異世界の少女と絶望のデッキ   作:仕舞獅子舞

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デュエルパートです!
この回から超展開注意です!ご注意ください。


破滅のデッキと加速する絶望

天城さんの話によると、この店の五階は予約制の貸し切りデュエルスペースになっているらしく、基本的にはこの付近を拠点にしているワルたちの集合場所となっているようだ。

天城さん自身も昔はヤンチャしていたらしく、そういった人たちには優しく接し、時にはし切っていたようだ。

 

ヤンキーが集まって会議している分には、天城さんは口出しする気はないらしいが、問題はその会議があまりに長く続いているということ。

不良たちが言うにはこの町で一番大きなチームのトップが引退し、その跡取りを決めるデュエルをしているそうだが、そこにLDSが潜り込んでしまい、事態がややこしくなってしまったそうだ。

 

「LDSはそのチームにいろんな仕事ーー新しいlカードのテストプレイかなんかを依頼してたらしいんだが、近頃チームがその依頼を断ったことがあってな。LDSの方からしたら、これほどつまらない話はないってことだ」

「それでチームを傀儡人形にするために、LDSは人間を送り込んだ?」

「正解だよ、姉ちゃん。それで自体がややこしくなってな。LDS派と反LDS派に分かれて争って、いつまでたったって終わりやしねぇ。しかも貸し切りを延長して三日間もスペース取られてんだよ」

 

三日間も不良に占拠されたデュエルスペース。人が寄り付くはずもない。

 

「そこで姉ちゃんにたのみがあるんだ。それ相応の報酬は出すから、俺と一緒にデュエルしてくれないか?」

「……」

「ずっと会議を監視してる奴の話だと、LDS派がもう虫の息らしい。だからそっちのトップをやるだけでいいんだ。俺はその間に残ってるLDS派を片付けるからさ」

「……」

「どうだ、乗ってくれないか?」

 

 

天城さんの言っていることはわかる。

天城さんは人が良さそうだから、手伝ってあげてもいい。

だけど、これだけは言いたい。

 

どうしてこなったの!?

 

ただの中学生がデッキケースを買いにきただけで、どうなったら不良の抗争に巻き込まれる!?

意味がわからない。何がどうなったらこうなるの。

 

少し冷静になろう。ここはアニメの世界だ。こういう超展開が起こっても不思議ではない。

 

「なんで、私なんですか? 天城さんはまだ私のデュエル見てないですよね?」

「あぁ、そのことか。さっき中学生の噂を小耳に挟んでな。超美人の転校生のデュエルの腕がプロ並みって話でな。それ、あんたのことだろ」

「何を根拠に?」

「何を根拠って、お姉ちゃんのDPだよ。30万なんて普通にショップ大会に出て稼げる額じゃねぇ。だからかなりの数の野良デュエルをこなしていると見た。それなら中学生が噂するレベルの腕でもおかしくねぇ」

 

この世界の野良試合で稼げるDPのレートはそんなに低いのだろうか。30万くらいならすぐに溜まりそうなものだけれど。

 

「まぁワルっていっても、チームの規則で大学生以上はいない。せいぜい高校生の連中だ。それに、負けたからってしつこく絡めないようなルールがあるから、お姉ちゃんが勝っても家に帰れなくなることはねぇ。断言できる」

「どうして?」

「あのチームの創始者が俺だからだ」

「それなら自分でケリをつけたほうがいいんじゃ?」

 

これは参った、というような顔で頭を掻く天城さん。

 

「出来ることならそうしたいんだが、俺も年でね。今の連中の速度についていけないのよ。それに、LDS派のトップが使うデッキは聞いたこともないテーマで、ヴェルズっていうらしい」

 

ヴェルズ。白井さんと私は作らなかったけど、征竜魔導の時代を生きていたテーマで、ヴェルズのレベル4モンスター二体で出せるエクシーズモンスター、ヴェルズオピオンがとにかく強かった記憶がある。

