Fate/EXTRA 外伝 ~Distract Order~ 作:半裸ーメン
基本的に投稿者の妄想と願望を押し付けておりますので、もしかしたら皆様には会わない可能性がございます。
気分が悪くなられるなどの事象が発生したとしても、当作品作者は一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。
「なるほど、道に迷っていた訳ですね」
一言、バッサリと切り捨てられた。
「切り捨てた、なんて物騒な。先輩の話をまとめただけです」
違うよ?全然違うよ?
迷っていたのではなく、そう!探索してた!カルデアという迷宮を、探索していたんだよ!
「……つまり、道に迷っているのではないと。そう言いたいのですね、先輩は」
うむ、その通りである。
「……そうですか。では、その探索とやらを続けて下さい。邪魔してしまってすみませんでした失礼します」
待ってくださいすみません嘘です!嘘吐きました!道に迷っているんです助けてください!
「……ふぅ。最初から素直にそう言えば良いんです」
仰る通りでございます。
「で、どちらへ向かっていたんですか?」
ロマンの部屋。
「ほとんど反対方向じゃないですか……。ここは研究区画の中でも『保管区』という、比較的警備が厳重な区画です。確かに、慣れていなければ迷うこともありますが……どうしてそんなに方向オンチなのに、変な見栄を張ろうとするんですか」
だって方向オンチじゃないし。
まだそんなこと言うんですか、なんてマシュは呆れ顔で言うけれど。
ーーーそれに、マシュにこれ以上格好悪いところを見せたくなかった。
すると彼女は一瞬驚いた顔をして、
「ーーーそんなことぐらいで見捨てる訳ないじゃないですか」
そう言って、小さく微笑んだ。
それを見て、自分に失望はしないと語ってくれた××××のことを思い出しーーー
「……大体そんなことで見捨てるくらいなら、初めから助けたりしません。って聞いてるんですか、先輩っ」
マシュの声で我に返った。少しボーッとしていたらしい。
ーーー懐かしい夢を、垣間見た気がした。
彼女の顔を見ると、頬を膨らませて唇を尖らせていた。
……何それ、可愛い。つい、にやけてしまいそうになるが、何とか堪える。ここでにやけてしまえば、マシュは容赦なくここに自分を置いて立ち去ってしまうだろう。我慢しなければ。
……ごめん、何だっけ?
「もう、何でもないです。それよりも、先輩はどうしたいんですか?」
ちょっと拗ねてる。そこがまた可愛いな、なんて感じさせるのは彼女の魅力に違いない。
しかし、ただロマンの部屋へ案内してもらうのも勿体ないのではないか?ここで会ったのも何かの縁だ、折角なので。
ーーー自分に、カルデアの案内をしてくれないか。メガネの似合う可愛らしいお嬢さん。
はくの の ほめごろし!
「かっ可愛……!?ほ、褒めても何も出ませんよ?」
こうかは ばつぐんだ!
実際、自分としては事実を言ったまでのこと。最近はゆっくりと話も出来なかったので、ちょうどいい機会じゃないか。
「……褒めても何も出ませんが、それくらいならお安いご用です。タイタニック号に乗ったつもりでいて下さい!」
よく分からないが、それって沈むんじゃ?とも思ったが、野暮なことなので言うまい。
兎にも角にも、ここにマシュとの休日が始まったのだった。
「そういえば、先輩は何故ドクターの部屋へ向かっていたのですか?」
マシュにそう聞かれたので、ロマンにカルデアを案内してもらうと約束したことや、その後に待っていた
「二人で所長室の前で所長に怒られていた時ですか。所長室の前で呑気に話し込むなんて、先輩もドクターも不用意過ぎます。」
あ、あれはロマンが悪いのであって、自分に非はないんじゃないかな?
「いいえ、先輩もです。むしろ、先輩の方が深刻です。」
そこまで!?
「先輩はこう、見てるこっちがハラハラすると言いますか、危なっかしくて見ていられないと言いますか、ともかく心配なんです!」
そうだったのか……。そこまで強く言われると、否定し辛い。
ん?何かその台詞、以前にも言われたことあるような?
ブロッサム先生……うっ、頭が……!
