ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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9話 宣戦布告

「イッセー、どうなんだ! 美羽と子作りしたのか!?」

 

「だから、とりあえず敵を倒してくれよ!」

 

こんなことしてる間に次々と出てきてるから!

 

ほら!

あのアンチモンスターなんてビーム撃ってきてるからね!?

 

英雄派のやつらも呆然としてるし!

 

なんか、ゴメンね!

 

『ゴァアアアア!』

 

「テメェらは邪魔だってーの!!」

 

突っ込んできたアンチモンスターの首根っこを掴んで全力で投げ飛ばす!

 

アンチモンスターが着弾した場所が大きく弾け、爆風が巻き起こった!

周囲にいたモンスター共も何体か吹き飛ぶ!

 

今はおまえらの相手をするよりもゼノヴィア達の相手をする方が必死なんだよ!

どーすんだよ、これ!

早速バレちまったよ!

 

美羽も今更、「しまった」みたいな顔してるけど、もう遅いからね!?

 

「噂以上だね、現赤龍帝」

 

俺がゼノヴィア達に問いただされていると、何本も帯剣した白髪の優男が話しかけてきた。

 

よし、これを利用してこの混沌とした状況から抜け出そう!

 

俺は咳払いして、優男に言う。

 

「おまえ達って、旧魔王派の奴らとは大分違うみたいだな。自分の力を過信してる様子もないし、俺達を見下しているようには見えない。正直やりにくいよ」

 

旧魔王派の奴らは我先にと襲ってくる奴が多かったんだけど、こいつらはアンチモンスターに先行させて自分達は後ろから俺達を見ているだけだった。

 

・・・・・・・・正確には観察しているようだった、と言った方がいいか。

 

俺達の動きを観察し、分析している。

そんな感じだ。

 

「ハハハ。君達を見下すことが出来るのは世界でも最上位クラスの神々か、本当に愚かな者達くらいさ。シャルバ達は明らかに後者だ。――――君と君の仲間達は危険視するに値する者達だと認識しているよ。それとヴァーリも」

 

・・・・・・やっぱりやりづらいな。

 

相手がそう考えている以上、シャルバ達のように早々に油断はしてこない。

 

優男が一歩前に出て腰に携えていた剣を抜き放つ。

 

「そういえば、自己紹介がまだだったね。僕は英雄シグルドの末裔、ジーク。仲間からは『ジークフリート』と呼ばれているけど、好きなように呼んでくれて構わないよ」

 

さっきまで俺を問い詰めていたゼノヴィアがそれを聞いて何か得心したようにジークフリートを見た。

 

「・・・・・・どこかで見覚えがあると思っていたが、やはりか」

 

ゼノヴィアの言葉にイリナが頷く。

 

「あの腰に帯剣している複数の魔剣。間違いないと思うわ」

 

俺は二人に問う。

 

「二人とも、あのホワイト木場みたいなイケメンのこと知ってるのか?」

 

「ホワイトって・・・・・酷いよ、イッセー君」

 

まぁ、気にするな木場よ。

物のたとえだって。

 

俺の問いにゼノヴィアが答える。

 

「あの男は私とイリナの元同胞。つまりは悪魔祓いだ。カトリック、プロテスタント、正教会の全てを含めてトップクラスの戦士。腰に帯剣した魔剣を扱うことからついた二つ名が『魔帝(カオスエッジ)ジーク』」

 

「なんか、教会っぽくない二つ名だな」

 

教会関係者と言えば聖なる力とかが浮かぶけど、魔帝だもんな。

 

どっちかと言うと悪魔関係者にいそうだ。

 

ジークフリートは苦笑する。

 

「それを言われてしまうと返す言葉ないよ。教会にいたころは僕も複雑だったしね」

 

あ、やっぱり思ってたんだ。

 

 

イリナが叫ぶ。

 

「ジークさん! あなた、教会を――――天界を裏切ったの!?」

 

「裏切ったってことになるかな。今は禍の団――――英雄派に属しているからね」

 

「なんてことを! 教会を裏切るだけじゃなく、悪の組織に身を置くなんて! 万死に値するわ!」

 

「・・・・・少し耳が痛いな」

 

ゼノヴィアがポリポリと頬をかいていた。

 

うん、君も破れかぶれで悪魔に転生してるからね。

 

イリナの怒りを聞いてもジークフリートはクスクス小さく笑っている。

 

「いいじゃないか。僕がいなくなったところで教会にはまだ彼がいる。あの人だけで僕とデュランダル使いのゼノヴィアの分を十分に補えるだろうさ。さて、紹介も終わったところで、そろそろ始めようか」

 

そう言うとジークフリートの持つ剣から異様なオーラが発せられる。

 

・・・・・・なんだ、あの剣。

 

魔剣らしいけど・・・・・・・俺は触らない方が良いような気がする。

 

「ここは僕がいこう。イッセー君達にはここを任せるよ」

 

木場はそう言い残すと一人、ジークフリートに斬りかかっていった!

