ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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最終話っぽいタイトルですけど、最終話ではありませんよー!




17話 戦いはこれからも続く!?

激闘を終えた俺達は京都の疑似空間からもとの世界に戻り、宿泊しているホテルの屋上にいた。

 

先生が俺の肩に手を置いて言う。

 

「よくやってくれた。おまえは休んでいろ、動くだけでキツいんだろう?」

 

「ええ、まぁ・・・・・」

 

少し動くだけで全身に激痛が走る。

 

全身筋肉痛の超酷いバージョンと言っても良いくらいだ。

 

「とりあえず、そこに横になっておけ。救護班! こいつらを診てやってくれ! ケガもそうだが、魔力と体力の消耗が激しい!」

 

先生が他のスタッフにそう指示する。

 

あー、マジで疲れた。

もう動きたくない・・・・・・・ってか動けないか。

 

作戦は英雄派の撤退という形で終わった。

 

京都を囲んでいた連合部隊も英雄派構成員とあのアンチモンスターとの激戦を終えて戦後処理となっているようだ。

 

英雄派幹部・・・・・曹操達は京都を囲んでいた包囲網から逃げたらしい。

 

どうやら、逃走用の経路も確保していて、そこから脱出したとか。

 

随分と用意の良いことで・・・・・。

 

逃がしたことはかなり悔しいが、結果的には八坂さんを取り戻せたし、実験とやらも阻止できた。

とりあえずはそれで良しとしよう。

 

美羽も相当疲労したみたいで、椅子にもたれ掛かっている状態だ。

 

まぁ、相当な魔法の使い手でもあり神滅具所有者のゲオルクとガチンコでやり合ってたんだ。

こうなるのも仕方がない。

 

アーシアは仲間の治療と戦闘の緊張感で疲弊し、美羽の隣で眠っていた。

 

治療を終えたメンバーは一応のために運ばれていく。

 

「ゴメン、イッセー君。情けないけど、お先に」

 

木場が謝りながら言う。

 

あいつもジークフリートと激戦を繰り広げていたからな。

情けなくなんてないさ。

 

俺は手をあげて応えた。

 

「元ちゃん!」

 

「元士郎!」

 

担架で運ばれる匙にシトリー眷属が付き添っている。

心配そうに涙まで浮かべて。

 

匙は龍王変化の消耗が激しく、戦闘終了後に気絶してしまった。

修行でそれなりに力を使えるようになったとはいえ、流石にキツかったようだ。

 

って、あいつも仲間に愛されてるな。

 

 

さて、問題は・・・・・・。

 

 

「先生、ゼノヴィアのことなんですけど・・・・・・」

 

「ああ、話は聞いたぜ。魔槍ゲイ・ボウに傷をつけられたようだな。厄介な話だ」

 

先生がゼノヴィアの傷口を見ながら言う。

 

「あの槍で傷をつけられるとその傷に呪いがかけられる。治癒妨害の呪いだ。過去にはその傷が悪化して死に至った者もいる」

 

戦闘中よりも戦闘後の方が面倒なことになってるんだな。

 

となるとゼノヴィアの傷にかけられた呪いを一刻も早く治さないとマズいってことだ。

 

「呪いを解こうにも難しくてな。相当高位の魔術師でも連れてこない限りは解呪できん」

 

「では、私の傷はもう塞がらないということか・・・・・」

 

ゼノヴィアが神妙な顔でそう呟く。

 

すると、先生は何か良いアイデアが浮かんだような顔で言った。

 

「いや、手はある。ゼノヴィア、おまえは運がいいぜ?」

 

「どういうことだ?」

 

先生の言葉に怪訝な表情で返すゼノヴィア。

 

俺も頭に疑問符を浮かべている。

 

運が良い・・・・・・?

