異世界の少女と絶望のデッキ   作:仕舞獅子舞

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白井の初デュエルです。
突然回想シーンから始まりますが、気にせず読み進めていただけたら嬉しいです。

そしてアンチホープはいつになったら再登場するのやら……


奪われた炎と究極のデッキ

清澄冷菓。

彼女がはじめて俺の前に現れたのは、カードショップでヴァイスシュヴァルツをしている時だった。

 

「何かお探しですか?」

 

ショーケースの中を覗き込んでいた彼女に、ショップでバイトをしていた俺の友人が話しかける。

 

「えぇ、遊戯王のカードで、洗脳解除っていうのを探してて」

 

彼女の声は小鳥のような美しい声で、カードをしていた俺はゲームに集中できなくなった。容姿も美しいが顔に幼さが残る、高校生くらいの少女。カードショップに来るとは思えない人間とは彼女のことを言うのだろう、とその時の俺は思った。

 

「洗脳解除、ですか。当店には在庫がないですね」

「そうですか……」

「ここら辺一体のカードショップに在庫はないですよ。自分、このエリアの在庫事情には詳しいんで」

 

明らかに落ち込むそぶりを見せる清澄。

俺はたんたんとヴァイスをしながら、チラチラと向こうの様子を伺った。

 

「となると、やっぱりネットじゃないとダメなのかな……」

「そうでもないっすよ」

 

清澄の呟きをきき、デュエルスペースの方を指しながら友人が続ける。

 

「今そこに俺のダチがいるんすけど、あいつに頼めば店頭価格で譲ってくれるはずっすよ」

 

どうやら話に俺のことが上がっているようなので、ヴァイスの方を終わらせに行く。

 

「はい、4点。チェックして」

「1、2、3、4。キャンセルなし。クッソー負けた!」

「ありがとさん。ちょっとカードみてくる。あとで遊戯王しようぜ」

 

俺はおもむろに立ち上がって清澄の方に歩いて行く。

 

「おい、店員さんよ。店内で客を口説くと首にされるぞ?」

「口説いてるわけじゃねぇよ……って白井かよ。丁度いいところに来たな」

 

突然知らない人が来たせいか、清澄は少しだけ萎縮しているようにも見える。

 

「話は聞いてたよ。洗脳解除が欲しいんだろ? ……おっと、自己紹介がまだだった。はじめまして。ここら辺一体を巣にしてカードやってる白井だ。よろしく」

「はじめまして、最近ここらへんに引っ越してきました、清澄です。あの、この店ってトレードとかしていいんですか?」

 

彼女は俺の友人に尋ねる。彼は軽い調子で答える。

 

「白井とのトレードは、どこのカードショップでも黙認されてんすよ。こいつ、ここいらのショップの店員とか常連をまとめ上げてるコミュニティのトップで、ショップに損がないように、どこのショップにもないカードだけをトレードしてるんすよ」

「そういうことだ。ついでに、連絡くれればいつでもショップに駆けつけるし、声かけてくれればいつでもデッキの試運転に付き合ってやる。まぁカードバカって奴だよ、俺は」

「白井がいるおかげでこの辺のカードショップの治安が保たれてるんすよね。いつもありがとう」

「話がそれたな。そういうわけで俺相手ならトレードはできるんだよ。トレードというよりは売ってる感じだけどな」

 

俺は友人に持ってきたカードファイルを取ってくるように指示を出す。

取り残される俺と清澄。まずい雰囲気が流れないように、なんとか話題を見付け出す。

 

「そういえば、洗脳解除って何に使うんだ?」

「ええと、洗脳解除ゴーレムを作ろうと思って」

 

洗脳解除ゴーレム。ラヴァゴーレムやヴォルカニッククイーンなどの、相手のモンスターをリリースして相手フィールド上に特殊召喚するモンスターのコントロールを、洗脳解除、所有者の刻印といった〈フィールドのモンスターのコントロールを、もともとの持ち主に戻す〉カードで奪い返すデッキだ。

 

