我輩はレッドである。 作:黒雛
その上位互換であるMETAL BUILDのストフリは微妙だしね(貧乏人の負け惜しみ)。無駄に鋭角的で肩パットがデカすぎる(貧乏人の遠吠え)。つーかおもちゃ屋行ったら中古で六万五千だったんですけど。買えるわけねぇ。でもMETAL BUILDのエールストライクは欲しいなぁ。
さて、今からブルーとポケモンバトルを行うのだが、その前にやることがある。
レッドはベルトに装着している手持ちのポケモンとは別に、バッグに入れておいた“モンスターボール”を取り出した。その数は五つ。開閉ボタンを押して“モンスターボール”に入っているポケモン達を出現させる。
そのポケモン達は、フーディン、バリヤード、スリーパーとエスパータイプで統一されている。
「じゃあ、いつも通り頼めるか?」
レッドの問い掛けに、ポケモン達は首肯して散らばっていく。ブルーを見やれば彼女もエスパータイプのポケモンを複数出して同じ指示を出している。
これはブルーとグリーンの二人と戦うときにいつもやっている作業だ。
サザンドラにバンギラスという、生粋の火力お化けを使用する両者が戦おうものなら周辺地域が爆撃機を受けたかのように凄惨な土地になるのは目に見えている。ポケモン図鑑が記載している情報は嘘偽りではないのだ。
歩く災害ポケモンマジヤバス。
しかもそんな危険なポケモンを危険な人間がパートナーに連れている。この時点でお察しである。自らをポケモン二次小説界の聖人君子、善人、道徳の教本と自負しているレッドは幼馴染のクズっぷりに泣きたくなった。目薬目薬。
基本的に自分本位なクズどもがバトルと周辺への被害を天秤に架けたとき、その秤がどちらに傾くか、なんて説明するまでもないだろう、
そこでオーキド博士が胃痛に顔を歪めながら、こう提案をした。
「――エスパータイプのポケモンにバリアを張ってもらい、その中でバトルをするんじゃ…………げぼらしゃあああっ!(吐血)」
博士は犠牲になったのだ……。
そんなわけで二人の用意したエスパータイプ達はバトル向けの育成を一切施していない、バリアに特化したポケモン達だ。
ポケモンスタジアムには、科学の力ってすげー! なシステムによってフィールドにいるポケモン達の技を防ぐ防衛機能が備わっているためエスパータイプのバリアは少し過剰な気もするが、念には念を。青はただでさえ火力お化けなサザンドラに、“バトンタッチ”で積み技を継承させる悪魔だから。
ポケモン達が、科学装置と同様の性質を持つバリアを展開したのを認めて、レッドはバトルに意識を向ける。
ブルーの戦法は、防御や回避を重点的に、多彩な変化技を使い分けて相手に圧力を掛けて最後にエースで蹂躙するタイプのものだ。
ならば当然、初手は後続の起点作りに壁を張りたいところだろうが、レッドのパーティーには“かわらわり”を覚えているピカチュウがいる。レッドのピカチュウの前には“ひかりのかべ”や“リフレクター”などクッキーにすら劣る柔らかな壁だ。
よって、初手にトゲキッスを出してくることはないだろう。ブルーのトゲキッスは壁張りはもちろんのこと、“でんじは”による妨害、“てんのめぐみ”という特性から、穏やかじゃないですね、な“エアスラッシュ”の連打。“エアスラッシュ”を大量展開してから本人は悠々と“わるだくみ”等を積んでから“バトンタッチ”。そしてやって来る――常時発狂のサザンドラ。
ネオスも思わず共感してしまうほどの仕事内容だ。後続への起点作りもこなせて、自身の起点も作れて、調子が良いようならそのまま“エアスラッシュ”一つで相手パーティを崩壊させる決定力もある。
かつてゲームで猛威を振るった害悪ポケモンそのものだ。キノガッサやビビヨンなどの“きのこのほうし”や“ねむりごな”は“おいかぜ”や“かぜおこし”等を修得したポケモンで胞子や花粉を吹き飛ばして無効化できるが、“でんじは”の処理は難しい。というか“でんじは”+“エアスラッシュ”+“てんのめぐみ”の猛威は、この世界でも顕在している。
