異世界の少女と絶望のデッキ   作:仕舞獅子舞

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話の展開が浮かんでこないなか、何とか次の話を書けました!
今回は太もも要素皆無です。
でもデュエルはしますよぉ!


侵略の軍勢と邪悪な『怨』

黒咲と共闘して黒スーツのおっさんたちを倒し、ついでに黒咲の股間を蹴り飛ばした私は、走って自分の部屋に入ると、すぐにドアの鍵を閉めた。

 

天城さんからもらった大量のカードサプライとカードパック、そして半額で買ったお弁当。それらの物を全て部屋に持って帰ってこれたのは、奇跡に近い功績だったかもしれない。

特にお弁当が大きい。中学生の私には少し量が少ないようにも思えるけれど、それでも昨日と違う物が食べれるのはありがたい。

 

『そうだ、清澄。天城さんからもらったカードパックってなんだったんだ? ブレイカーズオブシャドウならツインツイスターとか神の通告が入ってるよな』

「2015年のエクストラパックならダンテ、魔サイ、アザトートあたりが欲しいわ」

 

あのパックは一箱しか買えず、他のカード仲間のようにダンテがあるま買うといったことはできなかった。

 

お弁当を電子レンジに入れてから、もらった紙袋の中身を床に広げる。片方の袋にはカードケースや店で使える割引券、さらに高級そうなお菓子まで入っていた。

もう片方にはみたことのない銀色のカードパックと、スリーブに入った神の通告、ギフトカード、成金ゴブリンがそれぞれ一枚ずつ入っている。

 

「銀色のパックってーー」

『店舗大会とかに出るともらえるやつだよな。でも、ちょっと違うっぽいな。表面に何も書かれてねぇ』

「使えるカードがあればいいんだけど、ペンデュラム、エクシーズ、シンクロ、融合関連のカードは期待できないわね」

『うーん、魔封じの芳香、ツインツイスター、怨邪帝あたりがひょっこり出て来てくれると嬉しいな。アーティファクトの魔法、罠でもいいが』

「もし店舗大会でもらえるパックなら、そこらへんは無理ね」

 

元の世界で高額だったカードがこのパックから出てきてくれたら、持っていたデッキの強化にもなるし、お金に困った時に売ることもできる。

3邪神や3幻神も高く買い取ってくれるかもしれないが、そういったカードが伝説のカードとして扱われるこの世界ではパックで当たるはずがない。同様に、エクシーズモンスターの補充も望めない。

 

「ダンテ……ブレイクソード……アルカード」

『なぜランク3の名前だけあげる』

「SR幻影彼岸、作りたかったから……」

 

白井さんがため息を付いた。

 

『とりあえず1パック開けてみようぜ。話はそこからだろ』

 

そうね、と言いながら人パック目を開けにかかる。たまたま近くにハサミがあったので、開封はハサミで行う。

 

「えーっと、スケープゴート、紅蓮の炎壁、トーチゴーレム、ドッペルウォーリアー、ダンディライオンの五枚ね。なんというか、統一性がないわね。シンクロデッキとかアドバンス召喚するデッキには欲しいカードが数枚あるけど」

『全部トークンを作るカードじゃねぇか?』

「うん、ある意味統一性があるわね。トーチゴーレムは嬉しいわ」

『そうだな。他のカードは炎壁以外、結構再録されてるイメージがあるな』

 

トークンを使用するタイプのデッキを強化するのならいいパックと言えるのかもしれないが、数パック適当に買ってそのパックでデッキを組んで戦う、パックデュエルだったら絶対いらないパックと化すだろう。

どれだけ壁を作りたいのよ、このパック。

 

「うーん、パックから掘り出し物が出てくるのは期待できそうにないわ。これじゃあ」

『エクストラのカードも出てこなさそうだもんな』

「うーん、。向こうの世界の環境と戦えるデッキを、この世界のカードプールで作るのは無理そうね」

『だな。でも、そうとも限らないっぽいぞ』

「どういうこと?」

 

電子レンジから温まったお弁当を出しつつ、白井さんに尋ねてみる。

 

『今日、俺が入れ替わった時のこと、覚えてるよな』

「えぇ。もちろん」

 