「ほう、所有者の刻印は?」

「三枚見つかりました。高かったですけど」

「洗脳解除ゴーレムね。ラーの球とか入れるとシナジーがあっていいかもな」

「ラーですか。確か五百円くらいですよね」

 

不死鳥もまだ発表されてない頃だったからだろう。今はもっと値上がりしているはずだ。

 

「ここに在庫があったはずだけど……あれは入れなくてもいいか」

「素材が三体必要ですからね」

「そうだ。洗脳解除のおまけで球つけてやるよ。もちろんタダで」

「えっいいんですか!? しかもタダ!?」

 

あからさまに驚いた様子の彼女に、思わず笑いがこぼれた。

 

「ここに引っ越してきたばっかなんだろ? なら引越し祝いってことで。俺も新しいカード仲間が増えるとなると嬉しいんだよ」

「カード、仲間……」

「そう、カード仲間。ここら辺に住んでるならカード仲間だろ。カードは皆でやった方が楽しいから、カード仲間はたくさん作る。それが俺のモットーだ」

 

友人がカードフォルダーを俺に渡し、レジの方へと駆け足で向かう。俺はフォルダーをペラペラとめくり、洗脳解除を抜き取る。

 

「ほい、洗脳解除。三枚欲しいか?」

「できれば三枚欲しいです」

「いいよ、三枚な。あいつが戻ってきたら値段確認しないとな」

俺はついでにラーの翼神竜を抜き取る。

「ほい、これがラーな」

「本当にいいんですか?」

「言ったろ、引越し祝いだ。それにマナーがあるやつにはサービスしたいんだよ」

 

彼女は申し訳なさそうに四枚のカードを受け取る。

 

「そうだ、この後時間あるか? 今からちょうど遊戯王やろうと思ってたんだよ。俺の仲間とやってかね? 俺らの仲間に中学生の女の子がいるんだけど、イマイチからみにくくてさ。おっと、デッキある?」

「ええと、ファーニマルなら」

「よし、暇ならやって行かないか?」

 

「えぇ、よろこんで」

 

あの時の彼女の微笑みは本当に綺麗だった。

それを見て俺はこう思ったんだ。

こんな綺麗のことカードができるなんて俺は幸せだな、と。

 

 

 

 

「「デュエル!!」」

 

その清澄の体を借りて、俺、白井はデュエル開始の宣言をする。彼女の体を使用することに若干の罪悪感があるが、それ以上に怒りが湧いてくる。

前浜。この男は俺と清澄のアイディアの結晶であるデッキを奪った。マナーどころか人として終わってる。

こんなやつには制裁を、クズには天罰を。

 

『白井さん、あの炎王デッキは私が若干改造したので、以前の炎王とは少し違います』

 

俺の耳から本当の清澄冷菓の声が流れる。デフォルメされ彼女を見てみたいが、今はデュエル中だ。

 

「僕の先行だね、清澄くん」

『あの炎王デッキからは邪神イレイザーが抜かれてます。それと、リグレットリボーンが抜かれて、代わりに炎王獣ガルドニクスが一枚、激流葬が一枚追加。あとは愚かな埋葬を抜いて貪欲な壺を入れてます』

 

デッキはそんなにいじられてないみたいだ。以前よりも持久戦に特化した炎王になっているのは、気のせいではないかもしれない。

 

「さて、まずはカードを一枚セット、モンスターを伏せてターンエンド」

 

どうやら初手で炎王の孤島を握っているわけではないようだ。それならば恐れる必要はない。あのデッキはフィールド魔法の孤島がエンジンとなっているから、孤島がない炎王は少しだけ弱体化する。かと言って弱いわけではないし、次のターンに引くかもしれないので警戒はしておいた方がいい。

 

炎王の孤島

 

「炎王の孤島」の1、2の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。

1、自分メインフェイズにこの効果を発動できる。自分の手札・フィールドのモンスター1体を選んで破し、デッキから「炎王」モンスター1体を手札に加える。

2、自分フィールドにモンスターが存在しない場合にこの効果を発動できる。手札の鳥獣族・炎属性モンスター1体を特殊召喚する。

3、フィールドゾーンの表側表示のこのカードが、墓地へ送られた場合または除外された場合に発動する。自分フィールドのモンスターを全て破壊する。

 

