最近太ももを書けてないです。
ヤバイですよ。そろそろ太もも書きたいですよ。
「先行はあげるわ」
「舐め腐りやがって。泣いて謝っても許してやらねぇからな!」
デュエルが始まる。遊戯王が基本的に先行有利と言われるのは、先に盤面を揃えられるというメリットがあるからだ。先に奈落の落とし穴をセットするだけで、相手の行動を阻害できる。そういう面で先行有利と言われているが、それは全てのデッキに共通しているわけではない。
私が今回使うのは、普通のネタデッキを後攻有利になるように調整した、超受動的なデッキ。つまり、先行をとってもほとんど動けないのだ。
そんなことも知らず、モヒカンは動き出す。
「カードを2枚セットして、ターンエンド!」
モンスターはセットされてない。モヒカンの手札は3枚。
相手フールドにモンスターがいないのは不都合だが、今回は仕方ない。1ターン目は様子見だ。
「私のターン、とりあえずドロー。……来ちゃったかぁ」
『来ちゃったなぁ』
このデッキのキーカードが、早くも来た。とりあえず相手がモンスターを召喚するまで待ってみるか。いや、伏せカードを確認した方がいいだろう。
「手札から、素早いモモンガを召喚」
素早いモモンガ、レベル2
攻1000、守 100
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分は1000ライフポイント回復する。さらにデッキから「素早いモモンガ」を任意の数だけ裏側守備表示で特殊召喚できる。
可愛い小動物がフィールドに現れる。本来ならこのモンスターはセットすべきなのだが、攻撃反応系があるかを確認するためには、ちょうどいい犠牲だ。
「素早いモモンガ……炎王デッキじゃないんですか?」
「ダ・イーザデッキでも、ないの?」
「何!? PSYフレームデッキじゃないだと!?」
三者三様。複数のデッキを使用しただけで、そんなに驚くだろうか。OCG環境を本気で生き抜いている人達なら皆、3個くらいデッキを持ってると思ってたのだが、間違っていたのだろうか。
「素早いモモンガがダ・イーザデッキに入っててもおかしくないと思うんだけどなぁ」
『盾が必要だから入れるってのは分かるが、盾が必要ならマシュマロンでいいだろ。モモンガなんて入れるデッキは、盾が必要なデッキ、ライフを回復させたいデッキ、リリース要因が必要なデッキくらいだからな。あとはランク2エクシーズを使うデッキとか』
「まぁ、彼岸とか青眼には絶対入らないしね。入れるメリットが少ない」
さてさて、相手の伏せカードは何かな。きっと汎用カードでデッキ特定には至らないだろうけど、殴ってみて損はない。
「じゃぁ、バトルフェイズ」
「待て、メインフェイズ終了時に忘却の海底神殿を発動する!」
忘却の海底神殿、永続罠
このカードがフィールド上に存在する限り、このカードのカード名は「海」として扱う。1ターンに1度、自分フィールド上のレベル4以下の魚族・海竜族・水族モンスター1体を選択してゲームから除外できる。自分のエンドフェイズ時、この効果で除外したモンスターを特殊召喚する。
忘却の海底神殿ってことは、相手は『海』デッキ? 伝説のフィッシャーーマンとかを使った、フィールド魔法、海を主軸に戦うデッキだ。
このタイミングで海底神殿を使ってきたってことはおそらくーー
「モモンガで攻撃」
「トラップカードオープン!竜巻海流壁!」
『やっぱりそれか』
竜巻海流壁はフィールドに海がある時発動でき、海が消えたら破壊されるカード。攻撃された時の戦闘ダメージを0にするという効果を持つ。海が消えたら破壊されるというデメリットがある他、忘却の海底神殿にチェーンして発動できないというデメリットがある。このカードを海デッキに入れるか否かは、デッキ作成者の好みによるところが大きい。ついでに、私と白井さんだったら入れないだろう。
竜巻海流壁のせいで、ダメージはゼロ。
