ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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16話 勇者パーティーの実力!!

「ふぅ・・・どうにか間に合ったみたいね。意識はまだあるかしら、イッセー?」

 

 

そう言って俺の方を見てくるアリス。

 

体には白い雷を纏わせ、長い髪も金髪から純白に変化している。

 

その手には銀色に輝く槍。

 

服装はいつものではなく、緑を基調にした戦闘用の服を着ていた。

 

 

こうして見てると背中を任せて戦った時を思い出す。

 

 

「あ、ああ・・・・・助かったよ」

 

消え入りそうな声で返す。

 

正直、意識はあるけど今にも気を失いそうだ。

かなり出血してるし、左腕斬り落とされてるし・・・・・。

出血しすぎて痛みの感覚も無くなってきてる。

 

マジでヤバい。

 

「ゴメン。聞いた私が悪かったわ。どう見ても無事ではないもの」

 

「あははは・・・・・・」

 

まぁ、でもアリスのおかげで命拾いしたよ。

助けに来てくれなかったら確実にやられてたもんな。

 

すると、向こうの方から部長達が走ってくるのが見えた。

 

部長に美羽にアーシアだ。

 

他の皆の安否が気になるけど、とりあえず三人は無事だったみたいだ。

安心したぜ。

 

俺の側まで駆け寄った三人は俺の状態を見て、悲鳴をあげる。

 

「イッセー!? しかも、その腕・・・・・・! アーシアはイッセーの治療を! 美羽は私とイッセーの腕を捜すわよ!」

 

「分かったよ! お兄ちゃん、直ぐに戻ってくるからね!」

 

そう言うと二人は俺の左腕を探しに行ってしまった。

 

・・・・・・正直、見つかる可能性はかなり低いんじゃないかな?

 

この広い町で人の腕を探すのは難しいし・・・・・。

俺も斬られた腕がどの辺りに落ちたかなんて覚えてないし・・・・・・

 

これは先生みたいに義手も考えとかないと・・・・・

 

 

アリスが俺の腹に深々と突き刺さってる槍に手を添える。

 

「イッセー、引き抜くから少し我慢しなさいよ?」

 

「お、おう・・・・。出来るだけ丁寧に、な・・・・・?」

 

「分かってるわよ。せーの・・・・・・・っ」

 

「ぐっ・・・・・・!」

 

アリスが槍を引き抜いた瞬間に激痛が走った。

 

よかった、まだ痛みを感じるだけの余裕はあるみたいだ。

 

 

すかさずアーシアが俺の腹に手を当てる。

淡い緑色の光が腹の傷を癒していく。

 

傷は数秒もしないうちに完全に塞がった。

 

「ありがとう、アーシア・・・・・・」

 

俺がお礼を言うと、アーシアは眼からボロボロと大粒の涙を流す。

 

「こんなになるまで・・・・・! イッセーさん、もう無茶はしないでください・・・・・! イッセーさんがいなくなったら、私は・・・・・・・ッ!」

 

「ゴ、ゴメン・・・・・」

 

「でも・・・・っ! イッセーさんが生きていて、良かったです!」

 

腹の治療を終えると次は足の治療に入るアーシア。

 

ここのところ、アーシアには世話になりっぱなしただな。

 

「他の皆は?」

 

「木場さんやゼノヴィアさんは先生とティアさんのところに向かっています。イッセーさんの治療を終えたら二人の治療に向かいます」

 

そっか、この様子だと木場達は無事みたいだな。

 

あの攻撃の中、よく無事だったもんだ。

 

 

俺の視界に数人の姿が入る。

 

ティアを抱えた木場とゼノヴィアだ。

 

ティアも右腕を斬り落とされて、腹にデカイ風穴が空いている。

早く治療しないと命が危ない。

 

ボロボロの姿のティアがぐぐっと顔をあげる。

 

「イ、イッセー・・・・・無事だったか・・・・・」

 

