ユリナちゃんが机の上でガンプラをいじっている私にある1枚のポスターを差し出した。
「ん?、ガンプラバトル選手権世界大会?」
ユリナちゃんが差し出したのはガンプラバトル選手権の告知ポスターだった。私の家(店)には小さいながらバトルシステムがあったのでこういうポスターはによく貼っている。
「ねぇシノ、これって色んな人とガンプラバトルできるの?」
「うん…そうだけど」
するとユリナちゃんは目をキラキラ輝かせ私の手を握った。
「シノ!これに出ようよ!」
「うーん、悪いけど私は遠慮しとこうかな」
「えー!どうしてー」
ガッカリと肩を落とすユリナちゃんに私は説明した。
「この大会は文字通り世界中の強者たちが集まる大会なんだよ?フミナ先輩たちならともかく私なんかじゃ予選の初戦でまけちゃうよ」
自分で言ってて少し悲しくなるが事実なんだし仕方がない。
「そんなことないよ、それにほら!ここみて、二人一組での出場も可能って書いてるよ!一緒に出ようよ!」
「ゴメンユリナちゃん、私、二人で闘うときはタイキとって決めてるんだ」
「そう、なんだ…」
「うん、ゴメン…」
私はそう言ってある人との約束の場所に向かった。
「おはよう、シノ」
「おはよう、タイキ、今日約束のものできあがったよ」
私は鞄の中から1つのガンプラを取り出した。それは普段使用しているクアンタドライバーとは違う新しいガンプラ。数週間前からタイキに頼まれて作ったガンプラだ。
「はい、これがタイキの新しいガンプラ。ベースにしたのはガンダムAGE-2。ストライダー形態への変形はもちろん搭載。ウェアの換装機能はオミットしてあるけどダブルバレットのバインダーに仕込まれたツインビームサーベルに火力を上げたハイパードッズライフル、ツインドッズキャノン。さらにビームサーベルと新規兵装のハイパードッズランチャー!どうかな?」
私はそっとタイキの顔を覗き込んだ。
「おぉ!やっぱりシノが造るガンプラは凄いな…!ありがとう!」
「いいのいいの、お安い御用なんだから」
タイキは受け取ったガンプラを色んな人と角度から眺めながら感嘆していた。するとふと真剣な表情になって私に話しかけた。
「なぁシノ、ちょっと大事な話があるんだ」
「え?うん、何?」
「実はオレ、明日からフランスに行くんだ、2ヶ月間」
それを聞いた私は数秒間の硬直の後、大声で叫んでいた。
「な、なんで!?急に決まったの?」
「いや、少し前から決まっていた。だけど話したらなんて言われるか怖くて話せなかった、ゴメン」
「先輩達には言ってるの?」
「ラルさんには話してある。ラルさんの方から直接先輩達に言ってもらうように頼んでおいた」
「そうなんだ…でも、どうしてフランスに?」
私は恐る恐る一番疑問に思っていることを話した。
「実は、フランスに新設されたガンプラバトル専門の学校に受かったんだ。それでそこに転入することになったんだ。ダメ元で応募して試験したんだけどまさか-AYとは思ってなかった」
そうだったんだ。タイキは知らない間に努力をしてしっかりと力をつけてたんだ…。それに比べて私は…。
「だからゴメン。来週から始まるガンプラバトル選手権にはシノと一緒に出られないんだ」
「そう、なんだね…」
私は俯くことしか出来なかった。
「でも、オレきっとフランスでの予選を勝ち抜いて本選に行くからさ、シノも頑張ってくれよ!」
「え…」
思ってなかった言葉をタイキに掛けられ私はぽかんとしてしまう。
「予選を勝ち抜いて本選へと進めれば世界大会で会えるだろ?だから予選を勝ち抜いて、本選で闘おう!」
「え、で、でも私なんかの腕じゃ…」
「大丈夫、シノは自分で思ってるほど弱くないよ、それにシノは一人じゃない」
「一人じゃ…ない…」
「今日はそれだけ伝えたかったんだ、この後出発の準備を色々としなきゃいけないから、それじゃ!」
そうタイキは言い残して走り去って行く姿を私はただただ呆然と見ていた。タイキが私に新しいガンプラの制作を依頼した理由、最初は別になんとも思わなかったが心のどこかに引っ掛かっていた。それはきっとこの事だったんだろう。だけど、このまま何も言わず見送っちゃいけない。今心に思ったことをしっかり伝えなきゃ、しばらくは会えないんだから。
「た、タイキ!」
私が呼び止めるとタイキは足を止めこちらを振り返った。
「わ、私!きっと世界大会に行くから、だから!また、会えるよね…?」
「あぁ、もちろんだ」
タイキは笑顔でそう答え再び走り出した。それを見送る私の目にはうっすらと、しかし確かに涙が滲んでいた。
目に涙を滲ませながら帰路につくと、家の前にユリナちゃんが立っていた。
「ちょっとシノ!どこ行ってたの!?スッゴク心配したんだから!」
ユリナちゃんがほっぺたをムッと膨らませて私を睨み付ける。しかし怖さは全く感じられず元の容姿と相まってむしろ可愛く見える。
「ゴメン、心配掛けさせて」
私はこぼれそうになった涙を拭い、息を大きく吸った。
「シノ、何かあったの?」
ユリナちゃんが心配そうにこちらの顔を覗き込む。
私はユリナちゃんに数時間前にあったことを話した。
「そうだったんだ。でも、シノも負けてられないじゃん」
「え…?」
「だってタイキって人はもう前を見て自分の進むべき方向を見定めてる。シノも立ち止まってる場合じゃないよ!」
「そ、そうだよね、私もくよくよしてる場合じゃないよね」
「そうだよ!だからさ、シノ!一緒に出ようよ!世界大会」
「え…いいの?」
「もちろん!私とシノが力や合わせれば勝てない相手なんていないよ!」
「そう…かな…」
「うん!」
ここに新しいタッグパートナーが誕生し世界大会という新たな闘いに私たちは足を踏み入れようとしていた。