 

あのデッキに入っていて伏せられるカードはフレムベルカウンターと、激流葬、禁じられた聖杯と聖槍、炎王円環、あとは貪欲な瓶。

あの伏せカードを激流葬と予想すると、伏せてあるモンスターはキリンかバロン。ヤクシャはデッキに二枚しか入れてないから、引く確率は少ない。

あえて激流葬を誘発させて、次のターンに備えるのが得策だろう。もしキリンの効果でヴォルカニックカウンターが墓地におちても、深淵に潜むものを立てれば問題は解決できる。

 

「俺たちのターン、ドロー!」

 

早速デッキのエンジンを引いた。今日は調子がいいみたいだ。

今回のデュエルでの注意点はライフが4000しかないことだ。俺が作るデッキはどれも死ななきゃ安い、という傾向があるから、ライフコントロールは徹底すべきだろう。

 

「俺は手札から永続魔法、黒い旋風を発動!」

 

相手のデッキにバック除去がないことを知りながら戦うことほど、気が楽なことはない。

 

『黒い旋風……BF《ブラックフェザー》デッキ?』

「まぁ黙ってみてろ。俺が一番気に入ってる、お守りにしたくなるようなデッキだ。そんな単純なものじゃないぜ」

 

黒い旋風はBF専用の永続魔法。BFが通常召喚された時、そのモンスターより攻撃力が低いBFをサーチするカードだ。だがこのデッキはBFではない。

これはあくまでもエンジンであり、三枚積んでいるわけではない。

 

「俺は手札からBF-精鋭のゼピュロスを通常召喚!」

 

BFー精鋭のゼピュロス

攻1600、守1000

「BF-精鋭のゼピュロス」の効果はデュエル中に1度しか使用できない。

1、このカードが墓地に存在する場合、自分フィールドの表側表示のカード1枚を持ち主の手札に戻して発動できる。このカードを墓地から特殊召喚し、自分は400ダメージを受ける。

 

「ゼピュロスが召喚された時、黒い旋風の効果が発動する! デッキから疾風のゲイルを手札に加えるぜ」

『ゲイル、ゲイル怖い……』

「全盛期は本当にうざかったよな、ゲイル」

 

フィールドに召喚されたゼピュロスは、教室のサイズに合わせて若干小さくなっている。それでも本物のゼピュロスをみれたことへの興奮は抑えられない。

 

「さぁいくぜ! 手札からゲイルを特殊召喚して速攻でシンクロ召喚!」

「なに!? シンクロ召喚だって!?」

 

前浜のリアクションを無視して召喚口上を口にする。このモンスターは口上がないから、清澄がダイナソーイングを召喚した時と同じように即興で考える。

 

「レベル4のゼピュロスに、レベル3のゲイルをチューニング!」

 

ゼピュロスが四つの光の球となり、ゲイルが生み出した三つの歯車の中で光をまとって一つになる。

これこそがシンクロ召喚!

 

「…………きやがれ! 邪竜星ガイザー!」

 

邪竜星ーガイザー、レベル7

攻2600、守2100

 

「邪竜星-ガイザー」の2、3の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

1、このカードは相手の効果の対象にならない。

2、自分フィールドの「竜星」モンスター1体と相手フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。

3、自分フィールドのこのカードが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキから幻竜族モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。

 

フィールドに現れる邪悪な龍。神秘的な雰囲気を纏いつつも、周りを威圧するその雰囲気は、立体映像ならではだろう。もしソリッドヴィジョンならば、さらに圧倒的な何かを放っていたかもしれない。

そんなガイザーだが、いささか悲しそうに見えるのは多分気のせいだろう。

 

『白井さん、シンクロ召喚してからガイザーの名前を呼ぶまで、若干間があったよ? さっきの間はなに?』

純粋な好奇心むき出しで聞いてくる清澄。

「…………」

『あれ、もしかして、召喚口上を考えてたけど思い浮かばなかったーー』

「頼む清澄。そっとしておいてくれ」

 