 

それっていったい・・・・・・・・。

 

「いいか? ゲイ・ボウにつけられた呪いの効果範囲は受けた傷のみだ。つまり、その傷を除いてしまえば回復は出来る。切り取るのは傷の周囲だけで良い」

 

「ちょ、ちょっと待ってください。切り取るって・・・・・それで傷が塞がるんですか?」

 

「いや、普通ならアーシアの治癒でもフェニックスの涙でも傷は塞がらない。損失した部位の再生は出来ないからな。だが――――」

 

先生は俺の右腕を指差す。

 

「イッセー。おまえの右腕はどうやって完治した?」

 

「俺の右腕? あっ―――」

 

先生に言われて思い出す。

 

 

冥界で旧魔王派との戦闘があった時。

 

俺はイグニスを使い、右腕を焼いた。

 

アーシアの治療でも効果が出なかったのは腕を動かすのに必要な筋肉やら神経やらが完全に焼失していたからだ。

 

そこで先生は新しい薬の開発に取りかかった。

 

「あの時の薬!」

 

先生はニヤリと笑みを浮かべる。

 

「そういうこった。あれをゼノヴィアに使う。アーシアの治癒のように一瞬で塞がったりはしないが、失った部位を再生できる。というわけで、ゼノヴィア。おまえは今から冥界に俺と来てもらう。完治までには数日はかかるから少しばかり入院することになるが・・・・・・」

 

「そうなると修学旅行は・・・・・・」

 

少し表情に影を落とすゼノヴィア。

 

数日の入院と聞いて、皆と一緒に帰れないと思ったのだろう。

 

だけど、先生は首を横に振った。

 

「いや、一度冥界に行き応急措置だけする。修学旅行も今日で最後だ。それくらいならば大丈夫だろう」

 

「本当か!?」

 

「おうよ。おまえも最後まで楽しみたいだろう? 冥界で仮の措置だけして、それから戻ってこればいい。ま、最後はフラフラの状態で参加することになるだろうがな」

 

そう言って先生は苦笑する。

 

目をキラキラさせて本当に嬉しそうにしているゼノヴィアの頭をワシャワシャと撫で、先生は魔法陣を展開してどこかに連絡をいれた。

 

話の内容からして冥界の医療施設かな?

 

グリゴリでもあの薬の研究してるみたいだし。

 

その後、先生は幾つかの指示をスタッフに出し、ゼノヴィアを連れて冥界へと転移していった。

 

いやー、やっぱり先生は頼りになるな!

流石だぜ!

 

それにしても俺の右腕を治すために作られた薬がここで役に立つとは・・・・・・。

 

つーか、傷を周囲の部位ごと切り取るって・・・・・。

普通に言ってるけど、かなり恐ろしいことだよね。

 

 

とにかく、かなりの激戦だったけど仲間が死ななくて本当によかった。

 

俺は夜空を見上げて息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

修学旅行最終日。

 

今日はお土産屋巡りをしたんだけど・・・・・・・。

 

 

か、体が重い・・・・・・。

 

 

寝たところでこの痛みと重みは取れるはずもなく、俺は錬環勁気功で一時的に痛みを消しつつ観光していた。

 

美羽が体を支えてくれたから助かったぜ。

 

 

ゼノヴィアはというと、冥界で応急措置を受けたお陰で擬似的に傷を塞いでいる。

これで傷が悪化することはないらしい。

 

痛み止めも打っていて、左腕は少し痺れているらしいが特に問題はないようだ。

 

駒王町に帰ったら、すぐに冥界の病院に行く予定になっている。

 

他の皆も疲弊した体を引きずってお土産屋巡りをした。

 

 

お土産も買ったし、京都タワーも見た。

 

そして、とうとう京都を離れる時が来た。

 

 

俺達は京都駅の新幹線ホームにいて、九重と八坂さんが見送りに来ていた。

 

「・・・・イッセー」

 

八坂さんと手を繋いでいた九重が俺を呼んだ。

 

「ん? どうした、九重?」

 

俺な聞き返すと九重は顔を真っ赤にしてもじもじしながら俺に訊いてくる。

 

「ま、また、京都に来てくれるか?」

 

「ああ、また来るよ。そうだ、九重も俺の家に遊びに来いよ」

 

「遊びに行ってもいいのか?」

 

「もちろん。歓迎するぜ」

 

そう言って俺は九重の頭を撫でた。

 

おっ、顔が更に赤くなったな。

 

照れてるのかな?