エクシーズ素材を持ったオピオンがいる限り、相手はレベル5以上のモンスターを特殊召喚できなくなる、という効果のせいで私は何度も痛い目をみている。

 

「ヴェルズ、ね。まぁ時間はあるし、少しくらいなら手伝います」

「本当か、姉ちゃん」

「えぇ。でも、ちゃんと報酬はもらいますよ?」

「当然だ。俺も商売人だからな。仕事にみあった給料は出す。……ついてきな、姉ちゃん。五階へは業務用エレベーターでしかいけないようになってるからーー」

「あっ、ちょっと待ってください」

 

 

マグカップに残った珈琲を一気に飲み干し、レジの上に起きっぱなしにされていたデッキケースをカバンにしまう。

 

「珈琲、美味しかったです。また飲ませてくださいね」

「そいつは今回の仕事の成功報酬ってやつにさせてもらうぜ、姉ちゃん」

 

天城さんにつられるようにして、関係者以外立ち入り禁止と書かれた扉の奥へと足を踏み入れる。

前を行く彼とは少し距離をおき、イヤホンの音量をあげる。

 

「白井さん」

『どうした、清澄』

「ヴェルズ相手の試合なんだけど、シンクロ多用するデッキ使ってもいい?」

『ヴェルズ相手にシンクロって、正気か?』

 

オピオンの効果は、簡単に言えばシンクロ殺し。普通なら自殺行為としか思えないだろう。

 

「最近、ショップイベントとか出てもヴェルズは見かけなくなったから、この機会に私のデッキがヴェルズにどれくらい太刀打ち出来るか、知っておきたいの」

 

しばしの沈黙。カードゲーマーの白井さんなら、この気持ちもわかってくれるはず。

 

『そういうことなら仕方ねぇ。だが一応聞いておく。それ、負けてもいい試合なんだよな?』

「もちろん」

 

天城さんとは今日知り合ったばかりだし、不良の集まりがどうなろうが知ったこっちゃない。さらに言えば、負ければもう天城さんのせいでトラブルに巻き込まれることもなくなるだろう。

 

『そういうことなら思う存分戦え、清澄。久しぶりにお前の遊戯王ができるな』

「そうね。やっぱり炎王みたいな正攻法で戦うデッキは、私には向いてないみたい」

 

エレベーターに乗り込み、5階へとあがる。

白井さんとの会話は、人がいるところだと堂々とできない。特にデュエル中は外部と連絡をとっていると思われるので絶対にできない。

 

「そうだ姉ちゃん。一つ聞いてもいいか?」

 

エレベーターはゆっくりと上がる。

 

「なんですか、天城さん」

「あんたのデッキは何なんだ? 噂じゃデッキ内容までは分からないから、一応聞きたいんだが」

「内緒です。といってもすぐばれますけどね」

 

私は舌を少し出して、いたずらっぽい笑みを浮かべる。

 

『お前のその表情、こっちの世界に来てから初めて見たな。だいぶ慣れてきたんじゃないか?』

 

白井さんの言う通り、この世界にもだいぶ慣れてきた。アニメではお決まりの超展開だって、今なら動じずに受け入れられそうだ。

 

これだけリラックスした状態なら、最高の回し方ができる。

 

エレベーターが音を立てて止まり、その分厚い鉄扉が開かれる。

 

 

 

扉の向こうはカオスだった。

何十人という人が部屋の隅に寄りかかって寝ていて、床には使用済みと思われる食器が散乱。部屋の中央では二つのグループが至近距離で怒鳴りあっているという、なんとも言えない光景だ。

片方のグループは十数人ほどいるが、もう片方は5人ほど。きっと寝ている人たちはデュエルで負けて、溜まってた疲れがどっと押し寄せてきて寝てしまった、という感じだろうか。

 

「あっ、天城店長、お疲れ様です」

 

エレベーターの出口の近くにいた、顔立ちのいい、胸から顔写真入りのプレートをぶら下げている男が、天城さんに近づいてきた。

 

