我輩はレッドである。   作:黒雛

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ライバルと師匠と貧相なバス ⑧

 

 

 よしよしとラティアスの頭を撫でてやる。

 スケッチブックに記された文章は荒く、ぷっくりと頬を膨らませていた。聞くに堪えない内容を最後まできちんと書き切ってくれたラティアスにご苦労様と声をかける。

 

「お前も……大変だったな」

 

 ボロボロと涙を流し、嗚咽を交えながら心情を吐露したヒンバスに、レッドはそう言った。

 それ以外の言葉はなかった。だって、そうだろう? なんと言えばいいのだ。百の言葉も所詮は気休めに過ぎない。目の前で泣いているヒンバスは、ただ苦しくて泣いているわけじゃない。誰よりも頑張ったから絶望して泣いているのだ。

 だから慰めの言葉は言わない。レッドはあくまで外野なのだ。外野からの声を嫌うレッドが、蚊帳の外から知ったかぶった声をピーピー上げるわけがない。

 だけど、手を差し伸べることはできる。

 

「なあ、お前はこれでいいのか?」

 

 と、問う。

 もちろん良いわけがない。ポケモンリーグ優勝を目指すシロナを想えば、この選択しかヒンバスにはないのだ。ヒンバスは自分の想いより、シロナを優先したのだ。

 ヒンバスの心情を綴ったスケッチブックをシロナに託せば、きっと彼女は泣きながらヒンバスを抱きしめて、ずっと一緒にいようとするだろう。あらゆる他者の言葉を跳ね除け、ともにポケモンリーグに挑戦しようとするだろう。

 だけど、ヒンバスはそれを望まない。シロナの足手まといになるから、一緒にはいられない。

 お互い想い合っているのに、すれ違ってしまっている。

 解決するにはヒンバス自身が強くなるしかない。だが、もうヒンバスはたくさん頑張った。頑張って、無理だった。

 だから、諦めるしかない――そう言いたげに、どうしようもないと目を伏せるヒンバスに、告げる。

 

「少し前に言ったよな。まあ、バカみたいに笑っていたからわからなかったかもしれないけど」

 

 苦笑して、改めて、

 

「だからもう一回言うよ。俺はお前を進化させるつもりだ」

「――――、」

 

 え? と目を見開いた。

 ヒンバスにとってその単語は無縁なものと思い込んでいたのだろう。

 

「ヒンバス、お前には進化の可能性がある。きっと、いや、間違いなく――誰もが度肝を抜かれて腰を抜かしてもおかしくないポケモンに、進化できるんだよ」

 

 ヒンバスは――鳴いた。

 ただし、それは歓喜によるものじゃない。

 戯言を吐く者に向ける嫌悪のものだ。

 

「そうだよな。信じられないよな。もう、なにかを期待するのは怖いよな。……でも、もう一度だけ信じてみないか? 俺はお前の力になりたいんだ」

 

 レッドを睥睨する瞳が困惑に変わり、苦笑する。

 

「別におかしな話じゃないよ。一生懸命頑張っているヤツがいたら、応援したり手を貸してやりたいと思うのは普通だろ?」

『ますたーのふつうは、みんなとちがうよ?』

「貴様、最近ひたすら俺をディスるじゃないか。ん? んんー?」

 

 むに、むに、ぐにーっ。

 

「ヒンバス、お前は一人で頑張りすぎなんだよ。たまには誰かの手を借りてみようぜ? 俺なんて出会う人、ほとんどから手を借りてばかりだし」

 

 おどけて笑う。

 ラティアスについてはナナミとオーキド博士から、バトルについてはシロナから。

 もちろん最初こそ一人でなんとかしようと頑張るが、不可能と判断したらレッドは臆面もなく人の手にすがる。無力を自覚しながら一人で足掻くのはナンセンスだ。そもそも半人前が矜持や自信を持つなんて百年早いとレッドは思っている。

 

「借りたモンは一人前になった後、倍にして返せばいい。カッコつけて一人で背負い込んで苦しみ続けるのは、もうやめちまえ」

 

 ヒンバスとしっかり目を合わせる。

 

「大丈夫だ。俺が必ずお前を進化させる。あの人の隣に立つに相応しい存在にしてみせる。だから、俺を信じろ」

 

 つー、と一筋の涙がこぼれた。

 

 

   ◇◆◇

 

 

「――というわけで、ヒンバス。お前にはこれから毎日こいつを食べてもらう」

 

 レッドはシャカシャカとポロックケースを振るう。ケースには青色のポロックだけが詰められており、ヒンバスは困惑した。

 目の前にいる男は自分に進化の可能性があるといったが、どうしてそれがポロックを食べることに繋がるのだろう。

 

「ん? もしかしてこのポロックを食べることと進化と一体なんの繋がりがあるのか、なーんて思ってる?」

 

 レッドは目聡くそれを悟り、少し驚いた。

 飄々としている人だけど、どうやら他人の感情や雰囲気を把握することに長けているらしい。ちゃんと自分のことを見てくれているという事実に、ヒンバスは少し嬉しくなった。

 

