異世界の少女と絶望のデッキ   作:仕舞獅子舞

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ようやく続きがかけました。
デュエルパートが続きすぎているので、そろそろ日常を入れようかな、と思っています。


反転する絶望、現れる希望

「LDSの見学ツアーは楽しかったか?」

 

赤馬零児は感情の読めない表情で、私にそう言った。その手にあるのは絶望神アンチホープ。

カードの解析が終わったということで、私は彼に呼び出された。当然、私のデュエルは見られていたらしく、彼の次の言葉はこうだった。

 

「ダ・イーザというカードは確かに強い。60枚のデッキなら、ダ・イーザ以外のカードが全て除外されていれば、攻撃力は23600になるのだからな」

「でもそれは理論上の数値。マクロコスモス発動下でライトロードでも使えばそのくらいの数値、除外枚数が50枚以上になるかもしれないけど、普通なら到底不可能ね」

 

だからこそ、と赤馬は語気を強める。

 

「あのデッキを組もうと思った君に興味が湧いてくる」

「ナンパはお断りだけど……」

「ナンパではない。スカウトだ」

「LDSへのスカウトならお断りするわ」

 

私は彼からアンチホープを受け取ると、すぐに背中を見せた。

 

「なぜだ? 君にとってもいい提案だと思うが」

「エクシーズやシンクロ、融合。そういう様々な召喚方には興味がわくけど、今の私には必要ないから」

 

LDSにいると、少なからず行動が制限されることになる。様々な召喚方法という餌も、私に有効な餌ではない。

OCG次元のデュエリストにとっての常識なんて、再度習うのもバカバカしい。

 

「私はこの町にきてまだ時間が経ってないの。だからもっと自由にこの町をみたいというのと、私の立場上、LDSには入らない方がいいから」

 

反LDS派としてトップになったのに、鞍替えなんてしようものなら何をされるかわからない。今回は保身のためにも、自由を選んだ方がいい。

 

「それで、アンチホープの解析はどうだったの?」

 

私は振り返り、赤馬社長の目をみて尋ねる。OCG化されたアンチホープは、この世界においてどう評価されるのか、個人的にとても興味がわく。

 

「……絶望神アンチホープは確かに強力な力を持ったカードだが、何者かによってその力を捻じ曲げられた痕跡があった」

 

KONMAIさん、痕跡残ってたって。私にはあの強かったアンチホープの面影は一切感じられないけど。

 

「そしてもう一つ分かったことは、このカードとついになるカードが存在しているということだ」

 

…………。

声は出さなかった。だが内心焦っていたのは確実だ。アンチホープの解析で、ホープ、ナンバーズの存在がばれた可能性がある。この世界にナンバーズが存在しているとは思えない。ということはこの世界にナンバーズを持ち込んだことで、私がアニメの展開を変えてしまう可能性が出てきたということだ。

それだけはなんとしても避けなくては。

 

「アンチホープのついになるカード……。名前は分かったの?」

「残念ながら、解析できたのはそこまでだった。このカードにはついになるカードを押さえつける力が備わっていたようだが、何者かによってその力が打ち消されていた」

 

KONMAIさん、ホープをアンチする力を打ち消したこと、アニメのキャラクターたちにばれてますよ。そのうち何をアンチしてるかわからないやつとか言われちゃいますよ。

 

「絶望神という名がついている理由は、そのカードから発生していた謎のエネルギーが由来だろう」

「謎のエネルギー?」

「あぁ、エクシーズや融合、シンクロといった召喚方法を飲み込まんとする負の力が、そのカードから感じられた」

 

あぁアンチホープさん。ついにホープ以外もアンチしてしまったのね。

もはやエクシーズどころかペンデュラムもアンチしそうな勢いね。スケール0が存在しないなら、アンチホープから嫌われても仕方が無い気がするが。

 

私はアンチホープをデッキケースにしまい、赤馬零児に頭を下げた。

 

「アンチホープを解析してくれてありがとう。私の不安のタネが一つなくなったわ」

「礼はいい。私のするべきことをしただけだ」

「何か協力できることがあれば、協力させてもらうわ。……チームのこと以外でね」

 

そう私は微笑んで、LDSを後にした。

これからどう動くか、そんなことを考えながら空を見上げる。すっかり暗くなってしまった空は、元いた世界でみた物よりも黒く美しい。

 