素早いモモンガを棒立ちにするのは少し心細いが、仕方ない。
「私はこれで、ターンエンドよ」
「セットカードは、無しか。舐めやがって」
海デッキってことは、ダイダロスが入っている可能性はなきにしもあらず。
『ネオダイダロスが入ってたら厄介だな』
「ネオダイダロス?」
『フィールドリセットかつ、ハンデスオール。ダイダロスをリリースでのみ特殊召喚だ』
「……いつのカード?」
『忘れた。ストラクのカードだ』
パッと聞くに強力なカードだが、ヴェーラーでやられる。召喚時コストの大きさといい、現代ではあまり見かけなくなったのも頷ける。
「俺のターン! 手札のアトランティスの戦士の効果発動!」
「手札から捨ててデッキから『伝説の都アトランティス』をサーチね」
「チッ、相手に説明されると調子が狂うな」
効果確認しただけなのに。これ、元いた世界でやったらジャッジキルものだ。
「さらに手札から、水陸両用バグロス Mk-3を通常召喚!」
水陸両用バグロス Mk-3、レベル4
攻1500、守1300
「海」がフィールド上に存在する限り、このカードは相手プレイヤーに直接攻撃する事ができる。
『また、珍しいカードを……』
「ダイレクトアタックできるモンスターね」
「分かってるじゃねぇか! バトルフェイズだ! バグロスでダイレクトアタック!」
モモンガは、戦闘破壊されなければ効果は発動できない。ダイレクトアタックするというのはある意味賢い戦法だ。
このデッキとの戦い方を知らないなら、絶対取る選択だろう。
「手札からバトルフェーダーを守備表示で特殊召喚し、バトルフェイズを強制終了させるわ」
「チッ、カードを一枚セットして、ターン終了だ」
舌打ちか。前の世界だったら注意されるんだろうなぁ。
ターンが回ってきた。ここで状況を整理してみる。互いにライフは4000のまま。私のフィールドには素早いモモンガとバトルフェーダー。セットカードはない。そのかわり、手札は4枚だ。
一方のモヒカンはフィールドにバグロス、表側表示の罠は竜巻海流壁と忘却の海底神殿。セットカードが一枚。
海デッキ、いや水属性のデッキには厄介なカードが多い。少し油断してたら足元をすくわれるなんてことは卒中だ。
「このドローでサイクロンを引けば、勝つ」
「てめぇ……舐め腐るのもいい加減にしろよ! 俺を誰だと思ってんだ!俺様はこのチームのトップ、海王だぞ!」
『ドラゴンボールの界王様が思い浮かんだのは、俺だけか?』
大丈夫よ、白井さん。私もだから。
「ねぇ、みんな。楽しいデュエルってなんだと思う?」
唐突な質問に、その場にいた全員が困惑した表情を浮かべる。私は構わず続ける。
「ロマンデッキで勝ち負けこだわらずに戦うこと、環境デッキで圧勝すること、一度きりのネタデッキで勝つこと、メタデッキで封殺。その人によって楽しいの定義は違うと思うの。でも……」
私はデッキに手を掛ける。
「楽しくないの定義は、みんな同じだと思うの。少なくとも、このデュエルからは面白みを一切感じない」
それもそのはずだ。
「いきなりケンカふっかけるような勢いでデュエルするとか、賭け事というより勢力争いにカードを使われるのはーー」
「俺が一番嫌いなことなんだよ」
私の意識が体を離れる。幽体離脱をリアルで体験するのは、これで2度目だ。
私に入った白井さんは続ける。
「カードをやる時は、相手に最低限の配慮をしろ! 喧嘩腰なんて論外だ! その程度の常識もないようじゃ、カードをやめちまえ! 身内じゃないならマナーを守れ!」
白井さんが勢い良くカードを引く。引いたのはーー
「速攻魔法、ツインツイスターを発動! 手札の冥府の使者ゴーズをコストに、伏せカードと忘却の海底神殿を破壊する!」
サイクロンではないが、バック破壊カードだ。チェーン発動は……
「くそっ、伏せカードの神の宣告は破壊される」
「それだけじゃない。忘却の海底神殿が破壊されたことで、フィールドから海が消えました!」
