Fate/EXTRA 外伝 ~Distract Order~   作:半裸ーメン

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【重要なお知らせ】
 当作品のタイトルが、他作者様が投稿されたものと同じタイトルを使用していました。
 今回の原因は、ひとえに私の下調べが足りなかったことにあります。
 タイトルを改めまして、今回の対応とさせていただきます。
 今後はこのようなことが二度とないよう邁進いたします。
 この度は、誠に申し訳ございませんでした。

ーーーーーーーーー
 今回は筆、というか指が進みすぎまして。
 本来であればもう少し早く投稿できる予定ではあったのですが、気付いたら12,000文字越えてて、ね……。ビックリしちゃった☆ミ
 あまりにも長すぎて読み辛かったので三分割する予定だったんですけど、マシュが可愛すぎて20,000文字越えたよね。結局四分割する羽目に……トホホ(;´д`)

30分置きに4話連続で投稿します。


#02 Moratorium -残された時間-

 翌日からは、毎日ロマンと一緒にいた気がする。基本的には、ロマンの助手みたいなことをやっていたからだ。

 

 

「いいかい、岸波くん。今回の作戦は2004年ーーー日本の都市、冬木に新たに観測された『観測不能な領域』、"特異点"へレイシフトし、人類絶滅の原因となる要因を修正又は排除することが目的だ。」

 

「しかし、特異点が現在どのような状況になっているのかは誰にも分からない。観測不能、なんて言われるくらいだからね。」

 

「実際に特異点へ人間を送り込んでみないと、観測すること(・・・・・・)さえ不可能なんだ。」

 

「レイシフトした人間も、絶えず情報を観測することで意味消失を防ぐ必要がある。」

 

 

 ロマンは"特異点"について、そう説明した。

 何だか虚数空間と似ていると、直感的にそう感じる。

 

 虚数の中では、あらゆる情報が観測できない。

 故に中へ入る人間を基準として、相対的に観測しなければならないらしい。

 場所や距離すら、測ることは難しいのだ。

 

 

「虚数空間っていうのは何か分からないけれど、よく知っているね。その通り。

 確定した事象が存在しなければ分からない、びっくり箱(ブラックボックス)ってところかな。」

 

 

 バックアップを行ってくれた生徒会のメンバーが優秀なのもあるだろうが、自分は相当危ないことをしていたようだ。

 月の裏側では、それが当たり前になっていたので忘れていた。

 

 

 

 

 必要最低限の知識を叩き込まれた後は、身体能力・魔力量・レイシフト適正などさまざまな検査、基礎的なトレーニングや模擬戦闘(シミュレーション)を朝から晩までやらされた。

 

 検査の結果、自分は『魔術回路(サーキット)』を持っていることが判明した。2030年とは何もかも違うこの時代でも、魔術師(ウィザード)を名乗れることに胸を撫で下ろす。

 しかし、月にいた頃と変わらず自分は魔術師としては凡庸なままだ。回路の質と本数は、"一般人としては"かなり良い方らしいが、当然本職には敵わない。

 それでも数々の経験からか、治癒・強化・回避の三種類の魔術だけは何とか会得することができた。

 それでも、本当に初歩的なものでしかないので、所長からは

「…ふーん。で?」

で終わった。

 

 ーーー余談だが、ムーンセルで使用していた礼装ーーーコードキャストに関しては、まったくうんともすんとも言わなくなっていた。この時代の"魔術"とコードキャストでは、理論としては似通っているのだが触媒とするものが全く異なるので、発動できないのは当たり前なのかもしれない。

 

 

 

 このカルデアの所長、オルガマリーは結構な名門の生まれらしく魔術師としてはかなり優秀なのだそうだ。ついでに言うなら、何故だか自分のことをやたらと目の敵にしてくる。

 

 理由が分からないのでこっそりマシュに聞いてみた。もしかしたら、以前の(・・・)自分が何かやらかしてしまったのかと考えたのだ。

 しかしマシュには

 

「先輩、覚えてないんですか?

 所長の講議の最中に、おもいっきり睡眠を取るという傍若無人な振舞い、しかも最前列中央のどセンターで!」

 

 ……そういえばそうだった。

 その後、ハイキックで三メートルほど飛ばされて医務室へ運ばれたのは良い思い出。

 

 あの日は自分がカルデアへ来て二日目で、絶え間なく眠気が襲ってきていた。

 そこへ、朝の8時から所長のありがたい講義。

 開始五分前には管制室へ行ったにも関わらず、空いている席があそこしかなかった。

 最早不可抗力としか思えない仕打ちだ。

 

 

 但し、レイシフト適正があると判明したときは流石の所長も声をあげた。……主に非難の声だったのはこの際良しとする。

 

「何でアンタみたいな半人前の魔術師に適正があって…ブツブツ」

 

 最後の方は声が小さくてよく聞き取れなかったが、何と言われているのか聞こえなくて良かったとさえ思った。

 正直ホント怖かった。あんなに怒っている人には出会ったことがない程に。一瞬、所長の背後に鬼が見えた気がした。

 

 後からロマンに聞いた話だが、レイシフトとは術者そのもの(・・・・・・)を霊子化し、過去へと送るものだそうだ。

 魂を霊子化して電子世界へハッキングを仕掛ける"霊子ハッカー"なんて呼ばれていた自分___正確には違うのだが___に、適正がない方がおかしいとさえ思う。

 問題は、ーーー所長にはその適正(さいのう)がなかった、という部分だ。

 

 