 

いやー、反応が可愛いぜ。

年相応の反応って感じだな。

 

 

ピピピピピピ

 

 

発車の音がホームに鳴り響く。

 

九重が俺に叫ぶ。

 

「必ずじゃぞ! 九重はいつだっておまえを待つ!」

 

「おう! 次は皆で来るからまた、案内頼むな」

 

「うむ!」

 

それを確認すると八坂さんが言う。

 

「アザゼル殿、赤龍帝殿、そして悪魔、天使、堕天使の皆々、本当にすまなかった。礼を言う。これから魔王レヴィアタン殿、闘戦勝仏殿と会談するつもりじゃ。良い方向に進めていきたいと思うておる。二度とあのような輩によってこの京都が恐怖に包まれぬよう、協力体制を敷くつもりじゃ」

 

「ああ、頼むぜ、御大将」

 

先生も笑顔でそう言って八坂さんと握手を交わした。

 

セラフォルーさんも手を重ねる。

 

「うふふ、皆は先に帰っててね☆ 私は八坂さんと猿のおじいちゃんと楽しい京都を堪能してくるわ☆」

 

うん、かなり楽しげだ。

 

ちゃんと仕事してくださいね?

まぁ、大丈夫だとは思いますけど。

 

それだけのやり取りをして俺達は新幹線に乗車。

 

ホームで九重が俺に叫んだ。

 

「ありがとう、イッセー!」

 

「またな、九重!」

 

俺達は互いに手を振り合い、笑顔を返す。

 

 

プシュー

 

 

閉じる新幹線の扉。

 

発車しても九重が俺達に手を振り続けるのが見えた。

 

 

九重の姿が見えなくなると、俺達は各自の席に座る。

基本、来た時とほとんど同じだ。

 

俺の隣に座った美羽が言う。

 

「色々あったけど、楽しかったね。三泊四日なんてあっと言う間だったよ」

 

「だな。マジで色々ありすぎたぜ」

 

英雄派との戦闘もあるけど、観光もしっかりできた。

 

清水寺、銀閣寺、金閣寺に嵐山。

観光名所も予定通り回ることができた。

 

九重や八坂さんにも会えたしな。

 

あとは―――――

 

 

美羽の顔を見ると薄く頬を染めていた。

 

うん、なんだかんだでこれが一番のイベントだったような気がする。

 

 

俺と美羽は義理とはいえ、兄妹の一線を越えた。

 

後悔なんかしてないし、するはずもない。

 

俺は美羽のことを妹としても好きだし、一人の女の子としても好きだ。

 

その気持ちに変わりはない。

 

 

美羽が自身の太ももをポンポンと叩く。

 

「疲れてるでしょ? 来るときはしてもらったから、帰りはボクが膝枕してあげるよ」

 

そう言う美羽はニッコリと微笑んでいた。

 

め、女神がここにいた・・・・・・!

 

あー、もう!

 

なんでこうも可愛いのかね!

 

「じゃあ、お言葉に甘えてっと」

 

俺は横になって美羽の太ももに頭をのせる。

 

あー、柔らかくて気持ちいい。

 

しかも、良い香りがする。

 

ドキドキするけど、どこか安心感もあるんだよね。

 

 

膝枕最高!

 

 

 

ゾクリッ

 

 

妙な殺気が・・・・・・・。

 

振り向くとクラスの男子共が俺を睨んでいた!