「この状態で無事って答えるのもおかしいけど、とりあえずは生きてるよ。アーシア、俺はもう良いからティアを頼む」

 

俺は後は左腕だけだし、少しの間なら耐えられる。

先にティアの出血を止めた方が良いだろう。

 

そう思っていると、ティアが小さな魔法陣を展開する。

 

そこから出てきたのは――――

 

「これは・・・・・・イッセーの腕だ。斬り落とされた時に回収しておいたぞ。・・・・・それから、これは私のだ。・・・・・まずはイッセーの腕を繋げてやってくれ・・・・・・」

 

そこまで言うとティアは何も言わなくなり、その場に崩れ落ちた。

 

咄嗟に木場とゼノヴィアが受け止めてくれたおかげで倒れずにはすんだが・・・・・・

 

「木場、ティアは!?」

 

「危険な状態だけど、息はあるよ」

 

よ、良かった・・・・・・

 

 

木場はティアをゼノヴィアに任せると俺の左腕を持って、こちらに駆け寄った。

そして、斬り落とされた腕が繋がるように当ててくれる。

そこへアーシアの回復のオーラが放出されていく。

 

俺の腕は徐々に繋がっていき、機能を回復させる。

 

それを確認した木場が俺に問いかける。

 

「部長と美羽さんは? 一緒じゃないのかい?」

 

「あー、俺の腕を探しに行ってくれたんだけど・・・・・。まさか、ティアが回収してくれてるとは思ってなかったからな」

 

「なるほど。じゃあ、僕の方から連絡を入れておくよ」

 

「頼むわ」

 

 

俺の治療が終わり、アーシアと木場はティアの治療に移る。

 

アーシアのおかげでティアの傷もあっという間に塞がっていく。

この分ならティアも助かるか。

 

あとはアザゼル先生が心配だな・・・・・。

 

 

いや、それだけじゃないか。

 

町にはロスウォードが残していった怪物共がいやがる。

町の人達にも危害が及ぶかもしれない。

 

部長や木場達だって消耗はしている。

今の状態で奴らを迎え撃つのはキツい。

 

 

「大丈夫よ、イッセー」

 

俺の不安を見透かしたようにアリスが言った。

見てみると不敵な笑みを浮かべている。

 

「ここに来たのは私だけじゃない。感じるでしょ? あの二人の波動を」

 

アリスに言われて、俺はハッとなる。

 

さっきまでは傷のせいで気づかなかったけど・・・・・。

残る意識を集中させて、町の様子を伺ってみる。

 

そして、感じとることが出来た。

 

これは――――

 

 

 

「よう、イッセー。随分手酷くやられたな」

 

「アリスは間に合ったようですね」

 

 

 

現れたのはアザゼル先生を担いだモーリスのおっさんと移動しながら先生に回復魔法をかけているリーシャだった。

 

 

 

 

 

 

「とりあえず、これでおまえらの無事は確認できたか」

 

「無事ではない気がしますが・・・・・。まぁ、全員生きていて再会出来たので良いでしょう」

 

 

おっさん達と合流してから数分後、他の部員の皆とも合流できた。

 

皆、ボロボロの姿の俺を見て泣きながらとびついてきた。

 

「お兄ちゃんが生きてる・・・・・・っ! うわぁぉぁぁぁぁぁん!!!」

 

美羽なんか現在進行形で泣き続けてるところだ。

服が涙でぐっしょり濡れてるよ。

 

俺は美羽の頭を撫でて、自身の無事を伝える。

 

「ゴメンな。また、心配かけちまった。泣かせないって約束したのにな・・・・・」

 

俺がそう言うと美羽は首を横に振る。

 

「ううん・・・・・。お兄ちゃんが生きてるなら、ボクはそれだけで嬉しいから・・・・・・」

 

美羽はそう言ってくれるけど・・・・・

 

妹に心配ばかりかけてるようじゃ、兄貴としてはまだまだだな・・・・・・。

 

 