「流れ星が見えたらロマンチックなのに」

 

アニメ世界も、そこまで都合良く出来ていないみたいだ。

 

 

 

 

 

赤馬零児は悩んでいた。決して顔には出ていないので、他人からはわからないが、物に当たりたくなるほどに悩んでいた。

 

「清澄冷菓は何者なんだ」

 

彼女がLDSでおこなったデュエル、不良とおこなったデュエル、そして絶望神アンチホープのデータ。その三つを交互に見ながら、彼はつぶやく。

 

「彼女がアンチホープを主軸にしたデッキを使ったことは確実だ」

 

自分の部下からの証言だ。信じない理由がない。

 

「それならばレベル1を多用したデッキを使うはずだ」

 

彼の視線の先には、PSYフレームを使用する清澄冷菓の姿。

 

「だがこのPSYフレームというテーマは、アンチホープとの相性が悪い」

 

特殊召喚されたチューナーはターン終了時に除外されるし、その召喚条件からしてレベル1をフィールドに4体揃えるのは不可能だ。

 

「彼女は一体何者なんだ。どこでアンチホープを手に入れ、どんなデッキでアンチホープを運用しているんだ」

 

彼女の学校に尋ねたところ、清澄冷菓がアンチホープを使用したことはなく、学校では炎王を使っているという話だ。

 

「彼女はなんなんだ。どこの次元のデュエリストなんだ」

 

シンクロ次元の手先である可能性が高いが、それをすぐに肯定できるわけではない。なにしろアンチホープを運用するならば、一番相性のいい召喚方法はエクシーズのはずなのだから。

アンチホープを引かなかった時、チューナーが手札にいることを祈るより、いかなるモンスターでも召喚できるエクシーズモンスターのほうが、運用しやすい。

 

「清澄冷菓。……私の胃をこんなにも痛めつけたのは、君が初めてだ」

 

 

 

 

家に帰りたかった。

私、清澄冷菓は家でデッキ構築をしたかった。ダ・イーザデッキの調整と、昨日作ったばかりのネタデッキのソリティアの練習をしたかった。

なのにどういうことだろう。私はいま家に帰れない。

なぜか。

家の前に不審者がいるから。

 

黒咲隼。

昨日いきなり私の太ももを触ってきた痴漢ーーではあるが、彼のアニメでの姿は違う。シスコンにして不審者、鉄の意志と鋼の強さを持つデュエリストで、鳥獣族モンスターのテーマ、RRを使うエクシーズ次元のデュエリストだ。

 

私の口からため息が漏れた。近所のスーパーで半額弁当が買えて浮き足立っていた心が、一気に地のそこまで叩き落とされた。

 

「……きたか」

 

私が姿を見せると、彼はそう呟いた。その腕にはデュエルディスクがついており、決闘する気まんまんであることは一目瞭然だ。

私の口からため息がこぼれ落ちる。

 

「また来たの? 昨日蹴られたのに、懲りずによくもまぁ。もしかしてマゾ?」

「俺はマゾではない。あの蹴りでそっちに目覚めたわけではない。おい、なんだその目は。疑っているのか」

「えぇ」

「おい、なんで距離を取る。昨日は俺も興奮し過ぎていた。反省している」

「蹴られて?」

「そういう意味で興奮したんじゃない。勘違いするな」

 

軽く咳払いをする黒咲。それに合わせて私も頭を切り替え、真剣な表情を作る。

 

「それで、何しに来たの? たまたま私の家の前を通りかかったとは、絶対に言わせないけど」

「俺もそんなことを言うつもりはない。お前がここに住んでいるんじゃないか、という推論に基づいて動いただけだ」

「つまり私に用があると」

「あぁ、俺と一緒にこい」

「断るわ」

 

ため息を付く不審者。ため息を付きたいのは私の方だ。なんでこんなことになった。

 

「お前がどうしても来ないと言うなら、俺とデュエルだ。お前の本気のデッキ、マドルチェを使え!」

 

マドルチェ……? その可愛さとは裏腹に、対象を取らないバウンスやワンターンキルできるだけの火力をもった、エクシーズテーマだが、まさか、私のそっくりさんが使用するテーマって、マドルチェなの?