「お前の進化はかなり特別な条件なんだよ。それこそ、誰が思いつくんだよこんなのって思うくらいにな」

 

 本当に誰が考えたのやら、とレッドは苦笑する。

 

「この青いポロックは“うつくしさ”のコンディションを上げるポロックでな、ポケモンコンテストに参加するポケモンブリーダーにはお馴染みの食べ物なんだよ。ヒンバス、お前が進化するためには“うつくしさ”を最大まで上げる必要があるんだ」

 

 ――ポケモンコンテスト。

 それはヒンバスには遠く縁のないものだった。シロナはポケモンコンテストに興味を示さないので無理もないが、そもそも自他ともに認める醜い自分がどうしてポケモンコンテストに出場なんてできようか。

 進化をするのに必要なのが、“うつくしさ”? 醜い自分に求められている正反対のソレにヒンバスは、なんて皮肉なんだろうと目を伏せた。

 

「マジでナナミさんに感謝だな。お前も感謝しとけよ? あの人がポケモンブリーダーじゃなかったら即日ポロックが手に入ることもなかったんだ」

 

 俺を信じろ――そう言ったレッドは早速他人の手を借りに行った。ナナミに事情を話し、彼女が所有するポロックを分けてもらうことに成功した。そしてブリーダーであるナナミも協力してくれることになった。

 

「俺、ポケモンマスターになったら最初にナナミ教を興すわ」

 

 なんて傍迷惑な恩返しだろうか。

 こくこくとラティアスも同意している。止めないんだ。そうなんだ。

 というか、この人もポケモンマスターを目指しているんだ。シロナといいレッドといい、どうして自分に手を差し伸べてくれる人たちはポケモンマスターを夢見るのか。少しだけ落ち込みそうになったけど、進化の可能性を信じて、気持ちを切り替えようとする。

 自分もその歯車の一つになりたい。

 大好きな仲間と大好きなシロナと一緒に戦いたい。

 同じ道を歩きたい。

 レッドの差し出したポロックをパクパクと食べていく。

 

「コンディションについてはナナミさんの方が詳しいから、ナナミさんの言うことをしっかり聞くんだぞ。俺はシロナさんを足止めすることに専念する」

 

 空になったポロックを仕舞い、レッドは立ち上がる。

 

「んじゃ、また明日な」

 

 当たり前のように言ってくれるその言葉がヒンバスの心に温かくとけ込んだ。まるで泉に一石を投じるように、温かな想いが波紋のように広がっていく。

 ちゃんと自分を見てくれている。それがとても嬉しかった。

 踵を返し、去り行くレッドの背を見送り、ヒンバスは大きな声で鳴いた。

 レッドの隣を歩くラティアスがヒンバスの声を受け取り、スケッチブックにペンを走らせる。

 

 ――ありがとう。

 

 

 

   ◇◆◇

 

 

「――なんて言ったは良いものの、どうやってシロナさんを説得しようかね」

 

 眠りこけたラティアスをおんぶして帰途についたレッドは頭を悩ませていた。 シロナには大事なポケモンリーグが控えている。貴重な修行期間を無駄に過ごすわけにはいかない。マサラタウンには広大な草原があり、修行場所にはちょうどいいかもしれないが、彼女は既に別の場所を拠点に定めている。どっちが効率的に修行できるのかは、聞くまでもないだろう。

 ヒンバスのことを話せば留まってくれるだろうが、これはサプライズとして取っておきたい。

 ヒンバスの“うつくしさ”のコンディションがMAXになるまでの間、一体どうやって時間を稼ぐか。

 

「……弱みを握るか?」

 

 恩を返すことを誓いながら、この男、本当に外道である。ポケモンに見せる優しさがどこにも見受けられない。どうして素直にお願いをするという行動ができないのだろうか。

 

「なにかシロナさんの痛いとこをつけるえらいハプニングでも起こってくれたらいいんだけど――――――とは言ったけどさあ」

 

 レッドはわなわなと震えながら、眼前に広がる変わり果てた光景に絶叫した。

 

「なんじゃこりゃああああああーーッ!!?」

 

 やっとたどり着いた我が家は、凄惨の一言に尽きた。

 まるで地震でも起きてしまったのかと疑ってしまうくらいリビングは散らかり放題、家具は横倒しになっていた。足場を確保することすら難しいし、フローリングは濡れている。もちろん地震なんて起きてないし、空き巣だってもう少しお淑やかだ。

 愕然と佇むレッドは、視界の片隅に幽霊を見た。思わず二度見をしてしまい、その幽霊がシロナであることに気づいた。それほどに彼女は憔悴し切っていた。

 

「シロナさん」

 

 これは一体どういうことか。レッドは一度ラティアスを寝室に寝かせてから、呆然と抜け殻の如く佇んでいるシロナに話しかけた。

 

