なのでスランプ解消を目指して、少し気分転換にwixossしたりボーダーブレイクしたりしてたので投稿が遅れました。
すみませんでしたっ!
というわけで本編をどうぞ。
清澄冷菓という少女は、突然天城さんの前に現れた。
PSYフレームというカードとシンクロ召喚を使いこなし、LDSからきた刺客をあっさりと撃退。そのプレイスタイルは相手をロックして、シンクロモンスターでなぶり殺しにするという、出来れば相手にしたくないものだ。
だが、ロックデッキには必ず穴がある。こうすれば突破できるという、穴が。クリスティアを使った特殊召喚封じには効果破壊、虚無空間やスキルドレインにはバック破壊、効果破壊耐性持ちにはバウンスや除外というように、何かしらの突破方がある。
実際、清澄冷菓のPSYフレームにも弱点はある。フィールド魔法の破壊、手札誘発封じ等の突破方法があることくらい、シンクロ召喚に詳しくない僕でも分かった。
僕は天城さんから渡された地図を頼りに、清澄冷菓の家を目指す。天城さんの話だと、彼女は赤馬零児相手にエクシーズ召喚を披露したらしい。となれば彼女が僕、野々宮の持っていないエクシーズモンスターを持っている確率は高くなる。
僕は天城さんの店で働くバイトだけど、同時にあのチームの元リーダーでもあり、エクシーズ召喚使いでもある。エクシーズのやり方は、やんちゃだった頃にLDSに正面から乗り込んで、無理やり機密情報を吐かせてエクシーズ召喚について知り、その後何度もお偉いさんを脅すことで、エクシーズ召喚を学んだのだ。
今はやんちゃしすぎたと反省しているが、もう後の祭り。僕のせいでLDSとチームは相互不干渉条約を結ぶことになった。まぁ、結果的には良かったが、僕の黒歴史がはっきりと形になってしまった瞬間だった。できれば今すぐ破棄して欲しい。
そんなことを考えながら僕はプラプラと町を歩く。天城さんが彼女から聞き出した話だと、一人でアパートぐらしということらしい。
まだ中学生なのに、すごくたくましいと思う。少なくともその時期の僕は、寮生活とはいえ、飯が出る生活を送っていたので、頭をあげれない。
「さてさて、そろそろお嬢ちゃんの家かなぁっと」
天城さんの情報だと、この角を曲がったところに彼女の家があるらしい。
「お嬢ちゃんが何枚エクシーズモンスターを持ってるか、とても気になるなー。もし数枚しか持ってなかったらまたLDSのお世話になっちゃうからなー」
LDSの職員を脅して出来たてホヤホヤのカードを奪うなんて、できうるならしたくないが、エクシーズモンスターの入手方法がそれしかないのだからいたしかたない。
パックを開けてエクシーズモンスターが出てくるようなラッキーは、ほとんど起こらないのだから、良心を痛めてでもこうするしかないのだ。
「さて、正当化も済んだし、真剣に清澄冷菓ちゃんのご自宅を探しますか」
ただのシンクロ使いなら、彼女に対する興味は一切ない。僕の一番強いデッキにはシンクロモンスターの入り込む余地なんてないから、彼女から聞き出すことは何もないが、エクシーズともなれば別だ。
エクシーズモンスターが増えれば、僕のデッキもかなり強化される。
「それにしても、清澄冷菓ちゃんの家ってどこなんだろ」
地図の通りにここまで歩いてきたけど、それらしい建物は見つからない。今日中に見つからなかったらまた明日くればいいだけのことだが、あのチームで過去に例を見ないほどめんどくさがりの僕だ。できれば今日中に会いたい。
もし会えないなら、彼女が次店に来るまで待たなきゃいけなくなる。
……できれば今日中に会いたい。
「あっ、お前は!?」
それにしても、清澄冷菓ちゃん。あのお嬢ちゃんがエクシーズ使いでもあったなんて、なんか意外だ。
僕も一応エクシーズ使いだから、エクシーズの強さは重々承知している。
「おい! お前だよ、野々宮! 無視するな!」
でも、僕が持っているエクシーズモンスターに、あのPSYフレームに並ぶほどのロック性能を持つモンスターはいない。
もしかしたら僕が持っていないだけかもしれないが、少なくともPSYフレームデッキにエクシーズモンスターは入らないと思う。
「野々宮! おい、返事をしろ! くそっ、なんだこの力!? 引っ張ってるこっちが引きずられるだって!?」
天城さんから聞いた話だと、PSYフレームチューナーモンスターは、共通効果として、相手の発動した効果にチェーンして特殊召喚できる、特殊召喚モンスターだそうだ。つまり、通常召喚できないモンスターということだ。
エクシーズ使いにとって、通常召喚はかなり重要だ。同じレベルのモンスターを並べるために、もっとも手っ取り早いのが通常召喚だ。モンスター1体を通常召喚し、もう一体を特殊召喚、または再度通常召喚する。
ヴェルズのように、下級モンスターでエクシーズするデッキならば、通常召喚できない特殊召喚モンスターは何かと都合が悪いことが多い。
しかもPSYフレームの効果は相手の効果にチェーンして発動することから、明らかに相手のターン中に行動するタイプのデッキ。
やはり清澄冷菓ちゃんのデッキに、エクシーズは入らない。
それなら案外快く、僕にエクシーズモンスターを渡してくれるかもしれないが、彼女が複数のデッキの使い手なら、それも望み薄だ。
「止まれ! くそっ、だんだん虚しくなってきたぞ……」
天城さんから貰った地図を頼りに歩いているが、たどり着くような気配はない。そもそも中学生が、しかも女の子が一人で住めそうな家なんてこんなところにあるのだろうか。
僕が親だったら間違いなく寮に入れたり、学校から徒歩三分圏内のアパートに入れるんだけどね。清澄冷菓ちゃんの親御さんは、そこまで過保護でもないらしい。
「で、さっきから君はなんなんすか?」
何か喚きながら僕の服を引っ張っていた青年に話しかける。
会えて長時間無視したのにめげずについてくる根性はすごいけど、正直鬱陶しい。
「お前、初代のところの野々宮だろ!」
「なんで店長のことは初代って呼んで、僕のことは呼び捨てなんすか……これでも元チームリーダーなんすけど……ってあれ?」
こいつ、どっかで見たことがあるよな……。
「あっ、この前店長に完膚なきまでに叩きのめされたヴェルズ使いくんじゃないですか。なーんだ。丁寧な話し方して損したよ」
「さっきまでのが丁寧な話し方なのか。って、さりげなく失礼だな」
「えー。完膚なきまでに叩きのめされたのは事実だよね。店長の最弱デッキ相手にやられる人、数年ぶりに見たよ。面白かったです」
それにしても、こいつ何の用だろう? 復讐するなら僕じゃなくて天城さんのところに行くはずだし、明らかにたまたま見つけたから声かけましたって感じなんだよね。
「それで何の用」
「俺とデュエルしろ!」
「いやだ」
なんで鳩が豆鉄砲食らったような顔してんだよ。僕はこれから清澄冷菓ちゃんのところに行かないといけないんだよ。
「デュエルしろよ、で応じるほど僕は暇じゃないんだ」
「なっ、元リーダーとしてのプライドは無いのか!?」
「無いよ。店長なら初代としての誇りがあるから、そのデュエル絶対受けるだろうけど、僕は初代じゃないし、プライドも誇りもクソも何もないからね」
それに、と付け加える。
「僕が君と戦う理由がない。君が店長に復讐するならまだ分かるけど、僕は無関係だよね」
無関係だから戦わない。戦う理由がないから戦わない。
他の連中からは冷めたやつだと言われるけど、僕からしたら当然のことだ。無駄に喧嘩をすると恨みをかうから戦わない方がいい。散々LDSに喧嘩を売りまくった僕だから、恨みを買うことの恐ろしさは重々承知している。
「というわけで、理由も無いのに君とは戦えないんで」
「理由ならあるぞ」
ひょ?