 

 

ガギィィィィンッ!!

 

 

木場の聖魔剣とジークフリートの魔剣が激しく衝突し、火花を散らす!

 

「魔帝剣グラム。魔剣最強のこの剣なら、聖魔剣を難無く受け止められる」

 

「ならば、君に直接刃を届かせるまでだ」

 

二人は鍔ぜり合いの状態から後ろに飛び退くと、すぐに壮絶な剣戟を繰り広げ始めた!

 

木場はフェイントを混ぜながら高速で斬りかかるが、ジークフリートはそれを受けとめ、反撃に出る!

 

木場の攻撃を最小限の動きでいなし、自身の魔剣を繰り出している!

 

あいつ、木場の動きについてこれるのか!

 

木場もジークフリートの攻撃を読むように余裕を持って回避、そこから高速移動による残像を生み出していく!

 

今のところ、二人の実力は拮抗している!

 

 

二人の激しい攻防を見て、英雄派の一人が呟いた。

 

「うちの組織では、派閥は違えど『聖王剣のアーサー』、『魔帝剣のジークフリート』として並び称されているんだが・・・・・・。まさか、ジークの動きについてこれるとは・・・・・・。得た情報よりも遥かに実力を上げているな。この短期間でどうやって・・・・・?」

 

そうか、こいつらは異世界のことを知らないのか。

 

 

木場は異世界に渡ったことでかなり実力を上げた。

しかも、あのモーリスのおっさん直々に鍛えてもらったんだ。

こいつらが持ってる木場の情報はもう役にたたない。

 

ジークフリートは笑みを浮かべながら言った。

 

「聖魔剣の木場祐斗! 想像以上に楽しませてくれる! ならば、これはどうかな?」

 

ジークフリートは空いてる方の手で帯剣しているうちの一本を抜き放った。

 

二刀流か!

 

「バンムルク。北欧に伝わる伝説の魔剣の一振りだよ」

 

振り下ろされた新たな魔剣を木場は体を捻って回避!

 

手元にもう一本の聖魔剣を造り出して、木場も二刀流となった!

 

二人とも二刀流になり、再び鍔ぜり合う。

 

すると、二人を囲むように宙に七本の剣が現れた。

 

あれは木場の新しい力!

 

七つの剣はまるで意思を持ったかのように動き、ジークフリートに迫る!

 

 

すると―――――

 

 

ガガガガガギィィィィィンッ!!!

 

 

七つの剣は全て弾かれ、ジークフリートに届くことは無かった。

 

「遠隔操作できる聖魔剣か。流石に驚いたかな」

 

見れば、ジークフリートは三本目の魔剣を持っていた。

 

あれを高速で振るって、弾き飛ばしたということか。

 

 

いや、ちょっと待て。

 

 

三本目だと?

 

 

怪訝に思い、良く見てみるとジークフリートの背中から腕が生えていた。

 

鱗で包まれ、まるでドラゴンのような腕だ。

 

ジークフリートは笑みながら言う。

 

「これは僕が持つ神器、『龍の手(トゥワイス・クリティカル)』さ。ありふれた神器だけど、これは少し特別でね。亜種にあたるのさ」

 

龍の手・・・・・・?

 

えーと、確か俺の籠手の下位神器だっけか?

 

以前、ドライグとアザゼル先生に聞いたことがあったな。

聞いた話では籠手タイプだってことだったけど・・・・・・。

 

亜種なんてものがあるのか。

 

ジークフリートは両手と背中の腕で魔剣を持つ三刀流。

 

それを知り、木場は少し表情を厳しくする。

 

「同じ神器使い・・・・。そちらは剣の特性も神器の特性も出していない、か」

 

「ついでに言えば禁手も出してないけどね。まぁ、君もまだ本気ではないのだろう?」

 

確かに木場はまだまだ余力を残しているけど、流石にこれは・・・・・・。

 

禁手状態の木場に対してジークフリートはほとんど素の状態。

 

互いに本気を出せば―――――

 

 

バサッ

 

 

俺達の前に先生が降り立ち、それに続くように英雄派の中心に曹操が戻ってきた。

 