「レッド、くん……」

「はーい」

 

 虚ろな瞳がこっちを見て、少し怖かった。

 

「レッドくん。……っぐ、ぅぅ、うわあああああん。ごめんなさぁぁああい~っ!」

 

 あ、うん。やはり貴様が犯人か。

 声を上げて飛びついてきたシロナに、レッドは冷めた目を向けた。

 

「どうして大人しく待つということができなかったんですかね」

「だって、だって、レッドくんが料理なんてできないってバカにするから、せめて掃除くらいはして、見返してやろうと思って……!」

「すげー、これ掃除した後なんだ。ポケモンと遊びまわったんじゃなくて掃除した後だったんだ。匠もびっくりの劇的ビフォーアフターだよ。あ、経緯の説明はいいよ。イメージできないから」

 

 家事のできない女のあまりにベタな展開にレッドは乾いた笑みを浮かべた。

 料理でダークマターを生み出す展開もそうだが、一体なにをどうすればこんな辛い現実となるのだろうか。知ったら自分も感染してしまいそうなので、聞くのは遠慮させてもらった。

 

「あー、もういいから離れてください。軽く掃除をして夕飯を作るので」

 

 抱き着いているシロナを引き剥がし、やれやれと溜め息をついて掃除に取り掛かる。

 

「あ、あの、なにか手伝い」

「自室でステイ」

「……はい」

 

 しょぼんと項垂れてリビングを出ていくシロナを見送り、レッドは散らかり放題のリビングを見渡す。もう一度、深い溜め息をついた。

 

「ま、引き留める理由をゲットしたし、よしとするか」

 

 汚い、さすが外道汚い。このリビングに負けず劣らずに汚い。

 

 

 

 

 

 

 

 リビングを空き巣もびっくりの如く散らかした罪悪感はもちろんのこと、しかし、一番の理由はやはりヒンバスのことが気がかりなのだろう。レッドがもう少しここに留まりませんか? とお願いしたとき、シロナは迷う素振りを貼り付けながら内心に安堵を隠していた。チラリとオーキド研究所を一瞥したのが、その証拠である。

 

「思った以上に問題だよなぁ」

 

 その日もシロナより少し離れた場所で、ラティアスとピカチュウの訓練をしているレッドは二匹の休憩時間中に、ぼんやりと呟いた。

 木を背に預け、片膝を立てて座っているレッドの膝に頭を乗せて休んでいるラティアスがちょこんと首を傾げた。

 

「シロナさんだよ。……いや、シロナさんたちと言うべきかな」

 

 レッドの見つめる先にはシロナとシロナのポケモンたちの姿がある。彼女たちはレッドたちと比べものにならない過密な特訓を誰一人として弱音を上げず取り組んでいる。取り組んでいるのだが……。

 

「最初はさすがに見抜けなかったけど、今ならわかる。シロナさんも含めて、真面目に取り組んではいるけど、どこか心ここに有らずって感じだ」

 

 たまにオーキド研究所に目を向けたり、ぼんやりと虚空を眺めたり、特訓に打ち込む姿も、その雑念を振り払うようで少しだけ痛々しい。

 

「少ししたら沈静化するかなと思ったけど、悪い意味で予想が裏切られたなぁ。日を増すごとに悪化してるわ」

 

 レッドが呟くと、なにを思ったのかピカチュウはタタタタとルカリオに近づき、スパーリングを開始した。するとどうだろう。圧倒的なレベル差があるはずなのに、そんなの関係ねえと言わんばかりにピカチュウが圧倒していた。

 

「あいつ、マジなんなん」

 

 レッドやラティアスだけじゃなく、誰もがあのハイスペックな超絶チートのピカチュウにドン引きしていた。元々おかしいほどに強かったピカチュウだが、この短時間の訓練でますますぶっ飛び具合に磨きが掛かり、〝かわらわり”を維持してルカリオにプレッシャーをかけながら一気呵成に攻め立てている。

 シロナのポケモン図鑑でピカチュウのレベルを確認したとき、ピカチュウはLv.26であり、ルカリオはLv.63だったはずだが、あの理不尽なバトル模様はなんだろう。レベルという概念にあそこまで喧嘩を売っているポケモンはあのピカチュウくらいしかいまい。

 やがてピカチュウは攻撃を止めて、二、三ほどルカリオに声をかけるとこちらに戻ってくる。

 

「お前、どうしたんだ。いきなり?」

 

 尋ねる。

 少し呆れたようなニュアンスから、

 

「もしかして俺が言ってたことが本当か試してきたのか?」

 

 コクリとピカチュウは頷く。そうじゃないとあっさり迎撃されていたと目が述べていた。ルカリオの動きがさっきより良くなったのは、おそらくピカチュウが発破をかけたせいだろう。

 だけど、根本を解決しないと一過性で終わるだろう。そんな調子じゃポケモンリーグを勝ち抜くことも不可能だ。

 

「ヒンバスの成果を期待するしかないか」

 