「俺個人じゃなくて、LDSの一員としてお前にデュエルを挑む!」
……くっそめんどくせぇ。LDSとして挑まれたんじゃ戦うしかないが、正直面倒臭い。
他の人の話だとヴェルズのエース、ヴェルズオピオンにはレベル5以上のモンスターの特殊召喚を封じる効果があるらしい。
強い。確かに強い効果だ。融合やシンクロデッキにはガン刺さりだろう。でも僕や天城さんのデッキには通用しない。
「はぁ……ここで僕からクソガキな君にデュエルレッスン。デッキには相性というものがあります。その相性を考えずにデュエルを挑むと返り討ちに会います」
「ふっ、俺のデッキは前のヴェルズデッキよりも強化されてる。そう簡単に勝てると思うなよ?」
「めんどくさいなぁ。やりたく無いんだけど、君個人じゃなくてLDSとして挑んで来るなら受けてたたないとーー」
「貴様もLDSか?」
突然後ろから放たれた殺気に、僕の体が動いた。
僕を突き飛ばそうとした腕を掴み、そのまま体を動かす。相手の体重を僕の腰に乗せ、そのままーー
「チェストォォォォォッ!」
投げる。
黒い服に身を包んだ怪しげな何かが、そのまま床に叩きつけられ、うめき声を漏らした。
……やべっ、投げちゃったよ。
ヤンチャしてた頃の癖で、とっさに投げちゃったよ。でも、突き飛ばそうとした方が悪いよね。僕のは正当防衛だよね? 『僕は悪くない』正当化終了。
投げ飛ばされた誰かをよく見れば、口元を赤いスカーフで覆い、サングラスも装着している、怪しさ満点の男だった。
彼は僕とヴェルズ使いの間で少し悶えた後、すぐに立ち上がりデュエルディスクを構えた。
「LDSならば俺とデュエルしろ!」
僕に向けて。
……この不審者大丈夫か? もしかして投げられた衝撃で頭のネジが吹っ飛んだのか? それならあとで病院に連れて行かないと。
「えーっと、LDSの奴はそっちっすよ」
「なに!? お前がLDSか! ならば俺とデュエルしろ!」
まるでFPSゲームのような綺麗なターンを決め、ディスクをヴェルズ使いの方へ向ける。
「こい! LDSなら相手になってやる!」
「まさかお前……LDS連続襲撃事件のーー」
「答える義理はない。貴様は俺がこの手で叩き潰す」
うーん、わりとかっこいいセリフなんだろうけど、僕に投げられた後だとなんだか決まらないなぁ……。
っと、そんなこと考えてる場合じゃない! ここで仕事しないと天城さんに店長としてじゃなくて初代リーダーとして怒られちゃうよ。
僕はデュエルディスクをつけながら、ヴェルズ使いくんの方へと歩を進める。
「誰だか知らないけど、不審者くん、君の相手は僕がするよ」
「なっ、野々宮なんでーー」
「例えLDSの刺客だったとしても、チームをやめたやつには僕らOBがアフターケアをすることになってるんでね」
天城さんが決めたことだ。チームをやめた奴が面倒ごとに絡まれたら、数週間の間その尻拭いをする。チームを抜けるデメリット、つまり現役チームメンバーからの報復を封じるための決め事なのだが、一応やめても数週間の間はチームに帰ってこれるようにするための措置でもある。
今目の前にいるヴェルズ使いも、その措置の対象内、つまりOBに守られる権利があるということだ。
「むろん、僕が警察を呼びに行ってる間に君が戦ってもいいけど、僕の方が時間稼げそうじゃない?」
「……悔しいが、その通り、だな」
「あと一応僕には敬語使ってね。不良集団は上下関係の上に成り立つものだからね」
流石に不良集団の元リーダーが、LDSの刺客とタメ語だったら現役の不良たちに舐められかねないしね。
そんなことを考えながらヴェルズ使いの前に立ち、ディスクを不審者の方へと向ける。
「僕が相手だよ。かかってきなさい」
「邪魔だ、どけ! 貴様に用はない!」
「悪いけど、僕は一時的に彼のボディーガードナーなんでね。そう簡単には退けないんだ」
チラリ、とヴェルズ使いくんの方をみる。彼が動き出す気配はない。さっさと警察呼びに行って欲しいのに……。
まぁいっか。
「それに不審者くん。僕はこう見えてもLDSとつながりが深くてね。この下っ端くんを襲うよりよっぽど有意義だとお思うよ」
「下っ端じゃーー」
「そこまで死にたいなら相手になってやる。かかってこい!」
ヴェルズ使いの言葉を遮り、敵意むき出しでディスクを構える不審者。
僕は一度だけ大きく深呼吸。
大丈夫だ。僕のデッキを信じよう。たとえLDS連続襲撃事件の犯人が相手でも、僕は僕のデュエルをすればいい。
あとは、そう。自分の勇気を信じよう。
「さぁいくぞ!」
「準備はできてるよ」
「「デュエル!」」
デュエルディスクが起動する。僕はデッキからカードを5枚引きつつ不審者に話しかける。
「先行は譲るよ、不審者……えーっと名前を聞いてもいいかな?」
「貴様に名乗る名などない! LDSの肩を持つやつは許さん!」
「じゃぁ不審者装備の変態野郎さん、先行はーー」
「その呼び方はやめろ。俺は黒咲だ」
「僕は野々宮。黒咲さん、先行はーー」
「いくぞっ、手札からRRバニシングレイニアスを召喚!」
現れたのはレベル4のモンスター。急いでデュエルディスクをタップし効果を確認すると、どうやら1ターンに一度手札からレベル4以下のRRモンスターを特殊召喚できるらしい。
