「タイキくん、そこを狙って!」
「っっ!はい!」
タイキはフミナ先輩にレクチャーをしてもらいながらセカイくんと勝負をしている。
セカイくんたち3人は、全国大会で優勝したこともありやはりと言うべきかものすごく強い。
当の私はユウマくんにガンプラの改造を手伝ってもらっている。この前のメイジン杯でグランプリを取ったビルダーに手伝ってもらえるほど心強いことはない。
「どうかな、私のガンプラ…」
私とユウマくんはガンプラ作りの工具が散らかっている机の上に立つ私のガンプラ、ガンダムクアンタドライバーを見つめている。
「そうだな…完成度は凄く高いと思う、実際セカイやホシノ先輩ともいい勝負をしているしベースのダブルオークアンタの潜在能力もある」
「そ、そうかな…」
私は自分のガンプラを褒められ少しにやけてしまう。
「でも、いままでのバトルで思ったのは最終的にトランザムに頼ってしまうということだな。トランザム状態のシノのクアンタははっきり言って強すぎる。トランザム時の総合的な性能は僕たちのガンプラの中で一番だろう。だけどトランザムは無限に使えるわけじゃない。それに少しとはいえトランザム終了後には性能も落ちる。だから通常時の性能強化だな」
「はい!」
ユウマくんにそう言われさっそくガンプラの製作に取りかかる。
今回改造するのはおもに足回りだ。今の機動力でも平均よりは確実に出ているがさらに上を目指すと言うのが私とユウマくんの見解だ。
「くっ…!」
バトルシステムの方からはタイキはの唸り声が聞こえてくる。
普段タイキが使っている私のクアンタは今改造中だから素組みのガンダムF91を使ってセカイくんのカミキバーニングガンダムと勝負している。
「甘いぜタイキ!そこだっ!」
カミキバーニングガンダムの鉄拳がF91に直撃し大きく弾き飛ばされる。
「そこ、ライフルで迎撃して!」
フミナ先輩にアドバイスをもらいタイキはすぐさまF91のビームライフルを撃つ。しかしそれをカミキバーニングは何事もないようにひらりとかわす。
いけない、私もぼーっとしていてはいけない。このクアンタをさらに強く、最強のガンプラに…
ガンプラバトル部、チームトライファイターズの面々に特訓をしてもらうこと二時間ほど、タイキは凄い量の汗をかき、私も少し手が震えてきている。
「がんばれシノ、もう少しで完成だ」
「はっ、はい…!」
ユウマくんに手伝い励まされながら私は作業を続ける。
「タイキくん、大丈夫?そろそろ休憩したほうが…」
「このまま、続けさせて下さい…もう少しで、セカイのガンプラに会心の一撃を撃てそうなんです…」
「で、でも…」
「よっしゃ!タイキ、もう一回だ!」
バトルシステムの方でも再びバトルが始まる。
私も早くガンプラを完成させないと…!