なぁガイザー。そんなかなしそうな目で俺の顔を見るなよ。俺だって悲しいんだよ。清澄ほどあっさりと口上を考えつくほど、頭の出来は良くないんだよ。

 

「清澄くん。……君は、シンクロ使いだったのか?」

 

俺のミスに気づいていないのか、前浜が声を震わせて尋ねてくる。この世界でのシンクロ使いは、かなり稀な存在なのだろうか。

 

「シンクロ使いねぇ。まぁどんな召喚方法も本気出せば使えるが、一番得意なのはシンクロかな」

 

流石にどんな召喚方法も普通に使えるとは言えないので、適当に言葉を濁す。

 

「さぁバトルだ。邪竜星ガイザーで攻撃!」

『攻撃名、作る?』

「頼む」

『じゃあ一緒に言おうね』

 

「『イービル・クライシス!』」

 

ガイザーが発した紫色のブレスにより、裏守備のモンスターは投影されることなく消え失せる。

 

「破壊された炎王獣ガルドニクスの効果発動! デッキから炎王獣バロンを特殊召喚!」

 

獅子のような顔をしたモンスターがフィールドに現れるが、その威圧感はガイザーによってすっかり打ち消されてしまっている。

 

「俺はカードを一枚セットしてターンエンド。さぁ、かかってこいよ」

 

お互いにライフは4000。前浜のフィールドには炎王獣バロンと伏せカードは一枚で、手札は3。

一方の俺はフィールドに邪竜星ガイザーが一体、黒い旋風一枚と伏せカードが一枚で、手札は3。

 

相手がゲイル特殊召喚時に伏せカードを使ってこなかったのを見るに、あのカードはおそらく禁じられた聖杯か聖槍だろう。

それにしても初手から炎王獣ガルドニクスを引くとは、相手も運がない。あれは炎王神獣が戦闘破壊された時のための盾。こんな序盤で使うはずのカードではない。

 

「くそっ、僕のターン。ドロー!」

 

彼の口に少しだけ笑みが浮かぶ。

 

「僕はテラフォーミングを発動! デッキからフィールド魔法、炎王の孤島を手札に加える!」

 

めんどくさいことになった。あれで手札に炎王の急襲を握っていたら、俺の形成はかなり不利になる。

孤島の効果でフィールドのバロンを破壊すれば、急襲の発動条件は満たされる。炎王神獣ガルドニクスでガイザーを殴り殺される上に、効果でリクルートした幻竜族も焼かれたら、目も当てられない。

 

「炎王の孤島を発動して、効果を使用する! 僕は手札の炎王神獣ガルドニクスを破壊して、ターンエンド!」

 

ガルドニクスは破壊されたあと、次のスタンバイフェイズに蘇り、フィールドのモンスターを全て破壊する。その効果でバロンごとガイザーを破壊し、バロンの効果で次のスタンバイフェイズに炎王円環をサーチするつもりなのだろう。

 

それがどうした。

ガルドニクスの打点は2700。それを超える打点で殴り殺せば問題ない。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

……おかしい。何かがおかしい。さっきからデッキがうまく回りすぎてる。このデッキはまだ調整中のデッキ。それなのにデッキがいい方向に進んで行く。

 

「スタンバイフェイズ! 蘇れ、彼方から急襲する天空の覇者、炎王神獣 ガルドニクス!」

 

フィールドに現れる、炎をその身にまとった美しき不死鳥。その羽ばたきによって、フィールドのガイザーとバロンが燃え上がる。

 

「ガイザーの効果発動! このカードが効果によって破壊された時、デッキから幻竜族モンスターを守備表示で特殊召喚する!」

 

俺はデッキから一枚のカードを引き抜く。

 

「清澄、口上を」

『わかったわ。さぁ一緒に!』

 

「『この地に眠る太古の竜よ。今こそ長きに渡る眠りから目覚め、我らを究極へと導け! 現れろ、俺たちのキーカード。龍大神!』」

 

決まった! さすが清澄だ。ちょっと中二っぽいけどかっこいい召喚口上だぜ!