「俺はバニシングレイニアスの効果発動! 手札からRRトリビュートレイニアスを特殊召喚! トリビュートレイニアスの特殊召喚時の効果で、デッキからミミクリーレイニアスを墓地へ送る」
へぇ、1ターン目で同じレベルのモンスターを2体、ね。でもエクシーズ使いはLDS関係者しかいないはずだ。となればLDS襲撃犯がエクシーズを使うはずもないだろう。内部犯行かもしれないが、それなら襲ったやつを行方不明状態にする理由と結びついてしまうので、もう警察が調べ終えてるはずだ。
「召喚権は使用済み。どんなカードを使うのかな?」
「俺は2体のモンスターでオーバーレイッ!」
フィールドにいた2体の鳥が、光の渦へと飛び込んで行く。
「エクシーズ召喚! 現れろ! ランク4、RRフォースストリクス!」
……エクシーズ召喚、だって? しかも僕の知らないランク4のモンスター。LDSが開発したエクシーズモンスターは全て知っている。つまり、こいつはLDS以外の手段で手に入れたモンスター。
「黒咲さん、あんたどこでそのエクシーズモンスターを……」
「答える義理はない」
だんまりか。
そうか。
答える義理は無いのか。
「なら、デュエルで勝って聞き出すまでだね」
「勝てるものなら勝ってみろ! フォースストリクスの効果発動! エクシーズ素材を一つ取り除き、でっきからRRファジーレイニアスを手札に加える」
「効果は?」
「フィールドにRRがいる時に特殊召喚できる効果と、墓地に送られた時に同名カードを手札に加える効果だ」
なるほど。エクシーズ素材にしたファジーを、効果発動時に墓地へ送れば新しいファジーをデッキからサーチできるということか。
エクシーズ召喚と相性がいいな。僕の記憶にこんなテーマは存在していない。ということはまさか、LDSが作り出した最新のデッキか? それを盗んでLDS襲撃に使用しているのか?
謎は増えても答えは出ないな。とりあえずデュエルに集中しよう。
「さらに墓地のRRミミクリーレイニアスの効果を発動! 墓地のこのカードを除外し、デッキからRRネストを手札に加える」
フィールドには守備力2000のフォースストリクスが一体だけだが、デュエルディスクで確認すると、その攻撃力と守備力は、自身以外の自分フィールドの鳥獣族モンスターの数×500アップするらしい。
うん、最大攻撃力は2100で最大守備力は4000か。突破するの、めんどくさいなぁ。
「さらに俺は、手札からRRファジーレイニアスを特殊召喚し、手札から永続魔法RRネストを発動! 俺はデッキからRRシンギングレイニアスを手札に加え、フィールドにエクシーズモンスターがいるのでそのまま特殊召喚!」
これでまたレベル4モンスターが2体。なのに手札は3。これだけ展開したのに手札消費が少なすぎる!
「さらに2体のモンスターでオーバーレイ! 現れろ、2体目のフォースストリクス!」
「いや、これはいくら何でもひどいでしょ」
さらにサーチ用のモンスターが出てきちゃったよ。1ターンで何枚サーチすれば気が済むんだ。
……いや、ちょっとまて。まだアタッカーが出てきてないぞ。もしかしてこのデッキって、僕のデッキと同じタイプなのか?
アタックとサポートを完全に分離させ、序盤はサポートモンスターで場を固めて、終盤にアタッカーモンスターで一気に畳み込む。単純だが一番強力なタイプのデッキだ。
「俺は2体目のフォースストリクスの効果を発動。エクシーズ素材のファジーレイニアスを墓地へ送り、デッキからRRブースターストリクスを手札に加える。さらにデッキから2体目のファジーを手札に加える」
急いでデュエルディスクを操作し、効果を確認する。
RR-ブースター・ストリクス、レベル4
攻 100、守1700
1、自分の「RR」モンスターが相手モンスターの攻撃対象に選択された時、このカードを手札から除外して発動できる。その攻撃モンスターを破壊する。
へぇ、手札誘発系の防御カードね。攻撃してきたモンスターを返り討ちにする、か。これで僕は気安く攻撃できなくなったわけだ
「カードを2枚セットして、ターンエンド!」
彼の残り手札は3。ライフは4000でフィールドにはフォースストリクスが2体と伏せが2枚。さらに表側表示の永続魔法、RRネストまである。次のターンまでこの盤面を維持されたら、次のターンに3体のモンスターをサーチされてしまう。
……まぁ、いっか。
「僕のターン! ドロー!」
うん、いい手札だ。
「カードを五枚セットしてターンエンド」
「は!?」
驚いたような声をあげたのは、僕の背後にいるヴェルズ使いだ。
「セットしただけで終わりって……モンスターを伏せたり、相手の伏せを破壊したりもしないのかよ!」
「うん、しないよ。無闇矢鱈に動いてトラップ起動させるのも嫌だしねー」
「……おい、俺を舐めてるのか?」
僕の方をものすごい目で睨みつけてくる黒咲さん。
「真面目に戦う気がないならこの場をされ!」
「いや、極めて真面目だよ。不真面目だと思われてるみたいだから、一応言っておくね。僕のデッキはこういうデッキなんだ」
別にこの世にある全てのデッキが同じ動きをするわけじゃない。僕のデッキみたいに、1ターン目にカードを5枚伏せるのが最もテンプレートな動きだ、というデッキがあってもおかしくないと思うんだけどなぁ。
「もう僕のターンは終わりだよ。ささ、ターンを進めて」
「所詮はLDSの仲間か。貴様とのデュエルは時間の無駄。俺がすぐに終わらせてやる! ドロー!」
