異世界の少女と絶望のデッキ   作:仕舞獅子舞

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久しぶりの投稿です。
今回もデュエル会となります。
そして同時に日常パートも混ざっています。
ではお楽しみください。


異世界の少女の平和な決闘

「足りない」

 

朝起きて最初に出た言葉がそれだった。

 

「全然足りない」

 

テレビをつけ、ポットでお湯を沸かし、余っていた食パンをトースターに入れ、何時もの机の前に座って一言。

 

「こんなんじゃ満足できないぃ!」

 

別に突然ハンドレスコンボに目覚めたとかそういうわけではなく、単純に満足できる試合が、終わった後にいい試合でしたねと語り合える試合ができていない。

 

「シンクロできない、エクシーズできない、融合できない、ペンデュラムできないって、何すればいいのよ!」

 

昨日一日いろんな人とデュエルし、最後に黒咲と戦って気づいた。

何もかもが物足りない。

一方的に相手を倒すだけで、全然負けない試合なんてしていても、楽しさは一切ない。

 

「せめて帝王使おうよ。これじゃ歯ごたえがなさすぎるよ」

 

テレビで流れているのはプロデュエリストの試合。使用されているデッキはガスタとエヴォル。

 

「ガスタ……作りたかったなぁ」

 

トースターとポットから同時に音がなる。すぐにキッチンに向かい、お皿の上にトーストをのせ、お湯をマグカップに入れて紅茶のティーバッグを取り出す。

 

「今日は、レモンティーにしよう」

 

こっちの世界に来ても私の朝は変わらない。白井さんもまだ起きていないので、この時間だけは誰にも見られていない自由な時間。

 

再び机に戻り、テレビから流れる試合を見る。

アクションデュエルのおかげで、試合はカードゲームというよりもスポーツに近い物とかしている。

 

「ガスタかぁ。マクロコスモスが刺さるわね。あとは虚無空間……あっ、帝王なら領域も刺さるわね」

 

自然と頭の中にガスタ対策が浮かび上がってくる。

そういえば白井さんも、ガスタ持ってたっけ。

 

「今度借りてみようかな」

 

昨日、大量のパックを開けながら白井さんと話していたのだが、この世界にいる間、カードは共有の物にしようということになった。

つまり私が持っていたカードを白井さんのデッキに入れ、白井さんのカードを私のデッキに入れてもお互い文句を言わないということにしたのだ。

こうすれば互いのデッキがかなり強化される。二人のくせが反映されることで、新たなスタイルのデッキとかす。

 

「私のPSYフレームに幽鬼うさぎを入れられたのは大きかったなぁ」

 

神の通告やツインツイスター、ハーピィの羽箒を惜しみなくデッキに入れられるのは嬉しい。

さらにはガスタのように作りたかったけど作れなかったデッキも使えるようになったので、今日から早速新しいデッキを試すのもありだろう。

まずはライトロードを使ってみようか……。

 

「とりあえず、ライフ8000スタートにしたい……」

 

この世界で気づいたことの一つに、ライフの重要性という物がある。例えばパワーボンドを使用してサイバーエンドドラゴンをだせば、そのターン中にケリをつけられなかった時、エンドフェイズに負けが確定する。

チキンレースの効果を一回使用するだけでライフの4分の1が削られるのだ。これはかなり辛い。

 

「ライフチェンジャーを禁止にする意味がない気がする」

 

この世界でマジエク帝なんぞ使おうものならすぐにライフが飛ぶ。

 

「ライフが少ないとすぐに決着がついちゃうし……」

 

昨日プレイした限りだと、ヴォルカニックカウンターでのバーンダメージによる勝率がかなり高い。この世界ではアマリリスカウンターがかなり強力なデッキになりそうだ。

 

『うん、もう朝か。おはよう、清澄』

「おはよう、白井さん。今日は快晴よ」

『そうか、そりゃ良かった。雨だと気分も滅入るからな……おっ、そのテレビに映ってんのはプロの試合か?』

「そうみたいね。プロって言っても、元の世界の人たちほどの強さじゃないけど」

 