二人は攻防を繰り返しながら、こちらへと戻ってきたようだ。

 

二人が戦った場所は煙をあげて焦土と化している。

 

・・・・・・先生の鎧は所々壊れていて、黒い翼もボロボロになっていた。

曹操の方も制服や羽織ってる漢服も破れた箇所があるが・・・・・。

 

鎧を纏った先生を相手にここまでやるか。

 

二人とも本気は出してないみたいだけど・・・・・・。

先生が本気になっていたら、今頃この一帯は消し飛んでるだろうしな。

 

それでも、先生とやり合ってあの程度しか受けてないのは曹操の実力が相当高い証拠。

 

曹操が首をコキコキ鳴らしながら言う。

 

「どうやら過去に得た情報はもう役に立たないか。そちらの成長率も計算してこちらもそれなりに修行をしていたんだが・・・・・。いやはや、君達には驚かされるよ」

 

「テロリストでも修行するんだな」

 

「当然。俺達は弱っちい人間なんでね」

 

弱っちい人間ね・・・・・

 

よく言うぜ、先生とそこまでやり合える実力を持ってるくせに。

 

先生が曹操に改めて問う。

 

「ひとつ訊く。おまえら、英雄派の動く理由はなんだ?」

 

その問いに曹操は目を細目ながら答える。

 

「アザゼル総督。俺達の活動理由はシンプルだ。俺達は『人間』としてどこまでやれるのか、それが知りたい。そこに挑戦したいんだ。それに悪魔、堕天使、ドラゴン、その他諸々。超常の存在を倒すのはいつだって人間だ。―――いや、人間でなければならない」

 

「英雄になるつもりか? って、英雄の子孫だったな」

 

「―――よわっちい人間のささやかな挑戦だ。蒼天のもと、人間のままどこまでいけるか、やってみたくなっただけさ」

 

それを聞いて、木場達が息を飲むのが分かった。

 

こいつは本気で俺達、悪魔・・・・・・いや、超常の存在に挑みに来ている。

そして、こいつにはそれを実行するだけの力がある。

 

それでも。

 

・・・・・なんか、こいつが言ってることってさ。

 

「下らねぇな、おい」

 

しんと静まる空間に俺の声が響き、この場にいる全員の視線が俺に集まる。

 

まぁ、この雰囲気の中でこんなことを言う奴が出てくるなんて思わないだろうからな。

 

曹操が眉をひそめる。

 

「なに?」

 

「下らねぇって言ったんだよ。超常の存在を倒すのは人間? それならテロなんて回りくどいことせずに堂々と挑んできやがれってんだ」

 

英雄派に所属してる神器所有者だって拉致して洗脳、それから各勢力に送り込むっていう最低なやり方だ。

しかも、こいつらのテロで戦う力もない人達だって被害を受けている。

 

そんな行いを見て、誰がこいつらを英雄と称える?

 

「おまえら、自分が英雄の子孫だからって勘違いすんな。英雄はおまえらの先祖であって、おまえらは決して英雄なんかじゃない。―――――おまえらが英雄を名乗るな」

 

「まるで、本物の英雄を見てきたような口ぶりだな」

 

「ああ、見てきたさ。本物の英雄―――――勇者をな。だからこそ、俺はおまえらが英雄を名乗ることを許せない」

 

俺の言葉に英雄派の奴らは殺気を強くする。

 

曹操だけは少し考え込むような表情をしていたが、ゆっくりと槍の切っ先を俺に向けた。

 

アンチモンスターは未だに作り出されている。

 

二つの陣営に再び緊張が走った。

その時―――――

 

 

パァァァァァァアアッ!

 

 

俺達と英雄派の間に魔法陣がひとつ、輝きながら出現する。

 

・・・・・知らない紋様。

 

「―――これは」

 

どうやら、先生は知っているようだった。

 

誰だろうか? 

 

少なくとも悪魔ではない。

 

怪訝に思っていると、眼前に現れたのは魔法使いの格好をした、外国の女の子だった。

 

中学生くらいだろうか? 

 

小柄な女の子だ。

 

女の子はくるりとこちらに体を向けると、深々と頭を下げた。

 

ニッコリ笑顔で、僕達に微笑みをかけてくる。

 

「はじめまして。私はルフェイ。ルフェイ・ペンドラゴンです。ヴァーリチームに属する魔法使いです。以後、お見知りおきを」

 

ヴァーリチーム!?

 

こんな可愛い娘が!?