「スタンバイフェイズに罠カードオープンッ! 針虫の巣窟!」
針虫の巣窟はデッキの上から5枚を墓地へ送るカードだ。僕は5枚のカードを黒咲さんの方へ見せて、そのまま墓地へと送る。
一瞬だけ彼は訝しげな顔をした。
「全てトラップカード。事故か?」
「なっ事故だって!?」
そんなに驚かないでよ、ヴェルズ使いくん。僕のデッキは『そういう』デッキなんだよ。
「ギャラリーの喚きは気にしないで、ささ、続けて続けて」
「落ちたモンスターを蘇生罠で特殊召喚するのかと思ったが、そういうわけでは無いみたいだな。運が悪く落ちなかったのか、それとも『そういう』デッキなのか、はたまたただのハッタリか」
僕は店で培った営業スマイルを顔面に貼り付ける。流石にエクシーズ使い相手ならタネが割れるか。まぁヴェルズ使いくんはまだ気づいてないみたいだけどね。
「貴様がもし予想通りのデッキを使う相手だったとしても、俺は決して負けない! 2体のフォースストリクスの効果発動! ORUを一つずつ取り除き、デッキからRRトリビュートレイニアスとRRペインレイニアスを手札に加える!」
RR-ペイン・レイニアス、レベル1
攻 100、守 100
「RR-ペイン・レイニアス」の効果は1ターンに1度しか使用できず、このカードをX召喚の素材とする場合、鳥獣族モンスターのX召喚にしか使用できない。
1、このカードが手札に存在する場合、自分フィールドの「RR」モンスター1体を対象として発動できる。自分はそのモンスターの攻撃力か守備力の内、低い方の数値分のダメージを受け、このカードを手札から特殊召喚する。この効果で特殊召喚したこのカードのレベルは、対象のモンスターのレベルと同じになる。
「さらにRRネストの効果! デッキからRRアベンジバルチャーを手札に加える!」
RRーアベンジ・バルチャー、レベル4
攻1700、守 100
1、自分が戦闘・効果でダメージを受けた場合に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は「RR」モンスターしかエクストラデッキから特殊召喚できない。
「俺は手札のファジーレイニアスを特殊召喚し、手札のペインレイニアスの効果発動! フィールドのファジーの攻撃力、500ポイント分のダメージを受け、ペインレイニアスを特殊召喚!」
黒咲LP4000ー3500
ペインレイニアス自身の効果により、そのレベルは4となった。これでフィールドに再びレベル4モンスターが2体だ。だが、彼は止まらない。
「さらにダメージを受けたことで手札のアベンジバルチャーを特殊召喚!」
「レベル4モンスターが3体にエクシーズモンスターが2体ね」
これでフォースストリクスの攻撃力はそれぞれ2100となったわけか。総攻撃されたら僕のライフは一瞬で飛んでしまうわけだ。
「まだまだだよ、妥協しないで本気になろう、黒咲さん」
「当然だ! レベル4のペインレイニアスとアベンジバルチャーで、オーバーレイ! エクシーズ召喚! 現れろ、3体目のフォースストリクス! こいつは守備表示で召喚する!」
そして前のターンで呼び出したフォースストリクスは攻撃表示になる。
「さらに手札のRRトリビュートレイニアスを召喚し、デッキからRRミミクリーレイニアスを墓地へ送る!」
これでさらにカードをデッキからサーチできるようになったのか。
……面白い。とても面白い。
「いいねいいね。久しぶりに強い相手と戦えるよ! さぁ、もっと思う存分やっちゃってよ!」
「……なんだと?」
訝しげな表情をする対戦相手を無視して僕は続ける。
「ここ最近店長は相手してくれないし、チームの奴らは徹底的にメタカードを詰め込んだデッキしか使わないし、LDSは僕を見たらすぐ逃げ出しちゃう。最近普通のデュエルができないでフラストレーション溜まってたんだよね!」
「……」
「でも、黒咲さんは違う。僕相手に正面から挑んでくれてるし、逃げ出しもしない。それに、僕の伏せカードに臆せず大量展開してる!」
激流葬や奈落の落とし穴に警戒している様子もなく、バックを除去するカードを使用する気配もない。
「もっと黒咲さんのデュエルを見せてよ!」
「貴様の期待に応えてやる義理はない! RRフォースストリクスの効果発動! デッキからRRーネクロ・ヴァルチャーを手札に加える! そしてこのままバトルだ!」
RRーネクロ・ヴァルチャー
攻1000、守1600
1、1ターンに1度、自分フィールドの「RR」モンスター1体をリリースし、自分の墓地の「RUM」魔法カード1枚を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は「RUM」魔法カードの効果でしかモンスターをX召喚できない。
これで手札は4枚。期待に応える義理はないと言いつつも、しっかりと手札を補充している。このバトルフェイズで仕留める自信があるのか、ミミクリーレイニアスの効果を使っていないが、十分展開していると言える。
「いけ、トリビュートレイニアスでダイレクトアタック!」
「それじゃ、トラップカードオープン。『波紋のバリア -ウェーブ・フォース-』!」
相手が直接攻撃を宣言した時、相手の攻撃表示モンスターを全てデッキに戻すカード。さぁ、どう対処する?