 

龍大神、レベル8

攻2900、守1200

1、相手がモンスターの特殊召喚に成功した場合に発動する。相手はエクストラデッキのカード1枚を選んで墓地へ送る。

 

俺が召喚したのは、狼を思わせるを顔をした、半透明の龍。さっきのガイザーと違い、こちらがまとっている雰囲気は、神秘的であり、高貴なものだ。

 

「くそっ、だがガイザーの効果で特殊召喚されるモンスターは守備表示! このターンに攻撃して僕のガルドニクスを破壊することは不可能!」

「おまっ、龍大神がフィールドに出てきた時点で警戒しろよ! それだからお前らは二流デュエリストなんだよ!」

 

今朝の柊柚子といい、モンスターの効果を読んで相手のやろうとしていることを考えないなんて、OCGだったらあり得ないことだ。ましてや龍大神はコンボがあるくらいなんだから、少しは警戒してもいいだろうに。

それに、BFからガイザーが出てきたのに後続が龍大神という時点でおかしい。普通ならタツノオトシオヤからシンクロに繋げたりするから、怪しまずにはいられないのだが……復帰勢や新しくはじめた人なら、知らなくても仕方ないか。

 

「まぁ龍大神は使わないで放置してやるよ。ありがたく思え。代わりに手札から破面竜を召喚」

 

 

破面竜

攻1400、守1100

1、このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキから守備力1500以下の幻竜族モンスター1体を特殊召喚する。

 

死ななきゃ安いという言葉はカードにおいて度々出てくる言葉だが、それでもライフコストが勿体無いと感じることもある。

 

「俺は破面竜でガルドニクスを攻撃! 神風アタック!」

「なんだと!? まぁいい。僕は禁じられた聖杯を発動してガルドニクスの攻撃力を400アップさせる!」

 

おいおい、こんな勿体無いタイミングで聖杯を使っちまうのかよ! それなら破面竜からリクルートされるであろう後続のためにとっておけよ! 完全にタイミング違うだろ!

 

清澄、LP4000ー2300

 

「破壊された破面竜の効果発動! デッキから獄楽鳥を特殊召喚!」

「デッキから特殊召喚だって!?」

 

炎王デッキにもデッキから特殊召喚する炎王の急襲ってカードが入ってるだろ。何をそんなに驚いてんだよ。

それより獄楽鳥が出てきたことに驚けよ。

 

獄楽鳥、チューナー、レベル8

攻2700、守1500

1このカードの攻撃力・守備力は、自分の墓地のチューナーの数×100アップする。

2、1ターンに1度、手札のチューナー1体を墓地へ送り、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターのコントロールをエンドフェイズまで得る。

 

「メインフェイズ2! 俺は獄楽鳥の効果を発動! 手札からSR電々大公を墓地に送り、ガルドニクスのコントロールを奪う!」

「僕のガルドニクスが!」

 

さて、ガルドニクスノレベルは8で、チューナーの獄楽鳥のレベルは8。

 

『あっ、龍大神と獄楽鳥がフィールドにいるってことは……』

「さぁ見せてやるよ。俺は炎王神獣ガルドニクスに獄楽鳥をチューニング!」

『白井さん! 一緒に召喚口上言わせて! これは一回言ってみたかったの!』

 

「『決闘の地平に君臨する最初にして最後の神! 混沌を束ね姿無き身を現世に映さん! シンクロ召喚! 究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン!』」

 

究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン

攻 0、守 0

ルール上、このカードのレベルは12として扱う。

このカードはS召喚できず、自分フィールドのレベル8以上で同じレベルの、チューナーとチューナー以外のモンスターを1体ずつ墓地へ送った場合のみ特殊召喚できる。

1、このカードは効果では破壊されず、攻撃力はフィールドのモンスターの数×1000アップする。

2、1ターンに1度、自分・相手のメインフェイズに発動できる。お互いのフィールドに同じ数だけ、「邪眼神トークン」(悪魔族・闇・レベル1・攻、守0)を可能な限り守備表示で特殊召喚する。このターンこのカードは攻撃できない。

 

