ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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5話 ゲームに向けて!

記者会見の翌日。

 

俺は部室で盛大にため息をついていた。

 

手には冥界の朝刊が握られているんだが・・・・・

 

『おっぱいドラゴン、主の胸をつつく!?』

 

ひ、酷い見出しだ。

 

これにはリアスも顔を真っ赤にして、「もう冥界を歩けないわ」と、こちらも盛大にため息をついていた。

 

本当にゴメンね。

 

「昨日、リアスさんとアリスさんが涙目だったのはこれなんだね・・・・」

 

俺の隣から美羽が新聞を覗き込むようにして言う。

 

そういや、美羽には話してなかったな。

 

いや、そもそも誰かに話すような内容ではないが・・・・・。

 

「ま、まぁな。最も一番恥ずかしかったのはリアスだけどね。リアスは特撮の中での『スイッチ姫』であって、元ネタはアリスだし・・・・・ってか、アザゼル先生が勝手に巻き込んだと言うか・・・・・」

 

あのラスボス先生があっちこっちで余計なことをベラベラ喋るからいけないんだよ。

俺と美羽とのことも酔った勢いでヴェネラナさん達にぶちまけてるし、『おっぱいドラゴン』の裏話を話して記者さんに余計な情報与えてるし・・・・・・。

あの人が全ての元凶なんだよ。

 

ま、既に制裁は加えているけどな。

 

 

部室にいるのは俺と美羽、木場とギャスパーとレイナだ。

 

あとのメンバーはまだ来ていない。

 

同じクラスの教会トリオは学園祭に使う布地を求めて新校舎に向かっている。

 

「なぁ、ギャスパー。クラスでの二人はどうよ?」

 

と、ギャスパーに話題を振ってみる。

 

「は、はい・・・・・。小猫ちゃんとレイヴェルさんはことある度に口喧嘩ばかりですぅ」

 

二人は相変わらずか。

 

いつもは静かな小猫ちゃんなんだけど、レイヴェルに対しては容赦ないツッコミを入れるんだよね。

 

それでレイヴェルも怒って猫VS鳥が始まる訳なんだが・・・・・。

 

「で、でも、人間界に不馴れなレイヴェルさんに文句を言いつつも小猫ちゃんはきちんと面倒を見てあげてますし、レイヴェルさんも小言を言いながらも小猫ちゃんの後をついて回ってますよ・・・・・?」

 

なるほどなるほど。

 

何だかんだで上手くやっているみたいだな。

 

それは何よりだ。

 

「ま、二人とも意中の相手が分かってるからこそ、ぶつかっちまうんだろうな。同学年だから余計にな」

 

先程、部屋に入ってきた先生が開口一番にそう言った。

 

ちなみに顔には白い湿布が貼られてある。

 

それを怪訝に思ったのかレイナが先生に問う。

 

「そのケガは?」

 

先生は苦笑しながら、ガーゼを指差して答えた。

 

「あー、これか。容赦のない勇者様に鉄拳制裁くらってな。俺も悪いから文句は言えんのだが・・・・・なにも天武を使わなくてもいいだろうがよ」

 

「それは俺の分だけでなく、リアスの分も入ってるんで」

 

「ちったぁ、年寄りをいたわれ。二十歳の勇者様よ」

 

「そう言うんなら、暴露癖治してくださいよ! この未婚総督!」

 

「あぁ!? やんのか、ゴラァ!」

 

「やってやろうじゃないですか!」

 

 

バチッ バチチチチッ

 

 

俺と先生の間に火花が散り、二人のオーラが激しくぶつかり合う。

 

うん、この機会にしめてしまおうか!

今まで散々な目にあってきたし!

 

変な発明のせいで女の子にされちまった時もあったしな!

 

今までの恨みを晴らさせてもらおうか!