「無駄だ! カウンタートラップ、『ラプターズ・ガスト』! 自分フィールド上にRRカードがある時、魔法か罠の発動を向こうにして破壊する!」
「へぇ、やるね」
野々宮LP4000ー2200
「まだ俺の攻撃は終わらない! やれ、フォースストリクス!」
「残念。『聖なるバリア -ミラーフォース-』だよ。そっちの攻撃表示のモンスターを全て破壊するよ」
「何っ!? 攻撃反応系を2枚も伏せていただと!?」
「まだ終わらないよ! チェーンして墓地の罠カード、バージェストマ・レアンコイリアの効果発動!」
さぁ、チェーンを積み重ねよう。これが僕のデュエルだ。
「さらにチェーンしてリバースカードオープン。バージェストマ・ピカイア! 手札のバージェストマを捨ててデッキから2枚ドローする!」
さらにチェーンを重ねる。
「これにチェーンして墓地のバージェストマ・ディノミスクスの効果発動!」
これでチェーン4。次がチェーン5。
「まだまだ! リバースカードオープン! 積み上げる幸福! このカードはチェーン4以降に発動できて、同一チェーン上に同名カードが無い時、デッキから2枚ドローできる! 最後に墓地のバージェストマ・エルドニアの効果発動!」
バージェストマはエクシーズモンスター以外、全て罠カードで構成されているテーマであり、その共通効果は、
『罠カードが発動した時、その発動にチェーンしてこの効果を墓地で発動できる。このカードは通常モンスター(水族、水、星2、攻1200、守0)となり、モンスターゾーンに特殊召喚する(罠カードとしては扱わない)。この効果で特殊召喚したこのカードはモンスターの効果を受けず、フィールドから離れた場合に除外される。』
というものだ。墓地からモンスターとして特殊召喚ができるのがバージェストマであり、バージェストマにはそれぞれ『罠』としての効果も備わっているのだ。
「チェーンは6までだね、黒咲さん、チェーンはある?」
「いや、ない」
「じゃあ効果処理だね」
チェーン6、バージェストマ・エルドニアをモンスターとして守備表示で特殊召喚。
チェーン5、積み上げる幸福の効果で2枚ドロー。
チェーン4、バージェストマ・ディノミスクスをモンスターとして守備表示で特殊召喚。
チェーン3、バージェストマ・ピカイアの効果で手札のバージェストマ・マーレラを捨てて2枚ドロー。
チェーン2、バージェストマ・レアンコイリアをモンスターとして守備表示で特殊召喚。
チェーン1、ミラーフォースの効果で相手フィールドの攻撃表示モンスターを全て破壊。
「俺のモンスターを一掃しながら展開しただと……」
「その伏せカードがトラップスタンじゃなくて助かったよ」
「くっ、墓地に送られたファジーの効果発動! デッキから3枚目のファジーを手札に加える」
これで僕の手札は4枚。さらにフィールドにはモンスターとなったバージェストマが3体。
針虫の巣窟で落ちたカードは3体のバージェストマと、和睦の使者と無謀な欲張り。よって今墓地にあるバージェストマは、ピカイアとマーレラの2枚だけだ。
でも、2枚あれば十分だ。返しのターンでどうとでもなる。
「メインフェイズ2。俺は墓地のミミクリーレイニアスの効果を発動! デッキから手札に加えるカードはRRレディネス! カードを1枚セットしてターンエンド! くそっ、戦いづらいな……」
……順調だ。ミラーフォースはもう少し温存したかったが、それを除けば極めて順調だ。
相手のフィールドには伏せカードが2枚、表側守備表示のRRフォースストリクスが1体で手札は5枚。ライフは初期値の4000。
一方の僕はライフが2200。客観的に見て不利なのは僕だけど、手札に関する公開情報は僕の方が少ない。
かれの手札のうち3枚は、ブースターストリクス、ファジーレイニアス、ネクロヴァルチャーであることは確定している。もし今伏せたカードがRRレディネスでないなら、彼の手札のうち4枚は公開されていることになる。
それに反して、僕の手札は全て非公開情報で構成されている。つまり、僕は黒咲さんの戦略をある程度予想できるが、彼は僕の戦略を全く予想できないということだ。
「僕のターン、ドロー」
さて、そろそろ見せてあげますか。僕の本来の闘い方を。
「僕はフィールドのバージェストマ・ディノミスクスとバージェストマエルドニアでオーバーレイ!」
モンスターとなったバージェストマのレベルは2。よって特殊召喚できるエクシーズモンスターのランクは2。
「その奇怪な姿で進化の可能性を示せ! エクシーズ召喚! 五億年の時を経て顕現しろ! ランク2、バージェストマ・オパビニア!」
バージェストマ・オパビニア、ランク2
攻 0、守2400
「バージェストマ・オパビニア」の3の効果は1ターンに1度しか発動できない。
1、このカードは他のモンスターの効果を受けない。
2、このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分は「バージェストマ」罠カードを手札から発動できる。
3、このカードが罠カードをX素材としている場合、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。デッキから「バージェストマ」罠カード1枚を手札に加える。
フィールドに守備表示で現れたモンスターは、5つの目と触手のような口を持つ奇怪な生物。進化の過程で淘汰された太古の生物が、今蘇る。
「エクシーズ召喚は黒咲さんの専売特許じゃ無いんだよね。やり方さえ知ってれば、僕にだってエクシーズ召喚はできるんだよ」
「トラップモンスターを使ったエクシーズ召喚か。素直に敬意を評そう。だがーー」
獲物を狩る猛禽類のような目で僕を睨みつける彼。
「その程度では俺に勝つなど到底できないぞ!」
「この程度で終わらないよ。このモンスターは僕のデッキの性能を極限まで引き出すために、攻めを完全に捨ててサポートに徹したモンスター。オパビニアが現れてからが本当のデュエルだ!」
さぁ、行くぞ僕のデッキ。お遊びはここまでだ!