「おぅ、野々宮。状況はどんな感じだ」

「なかなか終わりそうにないっすよ。LDS派のトップが予想以上に強くて、反対派は攻めあぐねてる感じっす」

「だろうな。反対派のガキどもには覇気がねぇ。いずれはこうなるだろうと思ってたさ」

 

どうやらこの野々宮さんというのはこの店の店員で、天城さんの指示でここを監視していた人らしい。

それにしてもいったいどうしたら、こんなにひどい状況になるのだろう。以前仲間と一緒に行った24時間カードゲームをするイベントーー私は10時で会場から追い出されて、翌朝5じに会場に戻ってきたーーでもここまでではなかったのに。

 

「ところで店長。その子は?」

 

野々宮さんが不思議そうに私の顔を見る。笑顔で手を振ると、彼はもっと戸惑ったような顔になった。

 

「店長。ついに子供に手を出したんですか? いくら可愛いからって……」

「馬鹿野郎。この姉ちゃんは代理人だ。俺じゃぁ力不足だから、この姉ちゃんに収集をつけてもらう」

「本気ですか? この子、そんなに強いんですか?」

「わからんが、俺の感を信じろよ。おいガキども! こっち向け! お遊びは終わりだ!」

 

突然天城さんが声を張り上げる。それに呼応するかのごとく、起きている人たちは口々に、初代初代とつぶやいている。

天城さんは構わず続ける。

 

「最初に言ったように、お前らが時間以内に終わらせられなかったから、仕方なく俺らが介入する!」

「ちょっと待ってくださいよ、初代! あとちょっとでーー」

「うるせぇ! 時間切れっつっただろ! 数が少ない方、さっさと代表者をだせ!」

 

この人、本当に不良集団のトップだったんだ。下にいた時の雰囲気とは打って変わり、今は大人の威厳に満ち溢れている。

 

天城さんの一喝により、私たちの方へ金髪のお兄さんが歩いてくる。やけに着崩された学校の制服は、かっこいいというよりダサい。

 

「さぁ姉ちゃん、出番だ。実力見せてくれよ」

 

彼に背中を押され、私は部屋の中央へと歩み出す。

周りからは誰だあの娘、とか初代が戦うんじゃないのかよ、といった声が飛んでくる。

そんな中正面の金髪は、不快感をあらわにして怒鳴り散らす。

 

「何しに来たんだよ小娘! ここはお前みたいな奴が来ていい場所じゃねぇんだよ!」

「あの、そういうのいいんで。さっさとデュエルしましょう? 私、早く終わらせて報酬もらって家帰って寝たいんです。早く寝ることはお肌にいいんですよ?」

『久しぶりに聞いたぜ、清澄の煽り。昔は良くやってたよなぁ』

 

煽りとかじゃなく、早く終わらせて帰りたいだけなんだが、そんなこと言っても意味はない。

 

「そんなに死にたいか小娘!」

「死ぬのは勘弁です。まだ中学生なので」

 

お互いにデュエルディスクを構えると、辺りにいた人たちが私たち二人を取り囲む。

たまにはこういう雰囲気の中でカードをするのも悪くない。

 

「「デュエルッ!!」」

 

デュエルディスクが電子音を鳴らす。どうやら先行は私らしい。

 

「私のターン。フィールド魔法、PSYフレーム・サーキットを発動!」

 

ディスクにカードを叩きつけるが、周りに大きな変化は起こらない。周りの景色が変わったりして欲しかったのだが、少し残念だ。

 

『おい、サイフレームかよ! そんなもん使ったら絵面が大変なことにーー』

「さらに手札からカードカー・Dを召喚して効果発動! デッキから二枚ドローしてターンエンド!」

 

やっぱりサイフレームを使うと心が落ち着く。

手札は5枚のままでPSYフレームサーキットがフィールドにある。サイフレームの理想の動きと言えるだろう。

 