 レッドは改めて、シロナたちの想いを無視して自分勝手な期待と物言いを押しつけた連中を恨んだ。確かにヒンバスは戦力として貢献できていなかったのかもしれないが、ヒンバスは、彼女は、シロナたちの心を支えていたのだ。愛されていたのだ。

 仲間に想われ、仲間を想うヒンバスは、外野の思惑により引き剥がされてよい存在ではないのだ。

 

「もし、これでシロナさんが本調子を発揮できずに敗戦したら……」

 

 きっと彼らは期待を裏切ったと落胆するのだろう。上っ面しか知らないくせに知ったかぶりをして勝手に期待して、そして期待と違う結果になれば、裏切ったと心ない言葉を浴びせて勝手に失望していく。

 自分たちにこそ原因があることにすら気づかず。

 なんて胸糞悪い話だ。

 

「面倒くさいよな。好き嫌いっつーのは、他人と共有するモンじゃなくて自分だけのパーソナリティーなんだ。それなのに、ああいう連中は自分の理解できないモノを必死に否定しようとする」

 

 そういうのは自分の中だけで完結させたらいいのに。

 ただのおふざけならば良い。だけど連中は本気で親切心と思い込んでいるから性質が悪い。よろしくない雰囲気がこちらにまで伝染してくるようで、レッドは胸中のむしゃくしゃをラティアスを愛でることによって緩和する。

 

「よーしよしよーし」

 

 ラティアスもシロナたちの鬱屈とした雰囲気に気が滅入っていたのか、いつもより三割増しで甘えてくる。

 ぐいと身を寄せてすりすりと頬ずりをしてくるラティアスをギュッと抱いて頭を撫でていると、ピカチュウの呆れた視線が突き刺さり、ついついレッドは、

 

「来るか?」

 

 威嚇された。

 

 

   ◇◆◇

 

 

 最悪だ。最低だ。なんて様だ。

 日を増すごとに動きが悪化していく現状に、シロナは苛立たしげに頭をかいた。なにをしても物事が上手く運ぶイメージが沸かず、むしゃくしゃしてしまう。ポケモンたちもシロナの感情を過敏に感じ取ってしまったのだろう。こんな雰囲気になるのは初めてだった。

 

「やめましょう。こんな状態で特訓を続けても無意味だわ」

 

 無意味どころか、変なクセがついて逆効果になりかねない。シロナはパンと柏手を打ってポケモンたちにそう言った。

 申し訳なさそうに自分を見てくるポケモンたちの痛ましい姿にシロナは苦笑する。

 

「ごめんなさい。貴方たちが悪いわけじゃないの。変な雰囲気にして、ごめんなさいね」

 

 シロナはポケモンたちを〝モンスターボール”に戻して、近くの岩場に腰を降ろした。肺の空気をすべて吐き出さんばかりの溜め息をついて、悄然と項垂れた。

 

(どうしよう。なにをやっても上手く行く気がしない)

 

 まるで、行けども行けども濃厚に絡みついてくる深い霧の中にいるようだ。気持ちを切り替えようとしても、あの子の姿が脳裏を過ってしまう。

 

(このままじゃポケモンリーグの予選すら勝ち抜けないかも)

 

 いや、勝ち抜けないだろう、とシロナは思う。奇跡が起きても一回戦勝てるかどうか。

 雑念が途切れない。思考が鈍い。心が淀んでいる。

 

 いっそ棄権してしまおうか。

 

 ずっと夢見た憧れのステージも、今はすっかり色褪せていた。自分の大事なポケモンすら護れなかった自分にはポケモンリーグに参加する資格すらないのでは、と思考が悪い方向にどんどん傾倒していく。

 じわりと目尻に涙が浮かぶ。泣いてしまいたい。振り切れた感情のまま泣き叫んでしまいたい。そうすれば少しはすっきりするだろうか。心に溜め込んだ鬱憤はいい加減許容量を超えてしまいそうだ。

 気鬱するシロナの耳に、「よーしよしよし」とレッドの声が届いた。ちらりと目を向けると、ラティアスがレッドに甘えていた。その傍にはピカチュウもいる。

 とても良い雰囲気だ。レッドとラティアスは見せびらかすバカップルの如く甘々な雰囲気を振り撒いており、ピカチュウはやれやれと呆れ気味だが、どこか微笑ましいものを見るような目をしている。

 過去の思い出が重なり合い、シロナは堪らず目を逸らした。

 嫌な女だ、とシロナは自分が嫌いになった。あの光景を見ると元気づけられるどころか、自分は今こんな思いをしているのに、とレッドたちに苛立ちを覚えてしまう。

 ヒステリックに喚いてしまいそうな衝動を、下唇を噛みしめて必死に抑え込む。

 

「んー、よし。今日はもう終わりにしようか」

 