「手札からバージェストマ・マーレラを発動!」
「手札からトラップだと!?」
「オパビニアがフィールドにいれば、バージェストマ罠カードは全て手札から発動できるようになるのさ。そしてバージェストマ・マーレラの発動にチェーンして墓地のバージェストマ・ピカイアの効果を発動!」
チェーン2、バージェストマ・ピカイアをモンスターとして守備表示で特殊召喚。
チェーン1、バージェストマ・マーレラの効果でデッキから罠カード、仁王立ちを墓地へ送る。
「まだまだ! バージェストマ・オパビニアの効果発動! オーバーレイユニットのバージェストマ・ディノミスクスを墓地へ送り、デッキからバージェストマ・ピカイアを手札に加える」
「手札入れ替えのカードか。しかもオパビニアがいる限りバージェストマ罠カードはーー」
「そう、魔法カードのようにすぐ使える! 手札からバージェストマ・ピカイアを発動! それにチェーンして墓地のバージェストマ・マーレラの効果発動!」
チェーン2、バージェストマ・マーレラをモンスターとして守備表示で特殊召喚。
チェーン1、手札のバージェストマ・エルドニアを墓地に送り、デッキから2枚ドロー。
手札はまだ4枚ある。手札消費は少なくできているが、無謀な欲張りや積み上げる幸福を手札から使えないので、手札が増えることはない。
それでも、デュエルを優位に進めることはできる。
「俺はフィールド上の3体のバージェストマで、オーバーレイ!」
「3体でエクシーズ!?」
驚きの声を上げるヴェルズ使い。
モンスターを3体使用して特殊召喚されるモンスターはどれも強力な効果を持っている。中でもこのモンスターは、僕が持っているエクシーズモンスターの中でもかなり強い部類に入る。
「目覚めるは太古の捕食者、訪れるは恐怖。進化は偶然、破滅は必然。5億年を越え、現世に恐怖と可能性を! 顕現しろ! ランク2、バージェストマ・アノマロカリス!」
バージェストマ・アノマロカリス、ランク2
攻2400、守 0
レベル2モンスター×3体以上
1、このカードは他のモンスターの効果を受けない。
2、1ターンに1度、罠カードが自分の魔法&罠ゾーンから墓地へ送られた場合に発動できる。自分のデッキの一番上のカードをめくる。そのカードが罠カードだった場合、手札に加える。違った場合、墓地へ送る。
3、このカードが罠カードをX素材としている場合、1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。この効果は相手ターンにも発動できる。
「バージェストマ・アノマロカリスだと?」
「これが僕のデッキのエースだよ。エクシーズ素材に必要なモンスターが3体以上と素材指定は厳しいけど、強力なモンスターさ」
このモンスターにはオパビニアのようなサーチ効果はないが、その力の全てを攻撃に費やしているというわけでもない。
「まずはアノマロカリスの効果の一つをお見せするよ。オーバーレイユニットを一つ消費して効果発動! 君が最初のターンに伏せたカードを破壊する!」
「くっ、破壊されるカードはRUMデスダブルフォースだ」
速攻魔法か。向こうの反応からして墓地発動の効果や破壊された時の効果はなさそうだ。
「それじゃぁ、バトルだ! やれ、バージェストマ・アノマロカリス! フォースストリクスをぶち殺せ!」
「フォースストリクスが攻撃対象にされた時、手札からブースターストリクスの効果発動!」
確か手札から除外することで、攻撃宣言をした相手のモンスターを破壊する効果だったはず。でもーー
「バージェストマモンスターは相手のモンスターの効果を受けない! よってブースターストリクスで破壊されない!」
「くそっ、ならばトラップカード、RRレディネスを発動! このターン中、RRモンスターは戦闘で破壊されない!」
くっ、フォースストリクスは破壊できないな。だがーー
「トラップを発動したのは失敗だったね! 墓地のバージェストマ・エルドニアの効果発動!」
「なんだとっ、俺のトラップカードにもチェーンできるのか!?」
「その通り! バージェストマの前では全てのトラップが展開のための足がかりだ!」
不思議だ。この人と戦ってると、自然と本気を出したくなってくる。
僕のデッキをもっと動かして、この人を追い詰めたい。
「墓地のエルドニアをモンスターとして特殊召喚!」
「レディネスの効果でフォースストリクスは戦闘破壊されない!」
「だが次はない! 僕は手札を2枚伏せてターンエンド!」
これで僕の手札は2枚。一方の黒咲さんは伏せを全て使い果たし、その上手札のブースターストリクスを無駄撃ちしたせいで手札が4枚。だが彼のライフはまだ初期値のまま。一方の僕はライフが2200。
このままだときついけど、まだデュエルは終わりじゃない。僕のターンが来る限り、いつだって状況はひっくり返るんだ。
それは黒咲さんにも言えることだ。彼の目だって、まだ死んでない!
「強いな、野々宮」
「へぇ、随分と素直なんだね。LDS連続襲撃犯の犯人とかいうから、もっと性格ねじ曲がってるんだと思った」
「俺はデュエリストとして、強いデュエリストに敬意を評しているだけだ。それにこれは、俺からの宣言でもある」
「宣言?」
僕が首を傾げると、そうだと肯定の返事をした黒咲さん。
「俺はデュエリストとして、正面からお前を叩き潰す!俺の、ターンッ!」
勢いよく引かれるカード。彼が引いたのはーー
「RUMスキップフォースを発動! 対象はRRフォースストリクス!」
RUMースキップ・フォース
1、自分フィールドの「RR」Xモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターよりランクが2つ高い「RR」モンスター1体を、対象の自分のモンスターの上に重ねてX召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。
2、自分の墓地からこのカードと「RR」モンスター1体を除外し、自分の墓地の「RR」Xモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。
「RUM?」
聞いたことも無い名前のカードを使う黒咲さんが、その口もとを歪めた。
「このカードは自分フィールドのRRエクシーズモンスターを、ランクの2つ高いエクシーズモンスターへとランクアップさせる!」
「なっ、まさかーー」
魔法カードを使ったエクシーズチェンジ!?
「誇り高きハヤブサよ。英雄の血潮に染まる翼翻し 革命の道を突き進め! ランクアップ・エクシーズ・チェンジ! 現れろぉ! ランク6! RRーレヴォリューション・ファルコン!」
RRーレヴォリューション・ファルコン、ランク6
攻2000、守3000
1、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。このターン、このカードは相手モンスター全てに1回ずつ攻撃できる。
2、このカードが特殊召喚された表側表示モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時に発動する。そのモンスターの攻撃力・守備力を0にする。
3、このカードが「RR」XモンスターをX素材としている場合、以下の効果を得る。
・1ターンに1度、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを破壊し、その攻撃力の半分のダメージを相手に与える。
「……」
僕は何も言えなかった。
エクシーズチェンジに魔法カードを使用するなんて、今まで一度も聞いたことがなかった。それと同時に、彼の手札にいるネクロヴァルチャーの効果を思い出した。
RUMの回収。『RUM』僕の知らないエクシーズサポートカード。しかもピンポイントで名前を指定していないところから見るに、RUMは複数ある!
「……ククッ」
面白い。笑えるくらい面白い!