PSYフレーム・サーキット

1、自分フィールドに「PSYフレーム」モンスターが特殊召喚された場合に発動できる。自分フィールドの「PSYフレーム」モンスターのみをS素材としてS召喚する。

2、自分の「PSYフレーム」モンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時に、手札の「PSYフレーム」モンスター1枚を捨てて発動できる。その戦闘を行う自分のモンスターの攻撃力はターン終了時まで、この効果を発動するため捨てたモンスターの攻撃力分アップする。

 

サイフレームモンスターの基本的な戦い方は、相手ターン中にモンスターを特殊召喚し、そのままシンクロするといういトリッキーなもの。サイフレームの共通効果として、特殊召喚されたサイフレームモンスターはエンドフェイズに除外されてしまうので、そのデメリットを消すためにPSYフレーム・サーキットが必要なのだ。

 

フィールド魔法に依存するが、フィールド魔法があれば最強。それがサイフレーム。

 

さぁ、私のお城へようこそ。たっぷりと料理してあげるね、金髪の不良さん。

 

「俺のターン、ドロー! 俺は手札からヴェルズカストルを召喚! ヴェルズカストルの効果で、俺はもう一度ヴェルズモンスターを召喚できる! こい、ヴェルズヘリオローブ!」

 

ヴェルズヘリオローブは通常モンスター。ということはレスキューラビットも入っているのか。

でもそんなものは関係ない。今の私にはそんなもの通じない。

 

「おいおい、1ターンでモンスターが二体も立っちまったぞ」

「大丈夫か? あのお嬢ちゃんのフィールドはガラ空きじゃねぇか!」

 

外野の声がはっきりと聞こえる。

後者の声の主は、きっとフィールドが見えていないのだろう。私のフィールドは細いワイヤーで覆われているようなものだというのに。

そんな私の気持ちを知ってか知らずか、対戦相手の金髪が大声を上げる。

 

「ガラ空きのフィールドだが、俺は容赦しねぇ! レベル4のカストルとヘリオローブでオーバーレイ!」

『おっと、早速オピオンが出てきそうだな、こりゃ』

 

二体のモンスターの間に黒い渦が浮かび上がり、そこへ光とかしたカストルとヘリオローブが飛び込んで行く。この世界に来てからはじめてみるエクシーズ召喚。

シンクロ召喚よりもかっこいいかも。

 

「悪魔となった氷の龍よ、その邪悪なる力で世界の全てを手に入れろ! エクシーズ召喚! 現れろ! ランク4、ヴェルズ・オピオン!」

 

ヴェルズ・オピオン、ランク4

攻2550、守1650

「ヴェルズ」と名のついたレベル4モンスター×2

エクシーズ素材を持っているこのカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、お互いにレベル5以上のモンスターを特殊召喚できない。また、1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。デッキから「侵略の」と名のついた魔法・罠カード1枚を手札に加える。

 

やっぱり闇属性のドラゴンデザインは何処と無くかっこいい。レダメしかりヴェルズバハムートしかり。

 

「さぁ行くぜ! 俺はヴェルズオピオンの効果を発動! ORU(オーバーレイユニット)を一つ取り除き……」

「やらせない! 手札からエフェクトヴェーラーの効果発動!」

 

エフェクト・ヴェーラー、レベル1

攻 0、守 0

1、相手メインフェイズにこのカードを手札から墓地へ送り、相手フィールドの効果モンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターの効果をターン終了時まで無効にする。

 

「このターン中、オピオンの効果を無効にする。ORUは一個無駄になったね。残念でした。相手がカードを伏せてないからって、思う存分動けるとは限らないぞっ!」

『清澄、そんなに煽ったらジャッジキルされるぞ』

 

この世界にジャッジはいない。つまり心の底から言いたいことを言えるということ。これはまさしく、快・感!

 

「くそがっ! それならバトルだ! いけ、ヴェルズオピオン!済ました顔した小娘に一発食らわせてやれ!」

 

かかった。

 

「手札からPSYフレームギアβ(ベータ)の効果発動! 手札からβを、デッキからPSYフレームドライバーを特殊召喚する!」

 

周りから歓声が湧く。きっとデッキから特殊召喚したことへの歓声だろう。だが、βの効果はこれで終わらない!