 

マドルチェデッキは、私が未完成のまま運用していた、友達と遊ぶためのデッキの一つだった。私のお気に入りデッキで、カバンの中には常時入っているデッキだった。だが、マドルチェは他の人が作っていたこともあり、完成させる気にはならず、ずっと未完成の状態にしておいたのだ。

ただ私が一番好きなデッキであることは変わらない。そしてエクシーズ次元にいる私のそっくりさんが使うデッキは、私が一番好きなエクシーズテーマであるマドルチェ。

 

偶然でデッキの好みが一致するだろうか。

 

「……分かったわ、私は本気のデッキを使う」

「たとえお前がマドルチェを使用しようとも、俺には勝てないがな」

「マドルチェは使わない」

 

そう言い切った私を不思議そうに眺める黒咲だったが、すぐにその視線が鋭い物に変わる。

 

「俺相手に舐めたことをして勝てると思っているのか?」

「勝てる。未完成のマドルチェをとって来て戦うより、こっちの方が勝率は高い」

 

スカートを少しだけめくり、太ももに取り付けたデッキケースを開く。デッキを取り出し何枚か抜いた後、数枚のカードを新たに投入する。

 

「さぁ、どこからでもかかってきて。私が全力で受けて立つわ」

 

デュエルディスクが起動。お互いにディスクを構え、同時に始まりを告げる言葉を口にした。

 

「「デュエル!」」

 

先行は黒咲だ。私がマドルチェを使用すると想定してデッキを調整したなら、バック除去カードや、効果を無効にするカードを大量に入れていてもおかしくない。

マドルチェは始点を潰されると終わる。それは私の経験が語っている。

たとえ特定のデッキに対するメタであっても、他のデッキに対するメタ能力が皆無というわけではない。ないとは思うがスキルドレインやマクロコスモスが入っていたら、普通に他のデッキに対するメタにもなる。

 

「俺のターン! 手札からRRバニシングレイニアスを召喚! バニシングレイニアスの効果により、手札からRRミミクリーレイニアスを特殊召喚!」

 

初手でバニシングレイニアスと他のRR、またはファジーと他のRRを持っているだけで、レベル4モンスターを2体並べることができる。これがRRの強さの根源にある、驚異的な展開力。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ! こい、RRフォースストリクス! フォースストリクスの効果発動。ORUを1つ使い、デッキからRRシンギングレイニアスを手札に」

 

黒咲が墓地に送ったORUは、ミミクリーレイニアスだろう。ミミクリーレイニアスの墓地発動の効果はーー

 

「墓地のミミクリーを除外し、デッキからRRネストを手札に加える」

 

これがRRが誇る展開力。その起点にあるフォースストリクスの効果を止めても、別の手段で展開される。これがRRの厄介な点だ。

 

「さらに手札からシンギングレイニアスを守備表示で特殊召喚! このモンスターはフィールドにエクシーズモンスターがいる時、特殊召喚できる!」

 

これでフィールドのRRは2体。

 

「永続魔法発動、RRネスト! デッキからRRバニシングレイニアスを手札に」

 

バニシングレイニアスを手札に? ということはこのターンはこれ以上展開しないということなのだろうか。

 

「俺はカードを2枚セットしてターンエンド!」

 

黒咲の手札は2枚。フォースストリクスもシンギングも守備表示。あえて2体目のフォースストリクスを出しにいかなかったところを見ると、手札か伏せには何かしらの面倒なカードがあると考えていいだろう。

 

「考えても仕方ないか。とりあえず、ドロー」

 

RR相手に、このデッキはかなり不利だろう。半永久的に盾を量産できるRRを倒すには、隙を見せるふりをして、油断したところを叩くしかない。

 

「さぁ、運を天に任せるわ! 魔法カード、魔の試着部屋! 800ポイントのライフを支払い、デッキトップ4枚を公開する」

「通常モンスターローレベルビートだと!? まさかあのモンスターが入ったデッキか!?」

 

アンチホープデッキ。RRを叩くためのデッキとして、龍大神を使うという手もあったが、あのデッキの回し方はーー

 

「あっ」

「どうした?」

「効果処理する前に、ちょっと待って」

 