僕の中の何かが、弾け飛ぶ。
「魅せてくれるじゃねぇかぁ! そのRUMとやらでこの盤面を突破できるもんなら突破してみろ、黒咲ぃ!」
突然豹変した僕に、彼だけでなくヴェルズ使いも目を見開いた。
「てめぇがどんなカードを使おうが、この盤面じゃ無意味なんだよぉ!」
「ほざいてろ! 俺は手札から魔法カード、魔法石の採掘を発動! 手札を2枚捨てて墓地のRUMスキップフォースを手札に戻し、再び発動! 対象はRRレヴォリューションファルコン!」
再び構築されるオーバーレイ。現れるランクは8。
「勇猛果敢なるハヤブサよ。怒りの炎を巻き上げ、大地をも焼き尽くす閃光となれ! ランクアップ・エクシーズチェンジ! 飛翔しろ! ランク8、RRーサテライト・キャノン・ファルコン!」
RRーサテライト・キャノン・ファルコン、ランク8
攻3000、守2000
1、このカードが「RR」モンスターを素材としてX召喚に成功した場合に発動できる。相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。この効果の発動に対して相手は魔法・罠・モンスターの効果を発動できない。
2、このカードのX素材を1つ取り除き、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力は自分の墓地の「RR」モンスターの数×800ダウンする。この効果は相手ターンでも発動できる。
「サテライトキャノンファルコンの召喚時、効果発動! 相手フィールドの魔法罠を全て破壊する!」
「やらせねぇよ! トラップカードオープンーー」
「無駄だ! サテライトキャノンファルコンの効果にチェーンすることはできない!」
「なっ、ふざけんな! トラップ重視でたくさん伏せるデッキになんてことしてくれてんだ! ……なーんてな」
破壊されたカードは、『ゴブリンのやりくり上手』と『不運の爆弾』。
やりくり上手はブラフとして伏せたカードで、不運の爆弾はーー
「不運の爆弾が相手によって破壊された時、相手に1000のバーンダメージを与える!」
黒咲LP4000ー3000
「くっ、2枚ともダミーということだったのか」
「まだまだぁ! バージェストマ・アノマロカリスの二つ目の効果発動! 自分のフィールドから罠が墓地へ送られ時に発動できる効果だ!」
デッキトップに手をかけ、効果を説明する。
「自分のメインデッキの一番上をめくり、そのカードが罠カードなら手札に加えることができる! デッキトップは、当ッ然ットラップゥッ! バージェストマ・ハルキゲニアだ!」
「貴様まさか……」
黒咲がこちらを睨みながら口を開く。
「デッキが全てトラップの、フルトラップデッキか?」
「フルトラップ!? 野々宮、あんた正気か!?」
「うるせぇぞ、5流デュエリスト。そして黒咲、あんたは不正解だ。このデッキは決してフルトラップってわけじゃぁない。ただトラップ以外のカードが極端に少ないのさ」
だからデッキトップをめくってトラップじゃなかったことなんて、今まで一度たりともない。
「さぁ、デュエルを続けろよ。ついでに手札に加えたバージェストマ・ハルキゲニアの効果は、対象にしたモンスターの攻守を半分にする効果だ」
つまり、オパビニアがフィールドにいる状況では、手札からハルキゲニアをうって相手のモンスターを弱体化させることができるので、サテライトキャノンファルコンではアノマロカリスだけでなくオパビニアも突破できない。
それに加えて彼の手札はあと1枚。たった一枚で、どうやってアノマロカリスを突破できるというんだ。アノマロカリスにはフリーチェーンでうてるカード破壊効果もある。並大抵の方法で突破できるはずがない。
「俺はこのカードに全てをかける! RRネクロヴァルチャーを通常召喚!」
ネクロヴァルチャー。まさかそのカードを手札に残していたとは。
「俺はネクロヴァルチャーの効果発動! 自身をリリースして墓地のRUMスキップフォースを回収する。そしてさらにスキップフォースをサテライトキャノンファルコンを対象に発動する!」
くるか。僕も知らないランク10のモンスターが!
「究極至高のハヤブサよ。数多なる朋友の遺志を継ぎ、勝利の天空へ飛び立て! ランクアップ・エクシーズ・チェンジ! 現れろぉ! ランク10! RRーアルティメット・ファルコン!」
RRーアルティメット・ファルコン、ランク10
攻3500、守2000
1、このカードは他のカードの効果を受けない。
2、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。このターン、相手フィールドのモンスターの攻撃力は1000ダウンし、相手はカードの効果を発動できない。
3、このカードが「RR」モンスターをX素材としている場合、以下の効果を得る。
●お互いのエンドフェイズ毎に発動できる。相手フィールドのモンスターの攻撃力は1000ダウンする。相手フィールドに表側表示モンスターが存在しない場合、相手に1000ダメージを与える。
現れたのは鉄の翼をもつ、ランク10のモンスター。
「アルティメットファルコンは他のカードの効果を受けない。俺のカードの効果も、当然、お前のカードの効果もだ」
「……」
少しだけ口元に笑みを浮かべつつも、僕は心の中で怒鳴る。
ふざけんな! 効果に対する絶対耐性だ!? インチキ効果も大概にしろ。
くそっ、完全にアノマロカリスの効果発動タイミングを間違えたぞ。ネクロヴァルチャーかサテライトキャノンを潰せば、この絶対耐性持ちは出てこなかったのか。いくらランクが上がろうが、ハルキゲニアかアノマロカリスで対処できると思っていた僕を殴ってやりたい。
「さらに、アルティメットファルコンの効果発動! エクシーズ素材を1つ取り除くことで、相手モンスターの攻撃力を1000ダウンさせる!」
「だがバージェストマはモンスター効果を受けないぞ?」
「アルティメットファルコンの効果はこれで終わらない。さらに相手のカードの効果の発動を、このターン中封印する!」
ふざけるな! どんだけインチキカードなんだよ!
「それは流石にまずい! 墓地の仁王立ちの効果発動! 対象はバージェストマ・エルドニア!」
これで相手はエルドニアにしか攻撃できなくなった。とりあえずこのターンは凌げるがーー
「バトルだ! やれ、アルティメットファルコーーーー」
「やめろ、隼!」
誰だお前!
唐突に乱入してきた男が黒咲のデュエルディスクを掴んだ。当然のように抵抗する黒咲。
「は・な・せ!」
「辞めるんだ、隼! ここは俺たちの戦場ではない!」
「離せユート! 俺はデュエリストとして、こいつに勝つ! 邪魔だては許さん!」
なんだなんだ、どういうことだ?
戦場? 何を言ってるんだ、この黒マントの乱入者は。
「隼、ここは一旦引け!」
「邪魔をするなユート! 俺は何が何でもこいつを倒す。俺の全てを費やしてでも!」
「隼!」
「相方の言う通り、一旦引いた方がいいぞ、黒いの」
あれ、この声もしかしてーー
「店長!? なんでこんなところに!?」
そこにいたのは、迷彩柄のズボンに白のタンクトップという、強靭な肉体をこれでもかと強調する服に身を包んだ店長、天城さんだった。
旧式のデュエルディスクを腕につけ、くわえ煙草を器用に動かしながら天城さんは僕の方に手を振った。
「店の常連からお前がデュエルしてるって聞いて、急いで来たんだよ」
「……すみません店長。店長の耳に入る前に、仕留められませんでした」
「あぁ、気にすんな。でもデュエルした理由によってはバイト代削るからな」
えっ、マジですか?