「それにしても、ドクターとそんな約束をーーーということは、私はドクターの代わり……?」
お、自分が思い出してはいけないもの思い出しそうになっている間に、今度はマシュが頭を抱えている。
どうしたの?顔色悪いけど。
「いえ、何でもないんです。……自分が只の代わりだと思うと、あんなに喜んでいたのが恥ずかしくて……。」
代わりがどうとか聞こえたが、何の話だろう。ともかく落ち込んでいるようなので、一応のフォローは入れておく。
今日はマシュと一緒にいられて、嬉しいよ。
「! ……その、ありがとう……ご、ざいますっ!精一杯、頑張りますっ!」
うん。とりあえずは元気になってくれたみたいだ。でも、頑張るって何を?
さっきまで落ち込んでいたのに、今は顔を赤らめて張り切っている。最初こそクール系かと思っていたが、あまり顔に出ないだけで感情豊かな子だ。
心を許した相手には、懐いてくれるようだ。自分が特別なのかはまだ分からないが、この関係は守りたいと思う。せめて自分が、どんな存在なのかハッキリするまでは。
「フォーウ!」
マシュと二人で歩いていたところに、突然の奇襲を受けた。
「ひゃっ……!?」
マシュ!?大丈夫!?
白い
……何だこの生き物は。如何とも形容し難い姿。全身が真っ白な毛で覆われていて、とてもあったかそうである。誰かのペットだろうか?
「……もう、ビックリさせないで下さい。フォウさん」
キュゥ~ン、なんて可愛らしく鳴く謎の生物X。
ーーーフォウサン?何だかハチミツが好きそうな名前だなぁ。
「先輩、それは危なーーーちょっとフォウさん、暴れるのは止めて下さい。」
どうやら、この白いモフモフがその"フォウさん"らしい。
「先輩は会うのは初めてでしたね。このリスっぽい生物はフォウさんと言います。いろいろと謎多き存在ですが、このカルデアを自由に散歩する特権生物です。」
……フォウさん、リスなの?
「えぇ。リスに似てるじゃないですか。」
似てると言われればそんな気がするし、似てないと言われればそんな気もする。もしかして、新種なんじゃないか?
リスかどうかはともかく、フォウは随分とマシュに懐かれている。肩に乗せている姿は何だか様になっていた。魔法少女とその使い魔みたいなイメージ。
「フォウさん、こちらは岸波白野先輩です。人畜無害を擬人化したような人で、とてもいい人です。」
マシュが、フォウに自分のことを紹介している。
そんな風に思われていたのか。
よく言われます。
「私の頭に飛び乗り、そこから肩へ降りていくのがフォウさんのマイブームのようです。」
ほう、羨ましい限りだ。
「羨ましい?何がです?」
……いやいや、こちらの話です。
自分もフォウとコミュニケーションを取ってみようと思い、試しに手を差し出してみた。
するとフォウは、ちょんちょんと前足(?)で手をつつき、危険がないと判断したのか、手から腕を伝って自分の肩にものってくれた。
毛並みが綺麗で、見た通りモフモフしていて気持ちいい。寒い夜なんかはフォウを抱いて寝たら暖かそうだ。
「驚きです……!フォウさんが私以外の人にこんな懐くなんて。先輩のこと、気に入ったみたいです。」
そうなの?
だとしたら、光栄だ。
「フォッフォフォーウ、フォ、フォーウ♪」
今度は自分、マシュ、フォウの3人で歩く。
マシュはフォウのことについて、いろいろ話してくれた。
「最初、勝手にカルデアに住み着いたフォウさんは、目撃者の少なさから軽い心霊現象にされていました。その存在が確認された時は、何とかして捕まえようとする動きもあったみたいですけど……フォウさん、すばしっこいので全然捕まらなくて。
そのうち皆さんが慣れてきて、放置するようになったんです。」
要は根負けしたのか。恐るべしフォウ。
私のカルデアに何勝手に住み着いてるのよー!なんて、所長が騒ぎそうなものだが。
「理由は分かりませんが、所長はフォウさんのことが苦手みたいです。
おそらく所長がフォウさんを捕まえようとした際に、フォウさんが何かしたんだろうとは思いますけど。それ以来、所長はフォウさんが近付くだけで怖がるようになってしまいました。
そのことをフォウさんに聞いても、誤魔化してどこかへ行ってしまうんです。」
確かにフォウには不思議な愛嬌がある。それと同時に、何故だかこちらの言葉を理解しているようなーーーん?
"そのことをフォウさんに聞いても"ってことは……。
えっ、マシュはフォウと会話も出来るの!?