 レッドがラティアスとピカチュウに言った。

 切り上げる時間がだいぶ早いのは、きっと自分のせいだろう。

 レッドはよく空気の読めない発言をするが、数日間寝食をともにしていると、彼はしっかりと空気を読んだ上で、進んで空気を読まない発言をしているのだとわかる。空気を読めない――ではなく空気を読まないのだ。

 しかし相手がこういう黒い感情を抱えているときは空気を読んでこちらを気遣う一面も見せる。

 この少年は確かに善人とはほど遠いが、他人の心の闇を弄繰り回して愉しむ猟奇的な人間ではない。

 

「んじゃ、お疲れ様でーす」

 

 ピカチュウはボールの中に、ラティアスは人化していつも通りレッドにおんぶをしてもらい、シロナの前を通過する。

 遠くなる足音が、不意に止まった。

 

「あ、そうだ。シロナさん」

「……なに?」

 

 飄々とした声音が、少し勘に障った。

 

「もう少しだけ、持ちこたえてください」

「どういうこと?」

 

 気鬱な頭を持ち上げて問いかけるが、既にレッドは背を向けて再び歩き始めていた。

 持ちこたえてください、ですって?

 シロナは笑った。

 

「…………もう、限界よ」

 

 マサラのはずれに、少女のすすり泣く声が溶け込んだ。

 

 

   ◇◆◇

 

 

「もっと力を抜きましょう。自分を美しく見せるのに、余計な力は要らないわ。水の流れに身体を預けて無心で泳ぐの」

 

 オーキド研究所の庭に足を踏み入れると、レッドが頼んだ通り、ナナミがヒンバスの面倒を見ていた。

 

「ちわーす」

「あら、レッドくん。こんにちわ。ラティも」

 

 レッドが声をかけるとナナミはこちらを振り向き、ラティアスの頭を撫でる。すやすやと心地よい夢の中にいるらしいラティアスはますます気持ち良さそうだ。

 

「どんな感じですか?」

「とても良いわよ。ヒンバス自身がとてもやる気になって真面目に取り組んでいるから予想以上に伸びは良いわね。ポロックもちゃんと食べてくれるし、この調子だとあと二日くらいで〝うつくしさ”のコンディションはMAXになるはずよ」

 

 早いな、と思ったがナナミはとても優秀なポケモンコーディネイターだった。彼女からすればコンディションをMAXにすることくらい朝飯前なのだろう。とことんレッドの周りには優秀な人材が多い。

 

「シロナちゃんは大丈夫かしら……」

 

 一転、沈痛な面持ちになりナナミは、すっかり意気投合していた友に思いを馳せた。

 

「やっぱり気づきます?」

「ええ。朝に会ったんだけど、以前に比べると全然元気がなかったわ。大丈夫って聞いても問題ないの一点張り。気丈に振舞う姿が、却って痛ましくて……」

「あの人もそこのヒンバスと一緒で、一人で抱え込むタイプだもんなー。まったく、似たもの同士の主従さんはやたら意地っ張りで厄介だ」

 

 数十分前、去り行くレッドの耳朶に触れた、少女のすすり泣く声が脳裏を過ぎる。

 二人とも大事なもののために偽りの仮面を被り、裏で泣くタイプだ。

 

「そういうレッドくんは、世渡り上手よね」

「楽しいことに全身全霊を尽くすのがモットーですけど、何気に効率厨が入ってますからねー。なにかするときにモタモタするのが好きじゃないんですよ」

 

 無駄な時間や無意味な時間を過ごすのは嫌いじゃない。ただし、ソレはボーっとしたり、くだらないバカ話をしたりするのが好きという話であり、行動を起こしたとき、完了に至るまでの過程でモタつくのは嫌いだ。

 怠けるときは怠ける。

 動くときは動く。

 しっかりメリハリをつけた生活リズムが好きなのだ。

 だからレッドは臆面もなく人の手を借りることができる。

 自分だけじゃどうしようもないのなら、他人の手を率先して借りるのは当たり前のことだ。しどろもどろして不幸を気取り、他人から手を差し伸べてくれるのを待つのは、悲劇に陶酔したヒロインだけで充分だ。

 自分でなんとかできると差し伸べた手を払い、現実逃避をする輩は死ねばいい。

 

「困っているのなら、苦しいのなら、恥も外聞も投げ捨てて助けを乞えってんだ」

 

 やれやれ、とM属性のある連中に肩を竦めると、ナナミがくすくすと笑う。

 

「……?」

「ううん。レッドくんは優しいんだなあって」

「えー」

 

 出し抜けにそんなことを言われて、レッドはかなり戸惑った。自分から「ほら、俺って優しい人だから。博愛主義者だから。神みたいな存在だし」と嘯くのは良いが、他人から人格面を褒められると違和感ばかりで寒気すら感じてしまう。もしラティアスが起きていたら、まだスケッチブックに余計なことを書いていたに違いない。

 

「だって、もしシロナちゃんの抱えているものが決壊したら、レッドくんが受け皿になるということでしょう?」

 

 ぐぬぅ、喋りすぎた。

 