 

「「「「ひ、兵藤ぉぉおおおおお・・・・・・!!」」」」

 

な、なんつー殺気だ・・・・・・・。

 

戦ってる時とは違う恐怖を覚えるぞ・・・・・。

 

立ち上がった松田と元浜が叫ぶ。

 

「皆のもの、静まれ! ここで暴れては他の乗客に迷惑をかける!」

 

「この男、兵藤一誠は駒王学園に帰り次第、我々『イッセー撲滅委員会』の手で制裁を加える! それまではその怒りを溜めておくのだ! 会員よ、その怒りをパワーに変えろ!」

 

「「「「おおおおおおおおおおっ!!!」」」」

 

二人の演説に手を振り上げて叫ぶ男子共!

 

なにこれ!?

 

死ぬの!?

 

俺、帰ったら死ぬんですか!?

 

って、おまえらも『イッセー撲滅委員会』のメンバーなんかいぃぃいいいい!!!!

 

クラスの男子ほぼ全員じゃん!

 

敵しかいないじゃん!

 

 

いや、この感じだと他のクラスにもいそうだ・・・・・・。

下手すれば学園中・・・・・?

 

 

「これから私達も頑張らないといけませんね」

 

「そうだったな。帰ってからも決戦だった」

 

「ええ、色々聞いちゃったし」

 

「リアスさん達も知ったらすごいことになりそう」

 

オカ研女子部員の呟きが聞こえてくる・・・・・。

 

そうでした、この娘達にはバレたんだった。

 

ど、どうしよう・・・・・・。

 

帰ってから大丈夫なのか、俺・・・・・・?

 

 

ってか、ゼノヴィア!

 

帰ってからも決戦ってどういうこと!?

 

おまえ・・・・・・・まさか!?

 

いやいやいや、おまえはまず腕を治療しようか!

 

帰ったら即病院なんだからよ!

 

 

「うぅ・・・・、美羽・・・・・・」

 

「アハハハ・・・・・・」

 

涙目で美羽に泣きつく俺とそんな俺の頭を苦笑しながら撫でる美羽。

 

俺の苦難は帰ってからが本番のようです・・・・・。

 

 

あ、美羽に撫でられるの気持ちいいな。

 

 

とりあえず、現実から逃げるため俺は目蓋を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

京都から帰還した俺達は部長達と合流し、そのまま冥界へ飛んだ。

 

もちろんゼノヴィアの付き添いだ。

 

冥界の病院に着いてからの医師の行動は迅速で、ほんの一時間程度でゼノヴィアの傷の処置が終わってしまった。

あの薬も既に投与済みだ。

 

先生の言った通り、回復の兆しはあったようで二日もすれば完治するとのことだった。

 

 

そんでもって、今はゼノヴィアの病室に集まっているわけだが・・・・・・・。

 

俺達、修学旅行組は京都でのことを部長から問い詰められていた。

しかも、正座で。

 

「なんで知らせてくれなかったの? と、言いたいところだけど、こちらもグレモリー領で事件が起こっていたものね。でも、ソーナは知っていたのよ?」

 

「は、はい・・・・・・すいません」

 

一応の説明は終えているんだけど、朱乃さんも小猫ちゃんも少々ご立腹の様子だった。

 

「こちらから電話した時に少しくらいは相談してほしかったですわ」

 

「そうです。水くさいです」

 

アリスも嘆息しながら続く。

 

「あんた、また奥義使ったでしょ?」

 

「あ、やっぱり分かる?」

 

「分かるわよ。さっきから動きがぎこちないんだもの。あんたって本当に無茶ばかりするんだから」

 

ハハハ・・・・・・。

 

流石はアリス。

 

お見通しのようで。

 

「というか、なんで私を呼ばなかったのよ? 私なら動けたのに」

 

「いや、アリスはまだこっちの世界に馴れてないし・・・・・」

 

「だからって、あんたがいなくなったら意味がないでしょ・・・・・・・バカ」

 

す、すいませんでした・・・・・。

 

「で、でも、皆さん無事に帰ってきたのですから・・・・・・」

 

ギャスパァァァァアアアッ!!

 

庇ってくれるのか!