ケータイの電源消しっぱなしにしてた。

制服のポケットから取り出したスマホの電源に、指をかける。……白井さん、怒ってるだろうな。

丸一日放置されたスマホの電源をつけ、再びそれをしまう。さぁ、デュエル再開だ。

 

「魔の試着部屋の効果。まず1枚目、バニーラ、レベル1通常モンスター。2枚目、トライワイトゾーン。3枚目、ガードオブフレムベル、レベル1通常モンスター。4枚目、封印されしものの左腕!」

 

城之内なみの強運。デッキトップ調整なしで、この枚数はすごい。

3体の通常モンスターがフィールドに特殊召喚される。左腕だけ浮いている光景はとてもシュールだが、これは我慢するしかない。

 

「さらに手札からーー」

 

不審者さん、あなたのカードを借りるわ。

 

「RRーラスト・ストリクスを通常召喚!」

 

RRカテゴリーに属するレベル1のモンスター。レベル1モンスターの中で、ワイトキングくらい化けるモンスターだ。効果をうまく使用すれば、1ターンで打点4000のエクシーズモンスターにできるが、今は効果を使わない。

 

「ラストストリクスをこのタイミングで召喚するか……。RUMを握ってるのか」

「いや、そういうわけでは……」

「そのデッキは俺とお前の二人で組んだ、デュエルを教えるためのデッキ。ラストストリクスを入れようと言ったのは、確かお前だったな」

 

駄目だこの人。会話のキャッチボールができない。フォークボールばかり投げて来るよ……。

 

「レベル1通常モンスターでエクシーズし、時が来たらRUMで強力なモンスターを出す。教科書通りのデッキ。だがーー」

 

ただでさえ鋭いのに、彼の目つきが一段と険しくなる。

 

「それは子供と遊ぶためのデッキだ! そんなもので俺を倒そうというのか!」

「えぇ、倒せるわ」

「舐めるな!」

「舐めてない。その証拠と言っていいのかわからないけど、このデッキの切り札を見せてあげるわ」

 

4体のレベル1モンスターを、生贄に捧げ、絶望を生み出す。これがOCG化に失敗した神、アンチする手段をもぎ取られた絶望。

 

「来て、絶望神アンチホープ」

 

召喚口上を言わず、さらりとフィールドに出てきたアンチホープ。不審者につきまとわれているせいか、今日はさっさとデュエルを終わらせたい気分だ。

 

「アンチホープでフォースストリクスを攻撃!」

 

あっさりと破壊されるフォースストリクス。アンチホープの効果を使用していないので、トラップも発動できるはずなのだが。

 

怪しい。シンギングは守備表示で出しただけで何もせず、攻撃反応や召喚反応を使うわけでもない。……。

 

『…………グスッ」

 

…………。

イヤホンから鼻をすする音が聞こえてきたが、あえて反応しない。今は試合に集中しないと。

 

『……グスッ、ほぼ一日、外の世界と隔離されて、本当に寂しかった」

 

黒咲のライフは4000、フィールドにはシンギングレイニアス1体と永続魔法RRネスト、伏せカードと手札はどちらも2枚。一方の私の手札は3。ライフは3200でフィールドにはアンチホープだけ。

 

『……ネットにも接続できないし、グスッ、大声で叫んでも、外に届かない……謝っても、届かない』

 

黒咲の手札にバニシングがいるのは分かっているが、さっきのサーチで手札に加えてのを見るに、他にもRRがいると見ていい。

 

『……まるで牢屋だった。最初はスマホの中のデータを漁ってたけど、それもすぐ限界が来て、他のことをしたかったけど、できることがない』

 

シンギングをさっきのターンに立てた意味を考えよう。1番可能性が高いのは、伏せカードがゴッドバードアタックであること。フォースストリクスをコストにするよりはシンギングのような、普通のモンスターをコストにして相手のバックやモンスターを削りにいったほうがいい。

 

『デッキ構築のこととか考えてたけど、そんな何時間も考えてられなくて、寝ようにもスマホの中は明るすぎて眠れなかった。……グスン』

「…………」

『寂しかった。誰もいない空間でずっと1人。最後の方はずっと反省してた。どうして清澄の写真なんて撮ったんだろうって。ただ、元気なさそうだったから、気持ちを楽にしてあげたかった。ただ、それだけだったんだ……』