後ろから聞こえる神導さんの声。海が消えたことによって、
『竜巻海流壁が破壊される』
「これで盾は消した! 俺はフィールドの素早いモモンガとバトルフェーダーを生贄に捧げる!」
白井さんが高らかに掲げるカードは、このデッキのキーカード。アンチホープと同じく、絶望の名を持つカード。
「清澄、召喚口上を」
『任せて! もう考えてあるわ』
イヤホン越しに、私の声が重なる。
「『宇宙を包む絶望が、今一つの惑星を形作る。10枚のカードのうちの1つよ、顕現しろ! 俺たちの切り札、The despair URANUS!!』」
The despair URANUS、レベル8
攻2900、守2300
1、自分フィールドに魔法・罠カードが存在せず、このカードがアドバンス召喚に成功した時に発動できる。
相手はカードの種類(永続魔法・永続罠)を宣言する。自分はデッキから宣言した種類のカード1枚を選んで自分の魔法&罠ゾーンにセットする。
2、このカードの攻撃力は、自分フィールドの表側表示の魔法・罠カードの数×300アップする。
3、このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分の魔法&罠ゾーンの表側表示のカードは効果では破壊されない。
フィールドに現れたのは、岩石のようなモンスター。プラネットシリーズのうちの1枚、The despair URANUS。どれも強力な効果をもつプラネットシリーズの中で、永続魔法や永続罠を使うデッキに投入できるカードだ。
URANUSが纏う闇が、私たちを包み込む。
「なんだ、このモンスターは」
「The despair URANUSの召喚時効果発動! 相手に永続魔法か永続罠を選択させ、選ばれた種類のカードをデッキからセットできる!」
「デッキからセットだと!?」
永続罠か永続魔法か。強力なカードが多いのは、永続罠だ。マクロコスモス、スキルドレイン、虚無空間、王宮のおふれ、ウィジャ板。その他にも強力な永続罠は多い。選択するなら、永続魔法だろう。
「さぁ、罠か魔法か、どっちかを選択しな!」
「くっ、俺が選択するのは永続魔法だ」
『かかったわね』
このデッキのキーカードのうちの1枚永続魔法だ。
「なら、俺がセットするのは、波動キャノンだ」
波動キャノン
永続魔法
自分のメインフェイズ時、フィールド上に表側表示で存在するこのカードを墓地へ送る事で、このカードの発動後に経過した自分のスタンバイフェイズの数×1000ポイントダメージを相手ライフに与える。
私の中に入った白井さんが、波動キャノンを発動させると、フィールドに大砲のような何かが現れる。やけにSFチックな外見をしていて、砲弾を装填するような場所はない。
白井さんの口がわずかに動く。声は出ていないが、何を言っているのかはわかる。
私の中に入っている彼はもう、勝利を確信している。
このデッキはURANUSをだしつつ、波動キャノンで追い詰めるデッキだ。URANUS用のリリース要因は、ゴーズやバトルフェーダー、さらにはサイバードラゴン等の、相手に依存するカードを主にしている。
URANUSをだし、波動キャノンが発動されたら、あとはもうやることは一つ。ただひたすら、URANUSを守る。それだけだ。
「バグロスの攻撃力は1500。URANUSは自身の効果で攻撃力が3200になってる」
「竜巻海流壁はすでに破壊されてるから、1700のダメージが通りますね!」
神導さんの言う通り、ここで殴ればライフを削れるがーー
白井さんは動かない。
「カードを2枚セットしてターンエンド」
これで白井さんの手札は0。これにはその場にいた皆が驚きの声をあげた。いくら波動キャノンがあるとはいえ、ライフを削ることにデメリットはない。ダメージを受けたのに反応して出てくるモンスターを警戒した可能性もあるが、今の白井さんの状況をみれば、この行動の理由はすぐにわかる。