 

皆の迫力に押されてオドオドしてるけど、その気持ちだけで俺は嬉しいぞ!

 

「まぁ、イッセーは現地で新しい女を作ってたけどな」

 

椅子に座る先生が場を混乱させるようなことを口走る。

 

女・・・・・?

 

「しかも九尾の娘だ」

 

九重のことかよ!

 

「そんなのじゃないですよ! 人聞きの悪い!」

 

「でもよ、八坂を見る限り、相当な美人で巨乳に育ちそうだぞ?」

 

た、確かに・・・・・。

 

美女で巨乳な九重か。

 

・・・・・・・いけるな。

 

 

いやいやいや!

 

「だ、だからって女を作ったってのは違うでしょ!? ただ仲良くなっただけですって!」

 

うん、俺は何も間違ったことは言ってないぞ!

 

「往生際が悪いやつめ。この天然女たらし」

 

「酷いっ!」

 

なんて言われようだ!

 

ねぇ、殴って良い?

やっちゃっていいかな、このラスボス先生。

 

『やってしまえ、相棒。俺が許す』

 

ドライグも乗り気だ。

 

おっぱいドラゴンのこと、まだ根に持ってるんだな。

 

すると、先生は何かを思い出したようだった。

 

「そういや、学園祭前にフェニックス家の娘が駒王学園に転校することになったみたいだぞ?」

 

「レイヴェルが!? マジで!?」

 

部長や朱乃さん、小猫ちゃん、ギャスパー、アリスは知っていたみたいで特に驚く様子はなかった。

 

俺達が修学旅行に行っている間にそういう話になったってことか。

 

「なんでも、リアスやソーナの刺激を受けて、日本で学びたいと申し出てきたらしい。学年は小猫と同じ一年。猫と鳥でウマが合わなさそうだが・・・・・それを見るのも一興か」

 

「・・・・・どうでもいいです」

 

先生の一言に小猫ちゃんは不機嫌そうに返した。

 

小猫ちゃんはレイヴェルが嫌いなのかな?

 

まぁ、同学年になるんだから仲良くしてね。

 

「でも、急ですね。なんで転校してくるでしょうね?」

 

俺の疑問に先生は意味深な笑みで俺を見てきた。

 

な、なんですか・・・・・?

 

「ま、そういうことだ。おまえ達も大変なもんだな」

 

そういうことってどういうこと!?

 

 

すると――――

 

 

「なるほど。またライバルが増えるということか。こうなれば早い内にイッセーと子作りするべきか? 美羽には先を越されたしな」

 

「「「「えっ!?」」」」

 

ゼノヴィアの呟きに部長、朱乃さん、小猫ちゃん、アリスの声が重なった!

 

うぉおおおおおい!?

 

何言ってくれてるの、この娘!?

 

「い、イッセー!? 今のはどういうことなの!?」

 

「美羽ちゃんに先を越されたというのは・・・・・つまり・・・・・!」

 

部長と朱乃さんが問い詰めてきた!

 

ものすごい迫力だ!

 

「イッセー先輩、答えてください」

 

うおっ!?

 

小猫ちゃんが背後に立って俺の逃げ道を塞いでいる!

 

いつの間に!?

 

「イッセー・・・・・どういうことなの? あんた、美羽ちゃんと・・・・・・したの?」

 

 

バチッ バチチチッ

 

 

アリスの周囲にスパークが飛び交ってる!

 

こ、これはヤバイ!

 

ど、どうすれば良いんだ!?

 

 

A 逃げる

 

B ごまかす

 

C 正直に言う

 

 

俺の頭に浮かんだ選択肢はこの三つ!

 

こ、ここは―――――

 

 

「お、俺は美羽と・・・・・その・・・・・・しました・・・・・はい・・・・・」

 

 

言葉を詰まらせながら言う俺。

 

そう、俺が選んだのはC!

 

やはり正直に言うしかないだろう!

アーシア達には既に知られてるからどのみちバレる!