今は会えないカードゲーム仲間たちの顔を思い出す。

wixossが大好きだった変態。

人気コスプレイヤーだった遊戯王好きのお姉さん。

やけにノリが軽いバイトの店員さん。

ヴァンガードに全てをかけてた大学生。

 

今はもう会えないけれど、元の世界に戻ったら真っ先に彼らとーー

 

「wixossしたい」

『俺もだ。wixossしてぇ』

 

カードゲーム戦国時代だった日本を離れ、遊戯王一強時代のここにきた私にとって、他のカードができないのは死活問題と言わざるを得ない。

 

「繭さん! 私をセレクターにしてもいいから、wixossさせてぇ!」

『そのネタ、遊戯王の世界で言ってもツッコミ入れてくれる人いないよな』

 

私にとって今最も重要視すべき問題は、弱いプレイヤーとデュエルをしすぎてストレスが溜まっているということ。

デビルズミラーみたいな微妙なステータスのモンスターを主軸にしてくるような人がいる世界で、遊戯王に飽きたからwixossに逃げることも許されず、永遠と遊戯王をやらされる。

 

「せめて歯ごたえがあれば……」

『一人だけ、心当たりがあるぞ。お前が昨日叩き潰した金髪の反対側にいた赤髪。あいつがもう一人のトップ候補だったんだろ?』

 

そういえばそんな人もいた気がする。

 

「今度ショップに行った時に、野良で挑もうかな……」

『それがいいと思うぞ。そろそろ強い相手とやらないとお前もなまっちゃうだろ』

「wixossの腕はすでになまってるかも」

『もうwixossは諦めろ。お前の猫型アイヤイデッキにお別れ言っとけ』

 

やはりもうwixossは諦めるしかないらしい。

他の世界に来てしまったからには、腹を括るしかないのだが、それでも名残惜しい物は名残惜しい。

 

「……さようなら、3万円かけたアイヤイデッキ」

『ファッ!? デッキひとつ組むのに3万かかったのか!? どうしたらそうなるんだよ!』

「ホルアクティに2万かけた人に言われたくない」

 

紅茶を飲み干し、テレビの電源を切ってベットへと向かう。

 

「白井さん。着替えるから目閉じてて」

『了解しました! お嬢様!』

「……怪しい。念には念を入れて電源切ってーー」

『おい、やめろぉ! この世界でむやみに電源切ったら俺がどうなるかわからん! これで俺が消えたらどうすんだよ!』

「じゃぁスリープモードにするね」

『おい、やめろぉ! そんなことされたらお前のメアドで有料エロサイトに会員登録するぞ! お前の講座番号がこのケータイのメモ機能に書かれてることを忘れるな!』

「……サイテー」

 

仕方ないので白井さんを私にベッドの下に放り込む。

 

『おい清澄。これじゃお前の着替えが見れないぞ』

「見られたくないからこうしてるのよ」

『なんだとっ、ピッチピチの女子中学生が目の前で着替えているのに俺はそれを見れないなんて、これがぞくに言う生殺しってやつか!?』

「前から思ってたけど、白井さんってロリコン?」

『違う、俺は年上好きだ。まぁそれはそれとして、目の前で若い娘が着替えてんのみて興奮しない男はいないだろ』

 

男の人に見られながら着替えるというのはあまり気持ちのいい物ではないが、今は我慢するしかない。昨日は彼が起きる前に着替えてしまったから問題なかったが、今日は遅く起きてしまった私が悪い。

 

それに、これは白井さんのためでもある。別に白井さんに裸を見せたいという意味ではなく、彼のストレスを少しでも減らすためだ。

彼はこの世界に来てから、私に一切動揺した様子をみせず、今日までずっと、前の世界にいた時と同じように接してくれている。

下ネタは向こうの世界だと滅多に言わなかったが、こっちの世界に来てから連呼しているのはストレスのせいと言ってもいいだろう。

彼は今、私にもわかるほど無理をしている。

 