とりあえず、俺と同じく重症だった先生やティアも今は傷は塞がっているし、皆も負傷はしていたものの全員生きてる。

 

こういうところでは本当に強運だな。

 

 

おっさんが腰を伸ばしてストレッチし始める。

 

「さーて、あいつらを片付けるとするか。ここに来るまでに何体か倒してきたし・・・・・残るはざっと十弱か。俺とアリス、リーシャの三人だから、一人ノルマは三、四体だな」

 

おっさんが町で暴れる怪物共を数えながら言う。

 

おっさんの言葉にリーシャが言う。

 

「別にノルマは設けなくてもいいのでは? 倒せる人が倒せば問題ないと思います。リアスさん達はここでイッセーのことをお願いしますね。直ぐに戻ってきますので」

 

リーシャは微笑むと魔法陣を展開する。

 

魔法陣から現れたのは一丁の狙撃銃。

銃身には色々な紋様が刻まれていて、装飾も施されている。

 

「イッセー、大人しくしてなさいよ? 私達が戦うからって自分も戦うなんて言い出さないように」

 

アリスの言葉に苦笑で返す。

 

そんなことは分かってるよ。

 

今の状態の俺が行っても足手まといになるだけだしな。

血が足りなくてフラフラするし・・・・・。

 

アリス達が俺達の前に背を向けて並ぶ。

 

この三人の背中をこうして見てると、戦場で背中を任せて戦っていたあの頃を思い出す。

 

 

三人から発せられる凄まじいオーラに気づいたのか、怪物が集まってくる。

 

 

 

グキャォォォォオオオオオオ

 

 

 

奇声をあげながら怪物がこちらに迫ってくる。

 

部長達が身構える中、おっさんは余裕の表情で前に出た。

 

そして、腰の剣に手をかけた―――――

 

 

キンッ

 

 

その金属音がなった瞬間、怪物共の体は上半身と下半身が分断されていた。

 

「今の技は・・・・・」

 

木場が呟く。

 

そう、今のはおっさんがゼノヴィアの砲撃を斬り裂いた技。

 

神速の抜刀で産み出した衝撃波で相手を斬る技だ。

 

「どんなにしぶとくても、動けないんじゃあ意味はねぇだろ?」

 

上下で真っ二つにされた怪物共は地面でジタバタするだけ。

腕が複数あるやつは腕を使って移動しているものの、動きはかなり遅くなっている。

 

おっさんはそんな怪物共のもとにゆっくりと近づき、もう一本の剣を抜刀する。

 

「動けない敵を斬るのは剣士としてはいい気分じゃねぇが・・・・・・ま、化け物相手なら良しとするか」

 

二振りの剣を両手に持ち、剣先を外側に向けて構える。

 

その瞬間、おっさんから放たれる剣気が爆発的に膨れ上がった。

 

離れているのにビリビリと感じるこの剣気。

部員の中でも実際におっさんと対峙した木場とゼノヴィアはその光景を食い入るように見ていた。

 

 

「土に還りやがれ」

 

 

おっさんが両の腕を振るった。

目にも止まらぬ――――いや、目にも映らぬ速さと言った方が正しいかな。

 

実際、皆はおっさんが何をしたのか理解できていないようだ。

 

おっさん怪物に背を向けて剣を鞘に納める。

 

それと同時に怪物共は本当に土になったかのようにサラサラと崩れていった。

 

 

木場が呟く。

 

「いつの間に・・・・・全く見えなかった」

 

「まぁ、しょうがないさ。モーリスのおっさんは《剣聖》とまで呼ばれるほどの剣士だ。剣術だけなら俺なんかよりも遥かに上をいく人だしな」

 

「・・・・・一応、確認するけど、あの人は魔法や魔術の類いは使えないんだよね?」

 

「ああ。全くな。オーディリアの騎士は剣術だけじゃなくて魔法も使えるようにならないといけないんだけど、あのおっさんだけは別なんだよ。魔法なんて必要がない。それほどまでに凄まじいのさ」

 

木場は息を呑んで、ただただおっさんを見ていた。

 

木場以上のテクニック、ゼノヴィア以上のパワー。

あれがこのアスト・アーデ最強の剣士、モーリス・ノアなんだ。

 

 

 

ドドドドドドドドドォォォォォォン!!!