 

「まぁまぁ、落ち着こうよ二人とも・・・・・。二人が喧嘩したら学園が無くなっちゃうよ? そしたら、学園祭も出来ないし、先生のUFOも消えちゃう・・・・・」

 

美羽が俺達の間に入って、この場を治めようとする。

 

むぅ・・・・美羽に言われてはここは引くしかないか・・・・。

 

先生も「ちっ・・・・仕方がねぇ」と言いながらオーラを静めた。

 

だけど・・・・・

 

「総督。教師の仕事を放り投げていることはシェムハザ様に報告していますので、ご覚悟を」

 

流石はレイナちゃん!

 

この悪徳教師の素行の悪さを報告していたか!

 

先生もその一言に目元をヒクつかせている!

効果は抜群だ!

 

先生はコホンと咳払いをすると先程の続きを話す。

 

「ま、小猫もおまえの言うことを聞き続けてクラスでの面倒を見てくれるだろうし、レイヴェルも何だかんだで小猫を頼って人間界での生活に慣れていこうとするだろうさ」

 

それには同意するかな。

 

ギャスパーの話を聞く限りじゃそんな感じだし。

 

「・・・・ぼ、僕は小猫ちゃんのようにレイヴェルさんのお役にたてそうにないです。と、というか、プライベートでも戦闘でも皆さんのお役にたてそうにもなくて・・・・・」

 

ギャスパーが落ち込み気味に言った。

 

「おいおい、そう簡単に諦めるなよ・・・・・。おまえだって根性持ってんだからさ。ほら、会談の時も頑張ってたじゃないか」

 

会談で禍の団のテロがあった時だ。

相手の時間停止を止めるべく、俺とギャスパーが組んで解決したよな。

 

「あの時のおまえは根性出したと思うぜ? だから俺が保証してやるよ。おまえはデキる子だってな」

 

「うぅ・・・・イッセー先輩・・・・・。先輩は優しいですぅ!」

 

「あー、泣くな泣くな」

 

落ち込んでいる時に誉められたことが余程嬉しかったのか、号泣するギャスパー。

 

大袈裟過ぎるぞ・・・・・。

 

俺は抱きついてくるギャスパーの頭をよしよしと撫でながら言う。

 

「いいか、ギャスパー。男ってのは女の子を守れるくらいにならなきゃいけないんだ。おまえだって男なんだ。今は力がなくても、守りたい、誰かのために力を使いたいって気持ちさえあれば強くなれるさ」

 

「はいぃぃぃいっ!! ぼ、僕、頑張りますぅぅぅううっ!!」

 

うんうん、気合い入ったようだな。

 

ただ、ギャスパーの鼻水が俺の制服に・・・・・。

 

美羽達もこれには苦笑してるよ。

 

そんなやり取りをしているとリアスや他のメンバーが入室してきた。

 

あ、リアスがテーブルに置いてある朝刊を見て、ため息を・・・・・・。

 

うん、本当にゴメンね。

 

俺は心のなかで再度謝っていると、先生は全員集まった俺達を見渡すようにして言った。

 

「じゃあ、ミーティングを始めるぞ」

 

 

 

 

 

 

これからゲームに向けてのミーティングをする予定なんだが・・・・・先生の顔つきは険しいものだった。

 

「どうしたんですか?」

 

「・・・・ゲームについて話す前に各勢力について話したいことがあってな。ちょいと神器に関して厄介なことになりそうなんだ」

 

「厄介なこと?」

 

木場が訊くと先生は頷く。

 

「英雄派の連中のせいで禁手使いが増えているのはおまえ達も認識しているな?」

 

「ええ。実際に戦いましたから」

 

修学旅行に行った俺達二年生は京都で英雄派と戦った。

 

幹部もそうだけど、他の構成員にも禁手使いがいて、俺なんか一度に三人を相手取ることになったもんな。

 

俺が万全じゃなかったこともあるけど、能力が厄介だった。

 

「あいつら、英雄派に属していない神器所有者や悪魔に転生している神器所有者にその禁手に至る方法を伝え始めているという情報が入ってな」

 

「それってかなりマズいですよね?」

 

「ああ。かなりマズい。おまえらも知っていると思うが神器所有者ってのは必ずしも良い人生を送れたわけじゃない。中にはその異能ゆえに迫害、差別された者も少なくない」

 

確かに。

 