「……白井さん。突然だけど、真剣に答えて」

『どうした、急に改まって』

「白井さんは元の世界に帰りたいと思う?」

 

着ていたパジャマを脱ぎながら彼に尋ねる。

 

『……難しい問題だが、答えはYESだ。俺はこんな世界に居たくない』

「カードゲーマーの白井さんにとっては理想の環境じゃないの?」

『確かに遊戯王をやるにおいては最高の環境だし、この体にもしばらくすればなれるはずだ。でも、俺は早く元の世界に戻りたい。俺にはまだ向こうの世界で調べなきゃいけないことがあるんだ。……そういうお前はどうしたいんだ?』

 

ハンガーにかけてた制服をベッドの上に置きつつ、彼の質問に答える。

 

「どっちでもいいのよね。この世界にいればデュエルするだけで儲かるから、将来のことはあんまり気にしなくていいしね。この世界に残ってもいいかなって思ってるけど」

 

帰りたいと思っているのも事実だ。

 

「折角なら私の生まれた世界で最後を迎えたいと思っているのも事実よ」

『……そうか。例え向こうの世界がひどくてもか?』

「えっ、どういうこと?」

『いや、なんでもない。気にすんな……カシャッ!』

 

唐突にベッドの下から、シャッター音が鳴り響いた。

私は背中に悪寒を感じながら、急いで制服をきてベッドの下から白井さんを引っ張り出す。

 

「白井さん、さっきのは何?」

『さっきの? 何の話だい?』

「電源切るわ」

『ちょっと待て! さっきも言ったがこの状況下で電源切られたら俺がどうなるかわからん!』

「そう、電源が切られたくなかったらさっさと自白することをお勧めするわ」

 

問い詰めるようにそう言うと、スマホの画面が切り替わり、着替え中の私の画像が表示される。

 

『お前の綺麗な肉体に見惚れてたら、勝手に写真が撮られたんだ! 本来ならカメラで撮れるはずがないのに、なぜかお前が映ってて……悪意はないんだ! いやらしい気持ちもない!』

「否定すればするほど怪しく思えてくる……」

『本当だ! お前の太もも見てて、どうしてこんなに綺麗ですんなりした太ももになるんだろう、とか思ったがーー』

 

私は無言でケータイの電源を切り、制服の内ポケットにそれをしまった。

 

 

 

 

 

清澄は元の世界にそこまで執着していないらしい。

俺は電源が切られ、外部からの情報が一切入ってこなくなったケータイの中で、一人静にそう考えていた。

彼女が無理をしているようには思えないから、きっとあれが本心なんだろう。彼女がそう思っているならそれでいい。

 

俺は一人、さっき撮ったばかりの清澄の写真を見ながらつぶやく。

 

「間違いなく清澄冷菓なんだよな」

 

彼女の下着姿には目もくれず、ひたすら彼女の顔をみる。

 

「うん、こうやってじっくり見ても、清澄冷菓だ」

 

今日ここまで、下ネタやwixossネタ、さらには前の世界の情報を使ったりデュエル中に口出しすることで何度か反応を見ていたが、彼女は間違いなく清澄冷菓だ。デュエル中に無意識のうちにやっている、元の世界で合計14回のジャッジキルを食らった、という偉業を打ち立てた煽り行為も健在だ。

 

「じゃあ俺は本当に、あいつの言ってる白井なのか?」

 

彼女が俺の知ってる清澄冷菓ならば、間違いなくこの世界に残ることを選択するはずだ。それならば俺が本当の白井でない可能性が出てくる。

 

「アニメの世界で楽しくデュエルする俺たちを想像してたが、どうやら殺伐とした感じになりそうだな」

 

俺の頭に浮かんでくる疑問を、ケータイの中のメモ機能に書き留める。

 

「まぁまずは清澄がこの世界で平和に過ごせるようにしてやらねぇとな」

 

