陸の学生
日本中の学生が海へ出て行く中、陸に残る者もいる。
大概残る理由は、遠く地元を離れ態々船舶暮らしをしたくない、しなくても別に良いのではと考えているか、資金面な都合か、学力不足か、その他か。
近年、この所謂『陸地学生』が学園艦の学生不足、そして学園艦統廃合の原因になっているのでは無いかと一部の世間で言われている中、国や各県は学園艦入学推進制度として入学金・学費の補助や推薦入学を行っている。それでもなお、陸地に残る者が多い。
多くの学生はそんな彼ら彼女らをどう思っているだろうか。
そんな陸地学生の工業高校が、ましてや男子生徒が大半を占める学校がよもや戦車道をするなど、学園艦の戦車道チームの面々はどう見ているだろうか。
乙女の嗜み、戦車道に巻き込まれ、戦車道歴に色んな意味で跡を残した者たちの話である。
舗装の何もされていない林道。その左右には濃い藪と覆い被さる様に枝が伸びた木々が連なる。森の奥は薄暗く、もし誰かと50メートルも離れれば肉眼では確認できないぐらい草木が生い茂っている。
静寂が制する山中。何処からか地響きのような音がうっすら聞こえ始める。風の音とよく似ている。次第にそれは大きさを増し、轟音とともに静寂を突き破る。
鋼の車体に、岩盤にも轟く砲を持つ巨体。文字通り泥のような戦勝で生まれ、今なお戦場で活躍する『戦車』。その戦車の列が土煙と轟音の中を猛烈な速度で駆け抜けていく。
物々しい不陰気。まるで戦場。
しかし、此処は戦場ではない。
先頭を走る戦車上部からは人の上半身が外を覗いていた。その顔、髪、体つきは正しく誰がどう見ても女性。しかも、日本人顔のまだ幼さが残る女子高生。
ここは戦場ではなく試合会場。
「・・・・行ったな」
茂みがカサカサと音を立てて掻き分けられ、黒い墨でカモフラージュされた顔が覗く。
『鶴場君、どうする。出ていい?』
鶴場は肩から掛けていたBC-611と呼ばれるハンディ式無線からの受信に答えた。
「ああ、全部隊。予定通り前進」
その直後、鶴場の声しかしなかった森に、再度エンジン音が響き渡る。そして、藪を掻き分けるように戦車が出てくる。
一番手に出てきたのはM24軽戦車。その後を追うようにM4中戦車が。他の藪からもカモネットや草木で偽装された戦車が続々と出てきた。
が、妙な物までも一緒に。
本来の試合なら参加不可のはずのオープントップの自走砲車両。もはや戦車ですらないジープやトラック、オートバイ。さらにはLVTまで。
何度見ても溜息が出る戦車道チームだと鶴場は思った。
『鶴場君。どうしたの置いてくよ』
「ああ、待ってくれ」
鶴場は慌ててチャーフィーの車体にしがみ付く。そのまま砲塔近くまで這い上がっていった。
道無き道を愚連隊は進んでゆく。
物語の筋も一応脳内で大体組みあがっている。
出そうと思っている戦車もキャラもあらかた決まっていた。
だが、作品名はこの後書きを書く5分前にやっと浮かんだ。