炎王デッキが奪われたことに対して、白井さんが激怒して体が入れ替わったんだっけ。

 

『じゃぁ、さっき戦った……黒スーツじゃなくて、ヴェルズ使いの方な。あいつのデッキ、覚えてるよな』

「忘れるはずもないわ。メタデッキ使って、気持ち良く勝った試合ね」

『気持ちよかったのか、あれ。……まぁいいや。俺の言いたいことは二つだ。まぁ、結局一つになるんだけどな』

 

私はイヤホンを外し、ケータイをスピーカーモードに切り替える。食事をする時までイヤホンをつける気にはなれない。

 

「二つの言いたいこと?」

 

値段の割りにボリューミーなお弁当を食べながら、白井さんの話を聞く。

 

『一つはLDSの奴らは、他の連中と比べると持ってるカードの種類が多い。昼間お前が戦ったシャドール使いもLDSのやつだと思うが、あいつもきっと使えるカードの種類は多いだろうな』

「ほむほむ」

『食べてる時は相槌打たなくていいぞ。食べることに集中しろ。聞き流してくれても構わない』

 

そんなこと言われたら余計聞き流せなくなる。

 

『それで、二つ目。この世界ではデッキをかけてカードをするクソがいる』

 

白井さんは卑怯なことが嫌いなタイプの人間だ。そんな彼だからこそ、少し怒ったような口調になったのも当然だろう。

 

『本来ならそういう連中には死んでもらいたいんだが、そいつらのおかげでわかったことがある。この世界では、デュエルに何でも賭けることができるのさ』

 

お箸を一回置き、画面上の白井さんを眺める。

 

「それを調べるために、わざと私の体を賭けの対象にしたの?」

『お前の体なのに処女を渡すとか言ったことは謝る。だがそれのおかげでわかったこともあるんだ。叱ってくれてもいいからこれだけは聞いてくれ』

 

彼は少しだけ間を置き、おもむろに口を開いた。

 

『これが本当に言いたいことだ。ようは、LDSの連中を襲ってデュエルすれば、エクストラのカードは手に入るってことさ』

 

つまり不審者、黒咲隼と同じことをするということ。

彼は勝った相手のデッキを奪ったりはしなかったが。

 

「却下よ。カードプールは増やしたいけど、そういう野盗まがいのことはしたくないの」

『……まぁそう言うと思ったよ。実際、俺のカードもある状況で、わざわざリスクとってまでカードを増やす必要はない、か』

 

確かに私のデッキでだけでは、エクストラ不足もあり、前の世界の環境を叩き潰せるだけの力はない。それでも、誰かのカードを奪ってまで勝つつもりはない。

 

「そうだ、白井さん。少し調べて欲しいことがあるの」

『調べて欲しいこと?』

「LDSの社長、赤馬がどこにいるか調べて欲しいの」

『……そいつは、難しそうだな。この体に企業のPCをハックできるだけの力があるかわからないが、とりあえずやってみる』

 

今日はなんとかLDSの人を追い返すことが出来たが、明日も来られたら面倒なことこの上ない。それなら、先手を打てばいい。

こっちからLDSの赤馬零児に仕掛ける。

もし私と黒スーツのおっさんたちとの試合のことが彼に伝わっているなら、絶対にアンチホープとsophiaに興味を示すはずだ。

 

どのみち、いつかは赤馬零児には会えるだろう。

問題は不審者達だ。ユートと黒咲隼。

エクシーズ次元からスタンダードに来たデュエリストであり、融合次元の手先、アカデミアと戦う人たち。

 

彼らの知り合いが私と似ているらしい。

これがとても厄介だ。

ユートならば冷静に物事を判断できるだろうが、黒咲には話が通じなかった。次に会うのがユートでなかったら面倒なことになる。

 

「……そういえば、黒咲さん、私のそっくりさんの名前、言ってくれなかったわね」

 

 

 

 

 

 

舞網市内にはいくつもカードショップがある。その幾つかはLDSとの癒着が強く、その売り上げのいくらかがLDSの方へ流れているらしい。

そんな中、天城のカードショップは少し特殊だ。

 