そんな打開策を多分に持つオールラウンダーのトゲキッスを初手に出す可能性は低いだろう。どれだけ厄介だろうとレッドのピカチュウと対面すれば、圧倒的なレベル差と技量によって呆気なく散る運命にあるのだから。
相手の手の内を知っているが故に、初手はどうしてもギャンブルになる。そこでトゲキッスを失うのは愚行以外の何物でもない。
――が。
それはあくまでピカチュウが先発として出てきた場合の話であって。
レッドはピカチュウを先発にするつもりはなく、その愚策はピタリとハマってしまうのが現実だから頭を悩ませる。
確かにピカチュウのチカラは非常に魅力的だ。奇襲性も破壊力も高く相手の策を崩すことに長けている(まあ、それはブルーのサザンドラやグリーンのバンギラスも全く同じなのだが)。
しかし、バトルには空気というものがある。
先発で最強のエースを繰り出すのは、意外にも、味方にも圧力を掛けてしまうことがある。意気揚々と仕事を果たして戻って来るエースの活躍を無駄にはしまいと余計に気負ってしまい、それが凡ミスに繋がるパターンもあるのだ。気弱なヒトカゲとハイテンションなルカリオは、その可能性が無いとは言えず、自然とピカチュウはドンと構えて「後ろには自分がいる」と仲間を鼓舞する立場になる。
そう考えるとゲームの知識というのは、ポケモンバトルの一端に過ぎないことを痛感する。
役に立つのは、豊富な技くらいか。
ポケモンを鍛えることも技を鍛えることも策を練ることも、ゲームの知識や経験は殆どに役立たずだ。むしろ固定観念となって足を引っ張るケースが多々あった。豊富な技を自分だけが使えるというのは確かに強みだが、それゆえに取捨選択の幅が広く、また、ゲームで有効だったからといってこちらの世界で通用する保証など何処にもなくて。
ゲームでは襷潰しに有効だった“ステルスロック”をバンギラスが片手で掴んで砲弾投げを始めたときは、あんぐりと間抜けな顔を晒したものだ。亜音速でぶん投げるのだから避けるトレーナーも大変である。
そう――こちらの世界の住人は、未だ技のレパートリーが少ないからこそ、その技を独自に発展させて、一つの技にバリエーションやオリジナリティを持たせており、それを強みにしている。カントー地方のチャンピオン、ドラゴンマスター・ワタルのドラゴン達が使う、自在に軌道を曲げる“はかいこうせん”がその代表だ。
原作知識という――圧倒的なまでの固定観念。
ブルーやグリーンに自身の知識にある技を伝授したのは、この世界と原作知識の擦り合わせを行う利己的な感情も存在した。
その結果、三者共に異なるバトルスタイルを確立したのだが、その正解は、おそらく今年の年末に決まることだろう。
――レッド、グリーン、ブルー。
この三人のうちの誰かがポケモンリーグを制し、四天王及びチャンピオンへの挑戦権を獲得することは旅に出る前から判り切っていることだから。
そう、答えはまだ出ていない。
だからこそ遣り甲斐があるのだけど。
「――と、今はそれどころじゃなかったな……」
かぶりを振るう。
ブルーの手持ちは、六体。レッドが把握しているのは、サザンドラ(発狂エース)にフシギソウ(極道系)、トゲキッス(何でも屋)、マリルリ(良心)の四体。
おそらく、これは固定のはずだ。気になるのは、残りの二体だが、切札に奥の手を重ね合わせて持つような計算高いこの女が、一時の勝利のために手札を晒し切るとは考えにくい。よって、上記の四体をメインに、手の内を悟らせない程度に残りの二体をサポートに回してくるだろう。
肝心な、初手。
先の理由からトゲキッスは無いと考えていい。ならば残りの三体の誰かが先発を切るだろうが、とレッドは腕を組んで、指先でトントンと小気味に二の腕を叩く。
――やっぱマリルリかなァ。
レッドの記憶には、“まもる”やら“どくどく”に“アンコール”等を修得している情報がある。特性は“そうしょく”。
草タイプの技を無効化して攻撃を上昇させるこの特性は初見には滅法強いが、その特性を理解しているレッドにはあまり有効とは言えない。そもそも草タイプの技を修得しているポケモンがいないし。役割を持てないという意味でも、先発はマリルリだとレッドは予想する。