 

 

『そこか』

 

 

あ、そうじゃなかった。

 

なんで、ヴァーリの仲間がここにいるかだよな。

 

 

先生が女の子、ルフェイさんに訊く。

 

「……ペンドラゴン? おまえさん、アーサーの何かか?」

 

「はい、アーサーは私の兄です。いつもお世話になっています」

 

なんと!

 

アーサーの妹ってこの娘だったのか!

 

俺がアーサーだったら溺愛するね!

 

 

先生があごに手をやりながら言う。

 

「ルフェイか。伝説の魔女、モーガン・ル・フェイに倣った名前か? 確かモーガンも英雄アーサー・ペンドラゴンと血縁関係にあったと言われていたが……」

 

ルフェイが目をキラキラと輝かせながら、俺に近づいてきた。

 

「あ、あの・・・・・兵藤一誠さん、ですよね?」

 

「う、うん。そうだけど?」

 

俺がそう答えると、ルフェイは手を突き出してきた。

 

「私、『乳龍帝おっぱいドラゴン』のファンなんです! あ、握手してください! あ、あと、サインも!」

 

ルフェイは慌ててどこからか色紙を出して、再び俺に手を突きだした。

 

え、えーと・・・・・・

 

突然の展開に、俺達も英雄派の奴らも間の抜けた状態になった。

 

この子、俺のファンなのね・・・・・・。

 

「曹操」

 

「なんだい?」

 

「ちょっとタイム・・・・・・」

 

「・・・・・・どうぞ」

 

俺は色紙とペンを受けとり、悪魔の言葉でサインを入れる。

 

悪魔の言葉で良いのかな・・・・・・?

 

この娘、人間だよね?

 

そんなことを考えつつ、ルフェイに色紙を渡し、「ありがとう」と言いながら握手をしてあげる。

 

「やったー!」

 

うん、スゲー喜んでる。

 

喜んでもらえて良かった・・・・・・・・なんて、言ってる場合なのか?

 

「え、えっと、それで君はここに何をしに?」

 

俺の問いにルフェイは屈託のない満面の笑みで答えた。

 

「はい! 私がここに来たのは赤龍帝様のサインを貰うため・・・・・・・じゃなくて、ヴァーリ様から伝言を頼まれたので、ここに来ました!」

 

そう言うとルフェイは曹操の方へと振り替える。

 

「それでは伝えますね! 『邪魔だけはするなと言ったはずだ』―――だそうです♪ うちのチームに監視者を送った罰ですよ~」

 

 

ドウゥゥゥゥゥゥゥンッ!

 

 

ルフェイが可愛く発言した直後に大地が激しく揺れる!

 

アーシアや九重なんて、尻餅をついてるほどだ。

 

地面が盛り上がり、何か巨大なものが出現した。それは地を割り、土を巻き上げながら地中から姿を現す!

 

 

ゴオオオオオオオオオオオオオッ!!

 

 

雄叫びをあげる巨人らしき物体!

 

なんだ、あのバカデカい岩の巨人は!?

 

先生が巨人を見上げて叫ぶ!

 

「ゴグマゴグか!」

 

先生の言葉にルフェイは頷いた。

 

「はい。私達のチームのパワーキャラ、ゴグマゴグのゴッくんです♪」

 

ゴッくんです♪………って、あれ、そんな風に呼ばれてるの!?

 

全く可愛くないんですけど!?

 

「先生、あれを知ってるんですか?」

 

「あれはゴグマゴグ。次元の狭間に放置されたゴーレム的なものだ。古の神が量産した破壊兵器らしいが、全てが機能停止だったはずだ」

 

「あれ動いてますけど!?」

 

「ああ、動いてるぜ! 俺も動いているのを見るのは初めてでな! 胸が踊るな!」

 

なんか、目をキラキラさせてるー!?

 

先生ってああいうの好きだもんな!

 

「な、なぁ、ヴァーリチームって他に誰がいるの?」

 

俺がルフェイに訊く。

 

あいつのことだから、他にもとんでもないメンバーを持ってそうでよ・・・・・・。

 

「えーとですね。今のところは、ヴァーリ様、美猴様、兄のアーサー、黒歌さん、フェンリルちゃん、ゴッくん、それから私の七名です」

 

そっか、七名か・・・・・・。

 

つーか、フェンリルもメンバーに入ってたんかい!

 

あいつ、とんでもない面子を集めたもんだな!

 

俺とルフェイが会話していると、ゴグマゴグが英雄派に向かって巨大な拳を降り下ろした!

 

 

ゴゴゴゴゴォォォォオオオンッ!!