 

「さらにβの効果でヴェルズオピオンを破壊し、バトルフェイズを強制終了させる! またまた残念でした。折角立てたオピオンが水の泡ね」

 

PSYフレームギア・β、チューナー、レベル1

攻 700、守 0

このカードは通常召喚できず、カードの効果でのみ特殊召喚できる。

1、自分フィールドにモンスターが存在せず、相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。手札のこのカードと自分の手札・デッキ・墓地の「PSYフレーム・ドライバー」1体を選んで特殊召喚し、その攻撃モンスターを破壊する。その後、バトルフェイズを終了する。この効果で特殊召喚したモンスターは全てエンドフェイズに除外される。

 

 

再び起き起こる歓声。

エフェクトヴェーラーでオピオンの効果を無効にしていなければ、レベル6の通常モンスターであるPSYフレームドライバーを特殊召喚できなかった。やはりヴェーラーを入れておいて損はない。

 

『盛り上がってんなぁ。でも、サイフレームはこれで終わらないんだよなぁ』

 

そう、サイフレームの真骨頂はここからだ。

 

「サイフレームモンスターが特殊召喚されたことにより、PSYフレームサーキットの効果が発動する!」

 

フィールドに降り立った人型のモンスター、サイフレームドライバーとそれに付き従うように現れたサイフレームギアβの周りを取り囲むようにして、電気の渦が周囲を包み込み。

 

「さぁ、加速して。PSYフレームドライバーにPSYフレームギアβをチューニング! シンクロ召喚!」

「シンクロ召喚だと!? しかも俺のターン中だぞ!?」

「そういうもんなのよ、サイフレームっていうテーマは。さぁもっと加速して! 世界を流れる電流を司りし王よ! 今こそその鎧を纏いて、私の前に姿を現せ! 来て! PSYフレームロード・Z!」

 

光の輪となったβの間を、PSYフレームドライバーが音速で駆け抜ける。目の前で行われた早すぎるシンクロ召喚は、もはや何が起こったのかわからないとしか言えない。

気づいたらそこに、銀の鎧をまとった奴がいた。そんな感じなのだろう。

 

PSYフレームロード・Z(ゼータ)、レベル7

攻2500、守1800

1、1ターンに1度、相手フィールドの特殊召喚された表側攻撃表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターとフィールドのこのカードを次の自分スタンバイフェイズまで除外する。この効果は相手ターンでも発動できる。

2、このカードが墓地に存在する場合、このカード以外の自分の墓地の「PSYフレーム」カード1枚を対象として発動できる。このカードをエクストラデッキに戻し、対象のカードを手札に加える。

 

シンクロ召喚が行われたことで、再び周囲がざわつく。

 

「初代! あの女、シンクロ召喚を使いやがったぞ! まさあいつ、LDSのやつなんじゃーー」

「あの姉ちゃんは昨日引っ越してきたばかりだそうだ。それなら今日はLDSの説明会に捕まって、5時間は無駄にしてるはずだ」

 

説明会で5時間って、何をそんなに説明するんだ。

しかも学習塾とかじゃなくてデュエルの塾だ。ますます説明することなんてないだろうに。

 

目の前の金髪は、ヴェルズオピオンをいとも簡単に簡単に突破されたことに動揺しつつ、カードを一枚セットしてターンエンド。

 

これで私のフィールドはPSYフレームロードZとフィールド魔法のPSYフレームサーキット。手札は3枚。

一方の金髪は伏せカード一枚で手札は3枚。

お互い、ライフは4000のままだ。どっちが優勢かは一目瞭然。

 

「私のターン。ドロー。うーん、お兄さん、全然手応えないや」

『おい清澄。これ以上煽るな。あの金髪のガキが可哀想になってくる』

「あぁ、楽しい! 久しぶりに楽しいカードができてる!」

『お前、ストレス溜まった状態でカードすると、本当に性格が変わるよな』

 