「会話、と言えるかは微妙なラインですけど。何となく伝えたいことは分かります。
カルデアで、私が1番フォウさんといる時間が長いですから。自然とお世話するのも私になっていますし。」
「フォウフォーウ、キューン!」
自分の肩に乗っているフォウが、弾む声で鳴いた。
「ほら、フォウさんもこう言ってます。」
いや分からないよ!?
どうやらマシュは、少し天然なのかもしれない。
マシュの案内は実に分かりやすく、要点を押さえていた。
但し、自分が道を覚えられるのと、案内が的確なのは何の関係もないようだった。また迷子になる気配が濃厚過ぎて、誰かにカルデアの地図を作って欲しくなった。
「増築と改築を繰り返してきましたので、複雑な構造になってしまっているのは確かです。
ですが、それを考慮してももう少し先輩には、覚えようとする努力が必要かと。」
「フォウフォーウ、アフォーウ」
あれ?何か、マシュが冷たい?
何だかフォウにも若干バカにされた気がするのは何故だろう。
「冷たくありません。一人ではまた迷子になってしまう可能性が高いのは、紛れもなく事実ですから。」
こ、言葉が痛い……。彼女にここまで言わせてしまう、自分の不甲斐なさが恨めしい……!
「ーーーですので、次からは一人ではなく私かドクターを呼んで下さい。」
っ。
不意打ちとは卑怯なり、そんな顔で言われてしまっては、こちらもーーー
ーーー自分のために、毎日味噌汁を作ってくれないか?
ーーーつい、ブッ飛んだことを口走ってしまったではないか。
言ったそばから、自分の顔が真っ赤になっているのが分かるくらい、熱を帯びてくる。不可抗力だ、こんなもの。
今すぐに走って何処かへ逃げたいが、そんなことをすればまた迷子になり要らぬ心配をかけてしまうので、脚が動かないよう我慢するしかない。
マシュはどんな顔をしているだろうか。変なことを言った自分を、どんな目で見ているだろうか。先程の言葉に対して、何も言ってはくれない。
チラッと彼女の盗み見るとーーー
ーーーキョトンとしていた。
まるで、何を言っているのか分からないという感じで。
へ?
ま、まさか……あの~、キリエライトさん?
「……どうしてそこで、そんな他人行儀な呼び方なんですか。
いえ、あの、先輩のお言葉の意味を考えていたのですが、中々思い出せなくて……。」
……。
「いや知っているんですよ?喉の辺りまで、こう、出かかってはいるのですが。
う~ん、ニホンの勉強をしたときに、確か……。単純に、毎日お味噌汁を作るのではなく、何かの暗喩だった気が……。」
…………。
「あぁ~先輩!何もそんな真顔にならなくても~!」
………………。
これが、自分のサーヴァントに言われた『鈍い』ってことなのか。ちょっと違う気もするが。
思ったよりも、衝撃があった。自分だけ舞い上がっていたかのような気恥ずかしさ。こんなものを、自分は味合わせていたのかと猛省する。
もっと気を配らないといけないな、と思う。
顔の熱が、一気に引いていく感覚がある。
あっという間に立場が逆転した。
今度はマシュが慌てていて、自分は驚くほど冷静だ。
一生懸命自分の言った言葉の意味を思い出そうとしているのだろう。挙動がどんどん怪しくなってきている。
そろそろ、冗談だったとこの話を切り上げなければ。後でからかわれるに違いない、何て考えていると。
突然、マシュが頭をわしゃわしゃと乱し始めた!
驚いて、声も出ない。そこまで考え詰めていたのか……。
今度はピタリと止まったかと思えば、落ち着いたのか全く動かなくなってしまうマシュ。
数秒前まで綺麗に整っていた髪は、見るも無惨な状態になってしまっていた。
……マシュさん?
恐る恐る声をかける。自分が負荷を掛けすぎて、ついに壊れてしまったのか?
「ーーー思い出しました。」
えっ何を?
「やっと、思い出せました!先輩の言葉の意味が!」
あ、あぁ。あれは実は冗談で……。
「あれは確か、日本人の男性が女性を口説くときの常套句で、その意味はーーー」
そこまで言って、またまたマシュは固まってしまった。
「ーーーその、意味は。
"自分と結婚して、毎朝味噌汁を作って欲しい"……。」
次の瞬間、マシュの顔が茹でダコのようになり、ボンッ!という、およそ人体から発生してはいけない音と共にーーー気絶した。
どう?可愛かった?
まだまだこんなもんじゃあ、おわんねーぜ!