あれ、君、デュエルがしたいのかい?」

 

唐突に後ろから話しかけられたので、驚きながら振り返ると、そこにはクールな感じのイケメンが立っていた。

誰、この人。とつい言いそうになったが、その言葉はギリギリのところで飲み込めた。

 

「あの……」

「失礼、レディがデュエルを望んでいると聞いて、いてもたってもいられなくて、つい話しかけてしまった」

 

あぁ、これが噂に聞くナンパなのだろう。白井さんもため息をついている。

 

「えぇ、ちょうど新しいデッキを作ったので、デュエルの相手が欲しかったんです」

 

私の口からすんなりと嘘がこぼれ出た。

流石にここで、帰ってくださいというだけの度胸は私にはない。

 

「それなら早速デュエルしようか。先行はレディから……」

「いえ、先行はお譲りします。それに私はレディというイメージとはかけ離れてる人なので、その呼び方はやめていただけませんか?」

「それならどう呼べばいいんだい?」

 

デュエルディスクを構えながら訪ねて来る彼に、私は笑顔でこう答える。

 

「私のことは、冷菓と読んでください。さぁ、デュエルのスタートです!」

 

「「デュエルッ!」」

 

彼と私の掛け声によりデュエルディスクが起動し、デッキが自動的にシャッフルされる。

デュエルディスクが起動すると、バトルをしかけてきた彼は、私を外の道へ出るように促した。どうやら狭い室内だとモンスターが壁に埋まったりして、映像がカオスなことになるようだ。

外に出て、デュエルの準備ができてから、私はようやくデュエルディスクのある表示に気がついた。

 

LP、4000

 

「初期ライフの量もアニメと一緒なのね」

『わりときついな。デビルフランケンとか使ったら一発でライフが飛ぶな』

 

このライフ値だと、死ななきゃ安い、というようなデッキはできるだけ使わない方がいいみたいだ。

 

「それでは、僕のターンだよ! ドロー!」

 

目の前のイケメンが派手なモーションでカードを引く。この世界ではアニメのように、派手にドローする決まりでもあるのだろうか。それとも単純に、デュエルディスクからカードを引くのに力がいるだけか。

 

「ターンエンド! さぁ、冷菓のターンだよ」

 

私が考え込んでいるうちに、相手はもうターンを終えてしまっていた。

彼はカードを一枚伏せただけで、モンスターゾンはガラ空きだ。

 

『うーん、そういうことされるとこっちは動けないんだよな』

「そうだね、とりあえず、ドロー!」

 

早速引いてしまった。

このデッキの切り札を。

白井さんもこの運に悪さには、流石にため息をつくことしかできないらしい。

 

「モンスターをセットしてターンエンド!」

 

私がセットしたカードは黄泉ガエル。

自分フィールドに魔法、罠カードが存在しない時、自分のスタンバイフェイズにこのカードを特殊召喚するという効果を持ったカード。

攻撃力も守備力もともに100で、今のこの状況だとただの盾だ。

 

「僕のターン、ドロー!」

 

彼は引いたカードをみて、笑みを零した。

 

「僕はエレキングコブラを通常召喚!」

 

歩道の上に、気持ち悪い蛇のような何かが特殊出現する。

 

エレキングコブラ

レベル4、攻1000、守 500

このカードは相手プレイヤーに直接攻撃する事ができる。

このカードが直接攻撃によって相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、自分のデッキから「エレキ」と名のついたモンスター1体を手札に加える。

 

『エレキ、懐かしいな』

「うん、このデッキとこの状況で一番戦いやすいテーマだね」

 

私たちがヒソヒソと話していると、彼は首を傾げて、誰と話しているんだい、と尋ねてた。

 

「あっごめんなさい。気にしないでください。ただの独り言です」

「ふむ、そういうデュエルスタイルなんだね、冷菓は」

 

呼び捨てにしないで欲しいなぁ、ということばを飲み込んで、彼に微笑みかける。

 

「どうぞ、アタックしてきてください」

「いいのかい、ならば、エレキングコブラでダイレクトアタック!」

 

この攻撃を受けると、相手はエレキングコブラの効果でサーチできる。

 

『止めろ、清澄』

「トラップカード、狡猾な落とし穴! 私は裏側守備表示のモンスターとエレキングコブラを破壊!」

 

立体映像として映し出されていたコブラが弾けとび、私の黄泉ガエルとともに墓地に送られる。

 

「メインフェイズ2、僕は伏せていたリビングデットの呼び声を発動! エレキングコブラを墓地から特殊召喚してターンエンド!」

 

いつの間にやら集まってきたギャラリーから、彼のプレイングミスを指摘する声がポツリポツリと聞こえてくる。

可哀想だから、バトルフェイズ中に発動すればダメージを与えてサーチできたとか、言わないであげようよ。

 

「じゃぁ私のターン、ドロー!」

 

またまたこのデッキのキーカードを引いた。

だが、今回はエクシーズをしないという方向性なので、ただ邪魔なカードだ。

 

「スタンバイフェイズ、私は墓地の黄泉ガエルの効果を発動。墓地から黄泉ガエルを特殊召喚!」

 

歩道に現れる、羽の生えたカエル。

このアニメ世界では気持ち悪いモンスターも、立体映像として投影されてしまう。

これからデッキを組む時は、出来るだけ可愛い、ファーニマルみたいなカードでデッキを組もう。

 

「黄泉ガエルが特殊召喚されたので、手札から速攻魔法、地獄の暴走召喚を発動! デッキから黄泉ガエルを2体特殊召喚!」

「僕もデッキからエレキングコブラを2体特殊召喚」

 

変なモンスターたちにより埋め尽くされる歩道。

通行人のみなさんごめんなさい。

 

「メインフェイズ、私は手札からバトルフェーダーを通常召喚!」

 

相手はカードを伏せていない。これなら勝てる。

4000しかないライフを一発で削り切れる。

 

『さぁやるぞ、清澄。俺と一緒に召喚口上を叫べ。その方が雰囲気出るだろ』

そうだね、と心の中で返事を返し、デュエルディスクの上にならんだ四体のモンスターを墓地に送る。

 

「『現れよ!!』」

 

白井さんのペースに合わせて、はっきりと言葉を口にする。

 

「『全ての闇と混沌を統べる絶望の化身!!』」

 

これが私の、白井さんのデッキの切り札。

 

「『絶望神アンチホープ!!!』」

 

この日、私はこの世界でアンチホープをはじめて召喚した。

これが、私の運命を大きく変えることを知らずに。




エレキ使いのみなさん、ごめんなさい。いろいろ突っ込みたいとは思いますけど、押さえてください、お願いします。
まだまだ書くのは得意ではないので、ご指摘等よろしくお願いします。
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