それに逃げるのは男としてどうかと思うんだ!

 

 

さぁ、皆の反応は!?

 

 

 

「・・・・・そう、イッセーは美羽としたのね」

 

「いつかはこうなる日が来ると思っていましたが・・・・・」

 

「・・・・なんというか、流石です美羽先輩」

 

「ええっ!? 流石ってどういうことなのさ!?」

 

あれ・・・・・?

 

気落ちしているけど、普通の反応だな。

 

というより俺はてっきり普段よりも凄い展開になると思っていたんだけど・・・・・・。

 

どこか納得しているような気もする。

 

「・・・・・・・」

 

先程までスパークを放っていたアリスはというと、今では無言で目を伏せている。

 

俺は恐る恐る声をかけてみた。

 

「アリス?」

 

「・・・・・・イッセーのバカ」

 

「えっ?」

 

「何でもないわよっ」

 

アリスはプイッとあっちを向いてしまった。

 

う、うーん、怒ってるのかな・・・・・・?

 

 

パンっ

 

 

先生が膝を叩いて立ち上がる。

 

「ま、おまえらもその辺にしといてやれ。イッセーも奥義なるものを使って、よく言ってもボロボロなんだ。問い詰めるにも少し休ませてからにしろ」

 

おおっ、先生が珍しく助け船を出してくれた!

 

ありがとうございます!

 

マジで助かります!

 

「そうね、とりあえずは休ませてあげましょう。祐斗達もしっかり休養をとること。いいわね?」

 

『はい』

 

部長の言葉に修学旅行組がそう返事を返して解散となった。

 

 

はぁ・・・・・どうやら、俺の心配は杞憂に終わったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

[アザゼル side]

 

 

冥界から駒王町に戻った俺はサーゼクスに通信をいれていた。

 

目の前に魔法陣を開き、サーゼクスと映像が繋がる。

 

「サーゼクス、こちらで得た英雄派のデータを送る。あちらさんは上位の神滅具を三つも保有してる上、禁手祭り。イッセーの話では『龍喰者(ドラゴン・イーター)』なんてものも持ってるらしいぜ」

 

『聞き覚えのない単語だ。心当たりはあるかい?』

 

「いや、全く」

 

長いこと生きてきたが、俺もそんな名前は聞いたことがない。

 

名前からしてドラゴンに何らかの影響を与えるものだということは分かる。

今回もグレートレッドを呼び出して、それを使おうとしていたらしいからな。

 

ったく、いったいいくつ手札を持っているんだか。

 

やってくれるぜ、テロリスト共め。

 

『彼らには「三大勢力と妖怪の共闘関係を壊す」という名目があったようだからな。中心メンバーの思惑はともかく、下の者達にとっては正義の理由になるのだろう』

 

「ああ。結果、包囲網に参加した部隊にも大きく被害が出てしまった。魔獣創造のアンチモンスターもそうだが、想像以上に禁手の使い手が多くてな」

 

『禁手使いが戦況を悪化させた、か。やはり神器というのは恐ろしいものだな』

 

「おいおい。気持ちは分かるが、おまえまで神器を無くそうなんてこと言ってくれるなよ? 俺の楽しみが無くなる」

 

俺がそう言うとサーゼクスは笑う。

 

『そこまでは言わないさ。私達も神器によって助けられたことは多々ある。ようするに使い方次第ということだ』

 

それには同意するぜ。

 

神器の力は使い方次第で大きな利益をもたらすが、大きな被害を生むこともある。

 

まぁ、今回は後者だったが・・・・・。

 

「それで? 妖怪との交渉はどうなった?」

 

『上手くいった。今回の件を受けて妖怪側も協力体制を強く申し出てくれたよ』

 

「英雄派の行動の結果、協力体制を崩すどころか強めちまったってことだな」

 

皮肉というか、なんというか・・・・・。

 

「とにかく、協力体制を築けたのは大きい。詳細については後日話し合う。――――今回もイッセー達が戦果をあげたぞ」

 