学校ではずっと炎王で戦ってたから、相手を止める手段がほとんどなく、しかもランク4を立てれないという謎の縛り付きで、思う存分やりたいことができなかった。

でも、今は違う! これが私の戦い方! 誰にも邪魔されずに相手を邪魔する。

 

「あぁ、サイコーね。バトルフェイズ! Zでダイレクトアタック! ライトニング・サイキックス!」

「ぐあああっ! くそ!この小娘がっ!」

 

金髪、LP4000ー1500

 

あと一発殴れば終わる。流石にライフ4000だと歯ごたえがない。

もっと時間をかけてゆっくりじっくり封殺したかったのに、これじゃあ歯ごたえがなさすぎる。いくらヴェルズが相手でも、デッキ構築とプレイングによってここまで変わるのか。私が想像してたヴェルズは、安定性が高く、漬け込む隙がないイメージだったのに、これじゃ期待外れだ。

 

「これ以上の快感は、得られそうにないか……次のターンで終わらせるね。カードを一枚セットしてターンエンド」

『どうだ清澄。ヴェルズと戦った感想は』

「もっと強い人とやりたい」

『そう言うなって。ヴェーラー握ってたお前の運がよすぎただけさ。本来ならもっと追い詰められてたはずさ』

 

ヴェルズは確かに強い。オピオンのORUを使用する効果も強力なものだが、隙が多すぎる。その隙をカバーするにがデッキ構築であり、プレイングなのにこのお兄さんは隙をカバーできていない。

 

「早くカードを引いてよ、お兄さん。それともサレンダーする ?」

「舐めるのもいい加減にしろよ、小娘。お前にはヴェルズの真の恐怖ってやつを見せてやる! 俺の、ターン!」

 

勢い良くカードが引かれる。スリーブつけてないのにあんなに乱雑に扱ったら、カードがかわいそうだ。

 

「俺は手札からヴェルズ・マンドラゴを攻撃表示で特殊召喚!」

 

ヴェルズ・マンドラゴ、レベル4

攻1550、守1450

相手フィールド上のモンスターの数が自分フィールド上のモンスターの数より多い場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

 

「さらに俺は、ヴェルズ・ケルキオンを召喚し、効果発動!」

 

ヴェルズ・ケルキオン、レベル4

攻1600、守1550

自分の墓地の「ヴェルズ」と名のついたモンスター1体をゲームから除外する事で、自分の墓地の「ヴェルズ」と名のついたモンスター1体を選択して手札に加える。

「ヴェルズ・ケルキオン」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。また、この効果を適用したターンのメインフェイズ時に1度だけ発動できる。「ヴェルズ」と名のついたモンスター1体を召喚する。このカードが墓地へ送られたターンに1度だけ、「ヴェルズ」と名のついたモンスターを召喚する場合に必要なリリースを1体少なくする事ができる。

 

これはまためんどくさいのが出てきた。これ以上展開されても面倒だから、ここら辺で妨害しますか。

 

「チェーンしてサイフレームロードZの効果発動! ヴェルズマンドラゴを異次元旅行にご招待!」

 

サイフレームロードZはマンドラゴの頭を片手で掴むと、そのまま彼方へと飛び去って行った。

 

「ふん、マンドラゴが消えてもヴェルズはとまらねぇ! ケルキオンの効果で墓地にヘリオローブを除外して墓地のカストルを手札に加える!」

 

これで相手の手札は三枚。これで手札に汎発感染がなければ、ケルキオンの効果でカストルを召喚し、そのままオピオンを立ててデッキからサーチ。持っていたら侵喰感染をサーチ。

ヴェルズの動きはオピオンを守りつつアドを稼ぐ形になりやすいので、オピオンが出れない環境を作らないと、サイフレームとしては苦戦を強いられる。

 

「ケルキオンの効果で、手札からカストルを通常召喚! さらに! 伏せていた永続トラップ、侵略の侵喰感染を発動!」

 

なんでそんなことをする! PSYフレーム相手に不用意に動くのは自殺行為なのに!