「まあ、確かにそれに近い発言をしましたけど、所詮アレですから。善意の押し売りですから。自分、ご利用は計画的に行う人ですから」

「うふふ。そういうことにしておきましょうか」

 

 ちくせう。

 なにはともあれ、もう少しの辛抱だ。

 

 

 

 

 そして、あっという間に二日が経過した。

 その間も空気は良くなかったが、今日という日のためにとことん耐え凌いだレッドは、錘から解放された気分でるんるんとオーキド研究所に向かっていた。

 

「ちわーす」

「おはよう、レッドくん」

「まーす。で、ヒンバスの方は?」

 

 レッドは早速本題に切り込んだ。

 

「安心して。〝うつくしさ”のコンディションは仕上がっているはずよ」

「おお」

 

 と、レッドは喜びを露わにした。

 

「ほら、あそこ」

 

 ヒンバスは研究所の池から、研究所内にある水槽に移し替えられていた。持ち運びができるくらいの小さな水槽だ。

 

「確かに心なしかきれいになったよーな……」

 

 レッドは水槽に歩み寄り、ジーとヒンバスを眺める。うん、そんなこと言ったけど、よくわからん。

 小首を傾げるレッドを見遣り、ナナミはクスクスと笑い、

 

「ポケモンコンテストに関心のない人にはわからないかもしれないわね。でもコーディネイターたちが見たら一目瞭然なのよ」

「ふーん、そんなもんですかね」

 

 ビフォーの写真を撮っておけばよかったかな。

 

「よくわからんですけど、“うつくしさ”がMAXになったってことでいいんですよね?」

「ええ。コーディネイターのプライドにかけて」

「ありがとうございます、ナナミさん。んじゃ、早速シロナさんに渡してきます」

 

 そう言って、ヒンバスと視線を合わせる。

 

「お前も、いけるよな?」

 

 しかし、ヒンバスは本当に進化できるのか不安があるらしく、少しの躊躇いを見せていた。隣にいるラティアスがヒンバスに話しかけ、そしてもう一度こちらを見る瞳は、しっかりと意思を宿していて。

 

「“ふしぎなアメ”もオッケー。これで準備は万端だ」

 

 よっこらせ、と水槽を持ち上げて、ラティアスの背中に乗る。

 

「待って、レッドくん。私も一緒に行っていいかしら」

「ん? 別にいいですよ」

「ありがと。私もヒンバスが一体どんなポケモンに進化するのか気になるの」

 

 レッドは悪戯小僧のような不敵な笑みを浮かべる。

 

「間違いなく度肝を抜かれると思いますよ。それこそ、ポケモンコーディネイターなら、誰もが欲しがるくらいに」

「うふふ、尚更コーディネイターとしては捨て置けないわね」

 

 そうしてレッド、ナナミ、ラティアス、ヒンバスの四人はシロナのいる場所に歩を進める。

 シロナはやはりというべきか、彼女がいつも特訓に使っているマサラタウンのはずれにいた。

 しかし以前まで真面目に取り組んでいた特訓は見る影をなくし、シロナは岩場に膝を立てて座り込んでいる。膝に顔を押しつけて丸まっている主の姿にヒンバスは泣きそうになっていた。

 

「ナナミさん、ヒンバスをお願いします」

 

 ちょっと自分が話して来ます、とレッドはヒンバスをナナミに預け、シロナの視界に入らないようにしてから歩み寄った。

 

「シロナさん」

 

 やおら顔を上げるシロナは朝よりも酷い顔になっていた。

 

「……なに?」

「特訓はしないんですか?」

「特訓……。特訓かあ……。うん、もういいかなって」

 

 目を伏せたまま、淡々とシロナは言った。

 

「あんなに頑張っていたのに、どうしてですか?」

「…………」

「話してください。もうアンタの格好悪いところは散々見ているので、今更取り繕う必要はねーです」

「酷いわね……」

 

 と、シロナはか細い笑みを浮かべた。

 

「でも、そうね。話したら少しは気が楽になるかしら」

 

 俯いたまま、続ける。

 

「前にレッドくんには話したわよね。私にはもう一匹手持ちのポケモンがいたけど、嫌われちゃったって」

 

 首肯。

 そのシロナの表情がきっかけだったのだから。

 

「私、そのポケモンとは幼い頃から一緒で、家族みたいに育ってきたのよ。そのせいかな? これからもずっと一緒にいるんだって勝手に思い込んで、あの子の気持ちをまるで考えていなかったの。あの子がどれだけ傷ついていたのかも知らずに、呑気なものよね」

 

 自嘲する。

 

「そんな私だからあの子に嫌われちゃったのも無理はないのよ。どれほど後悔したところで手遅れ。このまま一緒にいたらあの子を今以上に傷つけてしまうのは明白だったわ。だからオーキド博士の研究所に預けることにした。……だけど、ダメだった」

 

 その華奢な身体が小さく震えだした。

 