疑問は後から後から湧いてくる。それでもまず最優先にしないといけないことは、間違いなく清澄の体の安全の確保だ。それは俺のためではなく、ただ純粋に清澄のために。

 

「中学生なんだから、もっと世界を楽しんでもらわなくちゃな」

 

その言葉だけは、俺の心の底から湧き出てきた本心だと確信できた。

 

 

 

 

 

 

ケータイの電源を切ってから、白井さんの声が聞こえてくることはなくなった。それでも私は耳にイヤホンをつけて学校へと向かう。

以前白井さんから聞いたが、私がイヤホンをつけているのは精神安定のため、ということになっているそうなので、そう気安く取り外すと辺りから怪しまれることは間違いないだろう。

 

私はふと昨日の試合を思い出す。ヴェルズ使いとやりあった、あのなんとも言えない終わり方をした一戦。

 

「エクシーズ召喚、ね」

 

元の世界ではEMEmと呼ばれるデッキが、エクシーズで環境を独占していたことがあったっけ。

 

「使っちゃおうかな、列車」

 

順列車、またの名をスキドレ列車。昔のカードゲーム仲間が言うには、エクシーズ初心者にはお勧めしたいデッキだそうだが、私は初心者にはBKをお勧めしたい。

列車はエクシーズでランク10を出し、高火力で相手を追い込む、メタ、高火力ビート、バーンの集合体のようなデッキ。一時期シャドールと組んで環境を荒らしていたこともあった気がする。

 

「シンクロだけだと、どうしてもね」

 

足りないのだ。気持ちいい試合をするには、何かが足りないのだ。サイフレームでメタったときは、確かに気持ち良かったが、メタビートだけが楽しいデュエルじゃない。

EMEmのように場を制圧する力、彼岸のようにアドを稼ぎ続ける力。そういったものに少なからず魅力を感じるのがデュエリストであるように、私もあのような圧倒的な力を欲したくなるわけで。

 

「やっぱり、使おうかなぁ。でも、ここで派手にやらかしてLDSに目をつけられると、あとあと大変だから……」

 

ダメだ。

頭を使うのは得意じゃない。

 

「しばらくはサイフレームとアンチホープ、炎王、たまにsophia使って、誤魔化し続けるしかないかな」

 

アニメを知ってる私は、赤馬社長がランサーズを組織しようとしていることは知っている。だから彼に直談判すれば、きっとランサーズに入って、アニメキャラ達と冒険できるはずだ。

 

でもそんなこと、望んでいない。私はアレンジよりも原作を大事にするタイプ、つまりアニメの展開を第三者の視点で、カメラに映ることなく鑑賞したいのだ。

 

「目立たないようにカードを楽しむには、一体どうすれば……」

 

適度に負ければ目立ちはしないが、わざと負ける気にはなれない。柚子とやった時はわざと負けたが、これ以上はカードゲーマーとしての何かを失いそうだ。

 

まず目立たないようにするには、シンクロもできるだけ使わず、炎王や帝、インヴェルズのようなテーマで戦うのが一番だろう。洗脳解除ゴーレムでもいいが、ヴォルカニッククイーンの1000バーンは、4000ライフのこの世界だと致命傷になりかねない。

他にもエクストラを使わないデッキはたくさんあるが、どれも私の性格と一致しないので却下だ。

 

黙々と考えながら歩いていると、早くも学校のもんが見えてきた。まだ朝早いこともあり、誰かがきているという気配はない。

 

「少し早く来すぎちゃったかも……」

 

これで先生が来てなかったら笑うしかない。朝誰も来ないうちに学校にきたのは、先生と数試合して、早めに特権を手に入れるため。カウンター型炎王にも慣れてきてだいぶ使いこなせるようになってきたので、この学校の生徒相手なら、そう簡単に負けはしないだろう。

 

太ももにつけたデッキケースに触れる。中に入っているのは竜大神とアンチホープ。

 

「ごめんね、二人とも。この世界だと目立ちすぎちゃうの」

 