 

「手札からPSYフレームギアε(イプシロン)の効果を発動! PSYフレームギアεと墓地のPSYフレームドライバーを特殊召喚して、罠カードの発動を無効にして破壊する!」

 

PSYフレームギア・ε、レベル2

攻1500、守 0

1、自分フィールドにモンスターが存在せず、相手の罠カードが発動した時に発動できる。手札のこのカードと自分の手札・デッキ・墓地の「PSYフレーム・ドライバー」1体を選んで特殊召喚し、その発動を無効にし破壊する。この効果で特殊召喚したモンスターは全てエンドフェイズに除外される。

 

再び周囲から歓声が沸き起こる。どうやらさっきまで寝ていた人たちが起きたらしく、私たちを取り囲む人たちが増えているのは気のせいではないようだ。

 

誰もが興奮をあらわにしている中、白井さんと私は冷静だ。

 

『清澄、レベル8シンクロはどんなの入れてるんだ?』

「Ω、スカーライト、スタダ」

『Ω』

「言われなくても! モンスターが特殊召喚された時、PSYフレーム・サーキットの効果が発動する!」

「くそっ、またシンクロ召喚か!」

 

そんなに悔しそうにするなら、早くサーキットを破壊すればいいのに。

 

「さぁ、加速して! PSYフレームドライバーにPSYフレームギア・εをチューニング! シンクロ召喚!」

 

εが二本の光の輪となり、その真ん中を通り抜けるドライバー。再度行われる音速のシンクロ。

 

「シンクロ召喚! きて、私たちの切り札! 新たな鎧をまといし電流の覇者! PSYフレームロード・Ω!」

 

PSYフレームロード・Ω、レベル8

攻2800、守2200

1、1ターンに1度、自分・相手のメインフェイズに発動できる。相手の手札をランダムに1枚選び、そのカードと表側表示のこのカードを次の自分スタンバイフェイズまで表側表示で除外する。

2、相手スタンバイフェイズに、除外されている自分または相手のカード1枚を対象として発動できる。そのカードを墓地に戻す。

3、このカードが墓地に存在する場合、このカード以外の自分または相手の墓地のカード1枚を対象として発動できる。そのカードと墓地のこのカードをデッキに戻す。

 

PSYフレームの切り札、Ω。その強さから様々なデッキで採用され、九期トップのシンクロモンスターとも言われるこのカードは、向こうの世界でかなりの値段で取引されていた。ついでにいうと、私はボックスで当てた。

 

「だがそんなモンスターが出てきたところで、まだ俺のメインフェイズだ! カストルの召喚時効果で俺は手札からヴェルズヘリオローブを通常召喚!」

 

なるほど、さっき侵喰感染を使用したのはヴェルズヘリオローブをデッキに戻すためか。それならあのタイミングじゃなく、私のターン中にやればよかったのに。もしかして、さっきのドローで手札に来た? それなら納得できる。

 

『清澄、三体のモンスターが並んだぞ』

「まぁ相手がシンクロデッキってわかってるわけだから、オピオン出して来るか、ウロボロスでハンデス狙いに来るでしょうね」

 

金髪のお兄さんは私のことを血走った目で睨みつける。

 

「この俺をここまで追い詰めたんだ。覚悟はできてんだろぉなぁ! 俺は三体のモンスターでオーバーレイ!」

 

もうこの際禁止カード使っていいから、プトレマイオス出していいから少しは私を楽しませて! このまま終わったらさすがに時間を無駄にしたとしか思えなくなる!