 

 

 

突如、雷鳴が鳴り響く。

 

「ハアアアアアアアアアアッ!!!」

 

白い雷を纏ったアリスが物凄いスピードで怪物に迫る。

白い軌跡を描く、その姿はまるで白い閃光。

 

怪物との距離が近くなるに連れて雷もその激しさを増す。

 

そして、槍を怪物の胸に突き刺す!

その打突の凄まじい威力に怪物の体は四散した!

 

朱乃さんが俺に言う。

 

「アリスさんも私と同じように雷を使うようですが、使い方がかなり違いますわね」

 

「ええ。朱乃さんは雷を放出してそれで相手を攻撃します。それに対してアリスの場合は雷を身体強化に使います」

 

アリスは雷自体で攻撃することは少ない。

基本的には自身の体に纏うことで、攻撃力、防御力、スピードを劇的に上げる。

雷に乗り、そのスビードで繰り出す槍による打突の威力は見ての通り。

 

あの異常なしぶとさを持つ怪物を一撃で倒せるほどだ。

 

「ですが、あの使い方は・・・・・」

 

「魔力を操る力が高くないと出来ないですね。それがないと逆に自分の体を焦がすことになる」

 

 

ちなみにだけど、髪の毛が金色から純白に変わるのは雷を運用した影響らしい。

 

その姿からついた二つ名が――――《白雷姫》

 

 

「ほら! そこ邪魔よ!」

 

 

アリスが槍を回しながら穂先に雷を集中させる。

白い雷が周囲に飛び、アリスを囲っていた怪物の体を焼いていく。

 

動きを止める怪物。

その隙をアリスは逃さない。

 

連続で放たれる突きが怪物を捉えて、一瞬で塵に変えてしまった。

 

「あの子はもう少し周りへの影響を考えて戦ってもらわないと困りますね」

 

と、俺のすぐ近くではリーシャが苦笑していた。

 

まぁ、アリスの攻撃って派手だから、あちこち破壊するよね。

今だって、アリスの雷の影響で建物が崩れかけてるし。

 

俺も人のこと言えないけどさ・・・・・・

 

 

ガチャ

 

 

リーシャが狙撃銃を構えて狙いを定める。

 

それと同時にリーシャの瞳が青から赤へと変わる。

 

「そこですね」

 

トリガーを引く。

すると、銃身の紋様が輝き、銃口のところに幾重にも魔法陣が展開される。

 

 

瞬間、数体の怪物の頭か弾けた。

まるで連鎖していくように。

 

次に腕、その次に足というように怪物を構成するパーツが次々と弾けていく。

 

それもコンマ数秒の速さで。

 

 

「流石だな。《赤瞳の狙撃手》の腕は衰えるどころか更に上がってるわけだ」

 

俺がそう言うと、リーシャは苦笑する。

 

「まぁ、この手の相手は私には向いてないんですけどね。相性悪すぎです」

 

なんてことを言いながら、既に数体を倒している。

 

銃を構えてから十秒も経ってないのに、この早業。

 

確かにリーシャは超遠距離からの狙撃を得意としているけど、ここまでの早撃ちが出来るなら相性の悪さなんて問題ないと思う。

 

「一発で倒れてくれない相手は何発も撃たないといけないので疲れました」

 

リーシャは銃を下ろして構えを解く。

瞳も元の色に戻っていた。

 

 

 

 

 

戦闘開始からほんの僅かな時間で怪物は全滅。

 

 

 

 

 

「これがイッセーの旅の仲間の実力・・・・・・」

 

部長達はただただ、三人の実力に驚くだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 


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