竜大神のコンボによる大量展開は、見ているこっちが驚くほど派手だし、アンチホープの5000打点は、こっちの世界だと脅威と言わざるを得ない。前の世界のようにボルカザウルスで焼かれる可能性も低いので、なおさらだ。

 

まだ閉まっていた正面の扉を開け、下足箱に向かう。自分の靴箱は一番したにあるため、いちいちしゃがまないといけないのが面倒だ。

 

靴を履き替え、そのまま職員室へと向かう。まだ朝早いこともあり、誰かが教室にいるわけでなく、幽霊でも出てくるんじゃないかと思うほど静かだ。

 

「……失礼しまーす」

 

扉をノックしてから、職員室に入る。中にいた先生は約3人。担任はまだ来ていないし、昨日授業を受けた先生は一人もいない。

 

「おっ、こんな早くから学校来てる奴がいるなんてな。まだ6時だぜ?」

 

中年の太ったおっさんが、私に声をかけてくる。

 

「どうしたよ、こんな朝早くから」

「ちょっとお願いがあって来たんです」

「お願い?」

「デュエルしてください」

 

困惑した顔をする、中年のおっさん。

いきなりデュエルを挑まれて、困惑しない方がどうかしている。前の世界で言うなら、ショーケースのカードをみていたら、いきなり野良試合を申し込まれるようなものだ。

 

「お前……転校生か?」

「あれ、私のこと、すでに先生たちに知られちゃってる?」

「当然だ。お前がすでにうちの教師を何人か葬ってるって話は聞いてるぜ。いやあ、どこで勉強すればそこまでデュエルに強くなれるんだ?」

 

OCGの環境で生きてれば、このくらいにはなる気がする。

 

「ちょっと山籠りして、デュエル漬けになってたんですよ」

「なるほどなぁ。その年で山籠りってのはたいしたもんだ」

 

なんでこの世界の人たちは、山でデュエルをするっていうことに疑問を持たないんだろう。そんな人がいなさそうな場所でカードするより、家にこもってADSやった方がよっぽど遊戯王がうまくなるような気がする。

 

「それじゃあ、デュエルといこうか」

「あれ、ここでディスク展開しちゃうんですか?」

 

昨日のツムギ先生もそうだったが、所定の場所以外でデュエルしたらDPを奪われちゃうんじゃ……。

 

「教員用のデュエルディスクは特別製だ。生徒とやる時はDPがお互いに減らないようになってるのさ」

「そうなんですか」

「生徒からDPむしり取る先生とか、鬼畜すぎるだろ?」

「そうですね。教員免許が一発で剥奪されそうですね。……そうかぁ、先生と戦ってもDPは変わらないんだ……」

 

これは少し想定外だ。教員と戦ってDPを稼げれば毎日の食事に困ることはなかったろうに。

 

「さぁ転校生、早くディスクを構えな。俺も仕事が溜まってるんだ」

「じゃあ、早めにデュエルを終わらせましょう」

 

ディスクを鞄から取り出して腕につけ、デッキをセットする。

 

「「デュエル!」」

 

デュエルディスクが起動音を立て、私たちのディスクにそれぞれ、ライフポイント4000の数字が表示される。

 

「私の先行ね。とりあえずテラフォーミングを発動して、炎王の孤島を手札に加えるよ」

 

テラフォーミングはデッキからフィールド魔法を手札に加えるカード。炎王デッキのメインエンジンとなる孤島を手札に加えることができるカードだ。

 

あまり時間をかけたくないので、今回は早めにケリをつけにいこう。

 

「手札から炎王の孤島を発動し、効果を使用します。手札のヴォルカニックカウンターを破壊して、デッキから炎王獣キリンを手札に」

 

カウンター型炎王デッキは、この世界では知られていないらしく、ヴォルカニックカウンターが墓地に溜まっていても、警戒されないことの方が多い。

だからカウンターによるバーンが決まりやすく、決着も割と早くつくのだ。

 