初手に“まもる”で何を出してくるのかを見て、“どくどく”や“アンコール”、押せるなら“ねっとう”で火傷に持っていく。
ならば、先発は決まった。
レッドは“モンスターボール”を握り、バトルフィールドに隣接しているトレーナーの定位置に立つ。
久しぶりの、ガチ戦闘。
自然と心が躍る。不敵な笑みが抑えられない。
気持ちを落ち着かせるために、グリーンにメールを出す。
『俺とブルーは、これからガチバトルをやるけど、ぼっち旅をやってるグリーン君は今も歯ごたえに欠けるバトルをやってるんスか? ウケる』
送信。
よし、落ち着いた。
後は青を狩るだけだ。
正面に立つブルーも準備ができたらしく、トレーナーゾーンに立っている。
ハナダシティで基本無双プレイをやって注目を浴びていた二人の対戦に、自然と観客達の数が増えていく。
四方から来る、期待の視線。
ワクワクと、そんな無邪気な感情が伝わってくる。
うん、これは中々に良い気分だ、とレッドの戦意が上昇する。ポケモンリーグでは、この数十倍の圧力がのしかかってくるのだから楽しみで仕方ない。
「それじゃあ、二人とも、準備はいいかい?」
審判の問いに、言葉を返さず――首肯。
その首肯に審判も頷いて。
手中にある旗を、上げる。
「――バトル、開始ッ!!」
ワッ、と湧き上がる歓声の中で、レッドとブルーは同時に“モンスターボール”を投げた。
◇◆◇
「――げっ」
と、顔を顰めるレッドを一瞥して、ブルーは己の読みが的中したことを確信する。クールに握り拳一つで喜色を露にし、残りは内心でファンファーレ。
ブルーの先発は、サザンドラ。
そして、レッドの先発は、ラティアスだった。
最高の相性だ。
おそらくレッドはマリルリを予想してラティアスを出したのだろう。一見すると、その予想からドラゴンタイプであるラティアスを出すのは愚行に見えるが、レッドのラティアスは非常に器用であり、様々なタイプの技を修得している。
例えば、“10万ボルト”とか。
そもそもマリルリはクロスレンジからミドルレンジを担当しており、対するラティアスはロングレンジからアウトレンジを担当と思いっ切りの正反対。
あちこちを飛び回り、こちらが捕捉しようと“テレポート”によって逃げられるラティアスに、マリルリが攻撃を当てること自体が無謀なのだ。タイプによる相性以前に、高低差や攻撃手段から戦う舞台が違う。
マリルリに対してラティアスを出すと、ブルーはマリルリを捨てるか交代するかを選択しなければならず、どちらに転んでもレッドの優位になる。マリルリを捨てると言うまでもなく、交代を選ぶとレッドとラティアスの以心伝心なコンビネーションで後続のポケモン――その急所を的確に狙ってくる。
レッドとラティアスにとって、交代時の刹那の隙すらも急所を確実に穿つのに十分たり得る。
伊達に、兄妹同然に育ってはいないのだ。
故に、どうしてもラティアスを潰したかった。
サザンドラとピカチュウのバトルへと発展した場合の、一番の懸念がラティアスだから。
ブルーのトゲキッスと同じく、ラティアスはあらゆる場面で万能の働きを示す。レッドと意志疎通を完全に為せる時点で、その万能性はトゲキッスを上回っているのだ。
「行きなさい、サザンドラ!」
ラティアスを引っ込める隙すらも与えず、サザンドラがあっという間に距離を詰める。両腕にある
“かみくだく”。その攻撃をラティアスは“テレポート”で回避する。一瞬にしてサザンドラの後方――ロングレンジに転移するが、その頃にはサザンドラの真ん中の頭部が、その口を大きく開けていた。
体内に眠る絶大なエネルギーを収斂し、口元で束ねる。そのあまりの密度に空間が蜃気楼の如く歪んだ。
そして吐き出した“りゅうのはどう”。切り裂いた――否、抉り抜いた大気が凄絶な悲鳴を上げる。
迸る殺意の衝動。
赤黒く、どこまでも淀んだ衝撃波は見るだけで深淵に眠る闇を彷彿とさせる――原初の恐怖を孕んでいるようだった。