LDSの方が天城の店にお金を流し、天城の店はLDSに何もしない。

この関係は彼の店の裏についている不良集団の影響と言わざるを得ないだろう。

 

「不良の溜まり場だってわかってんのに客が来るってのはまた、不思議だよなぁ」

 

天城は店の二階の裏にあるスタッフルームで、コーヒーを飲みながらそう呟いた。

 

「一号店の方は溜まり場じゃないから人が来るのはわかるんすけど、こっちに人が来るのは理解できないっすね。まぁ不良って言っても皆根はいいやつだってわかってるんじゃないっすか?」

 

山積みにされた段ボールの上に腰掛け、風船ガムを膨らましながら野々宮が答える。

清澄が店を出てから数分は経っただろう。上の階にいた不良たちは皆、彼女が去るとすぐ、蜘蛛の子を散らすように何処かへとさってしまった。

 

そんな中、二人の不良は天城たちに捕まり、スタッフルームへと押し込まれた。

一人は清澄とデュエルをしていたあの金髪。彼はデュエル後寝てしまったが、そのまま天城に担がれてスタッフルームに投げ込まれた。

もう一人は黒髮の男で、金髪の周りにいた取り巻きの一人だ。彼はエレベーターを降りたところで野々宮に捕まった。

 

「ところで店長、そこのガキ、まだ起きないっすね」

「そうだな。……お前さんももっとリラックスしろよ。緊張は体の毒だぜ」

 

彼はパイプ椅子に座らされた黒髪の方へ、持っていたチョコレートを投げてよこす。

 

「甘いもんでも食え。緊張されたらこっちもやり辛い」

「しょっ、初代! あの、そろそろ俺たちがここにいる理由をーー」

「お前さんの隣のが起きるまで待て。……おっ、ようやくお目覚めか、クソガキ」

 

黒髪同様、パイプ椅子に座った状態で寝ていた彼は、目を覚ますと周りを見渡す。

 

「よっ、クソガキ。早いお目覚めだな。なんか起きそうになかったから叩き起こそうと思ってたんだが」

「……初代、ここは?」

「スタッフルームだ。一応教えてやるが、チームのトップはあの姉ちゃんになったぜ」

 

パイプ椅子を倒し、金髪が立ち上がる。

そんな彼に投げつけられるカードスリーブ。投げたのは段ボールの上に座っていた野々宮だ。

 

「おい野々宮! 店の商品を投げんじゃねぇよ。傷ついたらどうすんだ!」

「いやぁ。流石にガム吐き出して顔に当てんのは可哀想だと思ったんで」

「お前の座ってるダンボールの中のは今週の土曜に売る奴だぞ。ったく。予約品なんだからな。後で傷がないか確認しとけよ。……ビニールの包装にくるまれてるだ? そのビニールに傷がないか確認しとけ! ビニールも商品の一部なんだよ!」

 

持っていたマグカップを投げつけそうになるのを、すんでのところで堪える天城。

 

「まぁいい。候補だったお前を倒した姉ちゃんがトップになったんだ。お前は特に口出しできない。それはわかってんだよな」

「でも、初代! あのアマはチームのメンバーじゃない!」

「チームに入ったんだよ、あいつは」

 

予想通り食いついてきた、と心の中で微笑みながら彼は続ける。

 

「チーム内で一番強いやつがトップに立ったんだ。文句ないだろ。お前を倒したプレイングなんたぁ芸術の粋だぞ。あそこまで華麗に相手を封殺できる奴は滅多にいない」

 

天城の言葉に反論できない金髪。

PSYフレームのテーマとしての特性上、相手を封殺するのは当然のことなのだが、この世界ではあそこまで徹底的に相手を精神的にもロックできるデッキは少ない。

 

「まぁあのお嬢ちゃんがあそこまでとは、僕も予想してなかったっすから、チームの連中にはメシアが現れたように見えたのかもしれないっすね」

「野々宮の言う通りだな。っつうわけで、あの姉ちゃんがトップになった。それは余談だ。俺が言いたいのはなぁ」

 

近くに置かれているデュエルディスクを撫でながら彼は続ける。

 