「さらに、炎王獣キリンを召喚、カードを二枚セットして、ターンエンド!」

 

これで手札は1枚だが、準備は整った。次のターンに相手がどう動いてくるのかが問題だが……。

 

「こっちのターンだな。ドロー!」

 

派手なドローモーション。毎回思うがカードが可哀想だ。

 

「俺は手札から、魔の試着部屋を発動! 800ライフを支払って、デッキの上から4枚をめくり、レベル3以下の通常モンスターがいた場合、そいつらを特殊召喚する!」

 

マズイ。ローレベル通常モンスターを使用したデッキは、一撃必殺の何かをもっているかのうせいが非常に高いし、本命を叩き込む前にジャブを打ってカウンターを処理することもできる!

 

「一枚目、レベル1通常モンスター、バニーラ。2枚目、死者蘇生。3枚目、レベル1通常モンスター、大木炭18。4枚目、トライアングルパワー」

 

トライアングルパワー、私の記憶が正しければローレベルのサポートカードで攻守を2000アップさせるカード……。

これってもしかして、弱肉一色デッキ!?

 

弱肉一色

自分フィールド上にレベル2以下の通常モンスターが表側表示で5体存在する時に発動する事ができる。お互いのプレイヤーは手札を全て捨て、レベル2以下の通常モンスターを除くフィールド上に存在するカードを全て破壊する。

 

「めくれたバニーラと大木炭18を特殊召喚!」

 

レベル1バニラモンスター軸の弱肉一色デッキ。通常モンスターサポート等で攻撃力を上げ、弱肉一色で相手のフィールドを焼く、一撃必殺のデッキ。

ガルドニクスで対処する前に、高打点となったモンスターで殴られれば終わりだ。

 

「さらに、手札からワンフォーワンを発動! 手札のワイトをきって、デッキから異次元トレーナーを特殊召喚!」

 

ここで地獄の暴走召喚でも打たれたら、相手のフィールドに通常モンスターが5体並んでしまう。

 

「流石にそれは許されない。トラップカード、激流葬発動! フィールドのモンスターを全て破壊する!」

 

トラップカードから溢れ出る水によって、流されていく通常モンスターたち。当然、キリンも破壊されるが……。

 

「キリンが破壊されたことにより、効果発動! デッキからヴォルカニックカウンターを墓地に送る」

「くそっ! カードを1枚伏せてターンエンド!」

 

危なかった。こういうデッキには一瞬の油断が命取りになる。

 

これで私のライフは4000で手札は1枚。フィールドには伏せカード一枚と、炎王の孤島。墓地のヴォルカニックカウンターは2枚。

相手のライフは3200で手札は2枚。伏せカードは一枚だがモンスターゾーンはガラ空き。

ここはおくさず攻めた方がいいだろう。

 

「私のターン、とりあえず、ドロー。うん、来ちゃったかぁ」

 

あの伏せカードはおそらくブラフ。弱肉一色デッキのような、特定の条件を成立させるためのデッキには、防御札をいれる隙間はほとんどない。アンチホープデッキのようなネタデッキを使ってる私が言うのだから、ほぼ間違いはないはず。

 

「炎王の孤島の効果発動! 手札の炎王神獣ガルドニクスを破壊して、デッキから炎王獣バロンを手札に加える」

 

……コツコツとヴォルカニックカウンターを墓地に送ってたけど、無意味になっちゃったかも。でも、仕方ないか。

 

「やっぱり、4000は少なすぎるわ」

 

手札の炎王獣バロンをディスクに叩きつける。攻撃力1800。

 

「バトルフェイズ。炎王獣バロンでダイレクトアタック」

 

立体映像のバロンが先生を切りつける。

 

LP3200ー1400

 

「くっ、やるな、転校生! だが、こっちのライフはまだ……」

「攻撃反応トラップ、除去トラップは無いみたい。それならこのターンで終わらせる! 先生、私のバトルフェイズはまだ終わらないわ!」

 