彼は、キレていた。
カードゲームが大好きな彼は、カード関係の悪事を見ると、人が変わるのだ。
以前、賭けを強要されてカードをやっている人がいた。しかも、カードショップで、平然と。その様子をみた白井さんは、賭けをさせていた方を殴り飛ばし、脚の骨を折り、半殺しの一歩手前までそいつを追い詰めたのだ。
曰く、カードを純粋に楽しめない奴は死ね。曰く、俺の前でそんなことをやるなら死ね。
彼の前でマナーは絶対。マナーを作っているのが、彼。
「なぜ、アタックしないでターンを終えた? お前のモンスターで攻撃すればバグロスを破壊したうえで、ダメージを与えられたはずだ!」
「俺がアタックしなかった理由なんて、簡単だよ」
私はーー私の中に入った白井さんは微笑む。
「お前相手に全力でプレイするなんて、馬鹿馬鹿しいんだよ」
マナーをわきまえてない相手には、こちらも最低のマナーで応じる。それが白井さんのスタイルだ。シャカパチ、煽り、ジャッジキルされないギリギリの遅延行為、エトセトラ。
そしてーー
「これからのターンはカードをしねぇぞ。俺が今からやるのは、ガキでもできる作業だ」
舐めプ。
大会やイベントにおいて、相手に対する敬意を捨てる、もっとも相手の精神に影響を与える行為だ。イベントにおいて舐めプされたことが原因となり、カードを辞める人もいるくらい、舐めプは他人にしていい行為ではない。
「さてさて、さっさとドローしろよ。作業は時間との勝負なんだよ」
手札がないから静かだが、2枚あったら確実に、パチパチという音が鳴り響いていただろう。
突然雰囲気が変わり、口調も変わった私に対して動揺を抱いているように見えるモヒカンは、白井さんに促されカードを引く。
「スタンバイフェイズ。安全地帯をURANUS対象に発動。さらにスピリットバリアを発動する!」
スピリットバリアは自分フィールドにモンスターがいる時戦闘ダメージを0にする効果で、安全地帯は対象のモンスターを戦闘・効果破壊から防ぎ、かつ対象に取られなくする効果だ。
これでURANUSがいる限り、戦闘ダメージは0になる。安全地帯を破壊しなければ、URANUSは倒せない。
モヒカンの手札はさっきのドローで3枚。うち一枚は、伝説の都アトランティスだ。
白井さんは、あえてスピリットバリアをこのタイミングで使用した。バグロスがまだ攻撃宣言していない状況でこれを発動したのは、完全なまでに相手をナメくさっている。
私なら、スピリットバリアが張られていなければ、バグロスでのダイレクトアタックを優先してすぐにバトルフェイズに入る。手札にもう一体バグロスがいれば、そいつを召喚し、ダイレクトアタックをしかけるだろう。
伝説の都アトランティスは、フィールド上では海として扱われるので、発動すればバグロスの効果も発動できるようになる。そして、フィールドの水属性の攻守を200アップさせる効果を持つ。それだけでなく、このフィールド魔法にはもう一つ効果がある。それはーー
「俺は手札から伝説の都アトランティスを発動するぜ! その効果により、手札とフィールドの水属性モンスターのレベルは1つ下がる!」
アドバンス召喚をしやすくするため、エクシーズのランクを調節するため、シンクロのレベル調整、様々な用途があるのがこのカード。相手が海デッキだから、今回はアドバンス召喚のためだろう。
「バグロスをリリースし、レベル6となった海竜ーダイダロスをアドバンス召喚!」
海竜ーダイダロス、レベル7
攻 2600、守 1500
自分フィールド上に存在する「海」を墓地に送ることで、このカード以外のフィールド上のカードを全て破壊する。
海デッキ限定のヴェルズビュート、自壊しないブラックローズドラゴン。捉え方は様々だが、共通認識としては、厄介なモンスターだということ。
海デッキのエース、最上級の高打点モンスター。水属性だというところもネックだ。
ーー出た! 海王さんのエースモンスターだ!