「てめぇら、俺が作ったチームに手出してただで済むと思うなよ」

 

天城の雰囲気が一変する。

 

「LDSの奴らには前も言ったよな。俺らはてめぇらに手出さない。だからてめぇらも俺らに手出すなって」

「それなのに内部に入り込んでトップの座を取ろうなんて、バカなこと考えたね。クソガキども」

 

野々宮の口調が変わる。

 

「LDSがこそこそチームに入り込んできてることに、僕と店長が気づかないとでも? そう思ってるなら君たちの上の頭はお花畑だなぁ」

 

噛んでいたガムを吐き出し、段ボールの上から飛び降りる。

 

「店長も言ってたけど、ただで済むと思わない方がいいよ」

「また同じようなことされたら面倒だからな。徹底的に潰してやる。ついでに清澄に手出せないようにして、赤馬のやつとの面会権ももらおうか」

 

デュエルディスクを腕につける二人。彼らの姿からは貫禄を感じる。

 

「さぁ構えろクソガキども。初代のデュエルって奴を見せてやる」

「店長、僕はどっちを?」

「黒髪をやれ。俺がヴェルズって奴を殺してやる」

 

「「デュエル!」」

 

金髪と天城のデュエルが始まる。

野々宮は黒髪の首根っこを掴み、スタッフルームから出て行く。デュエルディスクの立体映像の都合上、近距離で二つのデュエルを行うと、モンスターがかぶって気持ち悪いことになるのを避けるためだ。

 

「俺の先行! ガキにはやっちゃいけねぇことってのを教えてあげねぇとな。モンスターをセット、カードを一枚セットしてターンエンド」

 

お互いにライフは4000。

天城の手札は三枚。

 

金髪は自分の手札を見ながら、清澄冷菓とのデュエルを思い出す。彼女はLDSの人間ではないけれどシンクロ召喚を使用した。ごく稀に独学で特殊な召喚方について学び、マスターする人間がいるそうだが、目の前にいるこの男は違う。

彼のデッキは上級モンスターを召喚して攻撃してくる、かなり一般的な戦術をとってくるという話を聞く。

ならば、1ターン目にヴェルズオピオンを立ててレベル5以上のモンスターの特殊召喚を封じてしまえばいい。

 

「俺のターン、ドロー! いくぜ初代! 俺は手札から予想GUYを発動。こい、ヴェルズヘリオローブ!」

 

予想GUY

1、自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動できる。デッキからレベル4以下の通常モンスター1体を特殊召喚する。

 

「ほう、通常モンスターにもヴェルズモンスターがいるのか。以前聞いたことがあるな。エクシーズ召喚をするにはある特定のモンスターが必要になることがあるらしい。……あのオピオンってやつはヴェルズモンスターでしかエクシーズできないってことかい? それなら予想GUYで簡単にデッキからヴェルズモンスターを出して、あと一枚、手札にいるヴェルズを召喚すればヴェルズが2体並んで、オピオンを召喚できるっていう理由で予想GUYを採用しているのか」

 

図星だ。

オピオンのエクシーズ素材となるモンスターには、ヴェルズと名のついたレベル4モンスターという縛りがある。つまりヴェルズデッキしか出せないデッキがヴェルズオピオンというわけだ。

天城の言う通り、ヴェルズオピオンを出すにはフィールドにヴェルズモンスターを揃える必要がある。

 

だが、なぜこの男がエクシーズについてそこまで知っている。

金髪の聞いた話だと、天城はエクシーズについては全く知らないという話だ。ならばなぜだ。

LDSの内部に知り合いがいれば話は別だが、天城の知り合いにエクシーズ使いはいないはずだ。

 

金髪は一旦考えるのを辞める。

今は目の前のデュエルに集中すべきだ。

 

「俺は手札からヴェルズ・ケルキオンを召喚し、オーバーレイ! こい、ヴェルズ・オピオン!」

 

フィールドに現れる黒き竜。その姿をみても天城はひるまない。それどころか笑みすら浮かべている。

 

「闇属性のドラゴンか。効果はデッキからカードをサーチだな?」

 