「…………白井さん、ごめんなさい」

 

軽い気持ちで電源を切ったのだが、彼にとってそれは地獄のような体験だったのだろう。私も口から自然と、謝罪の言葉が漏れた。

 

「……私はカードを1枚セットしてターンエンド」

「ならば、速攻魔法、RUMデスダブルフォース! さらにゴッドバードアタック! シンギングをリリースして、アンチホープを破壊!」

 

チェーン1、デスダブルフォース。チェーン2、ゴッドバードアタック。

 

「ゴッドバードアタックでアンチホープとバックを破壊! さらにデスダブルフォースの効果発動! このターン中に戦闘破壊された墓地のフォースストリクスを蘇生し、倍のランクを持つRRにランクアップさせる!」

「くっ、デスダブルフォースだったのね」

『おい清澄、俺がいない間になにがあったのかは後で聞く。とりあえず黒咲との試合に集中しろ。カードゲーマーなら、目の前の試合に全力をつくせ。俺も手伝う』

 

さっきまでの声とうってかわり、白井さんの声が真剣なものに変わる。

 

RRのランク8は今のところ1体しかいない。そいつもかなり厄介な効果を持っているが、さらに問題なのはRUMスキップフォースを使えばアルティメットファルコンが出てくる点だろう。

 

「俺はRRーフォースストリクスでオーバーレイ! 勇猛果敢なる隼よ。怒りの炎を巻き上げ、大地をも焼き尽くす閃光となれ!ランクアップ・エクシーズチェンジ!」

 

振り上げられる黒咲の腕。空から現れるのは、巨大でいて美しい、鳥をもした破壊兵器。

 

「飛翔しろ!ランク8《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》!」

 

RRーサテライト・キャノン・ファルコン、ランク8

攻3000、守2000

1、このカードが「RR」モンスターを素材としてX召喚に成功した場合に発動できる。相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。この効果の発動に対して相手は魔法・罠・モンスターの効果を発動できない。

2、このカードのX素材を1つ取り除き、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力は自分の墓地の「RR」モンスターの数×800ダウンする。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

 

一つ目の効果を無駄にしたように見えるが、アンチホープを確実に処理するにはゴッドバードアタックを使うのが、最適なのだろう。

サテライトキャノンファルコンの効果を使ってアンチホープを突破するには、少なくとも墓地に3体のRRを送る必要がある。ORUとしてモンスターを溜め込んでしまうRRは、シンクロデッキと違い墓地にモンスターを貯めるのが難しい。

 

「確実に処理したいから、このタイミングで使ったのね」

『ネストでトリビュートサーチして、効果で墓地肥やしとかできなくもないが、ヴェーラーを警戒するならゴドバで処理しちまったほうがいい』

 

これで私のフィールドはガラ空き。手札は2枚でライフは3200。

一方の黒咲はこのターンで伏せカードを使い切り、フィールドにはサテライトキャノンファルコン1体と、RRネストだけで、手札は2枚。ライフは初期値のままで、アドバンテージを稼いでいるのはどっからどうみても黒咲だ。

 

「ふっ、どうやらこれで終わりのようだな」

「そう思う? 私のデッキに本領はここからなんだけど」

「強がるな。お前のデッキは俺とユートがよく知っている。そのデッキにアンチホープというモンスターを入れていたのは知らなかったが、それ以外のことは手に取るようにわかる。お前のデッキにサテライトキャノンファルコンを突破するカードはない」

『自信満々だな』

 

イヤホンから聞こえる白井さんの楽しそうな声。私の顔にも自然に笑みが浮かぶ。

 

「何がおかしい」

「……カードゲーマーの楽しみの1つは、相手の想像を超えたデッキで勝つこと。相手が予想していない展開を生み出し、楽しい試合を作る。これが私たちの目指してるカードゲーム」

 

以前白井さんが言っていた言葉を、今ここで口にする。

以前、遊戯王の世界大会で優勝したガエルドライバーというデッキがあった。マッチ戦の1試合目はマスドライバーというカードを使い先行ワンキルを決め、2試合目は光と闇の竜やシンクロモンスターでビートダウンを決めるという、戦術を一変させるデッキだ。

あのデッキはとても綺麗なデッキだ。

相手の想像できない展開を生み出す、私たちが求めるデッキ。

 