ーーダイダロス、かっけぇ!
ーー死んだな、あの娘。
ーー清澄さん……
ーー早く帰りたいよぉ
「俺はダイダロスの効果を発動! 海を墓地に送り、ダイダロス以外のフィールド上のカードを全て破壊する!」
青き身体をした竜がその口を開き、フィールドを、暗い夜道を光で染め上げる。全てを飲み込む光が、闇を放つURANUSを包み込みーー
「『無駄だ』」
私の声が、イヤホン越しに交わった。
URANUSを包み込んでいた光は、その強大な闇によってかき消される。
「『URANUSがいる限り、表側表示の魔法罠は破壊されず、安全地帯の効果でURANUSは破壊されない』」
相互に守り合うことで、絶対的な壁を作り上げる。これが、安全地帯URANUS。
「くそっ、ならば……URANUSの打点が3800になっているだと!?」
「安全地帯とスピリットバリアを発動したからな」
表側表示の永続魔法罠が増えれば増えるほど、URANUSの力は強大となる。その分相手に突破できないという絶望と、時間切れが迫るという焦りを生み出す。
フィールド上でも、心理面でも相手を追い詰める。これがこのデッキの特徴。
「さぁ、お前のターンはまだ終わらねぇだろ? 限界まであがいてみろよ」
「くっ、これでターンエンド」
「つまんねぇなぁ。さっきまでの威勢は何処へやらってやつだな」
挑発。マナーも何もあった物じゃない。
半ば強制的にカードをやらせ、尚且つ賭けの実質的強要。白井さんがブチギレる材料はいくらでもある。
「……清澄さん、別人みたい……」
白井さんの背後で光焔ねねが呟く。それもそうだろう。今彼女がみている私は、私じゃないのだから。
現在、私と白井さんのライフは4000、初期値のままで、手札は0。フィールドにはURANUS、永続魔法の波動キャノン、永続罠のスピリットバリア、安全地帯がある。
一方のモヒカンは手札が1、フィールドにダイダロスが1体だけ。
有利なのは何処からどうみても、白井さんと私だ。
「ターンをもらうぜ。ドロー」
波動キャノン発動から、1ターン経過。
「ターンエンド」
「えっ、攻撃もしないんですか!?」
神導さんの言葉に笑顔で頷く白井さん。彼は本当に、波動キャノンのダメージだけで試合を終わらせる気だ。
「くそっ、くそっ! 舐めんじゃねぇ! ドロー!」
モヒカンがカードを引く。手札は2枚。引いたカードによっては逆転も有りえるが、安全地帯で守られているURANUSを除去できるカードは、そう多い物ではない。
エクシーズ、シンクロ、融合、そして儀式を使わないのなら、尚更だ。
「俺はカードを一枚セットして、ターン終了だ!」
「えっ、ターン終えるの早いなぁ。このまんまじゃあっという間に4ターン立っちゃうぞ?」
煽る白井。悔しそうに唇を噛むモヒカン。さながら処刑を言い渡す役人と罪人を思わせる力関係。どう足掻いても、ここからの挽回は不可能に近い。
「俺のターン、ドロー」
波動キャノン発動から、2ターン経過。
「さてさて、あと2ターンあるな」
『どうするの、白井さん。相手のデッキに何が入ってるか分らない以上、警戒に警戒を重ねて、少しでもライフを削った方がーー』
「さっきのターンは純粋な舐めプだったが、今回は普通に動けねぇ。ダストフォースみたいな対象を取らず、破壊しないカードが怖い」
安全地帯の弱点は、対象を取らないバウンスや除外、そして安全地帯を除去できるカードだ。
攻撃反応系のカードを入れるかは、その人の好みや趣味に影響されることが多いが、どれも強力な効果を持っている。次元幽閉やミラーフォースなど、出て来られたら困るカードは多数ある。それらを考慮しての白井さんのプレイング。感情に流されてはいるが、冷静に動けている。