相手に行動を読まれているとなんだかやり辛いと思いつつ、金髪はORUを一つ使ってデッキから侵略の汎発感染をサーチする。

 

侵略の汎発感染

自分フィールド上の全ての「ヴェルズ」と名のついたモンスターは、このターンこのカード以外の魔法・罠カードの効果を受けない。

 

金髪の手札はこれで5枚。だが手札は事故っていると言っても過言ではない。清澄とのデュエルのときにように、オピオンの効果を止められたら勝ち筋は減っていた。

 

「俺はヴェルズ・オピオンでセットモンスターに攻撃!」

「トラップカード、強制脱出装置だ。ヴェルズ・オピオンをエクストラデッキにもどすぜ」

 

金髪はすかさず汎発感染を使用してオピオンを守り、セットモンスターを破壊した。

 

「オピオンにやられたセットモンスターは、黄泉ガエルだ。こいつは俺のフィールドに魔法、罠カードがない時に、俺のスタンバイフェイズ時、墓地から特殊召喚されるぜ」

「くそっ、面倒なモンスターを……」

「レベル1だからオピオンの効果には引っかからずに特殊召喚できるぜ。相手を攻撃する時はいろいろ考えてから攻撃しろ。初代からのアドバイスだ」

 

強制脱出装置で相手の汎発感染を使用させ、その上で黄泉ガエルを蘇生できる環境を作る。

これが天城のデュエル。

 

「くっ、これで俺はターンエンド!」

「さて、そろそろいくか。俺のターン、ドロー」

 

お互いのライフは4000。

天城の手札は4枚になり、金髪の手札は4枚。

フィールドには金髪のヴェルズオピオンだけ。

 

「スタンバイフェイズ。俺の魔法ゾーンにカードがないから、墓地の黄泉ガエルを特殊召喚するぜ」

 

フィールドに現れる、やけに清々しい顔をしたカエル。

 

「そして黄泉ガエルを生け贄に捧げ、モンスターを生贄召喚する!」

 

再び天に召されるカエル。

 

「来やがれ、闇を司る帝王、邪帝ガイウス!」

 

天へと登っていく黄泉ガエルを踏み潰しながら、黒い鎧を纏った悪魔が天井を突き破って現れる。デュエルディスクの立体映像投影システムにより突き破っているように見えるが、実際の天井には傷一つついていない。

 

「ガイウス、またお前と戦うことになるとは思ってなかったぜ。お互い年だが、若い奴らには負けてらんねぇからな」

 

邪帝ガイウス

攻2400、守1000

1、このカードがアドバンス召喚に成功した場合、フィールドのカード1枚を対象として発動する。そのカードを除外し、除外したカードが闇属性モンスターカードだった場合、相手に1000ダメージを与える。

 

「さぁ、食らってくたばれ! 邪念放出!」

 

ガイウスが右腕を前に突き出し、オピオンへと黒いボールのような物を放つ。それはまっすぐと突き進み、黒き龍に当たると同時に四方へと弾け飛び、オピオンごと虚空へと消えて行った。

 

「なっ、俺のオピオンがこうも簡単に除外されただと!?」

「それだけじゃねぇ。オピオンは闇属性のモンスターだ。よってお前さんのライフに1000のダメージを与える!」

「モンスターを除去した上でダメージを与えるだって!? グワァッ!」

 

金髪、LP4000ー3000

 

「ダメージ受けた時に変な声出すんじゃねぇよ。気持ち悪い。お前は昔の怪獣映画か」

「なんだと……さっきの小娘といい、あんたといい、俺をなめんのもほどほどにしろよ!」

 

激昂する不良に、天城は済ました顔で。

 

「舐められるお前が悪いんだぜ。いいか、デュエルで勝つために必要な物は4つ、カードのパワーと使いこなせる召喚方法の種類、デッキ構築の才能と、プレイングセンスだ。お前には最後の2つが足りてねぇ。そんな相手を警戒する必要なんざ一切ないんだよ」

 