 

 

バカデカい破砕音と共に渡月橋を木っ端微塵に破壊した!

 

うん、ここが嵐山を模した空間で良かった!

じゃなかったら、嵐山の名物は一つ完全に無くなってたもんな!

 

ゴグマゴグの一撃は大量のアンチモンスターを吹き飛ばした。

 

英雄派のやつらはその場から飛び退き、橋の反対岸に着地する。

 

「ハハハハ! ヴァーリはお冠か! 監視を送っていたのが気に入らなかったようだな!」

 

曹操は愉快そうに高笑いすると、槍をゴグマゴグに向けた。

 

「伸びろっ!」

 

槍の切っ先が伸びて、ゴグマゴグの肩に突き刺さる!

 

あの槍、伸びるのか!

美猴の如意棒みたいだな!

 

 

ズズゥゥゥゥンッ!

 

 

ゴグマゴグの巨体がその一撃で体勢を崩して、その場に倒れる!

 

倒れた衝撃で辺りを大きく揺らした!

 

その衝撃でアーシアと九重は再び尻餅をついていた。

 

二人とも、もう座っといた方が良いかも・・・・・・。

また揺れることもあるだろうし。

 

俺が二人にそう言おうとした時だった。

 

「もーっ! ドッカン! バッタン! うるさいれすよ!!」

 

突然、聞こえてきた呂律の回っていない声。

 

こ、この、声はまさか!

 

「ヒトが気分良く寝てるってのに、いやがらせれすか!? いいでれすよー、そっちがそのきなら、わらしらってねでるところでてやりまふよ!」

 

ろ、ロスヴァイセさんんんんんん!?

 

「ちょ、先生! 結界で覆ってたんじゃないんですか!?」

 

「あ、ああ・・・・・。あんな状態で混ざられても邪魔にしかならんからな。破って出てきやがったのか、あいつ・・・・・」

 

えええええええっ!?

 

酔っ払った状態で、先生の結界ぶち破ってきたの!?

 

なに、あの人!?

酔うと強くなる、あれですか!?

 

「うおりゃあああああああ!!! フルバーストじゃあああああああ!!!!」

 

 

ズドドドドドドドドオォォォォッ!!!

 

 

うおあっ!?

いきなり、ぶっぱなしやがった!?

何考えてんの!?

 

炎、光、水、雷などのあらゆる魔法攻撃が町を丸ごとぶっ飛ばした!

家屋も道も跡形もなく消え去ったよ!

 

ぶ、部長、良い人材をゲットしたとは思いますけど・・・・・・。

これから苦労しそうですね。

 

俺の視界に霧が映る。

 

ロスヴァイセさんが放った魔法攻撃はあのメガネをかけた青年が発生させた霧によって、英雄派のメンバーに届くことはなかったようだ。

 

あの攻撃を防ぐとは・・・・・。

 

「お酒がたりませんよぉぉおおおおおっ!!」

 

ロスヴァイセさん、あんたは寝てて下さい!

とーっても、危なっかしいから!

つーか、もう飲むな!

 

霧が更に英雄派を覆い、曹操がその中から言う。

 

「少々、乱入が多すぎたか。――――が、祭りの始まりとしては上々だ。アザゼル総督! 赤龍帝!」

 

曹操は俺達に向けて楽しそうに宣言した。

 

「俺達は今夜、この京都と九尾の御大将を使い、二条城で大きな実験をする! ぜひとも静止するためにこの祭りに参加してくれ!」

 

霧が辺り一帯に立ち込め、俺達をも覆っていく。

 

そして視界が全部、霧に包まれた。

 

 

 

 

霧が晴れると、観光客で溢れた渡月橋の前に俺達は立っていた。

周囲の人達は何事も無かったように観光を楽しんでいる。

 

どうやら、元の空間に戻ってきたようだ。

 

ルフェイとゴグマゴグの姿はない。

霧が晴れたと同時に戻ったのだろう。

 

 

ガンッ!

 

 

先生が電柱を横殴りしていた。

 

「祭りだと・・・・? ふざけたことを言いやがって・・・・っ!」

 

「・・・・・母上は何もしてないのに・・・・・・どうして・・・・・・」

 

俺と隣では九重が体を震わせて、涙を浮かべていた。

 

俺は九重の頭を撫でて、改めて決意を固めた。

 

曹操、テメェらは俺の手で潰す。

八坂さんも無事に取り戻してみせる。

覚悟しとけよ。

 

―――――九重を泣かせたツケはきっちり払ってもらう。

 


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