「カードを1枚セットしてターンエンド。あと、2ターン」
波動キャノンによるバーンが4000に至るまで、あと少しだ。モヒカンの額に汗が浮かぶ。
「俺のターン!」
勢い良くカードを引く。この状況を打開できるカードを引ければ、勝敗は分らない。
「俺はカードを1枚セットしてターンエンド!」
これでモヒカンのセットカードは2枚で、手札は1枚。対する私たちもセットカードと手札は同じ枚数だが、フィールドアドが違う。次のターンにモヒカンが動けなかったら、私たちの勝ちが決まる。
「俺のターン。ドロー」
波動キャノン発動から、3ターン経過。
使える魔法ゾーンは残り1。手札は2枚。何を伏せるかは自然と決まる。
「カードを1枚セットしてターンエンド。次のターンで、全てが終わるな」
セットカードとドローカードで全てが決まる。さぁ、どう出る。
「俺のターン、ドロー!」
モヒカンのドローしたカードはーー
「強欲で貪欲な壺! デッキトップを除外して2枚ドロー!」
全てを掛けたドロー。彼は引いたカードを見ると、少しだけ、笑った。
「俺は手札からフィールド魔法、伝説の都アトランティスを発動する!」
ここにきてフィールドに「海」が張られた。相手のデッキの心臓が、少しづつ動き出す音が、聞こえる。
「セットカードを発動! これが俺の切り札、アビストローム!」
コストとして海を墓地に送り、フィールドの魔法罠を全て墓地へ送るカード。
「墓地へ送る効果なら、URANUSの効果で守れない。考えたな」
白井さんは笑う。私の顔で、とても楽しそうに。
「想像を超えたプレイングに驚かされたがーー」
私たちは2歩先を行く。
「カウンタートラップ、神の宣告!」
清澄・白井LP4000ー2000
「言わずと知れたカウンター罠だ! そういう想定外のことをされるのは、すでに織り込み済みだ!」
本来はカステルやトリシューラの召喚を防ぐためのカードだった。だが、この単純な効果は、いかなる状況にも対応できる。
「アビストロームの発動を無効にして破壊!」
「くそっ、すでに想定されてたか。だが、俺も防がれることは想定済みだ!」
ダイダロスが、リリースされる。
「こい、俺たちチームの切り札! 全てを飲み込む海の龍にして、波無き海の主! 海竜神ーネオダイダロス!」
海竜神ーネオダイダロス、レベル8
攻2900、守1600
自分フィールド上に存在する「海竜-ダイダロス」1体をリリースした場合のみ特殊召喚する事ができる。自分フィールド上に存在する「海」を墓地へ送る事で、このカード以外のお互いの手札・フィールド上のカードを全て墓地へ送る。
ダイダロスから青い光が漏れ、その姿をさらに強靭な物へと変える。「海」を用いる効果の中で、最も強力で凶悪なものが、ネオダイダロスの効果といってもおかしくない。
「俺はセットカードを発動! 2枚目の忘却の海底神殿!」
これで再びフィールドに「海」が現れた。これで高価発動の条件は満たされた。
「やべぇな、これは想定外だ」
「ネオダイダロスの効果発動! 再び海を墓地に送り、互いのフィールド、手札のカードを全て墓地に送る!」
ギャラリーがわき、2人の友達は息を飲む。
「やべぇよな」
白井さんは、小さな声で呟く。
「ネオダイダロスが出るなんて、思ってなかったよ」
進化した海の竜が口を開く。集う光が、上空へと打ち出される。
「お前のエンタメプレイングに経緯を評して、OCGの厳しさを教えてやる」
私たちは口を揃える。
恐怖の呪文。
「『ヴェーラーで』」
ネオダイダロスの放った光が、もう一つの光、エフェクトヴェーラーによってかき消される。効果が無効になったことで、忘却の海底神殿はフィールドに残るが、切り札は、止められた。