天城は清澄と金髪のデュエルを思い返す。

さっきにデュエルで清澄はフィールド魔法依存の戦い方をしていた。それがわかった時点でフィールド魔法であるPSYフレームサーキットを割りに行くのは当然の選択だ。

なのに金髪はそれをしなかった。ということは、デッキにバックを除去するカードが少ない可能性が高い。

確かに侵略の汎発感染というカードを使えば、オピオンはモンスター効果と戦闘以外では破壊されないが、汎発感染に頼りすぎるとオピオンのエクシーズ素材を使いすぎて、オピオンの強力な効果を無駄にしてしまう。

 

そのためにバック除去カードや魔法を止めるカードは入れておいても無駄にはならない。

 

なのに、おそらくこいつはそれをしていない。

天城は自分の手札をみながら考える。

 

「次の俺のターンはこないな」

「なん、だと?」

「あぁわけは教えてやるよ。だがその前に、ガイウスでダイレクトアタック! 邪弾掃射!」

 

金髪、LP3000ー600

 

「俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ。さぁ、カードを引け」

 

天城の手札は現在1枚。伏せカードは2枚でフィールドに邪帝ガイウスが一体。

一方の金髪の手札は4枚。ライフ差は3400もあり、第三者から見れば天城が優勢なのは一目瞭然だ。

 

「さぁさっさとカードを引けよ。ここでお前が伏せカードを破壊できる速攻魔法を引けなかったらお前の負けだ」

「なっ、なんでそんなことが言えるんだ!」

「いいからさっさと引けよ。早くこのデュエルを終わらせて店の奴らと飲みに行く約束してんだよ」

「くっ、舐めんのもいい加減にしろよ!」

「うるせぇガキだな。さっさと引けよ。大人を待たせんじゃねぇ」

 

やけくそ気味にカードを引く金髪。引いたカードを確認し、その口元に笑みを浮かばせる。

 

「俺が引いたカードは、ヴェルズ・ケルキオン! これでヴェルズバハムートを出してワンターンキル成立っ!」

 

 

 

「まだスタンバイフェイズに入ってねぇだろ、お前」

 

天城の伏せカードが、フィールド上に姿を表す。

 

「永続トラップ、連撃の帝王」

 

相手ターン中のアドバンス召喚を行えるカード。

 

「俺は邪帝ガイウスを生贄に捧げ、怨邪帝ガイウスを生贄召喚する!」

「相手ターン中にアドバンス召喚だと!?」

「怨念を従えし邪悪なる帝王よ、今こそその真の姿をここに顕現せよ。きやがれ! 怨邪帝ガイウス!」

 

怨邪帝ガイウス

攻2800、守1000

このカードはアドバンス召喚したモンスター1体をリリースしてアドバンス召喚できる。

1、このカードがアドバンス召喚に成功した場合、フィールドのカード1枚を対象として発動する。そのカードを除外し、相手に1000ダメージを与える。除外したカードが闇属性モンスターカードだった場合、そのコントローラーの手札・デッキ・エクストラデッキ・墓地から同名カードを全て除外する。このカードが闇属性モンスターをリリースしてアドバンス召喚に成功した場合、その時の効果に以下の効果を加える。

●この効果の対象を2枚にできる。

 

「怨邪帝ガイウスの効果発動! 俺の伏せておいたサイクロンを除外し、お前に1000のダメージを与える!」

「なにっ、バーンダメージだと!?」

「くらいやがれ! 怨念放出!」

 

金髪、LP600ー-400

 

怨邪帝ガイウスや邪帝ガイウスは自身のカードを射出して、相手にダメージを与えることもできる。本来なら相手のバックやモンスターを除去する手段として使用されるカードだが、相手のライフが低い時は除去よりもバーンダメージを優先した方がいい時もある。

 

「まぁ、始まる前から勝敗は決してたけどな」

 

この世界のエクシーズモンスターにはナンバーズのような強力な効果を持つモンスターが少ない。

そのためヴェルズのエクストラデッキはヴェルズモンスターで統一されやすく、中でも強力なオピオンに頼りがちだ。

そうなると帝は負けない。

アイテールを除く帝モンスターには、オピオンのようにレベル5以上のモンスターの特殊召喚を防ぐ効果は刺さらない。

 