ガルドニクスと獄楽鳥が光となって弾け飛び、両者の間にあった空間を歪める。中から出てきたのは緋い体をした、巨大な化身。これが絶対的な力、アルティミトル・ビシバールキン。

 

『……白井さん、そういえばアンチホープを召喚した時、デュエルディスクが耐えきれなくなりましたよね』

「あぁ、よく覚えてるぞ」

『だったらアルティミトルを召喚しても同じことになるんじゃ……』

「そうかもな。だが……」

 

これくらいしないと俺の怒りはおさまらねぇ。

人様のデッキを盗むなんて、カードゲーマーの風上にもおけねぇ。

 

「なんだ、このカードは……」

 

狼狽える前浜に俺は告げる。

 

「切り札だ。俺はカードを一枚セットしてターンエンド! さぁ、かかってこいよ」

 

前浜はライフが4000で、フィールド魔法の炎王の孤島があるが伏せカードはなし、手札は2。

一方の俺はライフがフィールドに龍大神とアルティミトル・ビシバールキン、黒い旋風一枚と伏せカードが2枚で、手札は1。

 

「ふん、どんなに強いモンスターを出せても、攻撃でなければ意味がないじゃないか。僕のターン、ドロー!」

 

派手なモーションでデッキからカードを引く。俺のカードなんだからもっと大事に扱えよ。しかも盗品なんだから。

 

「僕はさっきのターンに破壊された炎王獣バロンの効果発動! デッキから炎王炎環を手札に加える」

 

炎王炎環、速攻魔法

自分のフィールド上及び自分の墓地の炎属性モンスターを1体ずつ選択して発動できる。選択した自分フィールド上のモンスターを破壊し、選択した墓地のモンスターを特殊召喚する。

 

「そして手札から炎王獣ヤクシャを召喚し、龍大神を攻撃!」

 

ヤクシャの攻撃力は龍大神の守備力を上回っているので、難なく龍大神を破壊する。

 

「さらに速攻魔法、炎王炎環を発動! 僕はフィールドのヤクシャを破壊する。そして蘇れ! 炎王神獣ガルドニクス!」

 

よく考えたな。アルティミトル・ビシバールキンの攻撃力はフィールドのモンスターに依存する。よってお互いのフィールドに二体しかモンスターがいない今、その攻撃力は2000。

 

「さぁ、清澄くんの切り札を破壊してあげよう。炎王神獣ガルドニクスでアルティミトル・ビシバールキンを攻撃!」

 

バックも気にせず殴りかかることは時には大切だが、1ターン目から伏せられているカードには警戒しないとダメだろ。

 

「トラップカードオープン。おジャマトリオ」

 

相手フィールド上に「おジャマトークン」(獣族・光・レベル2・攻0、守1000)を3体守備表示で特殊召喚する(生け贄召喚のための生け贄にはできない)。「おジャマトークン」が破壊された時、このトークンのコントローラーは1体につき300ポイントダメージを受ける。

 

前浜取り囲むようにして現れる三体の異形。

 

「これでフィールドのモンスターは自身を含めて5体だぜ」

「アルティミトル・ビシバールキンの攻撃力は……5000だと!?」

「カウンターを食らえ! マヤクール・カクター!」

 

こちらへと炎をまとって飛翔するガルドニクスを、2倍以上の大きさに肥大した拳で殴り飛ばすビシバールキン。ソリッドビジョンでもないのに熱波が伝わってきそうな勢いだ。

 

前浜、LP4000ー1300

 

「ぐはっ! まさかここまでとは! 戦闘破壊されたガルドニクスの効果により、炎王獣キリンを守備表示で特殊召喚する! 僕はこれでターンエンドだ」

 

さて、楽しい時間はこれで終わりだ。

 

「俺のターン、ドロー! 俺は伏せていたギブアンドテイクを発動し、あいてのフィールドに龍大神を特殊召喚!」

「相手のフィールドにモンスターを特殊召喚だって!?」

 

それだけじゃ終わらないぜ。

 

「墓地のSR電々大公の効果発動! 墓地の電々大公を除外して、手札からSR三つ目のダイスをーー」

 