「シノ、そこのニッパーを取ってくれ」
「はい、ヤスリを取ってもらってもいい?」
「わかった、これだな」
「ありがとう」
作業とバトルが続くこと一時間後、
「で、出来た…!」
「勝ったっ…!」
私とタイキの声が同時に響き3人からお疲れ様と声を掛けられる。
「「ありがとう、ございました…」」
二人同時にフミナ先輩、セカイくん、ユウマくんにお礼を言う。
「ううん、ほんとによく頑張ったね」
「ああ!ナイスファイトだったぜ!」
「ここまでのガンプラならそうそう負けないだろう」
「はい!本当に、ありがとうございました!」
ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー
セカイくんやタイキが帰ってから一時間後、私はガンプラ工具の片付けをしたあとお母さんに頼まれて自宅である小さな電気店の店番をしていた。
レジの前でポケットからこっそりガンプラを取り出す。
「私の、新しい、クアンタドライバー…」
ユウマくんに手伝ってもらい完成した私のガンプラを見つめていると店のドアが開き取り付けられているベルが鳴った。
私はとっさにガンプラをポケットにしまい接客をする。
「いらっしゃいませ」
入ってきたのは私と同じぐらいの年の女の子だった。やや銀色がかった白い髪を腰の少し手前までストレートに下ろしているなんとも美人な人だった。
「何をお探しですか?」
「…。」
白髪の少女は答えることなくぼーっとしている。私が彼女の見つめる視線の先を見るとそこにはガンプラバトルをするための機械、バトルシステムがあった。
「もしかして…ガンプラバトルしたいの?」
「え…いいの?」
彼女の目が変わり期待の眼差しを私に向ける。
「うーん、店番中だけど…この時間帯だしお客さんも来ないと思うから…やろっか!」
「うん!」
すると彼女は一目散にバトルシステムの前に向かい身に付けていたポーチの中からGPベースとガンプラを取り出した。
(私に、このクアンタが扱えるかな…)
そんなことを思いつつ私も引き出しにしまってあったGPベースを持ってバトルシステムの前に移動する。
「それじゃ、始めよっか」
「うん!」
<Ganpra battle conbat mode, start up,model damage level,set to C. Please set your GP bace.>
私たちはGPベースをそれぞれセットしガンプラとファイターの情報がシステムに読み込まれる。
<Biginning, Pravsky particular dispursol .Field 1,Space. Please set your Ganpra.>
私たちはそれぞれガンプラを台座にセットし、ガンプラにプラフスキー粒子が染み込んでいく。
<Battle start.>
「マナタ・シノ、ガンダムクアンタドライバー、行きます!」
カタパルトからクアンタドライバーが飛び出し精密に再現されたソロモン宙域を駆け抜ける。
すると前方からアラームが鳴りカメラを拡大する。
「白い…シナンジュ…?」
そこには原作とは正反対のカラーリングの純白のシナンジュがいた。カメラからで完全には分からないけど、かなり完成度の高い機体だ。
「まずはこっちから行くよ…ってうわぁ?!」
私は黄色い球体型のコンソールを前に出した瞬間以前とは全く違うあまりの機動力の速さにクアンタドライバーの体制を崩してしまう。
改造前のクアンタドライバーも私はあまり扱えていなかったけど、今回はそれよりもさらにすごい。
「くっ…!」
コンソールを右往左往しながらなんとか体制を立て直すと前方から警告音がなる。
「ビームライフル!?」
咄嗟にコンソールを動かしビームライフルを回避させる。
「ここはバスターソードで…!」
GNソードVにソードビットを連結させ巨大なバスターソードにすると、一気に間合いを詰める。
バスターソードとビームサーベルがぶつかり合い激しく火花を散らす。
しかし、そこからのシナンジュはとてつもなく強かった。
つばぜり合いをしている瞬間に胴にサマーソルトをくらい大きくうしろに仰け反る。そこにすかさずビームアックスが振りかぶられる。それをバスターソードで受け止めようとするがそれはフェイクで左手に持っていたビームライフルからの銃撃を直に受ける。
「くぅっ…!」
クアンタドライバーは大きく後ろに弾き飛ばされ完全に姿勢を崩す。
「まだっ、こんなものじゃ…!」
「これで終わりよ…!」