「私達は常に相手を超え続ける。次のデッキトップが私の望むカードなら、次のターンでワンターンキルが成立。もし違うカードなら少し時間がかかるだけで、どちらにせよ勝ちは確定」

「……そんな爆発力を持ったデッキではないはずだ。そのデッキのエクスーズモンスターはゴーストリックデュラハンや堕天使がメインで、サテライトキャノンファルコンを確実に処理できるカードはーー」

「考える前に、食らってみればわかる」

『ただしその時にはアンタは八つ裂きになってるだろうけどな、ってか』

 

楽しい。遊戯王漬けになっていて、wixossがしたくてたならなくなっていた今朝とは違う。いまは全力で目の前の敵を、遊戯王で倒したい。

 

「ふっまあいい。俺のターン、ドロー!」

 

黒咲が派手なモーションでカードを引く。その様子をみながら、私はつぶやく。

 

「白井さん」

『どうした』

「全力で戦っていい?」

『俺が止めると思うか』

「使っちゃいけないカード、使っていい?」

『こんなに楽しそうにカードしてるお前を』

 

俺が止めるわけがないだろう?

 

許可は出た。黒咲が手札を確認しているうちにエクストラデッキを確認する。頭の中で式が組みあがり、脳が高速で手順をシュミレートする。

出来た。勝利へのルートが。

 

「さぁ不審者さん! あなたのデッキの底力を見せてみて!」

 

もし黒咲がこのターン中に確実に決めに行くことを意識して、魔法カードを連打するならば私たちに勝ち目はない。だが、私は信じている。自分のデッキ、そして自分の強運を。

 

「俺は手札からRRバニシングレイニアスを召喚! バニシングレイニアスの効果で手札からRRトリビュートレイニアスを特殊召喚!」

 

トリビュートの効果により、デッキからミミクリーが墓地へ送られる。

 

「さらに手札から、魔法カードRRコールを発動! デッキからバニシングレイニアスを特殊召喚!」

 

手札が尽きた。

 

「そしてRRネストの効果により、デッキからRRナパームドラコニアスを手札に、そして2体目のバニシングレイニアスの効果で、RRナパームドラコニアスを特殊召喚!」

『漫画版黒咲のカードも入ってるのか。ナパームドラコニアスの1つ目の効果は地味だぞ』

「確かーー」

「RRナパームドラコニアスの効果発動! 600ダメージを相手に与える!」

 

清澄LP3200ー2600

 

OCG環境では確かに地味な効果だが、この環境では強力な効果だ。これでサテライトキャノンファルコンの攻撃をくらえば終わりだ。だがーー

 

「俺は4体のモンスターでそれぞれオーバーレイ! こい、2体のフォースストリクス!」

 

2体とも攻撃表示。自身の効果により、その攻撃力は1100。

 

「そしてそれぞれ効果を発動する。デッキからファジーレイニアスとインペイルレイニアスを手札に加える」

 

黒咲は突然夜空を見上げ、呟く。

 

「月が見えた」

 

夜空に浮かぶ満月。耳元で聞こえる笑い声。その声に負けないほど大声で、黒咲が怒鳴る。

 

「バトルだ! サテライトキャノンファルコンでダイレクトアタック! 食らえーー」

 

空高く舞い上がる機械の鳥獣。その砲塔から射出される光はまさしく暴力。

 

「エターナル・アベンジ!」

 

思わず綺麗と呟いてしまうほど、圧倒的な力。これが黒咲のRR。誰もが憧れる黒咲のデュエルに、私は圧倒されていた。だが、手は動く。

私は、最後に勝つ。

 

清澄LP2600

 

私を包んでいた光が消え、黒咲は驚愕の表情を浮かべた。次の言葉は予想できた。

 

「なぜ無傷なんだ! お前のフィールドに伏せカードは一枚もなかったはずだ!」

 

私は今しがた墓地へ送ったカードを彼に見せる。

 

速攻のかかし。手札から墓地へ送ることでバトルフェイズを強制終了させるカードだ。

 

「手札誘発か」

『まさしく間一髪ってやつだな』

「危なかった」

 

さっきのターンに伏せたカードは、和睦の使者だった。あの防御カードが破壊されたとき、特に焦りもせず、平然としていたのは、手札にこのカードがあったからだ。

 