「他に方法はなかったのか、とかもっと上手くやれなかったのか、とか日を追うごとにそんなことが次から次へと思い浮かぶようになって、とても特訓どころじゃなくなったのよ。私には、あの子が必要なのよ」

 

 でも、嫌われてしまった。ぜんぶ、私のせい。

 そう続けて、シロナは再び膝に顔を押しつけた。

 嗚咽が耳朶を打つ。

 

「シロナさん、別にアンタは嫌われたわけじゃないんですよ」

「え?」

 

 涙に濡れた顔を上げるシロナに、レッドはラティアスのスケッチブックを渡した。

 

「これって……」

「実はあの後、オーキド研究所に行って、シロナさんのポケモン――つまりヒンバスに会いに行ったんです。で、このスケッチブックにはラティアスが翻訳したヒンバスの言葉が綴ってあります」

 

 シロナは驚愕に目を見開いた。スケッチブックを見下ろし、キュッと下唇を噛みしめている。

 

「読んでやってください。アンタにあいつが必要なように、あいつにもアンタが必要なんですよ」

 

 シロナはおそるおそるスケッチブックを開いた。

 ぺらりとページをめくる。

 最初は頬を濡らしたままクスリと笑った。彼女とヒンバスの出会いの頃を記した話だ。きっと想い出を探りながら懐かしい気分になったのだろう。

 ぺらり、ぺらり、ぺらり。

 ページをめくる。

 ヒンバスが吐露した痛ましい心情を、シロナは辛そうに読んでいく。頬を伝う涙がスケッチブックにシミを作った。

 涙はまるで止まる気配を見せない。

 むしろページをめくるごとに勢いを増していき、ときおり泣き声をこぼしながら次へとページをめくっていく。

 そして、最後の一言。

 

『ごめんなさい』

 

 シロナの涙腺は完全に決壊した。

 スケッチブックを抱きしめて、シロナは泣きじゃくった。

 どうして貴女が謝るの、どうして貴女がこんなに傷つかないといけないの、と幼子のように泣き喚いた。

 謝らないといけないのは私の方なのに……ごめんなさい、ごめんなさい、とひたすらに懺悔の言葉を繰り返す。

 レッドも、ナナミも、振り切れた感情のまま泣きじゃくるシロナを黙って見ていた。慰めの言葉よりも、今は涙が枯れ果てるまで泣かせてやりたかった。

 そうしてシロナは心ゆくまで泣き続けた。

 レッドがハンカチを渡し、シロナは痕になった涙を拭う。目と頬は涙ですっかりと赤くなっていた。

 

「ありがと、レッドくん」

「どーいたしまして」

「私、決めたわ。ポケモンリーグを辞退しようと思う」

 

 レッドは目を丸くして、その直線的すぎる決意に苦笑する。

 

「あの子に会いたい。あの子に会って、もう一度ちゃんと話をしたい。一緒にいたい。私にとってヒンバスはポケモンリーグよりずっと大事なモノなのよ」

「それじゃヒンバスが納得しないでしょーが。根本的な解決にはなりませんって。あいつはアンタの夢を知っているんだ。アンタが折れたらあいつが納得しない」

「でも! そうしないとあの子はまたいろんな人に傷つけられることになるわ。私が納得できない」

 

 毅然と告げるシロナに、本当に似たもの同士だなあ、と思う。

 

「なら双方が納得できる道を選ぶしかないでしょう。あいつと一緒にポケモンリーグに挑戦して勝ち抜き、周りを実力で黙らせればいい」

「それができないから、こうして苦しんでいるのよ……」

「できます」

 

 レッドははっきりと断言した。

 シロナは一縷の希望に縋るように見上げ、

 

「ヒンバスを進化させればいい」

「進化……?」

「はい。俺の知識がどういうものかシロナさんは知っているでしょう? その知識の一つに、ヒンバスの進化方法があるんですよ」

「ちょ、ちょっと待って。そんな話、聞いたこともないわっ」

 

 きっと、いろいろ調べたのだろう。レベルを上げたり、研究者を尋ね回ったり、旅をする傍らにたくさんの情報を集めたのだろう。

 だけど、現実は残酷で。

 しかし、レッドの知識は現実によるものではない。

 常識は、通用しないのだ。

 

「じゃあ、実際に試してみましょうか」

 

 レッドが右に一歩ずれると、その背後にいたラティアスとナナミが歩いてくる。呆然と二人の名を呼ぶシロナは、ラティアスが背中に乗せている小さな水槽――そのなかにいるヒンバスを認め、大きく驚いていた。

 

「ヒンバス……!」

 

 居ても立ってもいられなくて、シロナはヒンバスの元に駆け寄った。

 

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

 

 再び懺悔の声をもらすシロナに、ヒンバスはすいと身を寄せた。

 ヒンバスも泣いていた。

 レッドは“ふしぎなアメ”を取り出す。

 

「心の準備は万全か?」

 