“テレポート”による転移先を予め読まれていたラティアスには、最早為す術一つもなく。
――直撃。
電光掲示板に記されているラティアスの体力があっという間に零になる。
必然だ。
サザンドラのタイプは、悪とドラゴン。繰り出す全ての攻撃に、その二つのタイプが備わっている。
ドラゴンタイプの技を使おうと、悪タイプにも属しているサザンドラの遺伝子によって悪タイプのエネルギーも幾分か混ざり合っているのだ。
ドラゴンタイプの技を使えば、悪タイプも孕んだ技となる。
ならばドラゴンとエスパーの二つのタイプを持っているラティアスが一撃で沈むのも当然というもの。ドラゴンタイプだけならまだしも、悪タイプが弱点のエスパ―タイプも持っているのだから。
気を失って落下するラティアスを、レッドは空かさず“モンスターボール”に戻した。申し訳ない顔をその“モンスターボール”に向けて、意識を切り替えるように目を閉じる。
「――ラ、ラティアス! 戦闘不能!」
明らかに真っ青な顔の審判の判定が、不気味なほどに静まり返ったジムに反響する。
その張り詰めた声を聞いて、サザンドラが雄叫びを上げる。
果たして、ポケモンの鳴き声なのかすらも疑わしい、金属を無理やり引き裂くような調律の外れた奇声。
悪の体現。
恐怖の顕現。
狂気の具現。
殺意の発現。
――悪逆の暴竜。
その名に、相応しく。
動くもの全てを喰らい尽くすまで、その狂気は止まらない。止められない。例え理性があったとしても、止めるつもりすらもない。
なぜなら彼の竜は、本能のままに、破壊の先の果てにある快楽の極致に進んで身を委ねる、暴虐の使徒なのだから。
あれ、これラスボスかな?
ラティアス「くすん。ひどい……」
サザンドラ「グヘヘ、破壊という言葉がポケモンの形をしているのが、この俺サザンドラ様だぜえ!」
本編にも説明しましたが、二つのタイプを持っているポケモンは、技を繰り出すともう片方のタイプのエネルギーも持っています。
ラティアスが“サイコキネシス”を使った場合、エスパータイプ100%に加えて、ドラゴンタイプが20~30%追加となっている仕様です。
二つタイプを持っているなら、こうしても面白いんじゃないかな、と思いました。この場合、ドラゴンタイプに若干の追加ダメージが入りますが、逆に鋼やフェアリーには通りが悪くなったりとより明確にメリハリをつけています。
水タイプの放った“れいとうビーム”は氷タイプの放ったソレより若干水っぽいとか。
でも、そんな考えなくてもいいです。あくまで作者が勝手に作った裏設定のようなものなので。
それはそうと、ウルトラサンをクリアしました。賛否両論ある作品ですけど、そもそも前作を途中で投げた自分には普通に楽しめました(前作はひたすら金策に走って、配信のゴンベにおまもりこばんを持たせてハッピータイムを繰り出したおかげでバトルに疲れるという愚策)。だけど、まさかドレディア無双になるとは思わんかった。“ちょうのまい”からの“メガドレイン”のコンビネーションの暴力よ。
ウルトラサンをクリアしたついでに、現在、殆どストーリーを忘れたプラチナをプライしています。新しい原作キャラを出せないかな、とブラック、ブラック2もプレイする予定。X・Yは……ストーリーはともかく、キャラ名はしっかり覚えているからいいかなぁ。
カエンジシ「行け、フラダリ!!」
カエンジシはフラダリを繰り出した!
フラダリ「ポケモンタチニハキエテモラウ(鳴声)!!(真顔)」
カエンジシ「フラダリ、“だいもんじ”だ!」
フラダリ「!!(真顔)」
大!!
主人公「そんな! ゲッコウガがあっさりと落ちるなんて!」
カエンジシ「当然だ。このポケモン、フラダリの使う“だいもんじ”は特別でね」
主人公「とく……べつ……」
カエンジシ「そう、相性一致に加えて、このフラダリの繰り出す“だいもんじ”は――――顔面一致なのだよ!!」
主人公「が、顔面、一致……だって……? ……? ……?? ……!? いやいやいや、だから何!!?」
フラダリ「(真顔)」
フラダリ「(真顔)」