「防がれたか。だが、お前はすでに虫の息だ。俺はこれでターンエンド」

「それはどうかしら。本当に虫の息かしら」

 

デッキトップに手を掛ける。このカードで、私の勝敗が決まる。手札のもう一枚のカードとドローカードで、なんとしても勝ちを掴み取る。

 

「私のターン」

『さぁ行くぜ、清澄。全力で遊戯王をするぞ!』

 

「『全力で勝ちを掴み取る。カードゲーマーとして。来い、キーカード! ドロー!』」

 

勢いよくカードを引く。このドローで決着をつける。

 

「『私たちが引いたカードは、金華猫! 私たちは金華猫を召喚する!』」

 

金華猫

攻 400、守 200

1、このカードが召喚・リバースした時、自分の墓地のレベル1モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは除外される。

2、このカードが召喚・リバースしたターンのエンドフェイズに発動する。このカードを持ち主の手札に戻す。

 

「このタイミングでそのモンスターを引いただと!?」

『清澄の強運を舐めんな。2回連続でセブンスワンを引いた女だぞ』

 

「金華猫の効果発動。墓地からラストストリクスを特殊召喚。さらにトライワイトゾーンを発動。墓地の3体のレベル1通常モンスターを特殊召喚!」

 

これで準備は全て整った。

 

「ラストストリクスの効果発動!」

 

このカードの効果は、自身をリリースすることで、エクストラからRRエクシーズモンスターを守備表示で効果を無効にして特殊召喚するというものだ。

 

「私はランク10のRRアルティメットファルコンを特殊召喚!」

「なんだと。それよりうえのランクを持つモンスターをお前は持っていないはずーー」

「持ってるわ! さぁ、絶望の第一歩よ!」

 

このカードはRUMを必要としないランクアップが可能!

 

『清澄、召喚口上を言わせてくれ! 漫画版の召喚口上はかっこいいのが多くてすきなんだよ』

「じゃぁ一緒に言うわよ」

「『化天を司る糸よ! 儚き無幻となりて我が滅び行く魂を導け! エクシーズ召喚! 現れろ!《No.77 ザ・セブン・シンズ》!』」

 

No.77 ザ・セブン・シンズ、ランク12

攻4000、守3000

1、1ターンに1度、このカードのX素材を2つ取り除いて発動できる。相手フィールドの特殊召喚されたモンスターを全て除外し、除外したモンスターの中から1体を選んでこのカードの下に重ねてX素材とする。

2、フィールドのこのカードが戦闘・効果で破壊される場合、代わりにこのカードのX素材を1つ取り除く事ができる。

 

「まだ終わりじゃないわ。さらに4体のモンスターでそれぞれオーバーレイ。きて、2体のNo.13 ケインズ・デビル」

「ナンバーズ、だと……なんだ、そのモンスターは」

「出血大サービスよ! これがこのデッキの真の姿! ケインズ2体でオーバーレイ!」

「エクシーズモンスターでエクシーズ召喚だと! そんな馬鹿な」

 

しかもさらに出血大サービスで、あえて原作の召喚口上は使わない。

 

「絶望は希望へ変わる。未来を作り上げる無限の可能性よ、集え! エクシーズ召喚! 《No.100 ヌメロン・ドラゴン》!」

 

No.100 ヌメロン・ドラゴン

攻 0、守 0

1、1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。このカードの攻撃力は相手ターン終了時まで、フィールドのXモンスターのランクの合計×1000アップする。

2、このカードが効果で破壊された時に発動できる。フィールドのモンスターを全て破壊する。その後、お互いは自身の墓地の魔法・罠カードを1枚選んでフィールドにセットする。

3、このカードが墓地に存在し、自分の手札・フィールドにカードが無い場合、相手の直接攻撃宣言時に発動できる。このカードを特殊召喚する。

 

フィールドに現れる金色のドラゴン。これがNo100、このデッキの第二の姿。

 

「なんなんだ、このモンスターは。しかも、攻撃力0だと?」

 

困惑する不審者。私の手は止まらない。

 