『うむ、もう十分なくらいだ。特にイッセー君の場合、コカビエルの件や会談の時から大きな活躍をしてくれている。旧魔王派も実質、彼が一人で壊滅させたようなものだ』

 

「加えてロキと異世界でもな」

 

『ロスウォードと言ったか。二天龍を大きく越える存在だったと』

 

「ああ、奴はヤバかった。もし、こちらの世界に来ていたら、どこかの神話体系の一つや二つは確実に消滅していただろうさ」

 

『アザゼルがそこまで言う相手とはね。・・・・・・異世界のことは公には出来ないから公式の戦果としては数えられない。それでも、それを踏まえ我々四大魔王から推薦するつもりだ』

 

「となると――――イッセーの上級悪魔昇格は確実か」

 

『まぁ、彼の力はそれどころではないが・・・・・』

 

サーゼクスは苦笑する。

 

ま、イッセーは素の状態で最上級悪魔クラス。

禁手になれば魔王クラスときたもんだ。

 

上級悪魔でも控えめなくらいだぜ。

 

『それで彼の様子は? 神器が使えない状態でかなり無理をしたらしいが・・・・・』

 

「あー、本人曰くあと一日休めば治るんだとよ。特に心配はいらないってさ」

 

『それはよかった』

 

安堵するサーゼクス。

 

 

だが、俺は分かっていた。

イッセーを心配するなら別のことだということを。

 

まぁ、そっちの方は見ている側としては面白いから良いんだけどな。

 

さてさて、ついに女を知った奥手勇者様の今後はどうなることやら。

 

 

俺はワインの入ったグラスを片手に笑みを浮かべた。

 

 

 

[アザゼル side out]

 

 

 

 

 

 

修学旅行から帰った日の夜。

 

俺は一刻でも早く休みたかったので夕食を済まし、風呂に入った後、すぐにベットにダイブ。

 

錬環勁気功で痛みを誤魔化していたけど・・・・・・げ、限界。

 

全身がメチャクチャ痛い。

 

ちょっと触られただけでも悲鳴をあげそうだ。

 

気で痛めた体は自然治癒でしか治せないので、俺は安静にするしかない。

 

 

なんだけど・・・・・・・・

 

 

「あ、あの~、アリスさん? 何をして――――」

 

「見て分からない? 添い寝よ。添い寝」

 

ベットにダイブした直後、アリスが部屋に入ってきたんだ。

 

そして何も言わず、俺に並ぶかのようにベットに寝転んできた。

 

 

しかも、顔がかなり近い!

 

 

「い、いや、それは分かるんだけどさ・・・・・どうしたの?」

 

俺が尋ねるとアリスはプクッと頬を膨らませて――――

 

「えいっ」

 

ツンっと指先で俺の体をつついてきた!

 

「い、痛ぇええええ!!」

 

激痛が走り、悲鳴をあげてしまう。

 

大袈裟のように聞こえるかもしれないけど、マジで痛いんだって!

 

本当にちょっと動いたり触られたりするだけでヤバイから!

 

つーか、アリスもそのことは分かってるはずだろ!?

 

「な、何すんだよ!」

 

「天罰よ」

 

「天罰!?」

 

「あんた・・・・・美羽ちゃんとしたんでしょ? ・・・・・・(イッセーの初めては私が欲しかったのに)

 

ん?

 

今、なんて言った?

 

声が小さすぎて聞き取れなかったんだけど・・・・・・。

 

「イッセーの・・・・・バカバカバカバカ」

 

 

ツンツンツンツンツンツン・・・・・・・

 

 

なんか連続でつついてくるぅぅうううう!

 

「痛っ・・・・ちょ、マジ・・・・・やめてぇえええ!!」

 

激痛走ってるから!

 

本当にやめてください!

 

死ぬ!

 

死んでしまうって!

 

って容赦ないな、君は!