私は最後の足掻きのごとくバスターソードを接近してきたシナンジュに突き出すが、わかっていたかのように回避されビームアックスが深々とクアンタドライバーに突き刺さり大きく爆ぜた。
<Battle ended.>
システム音声がバトルの決着を告げ プラフスキー粒子の散布が終了する。
「やっぱり…私じゃ…」
バトルシステムに横たわる自分のガンプラを呆然と見ながらぽつりと呟く。
ガンプラバトルをしようと言っておきながらこのザマだ。情けない。
「ねぇ、そのガンプラ、あなたが作ったの?」
「え、う、うん…」
白髪の少女に聞かれて私はそれとなく答える。
「すごいね!そのガンプラの完成度、バトルしてて分かった。ファイターに素直なその挙動。とても並みのビルダーじゃ作れないよ!」
「でも、操縦する私がこんなんじゃ…」
私はうつむいて銀髪の少女から目を背ける。
「そんなことないよ!あなたはきっと上手くなる!だから…もう一回しない?」
「え、…。」
私は突然のことでぽかんとしてしまっていた。
「いいの…?」
「もちろん!」
それから私たちは店にお客さんが来なかったこともあって閉店時間までガンプラバトルを続けていた。
<Battle ended>
「ふぅ、ごめんね。こんなに付き合ってもらって」
「いいの、気にしないで」
銀髪の少女は満面の笑みで私に微笑みかける。
「そう言えば名前聞いてなかったね、私はマナタ・シノ、君は?」
「私はユリナ、よろしく」
「うん、よろしくね!」
私たちは互いに握手を交わす。
「あ、ごめんね。今日はもう閉店時間なの。だからまた会ったらね?私は基本この店にずっといるから」
「あ、う…。」
どうしたんだろう。私が閉店時間ということを告げるとうつむき黙ってしまった。
「どうしたの?」
「そ、その…今日…ううん、しばらく、泊めて…もらえないかな…?」
「へ…?」
私はユリナちゃんが発した言葉に思考が追いつくのに何秒かの時間を費やした。
「えぇぇーーー!?」
私は夜にも関わらずとても大きな声で叫んでしまう。
「ど、どうして…?」
「それは、その…」
「ただいま~」
ユリナちゃんがおどおどしているところに私のお母さんが帰って来た。
「あら、シノのお友達?」
「あの、シノのお母さんですか…?」
「そうだけど、どうしたの?」
「あ、あの!しばらく私を泊めてもらえませんか!」
その言葉にお母さんも驚いたが私ほどではなくそれとなくユリナちゃんに聞き返す。
「どうして?」
「その、信じてもらえないかもしれないですけど…知らない人に捕まって意識を失って気がついたらこの街にいて…。地名を聞いても全く知らない所で…街をうろうろしていたら私の知ってるガンプラバトルのシステムがここにあったからもしかしたら何か知ってるかなって…」
ユリナちゃんはややうつむき加減で話している。
「よし!分かったわ。ここでユリナちゃんの面倒見てあげる」
「え!いいんですか?!」
「もちろん!」
「ほんとにいいの?お母さん」
私は母の言葉が信じがたく聞き返してしまう。
「ええ。だってユリナちゃん、嘘をついてる目じゃなかったもの。それに悪い娘じゃ無さそうだし」
と言ってお母さんはユリナちゃんの寝泊まりを許した。
「よ、よかったね、ユリナちゃん」
私はなんとも言えずぎこちなくそんな言葉が出てしまう。
「うん、ありがとう!シノ、ママさん!」
ユリナちゃんは心底嬉しそうに私たちの手を握った。それはそうだろう。どこかも分からない所で途方にくれていたんだから。
「これからよろしくね、シノ!」
ユリナちゃんと知り合ったその日の夜。二段ベッドの上にいるユリナちゃんにひとつ疑問に思っていることを聞いてみた。
「ねぇ、ユリナちゃん」
「どうしたの?」
「どうして知らない所なのにガンプラバトルをしようと思ったの?私だと真っ先にテンパって泣いてしまいそうなのに…」
ユリナちゃんは少しの沈黙の後静かに、しかし力強い口調で言った。
「お父さんが言ってたんだ。ガンプラバトルをする人に悪いやつはいないって。私はそんなの分からないじゃないって言ったらお父さんはこう応えたの。そいつが悪いやつかどうかはバトルすれば分かるって。そしてそれを決めるのは相手であり自分でもある。だから私はシノとガンプラバトルをした。そして思った。シノは悪い人じゃないって。だから…お願いしたの…」
「そうだったんだ…。いいお父さんだね」
「ふふっ、ありがとう」
そうだったんだ。ユリナちゃんは私が思ってた以上に強い心を持ってたんだ。お母さんが許した理由もわかる。
「これからよろしくね、ユリナちゃん」
「こちらこそよろしく、シノ」
私たちは互いに挨拶をし眠りについた。