 ヒンバスはこちらを見て、頷いた。

 シロナの感情を吐き出す姿に思うところがたくさんあったのだろう。レッドにはヒンバスの瞳がとても澄んでいるように見えた。

 手を伸ばし、ヒンバスの口に“ふしぎなアメ”を差し出した。

 こくり、と飲み込む。

 

 そして――神秘の光が産声を上げた。

 

 信じられないと愕然とするシロナの目の前で、彼女の愛するポケモンは古い衣を脱ぎ捨て、新しい存在へ至る。

 細長い魚のような美しいフォルム。

 頭部には二対のカールした触角と特徴的な長いヒレが生えている。尻尾の先端は扇の様な尾ヒレとなっており、細長い下半身部分にある鱗は見る角度によって配色が変わり、七色に煌めいている。

 

「う……そ…………」

「なんて、きれい……」

 

 その美しい姿に、誰もが目と心を奪われた。

 シロナもナナミもレッドも、ポケモンたちも、その美しい姿に思考が空白になり、視線は釘づけとなってしまった。

 凄い。実際目の当たりにすると、なんて美しいポケモンなのだろうか。

 レッドの心は熱くなった。

 

「いつくしみポケモン、ミロカロス。それがこいつの名前です」

「ミロカロス……」

「もっとも美しいポケモンと称されているんですよ」

 

 醜いと蔑まれてきた愛すべきポケモンが、なによりも美しい存在へ至った。

 その感動は、きっとシロナにしかわからない。

 だが、レッドたちですら魅了させたのだ。

 きっと、素晴らしいものなんだろう。

 

「……っ、…………っ!」

 

 枯れ果てたはずの瞳から、またしても大粒の涙があふれる。

 それはミロカロスも同じだった。

 万感の笑みを浮かべて抱擁を交わした二人は、またわんわんと泣きじゃくる。

 そんな二人を祝福するようにレッドたちは笑顔を浮かべていた。

 

 

  

 

  ◇◆◇

 

 

 

「とうとう行くんですね」

「ええ。今まで腑抜けていたぶんを取り戻すためにもね」

 

 自宅の前。見送りに立つレッドに向かい、シロナは微笑んだ。

 昨日までの憂鬱っぷりが嘘のように、その笑顔は満開の花のように美しく、幸福感に満ちていた。

 今日、シロナはマサラタウンを出発する。元々用意していた拠点に戻り、特訓を再開するつもりなのだ。

 

「レッドくん、本当にありがとう。貴方のおかげで私は大切なモノを失わずにすみました。心から感謝しています」

 

 シロナは深々と頭を下げた。彼女の腰には六つの“モンスターボール”が装着されており、そのうちの一つを見遣り、レッドは小さく笑う。

 

「別にいーですよ。こっちもコーチをしてもらった借りがありますから、これでチャラにしましょう」

「いいえ、それだけじゃとても返しきれたことにならないわ。全然足りない」

「律儀ですねー。じゃあサクッとポケモンリーグを優勝してチャンピオンになっておいてください。四年後に俺もサクッとカントーのチャンピオンになりますので」

 

 とても不遜な物言いに、しかしシロナは笑って応えた。

 

「任せて。絶対にチャンピオンになって見せるわ」

「まー、のんびりと期待しときます」

 

 レッドはへらへらと適当に返す。さて、このあとはいつも通りに訓練を開始しようかな、とレッドが別のことを考えていると、

 

「レッドくん」

「はい?」

 

 不意にシロナの顔がとても近くなった。唇と唇が触れ合うような距離になり、頬に柔らかなモノが優しく触れる。

 んんん?

 意表を突かれたレッドは目を丸くして硬直する。

 誰もが見惚れる美貌を朱に染めたシロナの顔が離れていく。

 シロナは凍りついたように停止しているレッドを認め、ぺろりと舌を出して小悪魔チックな笑みを浮かべた。

 

「またね!」

 

 

 

 

   ◇◆◇

 

 

 

 ――その年末。シンオウ地方を中心に、全国に激震が走る。

 弱冠十四歳の少女がポケモンリーグの頂点に登り詰めたのだ。

 カントー地方のチャンピオン、ワタルとならぶ快挙に誰もが熱狂してポケモンバトルを更に熱くさせた。

 

 新チャンピオンの名は――シロナ。

 

 トロフィーを受け取り、拍手大喝采を受ける彼女のそばには――美しい彼女に相応しい美しいポケモンが寄り添っていた。

   

 

 

 

 

 

 

 











 後日談

 シロナの場合

シロナ「や、やっちゃったぁ……(赤面)」
ミロカロス「(ニヤニヤ)」
ガブリアス「(ニヤニヤ)」
グレイシア「(ニヤニヤ)」
トゲキッス「(ニヤニヤ)」
ルカリオ「(ニヤニヤ)」
ミカルゲ「おんみょ~ん」


 レッドの場合

レッド「…………(呆然)」
ラティアス「(ぷくーっ!)」

 てしてしてし! てしてしてし!

ピカチュウ「(これが若さか……)」


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