ふざけた様子もなく、真剣な顔でそう言い放った天城さん。この人なら本気でやりかねない。
「さて黒いの。お前さんが誰だか知らんが、ここは引いちゃくれないかい?」
「ふざけるな! 俺のデュエルの邪魔だてをするようなやつは誰であろうとーー」
「1ターンあればいい」
天城さんはボソッとそう呟いた。
「1ターンあればこの状況はひっくり返る。野々宮のデッキと俺のデッキは以外と相性が良くてな。2対1なら絶対に負けないぜ?」
不敵に笑う店長に、さっきまで強気だった黒咲もたじろぐ。流石に僕と天城さんを相手にするのはまずいと思ったのだろうか。
「隼、ここは引こう。あの男、かなり強いぞ」
「おっ、相方の方は随分と理性的なんだな。ほれほれ、黒いのもさっさと撤退しな」
「……チッ」
舌打ちをしつつもデュエルディスクを下ろした黒咲。それを見てから僕もデュエルディスクを下ろす。
「野々宮、ヴェルズ使いをLDS本社に送ってやれ」
「了解っす。店長は?」
「俺はこいつらと『大人』な話し合いだ。それとそこのお前! 隠れてないで出てこいよ」
天城さんは近くにあったマンションの入り口を指さす。そのドアの影にいたのはーー
「えっ、お嬢ちゃん?」
「はっ、ハロー……」
清澄冷菓だ。黒い制服からのびる適度に太くて美しい色の太ももと、そこにくっついている旧式のデッキケースが彼女であることの証拠だ。
彼女の登場に驚いたのは僕だけでなく、対戦相手の黒咲と、その仲間もだった。
清澄冷菓は一度だけため息をつくと、呆れたようにこう呟く。
「人の家の前で何してるの?」
野良でデュエルをすると、デュエルディスクより発せられる立体映像があたりの人に『デュエルをしている』ということを知らせてくれる。どうやら彼女も僕らの召喚したモンスターを見て、気付いたらしい。自分の家の前でデュエルが行われていると。
黒咲とその仲間は顔を見合わすと、一度だけ頷く。そして二人とも同時に僕らへ背を向けた。
「おい、野々宮とかいったな」
「どうしたんだい? 黒咲さん」
「次は最初から全力で叩き潰す」
「僕もだよ。次は僕の最強のデッキで相手をするよ」
互いに次は負けないとは言わない。今回のデュエル、黒咲さんだって負けた気がしていないんだろう。だからこそ、次は全力で叩き潰す。
彼ら不審者2人は僕らに背を向け、何処かへと走り去った。
天城さんはヴェルズ使いをLDSに送った後、あの不審者に心当たりがないか、赤馬零児を問い詰めるらしい。そして僕はといえば、ただいま清澄冷菓ちゃんの家にお邪魔させてもらっているわけで。
「野々宮さん、適当に座って」
「ありがとうっす。突然押しかけて悪いっす」
「そんなことないわ。それで用事って?」
僕は近くにあった椅子に腰掛け、勉強机と思われる場所に僕のデッキを置いた。
「……それは?」
「僕のバージェストマデッキっす。見てもらえないっすか?」
不思議そうに首を傾げる清澄冷菓。きっと自分が何をすればいいのかわかっていないんだと思う。
「えーっと、デッキ構築についてアドバイスが欲しいっす」
「えっ、珍しいわね。私のクラスメイトは皆、デッキを見せたがらないのに」
「うーん、なりふり構ってられないんすよ。次、あの黒咲さんに会うまでは負けないって決めたっすから」
黒咲さんのデッキは、僕の想像を超えていた。展開力、手札補充、そしてアタッカーの強さ。ランク10のあのモンスターに至っては、並大抵の方法じゃ処理できない。
あんなに強いデッキを見せられたら、僕も覚悟を決めないと。
「……そういうことなら遠慮なく。……ふむふむ、フルトラップバジェ……じゃない。魔法カードも入れてるんだ。ブラックホールに羽箒」
「罠封じ対策で念のために」
「なるほど。いいデッキね。私のデッキとは全然違うや」
何処か悲しそうな顔をする清澄冷菓ちゃん。そして近くにあったカードファイルから数枚のカードを抜き取る。
「シスター、砂塵の大竜巻、餅カエル。……白井さん、カエルバジェにしようとしないで。デッキコンセプトは守りたいの。ガンテツ、セイントレア。あとこれも……それならこれも欲しいわね」
彼女は二十枚はあろうかというカードの束を僕に渡した。
「強化用カード。フルトラップバジェっていうコンセプトを潰さないようにしながら、使えそうなカードを数枚選んだわ。あと、エクシーズモンスターが数枚」
「エクシーズモンスター!?」
「えっ、そんなに驚くの?」
驚くに決まっている。LDSでないとほとんど入手できないエクシーズモンスターを、こんなに気安く渡すなんて。
「ってあれ? これランク2じゃないっすよ。しかもこれ、シンクロモンスター……」
「いいから貰って。シンクロの仕方が分からないなら今度教えるわ」
「もらうなんて出来ないっすよ。あとでお金はちゃんと払うっす」
「わかったわ。じゃあ明日にでも天城さんの店に行くからその時にでも……あっそうだ! せっかくだから」
彼女は別のカードフォルダから、1枚のカードを抜き取った。
「これはお守り。好きに使ってね」
「ん? 始めて見るモンスターっすね」
創星……神?
みなさんお久しぶりです。
前話投稿後、ストーリーが思いつかなくなり、カードやゲームに逃げ続け今に至ります。なんとか先の話も思いついたので、ゆっくりではありますが少しづつ投稿していきたいです。
そして今回は野々宮のデュエルです。当初野々宮のデッキはバージェストマではなかったのですが、バージェストマの方がしっくりきたので、デッキ内容を変更しました。
余談です。
また変なデッキを作ってしまいました。ペンデュラムエスプリットバード。通常ペンデュラムモンスターのランスフォリンクスや竜角の狩猟者をエスプリットバードと組み合わせた、かなり不思議なデッキです。でも勝率は低くない。持久戦に持ち込むとかなりの確率で勝てます。強いぞ、ラビードラゴン!
そしてwixossの新アニメが始まりました! ちーちゃん。可愛すぎるよ、ちーちゃん! ちーちゃん! ちーちゃん! ちーちゃん、この前ちーちゃんが使うメルのデッキを組んだよ! 友人のミュウにフルボッコにされたよ! ちーちゃん!
では、そう遠くならないうちに、またお会いしましょう! サヨナラ!