 カルデアはただでさえ、その存続が危ぶまれている状態らしい。『時計塔』という組織から、再三プレッシャーをかけられていて、今回の作戦で何かわかりやすい結果を残さなければ、即座に解体される可能性すらあるという話だ。

 

 

 人理の存続を目的とした機関でありながらその目的を果たせず、起死回生の作戦に所長である彼女自身が参加できない。

 きっと、そうやって言われているのだろう。そんなストレスに彼女が耐えられるだろうか、いやない(反語)。

 

 そんな人生の瀬戸際とも言える場面で、自分には作戦に参加するための資格さえない、となれば誰だって投げやりになってしまうのは仕方のないことなのかもしれない。

 それでも彼女は、人類存続のためにこの作戦を他の人間に託す、と言ったのだ。その覚悟は、並大抵のものではないだろう。その覚悟に報いるためにも、自分達は結果を出さなければならない。その為に、彼女は他人に強く当たってしまうのだろう。

 

 …まあ、ほとんど八つ当たりに近いのは事実なのだが。主に自分とロマンへの。矢面に立って、誹謗中傷に晒されているのは確かなので、彼女の胃に報いるためにも…何としても成果をあげなければ!でもやめて欲しい。

 

 

 ロマニ・アーキマンという男だが、彼は非常に優秀だ。

 それは誰もがーーーあの所長でさえ認めていることだ。

 しかしながら、数日間彼を見ていて分かったことがある。

 

 彼は、サボり癖が非常に悪いのである。

 

 まぁ、大体が所長の八つ当たりが原因なのだが。

 昨日のことだが、所長に呼ばれて管制室へ向かった自分とロマン。

 管制室では所長が待っていて、現場で些細なミスが三つ以上重なると

 

「貴方達二人がいると気が緩むのよ!」

 

 何て言われて、追い出されるのが最近のオチだ。その後は、二人で自分の部屋へ行きしょぼしょぼと語り合う。おかげで、ロマンのことなら大体わかるようになった。自分も、おいそれと他人に離せないようなことも話してしまっていたりする。

 そうしていると、サボりと見なされてまた怒られる。

 

 無限ループって怖いね。

 

 

 

 

 あの日以来、レフ・ライノールとは会っていない。

 あの時感じた違和感が勘違いであると信じるためには、もう一度会わなければいけない。

 レフとマシュはどうやら行動を共にしているようで、マシュもとほとんど会えていないのが現状である。

 

 

 マシュは作戦時には一番最初に"特異点"へレイシフトし、霊脈を探し出して召喚サークルなるものを設置する、Aチームに所属している。

 Aチームとは、レイシフトを行う48人の中でも成績?上位者10人のことを指す。言ってしまえば上から出来の良い人達のことだ。

 このAチームの役割が"先陣"、すなわち特異点の安全を確保することから最も危険に近い。可能ならば、自分も一緒に行きたい。しかし、凡庸な魔術師でしかない自分には、難しい話であることも理解しているつもりだ。

 また、自分よりも劣る魔術師に心配されても意味がない、なんてことも分かっている。ーーーそれでも、マシュに危ない目には遭って欲しくないのだ。

 

 なんて図々しい人間なんだろう、自分は。出会ってたった数日の、赤の他人と言っても問題ない程度の関係なのに、身勝手に『危ない目に遭って欲しくない』だなんて。

 

 だが、そのくらいが丁度良いのかもしれない、なんて思えた。

 自分にとっては、その程度(・・)でも『諦めなたくない』理由になる。

 

 個性と呼べるようなものは何一つ持たず、ただ諦めが悪く惨めに足掻くことしか出来ない岸波白野(じぶん)という存在。

 故に、決して下を向く(諦める)ことだけはしなかった。それしか出来ないのなら、せめてそれだけは貫こうと。

 

 そういう生き方を、選んでいこう。

 

 月の裏側へ落とされた時も、そうだ。自分はただ諦めたくなくて、あの熱を無意味なものにしたくなくて、ーーーただそれだけで、虚数の海へ飛び込んだ。

 

 不確かな記憶を思い起こしながら、自分の質の悪いところは諦めの悪さではなく、それが周りに伝播することかもしれないと、頭をよぎった。

 

 ただ前を向いて、前へ進む。

 ゆっくりと、しかし止まらずに。

 

 そうしているうちに、仲間が隣を歩いてくれた。

 レオ、ユリウス、凜、ラニ、桜、ジナコ、シンジ、ガトー。

 そして、自分のことを最後まで信じてくれたサーヴァント(パートナー)

 

 

 それを、あの健康管理AIと同じ顔を持つ少女は気味が悪いと言った。

 立てる筈がないのに、立つ意味がないのに、どうしてそこまで諦められないんですか?と、問い掛けられた。

 

 …理由なんて、それこそ単純だ。

 

 この手は、まだ拳を握れる。

 この足は、まだ立ち上がれる。

 この体は、ーーーまだ諦めることは出来ないと訴えている。

 

 それだけで十分ではないか。

 

 やれるだけのことはやろう。自分に何が出来るかなんて、難しいことを考える前に。

 彼女(マシュ)に、してあげられることをしてあげたい。

 

 そんな気持ちを胸にーーー作戦前日(さいしゅうび)を迎えた。




今回はかなり短めのものになりました。

最初は#2ってことで書き始めたはいいものの、マシュパートのボリュームが半端なくなってしまい、必死に考えてキリのいいところで切ってます。

これを読んだあなた、そのままの流れで全部読んで頂けると作者は泣いて喜びます。

では、今回はこのあたりで失礼します。


剣のクッキーが全然落ちない。
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