「デッキの相性が悪かったな。そのデッキじゃ俺の帝デッキには勝てねぇよ」

「クソッ、だが黄泉ガエルの特殊召喚を防げばあんたのデッキもーー」

 

「何を勘違いしてるんだ? これは俺の持ってる中で1番弱い構築のデッキだぜ?」

 

永続魔法や永続トラップが多い帝王魔法罠と、黄泉ガエルを同時に採用するのはかなりキツイ選択だ。それにもかかわらず天城はガエル帝に連撃の帝王を採用した。それが示すことはすなわち。

 

「お前のデッキは強い。だがお前さんが使ったら俺の1番弱いデッキにも勝てねぇってことさ」

 

相手に圧倒的なまでの敗北感を与える。それが彼の目的。自分が作り上げたチームに手を出した相手への報復。

 

「しばらく山にこもって修行でもしてこい。そんなんじゃ俺どころかあの姉ちゃんにも勝てやしねぇぞ」

 

そう言うと天城は彼を部屋に残したまま、廊下へと出て行った。

 

「さぁこれで終わりだ。ダイレクトアタック」

 

廊下で行われていた野々宮と黒髪のデュエルは、天城が部屋を出るのとほぼ同時に決着がついた。

 

「野々宮」

「あっ店長。僕の方はちょうど終わったところっすよ。当然勝利っす」

「相手のデッキは?」

「ガイアナイトとかいうシンクロモンスターが出てきたっす。そいつに装備魔法を付けて殴ってくるタイプのデッキでしたよ」

 

廊下の隅には目を閉じて横になっている黒髪の姿が。

 

「よっぽど気張ってたんでしょうね。試合が終わった瞬間にこれですよ」

「1号店の手が空いてる奴を連れてこい。こいつが起き次第、LDSの社長との面会のアポ取らせるぞ」

「了解しやした。僕らはどうするんすか?」

「いつもの焼き鳥屋で一杯やろう。俺らにめんどくさい仕事は向いてねぇ。専門家に任せて俺らは遊ぶぞ」

 

デュエルディスクをつけたまま廊下を歩いて行く天城の後ろを、クチャクチャとガムを噛む音を響かせながら野々宮が続く。

 

「それにしてもあのガキ弱かったっす。店長の方はどうでした?」

「カードの強さにプレイヤーが追いつけてなかったな。エクシーズ使いだから少しは楽しめると思ったんだが」

「マジっすかぁ。それなら僕と店長が出てくるまでもなかったかもしれないっすね」

 

苦笑いを浮かべる天城。つまらなそうにガムを噛み続ける野々宮。

 

「やっぱりあのお嬢ちゃん、清澄ちゃんとバトルするしかないのかな」

「おい野々宮。姉ちゃんとはやり合うんじゃねぇ。お前があいつと戦ったら絶対にチームに何かしらの影響が出る」

「いや、冗談ですって。絶対やらないっすよ。清澄ちゃんはトップの候補だったヴェルズ使いを完封した新リーダー。そんなのと元リーダーの俺が戦ったら、どっちかの人気が下がるだけで利点が一切ないじゃないっすか」

 

分かってるならいい、と吐き捨てるように呟いて、彼はデュエルディスクを自分のロッカーに入れる。

 

「着替えろ野々宮。今日は俺が奢ってやる」

「えっいいんすか? 酒頼みますよ?」

「常識の範囲内で頼むわ」

 

そう言いながら天城は懐から一枚の名刺を取り出す。

 

「LDSの社長ねぇ」

 

そこに書かれた名前は、赤馬零児。

 

「久しぶりに全力でデュエルすることになりそうだな、こりゃ」




というわけで、おっさんのデュエルでした!
次回こそは太ももを書きたい! という内なる欲求を秘めている私です。
太もも……食べたい。

余談です。
ブラマジが強化されましたね! 今回のパックのお目当ては、きっと皆同じでしょう。

トラミッド!
えっ、違う? まぁトラミッド目当ての人はごくわずかだと思います。そんなトラミッドのような新しいテーマを、どんどん作中に取り込んで行きたいと思っています。

それではまたお会いしましょう。
コメントやその他諸々、お待ちしております!
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