伏せていたカードを発動させる。

 

「速攻魔法発動! 炎王炎環!」

「なに!? このタイミングで速攻魔法を使用するだと!?」

 

フィルドのバロンが突如として燃え上がる。

 

「さぁ来て、私たちの切り札! 不死の力を持つ美しき鳳凰よ、今こそその灼熱の翼をはためかせ、我らの前にその姿を現せ! 墓地から蘇れ、炎王神獣ガルドニクス!」

 

炎王神獣 ガルドニクス、レベル8

攻2700、守1700

このカードがカードの効果によって破壊され墓地へ送られた場合、次のスタンバイフェイズ時にこのカードを墓地から特殊召喚する。この効果で特殊召喚に成功した時、このカード以外のフィールド上のモンスターを全て破壊する。また、このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、デッキから「炎王神獣 ガルドニクス」以外の「炎王」と名のついたモンスター1体を特殊召喚できる。

 

相手は伏せカードを発動しない。召喚反応系の可能性はない。ならば……。

 

「炎王神獣ガルドニクスで攻撃! ダイレクトアタックね」

「ぐあぁぁぁぁぁっ!!」

 

先生、LP1400ー-1300

 

「攻撃反応系でもなかったか……。先生、ありがとうございました! いい試合ができました!」

 

久しぶりに楽しい試合だった。こういう独創性の高く、個性的なデッキは、戦ってるこっちも楽しくなる。

 

「生徒に完封されるんじゃ、俺もまだまだだな」

「そんなことはないですよ。そういえば、あの伏せカードはなんだったんですか? 弱肉一色ですか?」

 

驚いた顔で私を見る先生。どうやら図星らしい。

 

「あぁ、ブラフとして伏せておいた弱肉一色だが、どうして分かったんだ?」

「分かりませんでしたよ?」

 

そんなことが分かるのは、超能力者か、異常なまでに動体視力と視力が高い人か、あるいはたまたまカードが見えてしまった人くらいだろう。

 

「ただ、先生のデッキの動きから、弱肉一色が入っていることは何と無く分かりました」

 

今回のデュエル、結局カウンターを使わずに勝ってしまった。まさこうもあっさり倒せるとは。

 

「まだ時間はありますよね。今、手が空いてる先生はいますか?」

 

野次馬として私たちを囲んでいた先生に、声をかけてみる。誰もが私から視線をそらす。

 

「みなさん、手が空いてるみたいですね! それではやりましょうか」

 

なんだかんだで私は今日の朝に、先生を全て打ち倒し、特権を手に入れて見せた。

私が規定の勝利回数に達した頃には、教員会議だと言われ職員室を追い出されてしまったが、それなりに楽しい試合ができた。

 

「さて、と。特権も手に入ったことだし、しばらくはゆっくり、学校生活を楽しもっと」

 

そう呟き、職員室を後にする。

ここ数日遊戯王漬けの日々を送っているが、不思議と疲れは感じていない。どうやら私は、ようやくこの世界に馴染めてきたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、清澄。そろそろ電源つけてくれよぉ」

 

誰もいないケータイの中で、白井は1人静かに呟いた。電源が切れているせいでネットに接続できず、ずっと写真フォルダをみていた彼の、心からの言葉。

 

「流石にこれは、寂しいよぉ」




今回の話を書くために、デッキアイディアを出してくださった方、ありがとうございます!
これからもアイディアに詰まったらデッキアイディアを募集する予定でいます。
そして、現在デスニードラウンドの二次創作と同時進行という形をとっているため、今後の投稿はいつも以上に遅めになりますが、ご了承ください。

余談です。
遊戯王の映画が公開されましたね。私はまだ見にいってないので、早くみたいのですが、知り合いの頼みでカードを取りにいかないといけない(義務感) なので、ものすごくストレスが溜まっております。
ついでにもう一つ、wixossのアニメ2期が……
えっ、ここにwixossプレイヤーはいない?
ショボーン。
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