 

「こい、最強にして最凶の龍! 破滅の邪龍、ヴェルズ・ウロボロス!」

 

ヴェルズ・ウロボロス、レベル4

攻2750、守1950

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、以下の効果から1つを選択して発動できる。以下の効果はこのカードがフィールド上に表側表示で存在する限りそれぞれ1度しか選択できない。

●相手フィールド上に存在するカード1枚を選択して持ち主の手札に戻す。

●相手の手札をランダムに1枚選んで墓地へ送る。

●相手の墓地に存在するカード1枚を選択してゲームから除外する。

 

出てきちゃった。ヴェルズウロボロス。

OCGの設定だとトリシューラがヴェルズ化した姿という設定のためか、トリシューラの面影を残しつつも恐ろしい何かを内包した、そんな姿の龍だ。

 

「ふふっ、これが俺の切り札! この俺の、ヴェルズの切り札だ!」

「……」

「どうだ! ビビって声も出ねぇか、小娘!」

「……」

『清澄』

 

残念だ。心底残念だ。

私をこんなに呆れさせたのはこの人が初めてだ。

ヴェルズマンドラゴがZとともに除外された時、相手の手札に汎発感染がないのは何と無くわかっている。

それなら心置き無く打たせてもらおう。

 

「トラップカードオープン」

 

ウロボロスが出てきて盛り上がるLDS派を一気に覚めさせるトラップカード。

 

「奈落の落とし穴」

 

直後、ヴェルズウロボロスは、虚空から伸びた腕によって首を掴まれ、そのまま姿を消した。

 

『この世界で奈落使うと、案外シュールな光景になるな』

「そうね。可哀想に、ヴェルズウロボロスさん。また今度会おうね」

 

こうして私と金髪のお兄さんの試合は、次のターンに一斉攻撃をしかけ、私の勝利という形で幕を下ろした。

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様だな、姉ちゃん」

「天城さん、報酬は払ってもらいますからね」

「当然だ。俺は商売人だからな。嘘は絶対つかない!」

 

勝負が終わると、金髪のお兄さんは意図が切れた操り人形のようにパタリと倒れてしまった。きっと最後の奈落の落とし穴が相当ショックだったのだろう。

 

「じゃぁ私はこれで帰ってもいいですか?」

「ありがとな、姉ちゃん。あとはこいつらになんとかさせるから、姉ちゃんは野々宮と一緒に下にーー」

「ちょっと待ってください!」

 

私と天城さんのやりとりに割って入ってきたのは、赤い髪の少年だった。私が最初のここに来た時、反LDS派の一番前にいた人だ。

彼は私の前まで歩いて来ると、突然頭を下げた。

 

「お願いです、俺たちのチームのトップになってください!」

「「「おねしゃっす!!」」」

 

他の不良たちも一斉に頭を下げる。

そんなこといきなり言われても、戸惑うのは私だ。

 

「えっと、私はただの中学生ーー」

「チームの管理は全部俺がやります! だから俺たちのトップに、形式上だけでもいいんで、トップになってください!」

 

そう言って何度も頭を下げる赤髪。

 

『よかったな清澄。一日で不良のトップになるなんて、たいしたやつだよお前は』

 

白井さんは楽しそうにそう言う。

野々宮さんの方を見ても、彼は目を逸らすだけ。天城さんは苦笑いを浮かべてる。

 

「どうしてもトップになっていただけないなら、俺たちの誰かが勝つまで、デュエルしてもらいます!」

 

明らかに年上っぽい赤髪が、女子中学生に敬語を使っている。

 

 

いったいどうしてこうなった!?

私はどこで何を間違えたの!?




突然の展開。作者自身も先がわからないものすごいことになりました!

さて、今回のデッキはPSYフレームとヴェルズ。あまりにひどいプレミ等はないように心がけていますが、少しだけプレミがあるかもしれませんので、その点はご了承ください。

そしてちょっとした裏話。チェインが死んだせいで、ゼンマイハンデス(デッキ戻し)を出そうと思っていたのですが、急遽取りやめとなりました。
このように、禁止制限はどんどん取り入れて行くので、私のメンタルがやられるかもしれません。ご了承ください。

そして、感想、ご指摘、批評、ダメだし、コメント、アイディア、どんなものでもお待ちしております。
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