「ヌメロンドラゴンの効果発動! フィールドのエクシーズモンスターのランクの合計×1000、攻撃力をアップさせる!」

「フィールドのエクシーズモンスターのランクの合計だと……」

「ランク4が2体、ランク8が1体、ランク12が1体、ランク1が1体。合計、29! よってヌメロンドラゴンの攻撃力はーー」

 

29000

 

黒咲の脚が震えている。絶対的な力の前に、鉄の意志が、砕けかけている。

今、希望の力が絶望を生み出す。

 

『さぁやるぞ、清澄』

「ヌメロンドラゴンでRRフォースストリクスに攻撃!」

「くそっ、サテライトキャノンファルコンの効果発動! ヌメロンドラゴンの攻撃力を、墓地のRRの数×800ダウンさせる!」

 

ダウンする攻撃力は、4800。オベリスクの攻撃力ですら0になるが、ヌメロンドラゴンの攻撃力は、24200。

 

「くそがっ!」

「フォースストリクス撃破!」

『ラストストリクスの効果で相手へのダメージは0だしな。フォースストリクスを狙ったのはいいんじゃないか?』

「どうしてサテライトキャノンの効果使ったかわからないけど、きっと焦ってプレみったんだと思う」

 

続いてセブンシンズで攻撃し、相手のフォースストリクスを破壊。これで相手のフィールドには、サテライトキャノンファルコンだけ。

 

「私はこれでターンエンド!」

「くっ俺のターン、ドロー」

 

過度な緊張状態になる、または自分の想像を超えた今日的に遭遇すると、人間は正常な判断力という物を失う。

いくら戦場仕込みの黒咲といえど、ヌメロンドラゴンの驚異的な力には、精神が耐えきれなかったようだ。

 

「俺はモンスターをセットし、ターンエンド」

 

手札には、RUMソウルシェイブフォースがあった。墓地にはミミクリーがいた。手札にファジーもいる。サテライトキャノンも攻撃表示のままだ。だが、手が動かないのだろう。

 

「ターンはもらったわ。ドロー!」

 

私が引いたカードはーー

 

『おいおい、冗談だろ?』

「絶望は私の味方ね。引いたカードは強欲で貪欲な壺! デッキトップを10枚除外し、2ドロー!」

 

黒咲の手が、力なく垂れ下がる。

 

「きた! 愚かな埋葬を発動! デッキからサイバーラーヴァを墓地に送る。さらに、墓地のラーヴァと金華猫を除外し、カオスソルジャー開闢の使者を特殊召喚!」

『ふざけんな清澄! ジャッジ! この人仕込んでるよ!』

「これが私の強運! ヌメロンドラゴンの効果発動! 攻撃力は21000!」

 

まだ、終わらない!

 

「カオスソルジャーの効果発動! セットモンスターを除外する」

 

裏守備のファジーが除外される。これで、準備は整った。

 

「セブンシンズでサテライトキャノンファルコンを攻撃! ジェノサイド・スパイダー・シルク!」

「くっサテライトキャノンファルコン! ぐあっ!」

 

黒咲LP4000ー1000

 

「これで終わりよ! ヌメロンドラゴンでダイレクトアタック!」

 

振り上げられる私の腕。繰り出されるは希望の一撃。

 

「くそがぁぁぁぁぁ!!」

 

黒咲の咆哮。それをかき消すように、私たちは声を張り上げた。

 

「『ディストピア・リセット!』」

 

黒咲LP3000ー-18000




なんとか、書き終えました。

本来のRRは動きがもっと綺麗なので、いつか作中に回っているRRを出したいです。そしてアンチホープデッキの切り札が出てきました。レベル1デッキだとこのカードは以外と出やすいものです。

さて、次回くらいでそろそろアニメ第一話がスタートすると思います。詐欺になってしまったらごめんなさい。

余談です。
もうすぐ夏です。昆虫の季節です。
インゼクターの季節です。そろそろダンセル返せと言いながら、先行ワンキルを決める自分です。なかなか帰って来れないね、ダンセルくん。
そしてPSYフレーム新規の話です。こりゃぁ、また清澄のデッキが強化されると思いつつ、インゼクターを回しています。
昆虫の季節になったらまた、インゼクターに話はすると思います。
そして虫といえばwixossのミュウですね。オオグソク、当たりました。でもミュウデッキ組んでないんですよね。ゴガツドール欲しかった。
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