「なん、だと……」
「『手札誘発が飛んでくる可能性は、十分あっただろ』」
私の声が重なる。URANUSの弱点がつかれないよう、カステルやグランモールの対策をしないはずがない。リリース要因を確保するのも大事だが、それ以上に持久戦を考えてデッキを作らないといけない。
このデッキは、一種のカウントダウンデッキだ。バーンダメージを無効にする効果で止められてしまうが、デッキの中身は似たような物。ただひたすら、耐える。
『耐えるために、ただ防御札を詰め込めばいいってわけじゃない』
「耐えるためには妨害も必要だってことさ」
相手の会心の一撃はなんとか止められたが、彼の目はまだ死んでない。
「カードを一枚セットして、ターンエンドだ」
ターンが移る。白井さんのターン。波動キャノンの装填が終わるターン。
「ターンはもらった。ドロー」
波動キャノン発動から、4ターン経過。
装填、完了。
「さぁ、決着をつけよう」
白井さんがディスクの、魔法ゾーンに手を掛ける。一撃必殺のバーンダメージが、相手を襲う。
「『波動キャノンの効果発動! 墓地に送ることで、相手に4000のバーンダメージを与える!』」
「まだだ、まだ俺はおわらねぇ!」
モヒカンはチェーンしてカードを発動する。
「カウンタートラップ、黒板消しの罠!」
黒板消しの罠、カウンタートラップ
ダメージを与える効果が発動した時に発動する事ができる。自分が受けるその効果ダメージを無効にし、相手は手札を1枚選択して捨てる。
「スペルスピード3のカードで、お前の波動キャノンによるダメージを0にする!」
ーーさすが海王さんだ!
ーーバーンデッキ対策のカードを入れてるとは、流石だぜ!
ーーくっ、あと一歩なのに。
ーー魔希子ちゃん、清澄さんなあ、まだ何か用意してるはずだよ。
起死回生の一枚。4ターンの経過時間が、無駄となるカード。波動キャノンを止めれば、カウントダウンがなくなるため、時間をかけてでもURANUSを処理できる。
「最後のドローで引いたのか?」
「あぁ、壺の効果でな」
「そうか。デッキに愛されてるな」
だが、
「『デッキに愛されてるのはこっちもさ』」
チェーンしてカウンタートラップ発動。
「『カウンター・カウンター!』」
カウンター・カウンター
カウンター罠カードの発動を無効にし破壊する。
波動キャノンの発射は続行。溜まりに溜まった光の塊が、ネオダイダロスごと、モヒカンの身体を包み込んだ。
モヒカンLP4000ー0
海デッキを出すに当たって、いろいろと試行錯誤して、さらにURANUSデッキも試行錯誤してと、とにかくずっと考えていたら、太ももが書けない展開になってました。
白井と清澄の2度目入れ替わりは、もう少し後に行うつもりだったのですが、ちょうどよかったので少し前倒ししました。
これからどうしようか、しばらくストーリーをねるので投稿が遅くなるかもしれないですが、ご了承ください。
余談です。
化合獣面白いですね。デュアル強化は個人的にとても嬉しいです。これでデュアルが環境に……なさそうですね。
そして様々なテーマが強化されました! 中でも驚いたのはエーリアンです。私の純エーリアンの回転率が上がって驚き! あの新規カード、強いです。
そしてwixossでは友人からアイヤイストラクを貰いました。2個目です。というわけで今手元にはアイヤイデッキが二つ有ります。猫型とフリフォ型。スリーブを一緒にしているので対戦相手も反応が面白いです。
ご指摘やご感想、ご批判にご意見、「お前太ももかかないんじゃなくて書けないんじゃないの」と言った中傷、なんでも承っております。気軽にコメントしてください。