「そこで何をしているんですか!」

 

突然聞こえてきた怒鳴り声。声の主は勢い良く扉を開けて教室内に入ってきた神導だった。

 

「教室内でのデュエルはーー」

 

彼女は目の前にいるアルティミトル・ビシバールキンを見て、空いた口が塞がらなくなった。

絶対の力を持った究極神。おそらくみたこともないであろうそのモンスターに目を奪われているのは一目瞭然だ。

 

「おい、清澄。お前のクラスメイトが来ちまったけど、どうする? お前のふりするか?」

『うん、とりあえず真似して。似てるかわからないけど』

 

俺は飛び切りの笑顔を彼女に向ける。

 

「もうデュエルは終わらせるから。ちょっと待ってね。私は三つ目のダイスを特殊召喚!」

「だが、モンスターが特殊召喚されたことにより、龍大神の効果が発動する!」

「知ってるわ。だから特殊召喚したの」

 

俺はエクストラデッキから一枚のカードを墓地に送る。

殺意に満ちたカード。サイバードラゴンノヴァ。

 

「相手によって墓地に送られたからので、ノヴァの効果が発動する。私はエクストラデッキから機械族の融合モンスターを特殊召喚する!」

「なんだって、シンクロだけでなく融合も使えるのか!?」

「さぁ来て! サイバーエンドドラゴン!」

 

サイバー・エンド・ドラゴン

攻 4000、守 4000

1、このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。

 

「サイバーエンドが特殊召喚されたことにより、さらに龍大神の効果が発動する。私はエクストラデッキからノヴァを墓地に送り、サイバーエンドを特殊召喚! さらにノヴァを墓地に送り、サイバーエンドを特殊召喚!」

「1ターンで攻撃力4000のモンスターを三体も……」

 

神導が声を震わせながら呟く。

龍大神の、〈相手がモンスターの特殊召喚に成功した場合に発動する。相手はエクストラデッキのカード1枚を選んで墓地へ送る。〉という効果は、一見するとエクストラメタにしか見えないが、送るモンスターによっては相手を徹底的に追い詰めることができるのだ。

 

「さらにサイバーエンドが特殊召喚されたので、私はRRフォースストリクスを墓地に送る。さぁバトルの時間よ!」

「ひっ!」

「サイバー・エンド・ドラゴンでおジャマトークンを攻撃!」

 

エターナル・エヴォリューション・バースト!!!

 

機械の竜から発せられる三本の光線が、異形を包み込んで焼き払う。

 

「くっ、だけどおジャマトークンは守備表示ーー」

「サイバーエンドは貫通攻撃持ち。だから3000のダメージを受けてもらうわ」

「なんだって!?ぐわぁぁっ!!」

 

前浜、LP1300ー -1700

 

「楽しいデュエルだったわ。とりあえず、私のデッキは返してもらうわよ」

 

放心状態の前浜のディスクから、デッキとエクストラデッキを取り出し、置きっ放しにされていた清澄のカバンを開いてケースにしまう。

 

「それで、神導さんはどうしてここに?」

 

入り口のところで立ち尽くしていた彼女に声を掛けても返事はない。仕方ないのでカバンを持って彼女の方に近づき、肩を揺らす。

 

「おーい、生きてる?」

「……えっと、清澄さん?」

「うん、清澄冷菓よ。神導さん、どうしてここに?」

「屋上以外でデュエルをしてるって話を聞いたから止めに入ろうとーー」

「そう、ごめんなさい。私の大切なデッキが取られたから、カッとなってその場でデュエルしちゃって」

 

俺はチラリと前浜の方を見る。デュエルが終わったのに、まだ口を半開きにして立ち尽くしている。

さすがに俺の口から苦笑いがこぼれた。

 

「神導さん、とりあえず移動しない?」




というわけで、龍大神ワンキルが白井のデッキです。

ところで、先日発売のPPにはアルティミトル・ビシバールキンが収録されています! 早速使ってみたんですが、早速バウンスされました!

さて、次回はデュエルがあるのでしょうか?
まだわかりませんが、またお会いしましょう!

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