 

「な、なんでも言うこと聞くからやめてくれぇぇえええ!!」

 

心からの叫び!

 

もう、全身バキバキで限界だから!

 

 

俺が叫ぶとアリスはつつくのをやめてくれた。

 

あぁ・・・・・痛かった・・・・・・。

 

「な、なんでも言うこと聞くって本当・・・・・?」

 

「え、あ、うん・・・・・」

 

ほとんど助かるために言ったんだけど・・・・・・。

 

アリスは耳まで真っ赤にしてモジモジすると、潤んだ瞳で

 

「じゃ、じゃあ、今度・・・・・私とデートし――――」

 

 

バタンッ!

 

 

アリスがそこまで言いかけた時、部屋の扉が勢いよく開かれた。

 

何事かと思い、顔をあげると美羽が顔を真っ赤にして涙目で立っていた!

 

「ど、どうした、美羽・・・・・?」

 

俺が尋ねると――――

 

「うわぁぁぁぁぁん! 助けて、お兄ちゃぁぁぁぁあああん!!!」

 

美羽が俺に飛び込んできた!

 

再び全身に激痛が走る!

 

「ギャァァアアアアアアアアッ!!!」

 

断末魔のような悲鳴!

 

それを聞いて慌てる美羽。

 

「ご、ゴメン! だ、大丈夫!?」

 

「だ、大丈夫じゃないです・・・・・・。と、ところで、何があったんだ・・・・・・?」

 

「あ、うん。実はさっき――――」

 

 

ドタドタドタドタ

 

 

美羽がそこまで言いかけると聞こえてくる複数の足音。

 

現れたのはリアス、朱乃、小猫ちゃん達!

 

あ、今はプライベートだから部長はリアス、朱乃さんは朱乃って呼び捨てで呼んでるんだ。

 

 

「待ちなさい、美羽!」

 

「最後まで聞かせてもらいますわ! イッセー君とどんなプレイをしたのかを!」

 

「逃がしません」

 

なぬっ!?

 

三人の言葉を聞いて衝撃を受ける俺!

 

皆の姿が見えないと思ってたけど、またあの日のことを聞かれてたの!?

 

そりゃ、顔も真っ赤になるわ!

 

恥ずかしすぎる!

 

つーか、病院で大人しく下がったのは美羽に改めて話を聞くためか!?

 

あの静けさは嵐の前触れだったと!?

 

 

ドタドタドタドタドタドタ

 

 

再び聞こえてくる足音。

 

次に現れたのは入院中のゼノヴィアを除いた修学旅行組の女子部員達!

 

「イッセーさん! 私もイッセーさんの赤ちゃん欲しいです!」

 

「わ、私は天使だから・・・・でも、将来のために見学するわ! 見学くらいなら、なんとか耐えることができると思うし!」

 

「イッセー君、私はいつでも準備出来てるから! ・・・・・い、言っちゃった! 私、ついに言っちゃったよ!」

 

おいいいいいいいいいっ!!!

 

何だよ、この状況は!?

 

アーシアちゃん、ストレート過ぎる!

 

美羽の時は一応着けてたから!

子作りまではいってないから!

 

イリナの見学って何だ!?

そんなところで頑張らないで!

 

レイナはレイナでいつでもスタンバイしてると!?

この娘もかなりストレートだよね!

 

 

「いいもん! 美羽が教えてくれないなら実践するだけだもん!」

 

「そうね、リアス! イッセー君の体に直接聞き出しましょう!」

 

お姉様方は何を言っているのかな!?

 

実践!? 

俺の体に直接聞く!?

 

とんでもないこと口にしちゃってるよ!

 

 

つーか、リアスは「もん」って言った?

 

可愛いな。

 

 

いや、そんなこと言ってる場合か!?

 

 

誰か・・・・・・

 

頼むから、誰か・・・・・・

 

 

 

「たーすーけーてーーーー!!!!!!」

 

 

 

 




これにて修学旅行編は完結です。

次回は番外編かな?

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