我輩はレッドである。   作:黒雛

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 †注意事項†
 1、この作品はゲーム、漫画、アニメ等の設定をごちゃ混ぜにした挙句、独自設定や独自解釈が割り込んだ闇鍋小説となっています。

 2、ゲームではできないけど、アニメ・漫画ではできる設定など(例、技を五つ以上覚えたり、ゲームじゃ覚えない技やオリジナル技・コンボの習得。技の同時発動)も採用しています。

 3、独自設定によりトレーナー資格やモンスターボールの購入は十二歳からとなっています。とあるポケモンの変身についても公式と違い、独自の設定となっています。ぼちぼち公式と違うところがありますので、細かいところは「あ、こいつまた勝手な設定してやがるぜ」と生暖かい目でスルーしてください。

 4、原作知識や前世の知識を利用したチートなどの地雷要素が含まれています。

 5、前書きやら後書きに小説とは無関係の話題を書いている話が多々ありますので、この前書きを読んだら、前書き後書きを設定で削除することをおススメします。


 以上の点が受け付けられない方は互いの心の平穏のための必殺技“ブラウザバック”を推奨致します。


prologue 「epilogue」

 

 

 

 ――その日、全国の人々は、誰もが食い入るようにテレビの前に居座っていた。

 

 少年少女は画面に映る人物に憧憬と羨望の眼差しを向け、大人たちは画面に映る人物を認めて自慢気な表情を浮かべている。仕事終わりの社会人は慌てて最寄のカフェやバーに飛び込み、人々の荒波に揉まれながらなんとかテレビを視界に入れることに成功して呼吸を整える。

 

 今日はもっとも騒がしい一日で、もっとも楽しい一日だ。

 誰もが今日という一日を、自分や家族、恋人の誕生日や記念日よりも待ち侘びていた。一秒という僅かな時間が流れる毎にボルテージは上昇していく。

 

 テレビの向こう側――すなわち中継場所は、全国最大手のスタジアムだ。一定時間毎に水や炎、岩場などにステージが変化し、ランダムに天候が変化するギミックが仕掛けられたスタジアムはポケットモンスター――ポケモンの能力以上にポケモンを操るポケモントレーナーの技量こそが勝敗を左右すると言っても過言ではない。

 

 平凡なトレーナーならギミックに対応し切れず見るに堪えない泥試合をお茶の間に届けることになるが、今日に限っては心配無用。

 

 競技に参加するトレーナーはすべて、時代の最先端を進む超一流の実力者たちだ。

 

 十数万の人口を収容する観客席は当然の如く満員になっている。テレビを介さず歴史的瞬間の目撃者となれることに喜びを噛みしめ、まだ大会は開催されていないというのに万感の涙を流している者まで続出していた。

 

 鳴り止まないカメラのフラッシュ。数千以上撮るだろう写真を厳選し、翌日の朝刊には大々的に一面を飾ることになりそうだ。

 すべてのテレビ局がこのスタジアムの中継をしており、アナウンサーは迸るようなスタジアムの熱意を少しでもテレビの前の人々に届けたくて、必死に身振り手振りしながら語りかけている。

 

 既に大会に参加するトレーナーの八割は、緑のステージに集結している。ジョウトリーグ、ホウエンリーグ、シンオウリーグ、イッシュリーグ、カロスリーグを代表する――それぞれ三人、合計十五人のトレーナーたちだ。残すところはカントーリーグを代表する三人のみとなっている。

 

『――本日開催されるポケモンリーグ・チャンピオン決定戦! それぞれのリーグ代表者三人によるチーム戦の参加者もこれで最後となりました! 早速登場していただきましょう! 皆様お待ちかね! カントーリーグの代表者たちの登場です!』

 

 女性の実況が昂揚のまま叫び、入場口から大量のドライアイスが噴き出した。冷たい白煙を切るように入場口から登場した人物を認めるなり――スタジアムに鼓膜をつんざくような女性たちの黄色い叫びが迸り、“GREEN”とピンクのカラーペンで可愛らしく記された団扇が大きく揺れた。

 

『カントーリーグ代表の先陣を切ったのは、グリーン選手! ポケモン研究の第一人者であるオーキド博士の孫であるグリーン選手は、五年前――“始まりの戦い”において、我々に新しいポケモンバトルを見せつけ、強い能力と高レベルによる力技が制した従来のポケモンバトルをぶち壊し、新たなバトル環境を切り開いた先駆者の一人です! その偉業が如何に素晴らしいものか――それは現在のバトル環境が十二分に語っています! 常に相手の二手三手上を行く卓越した頭脳が導き出す高度な戦術と、無駄のない育成により徹底的に鍛えられたポケモンたちが生み出すアンサンブルは、今日も敵を圧倒的実力で蹂躙していくのでしょうか!?』

 

 ツンツンと重力に逆らう茶色の髪に、均整の取れたクールな容姿。涼しげな瞳はその名を象徴するが如く翡翠の輝きを宿していた。

 観客の熱狂や歓声を全身に受けながら顔色一つ変えることなく歩を進め、ステージの上に立つ。

 最強格の中の最強の一角として認識されているグリーンの登場に、ステージにいる全員が挑戦的な眼差しを送る。グリーンは最強格のトレーナーたちの視線を一身に受けながら、やはり観客のソレと同じように気後れすることなく楽しそうにフッと笑い、小さく口角をつり上げた。

 グリーンが集団の中に整列すると、再び入場口からドライアイスが噴き出し、颯爽と登場した人物を見るなり、今度は男たちが野太い感激の雄叫びが轟いた。

 

『続いて登場したのは、ブルー選手! マジシャン顔負けのポーカーフェイスと手練手管なテクニックが生み出す変幻自在の戦術は、まさに希代のトリックスター! 今宵も私たちを夢中にさせるエンタメバトルを見せてくれー!』

 

 グリーンより少し色の濃いこげ茶色の髪はクセ一つなく腰元まで流れている。瞳は青。男の歓声から窺えるように、かなりの美貌と抜群のスタイルを誇っている。本人もソレをしっかり自覚しているらしく己がもっとも華やかに見えるだろうポーズと愛想を振り撒きながらステージの上にたどり着いた。

 既に愛する両親と姉弟同然に育った少年の姿は捜索済みのようで、彼らの元に向けてパチリとウインクを一つ。…………目が合った、と浮き足立つ周辺の男を見て、シスコンな少年がギラリと連中を睨みつけたのはデフォルトだろう。

 

『――そして、最後の一人!! 彼については、もはやなんの説明も口上も不要!!』

 

 この場にいる、この場をテレビ越しに見ている誰もが最後の一人の登場に胸を躍らせた。

 

 おそらく――いや、間違いなく。

 

 この世でもっとも有名なポケモントレーナー。

 この男の名を知らぬ者はポケモントレーナー失格とすら謗りを受けてもおかしくないほどの。

 

 そんな――青年。 

 

 彼は、たくさんのトレーナーの憧憬として君臨する。

 

 

 その存在、まさに――“原点にして頂点”。

 

 

 

『では、登場していただきましょう! “ポケモンマスター”! レッド選手――――ッ!!』

 

 

 

 白煙を切り裂き――彼は登場した。

 

 

 

 

 

 

  


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