俺は事情が特殊だから、ともかく・・・・・・アーシアやギャスパーは神器のせいで辛い目にあっている。

 

いや、今はリアスの眷属として幸せに生活はしているが、その前はかなり辛い人生を送っていた。

 

先生は他にも、と付け加える。

 

「悪魔に転生した所有者も理不尽な取引で眷属になったケースだってある」

 

「・・・・・全ての悪魔が良心的なわけではないものね。上級悪魔にも心無い者は少なからずいるわ。人間界の影響で多様な考えを持つ悪魔が増えてはいるけど、本来は合理的な思考を持つのが悪魔ですもの」

 

俺はリアスを見極めた後、自分から眷属になったもんな。

リアスは何度もそれで良いのか、と確認をしてくれたけど・・・・・・全ての悪魔が優しいわけではない。

 

強引な方法で転生させられた者もいる、か。

 

「理不尽な思いで暮らしている神器所有者もいるってことだ。その者達が世界の均衡をも崩すと言われる禁手に至る。するとどうなるか・・・・・分かるな?」

 

その言葉に部室に緊張が走った。

 

先生は表情に影を落としながら言う。

 

「人間なら他者への復讐、世俗への逆襲。転生悪魔なら己を虐げてきた主への報復を考えるだろう。そうなれば世界各地で暴動が起こる。完全なパニックに陥るだろうさ」

 

俺は血が滲むほど拳を強く握った。

 

クソッ・・・・・

 

京都で英雄派を潰せておけば、こんなことにはならなかったはずだ・・・・・!

 

「お兄ちゃん・・・・・」

 

美羽が血の滲む拳に手を置いて俺を落ち着かせようとしてくれる。

 

皆も俺の心情に気づいたのか、こちらへ視線を送っている。

 

「おまえの気持ちは痛いほど分かる。だが、ここは抑えろイッセー。あの時、作戦に参加した全ての者がおまえと同じ気持ちなんだ」

 

「・・・・・すいません、俺・・・・・・」

 

俺が謝ると先生は息を吐きながら首を横に振った。

 

そうだ、英雄派の行動に怒りを覚えているのは俺だけじゃないんだ。

 

ここにいるアザゼル先生や木場達だって腹の内は煮えくり返ってるだろう。

 

俺一人が熱くなる訳にはいかない。

 

「今後、英雄派の行動にはより一層の注意を払うことになる。こちらも本気で構えなければ足元をすくわれるだろうからな。おまえ達もその辺りは覚悟しておいてほしい」

 

『はい!』

 

俺達全員が返事を返す。

 

これ以上、あいつらに好き勝手させてたまるかよ。

 

次あった時には必ず―――――

 

ここで先生は咳払いして重たくなった空気を払拭する。

 

「と、俺がここに来たのはサイラオーグ戦へのアドバイザーとしてだったな。ゲームも近いし、話を変えよう」

 

そうだな。

 

元々今日のミーティングはそれがメインなわけだし。

 

俺は部屋の雰囲気を変える意味合いも兼ねて先生に質問する。

 

「サイラオーグさんも先生みたいにアドバイザーが付いているんですか?」

 

俺達グレモリー眷属にはアザゼル先生がアドバイザーについている。

 

一勢力のトップがアドバイザーについている時点で俺達は若手にしては恵まれているだろう。

 

他の若手にはアドバイザーなんて付いていないところもあるみたいだからな。

 

「ああ、向こうにもいるぜ。皇帝様が付いたそうだ」

 

「っ! ディハウザー・べリアル」

 

先生の一声に一番反応したのはリアスだった。

 

将来、ゲームで各タイトルをゲットしたいリアスにとっては目標となる存在だからな。

 

「まぁ、おまえ達が正式参戦し上を目指すなら避けて通れない相手だ。それからもう一つ。サイラオーグはタンニーンと毎日ガチンコの修行をしてるんだと」

 

「なっ!?」

 

その追加情報に今度は俺が一番反応した。

 

タンニーンのおっさんとガチンコの修行!?

 

「サーゼクスに聞いたんだが、以前、イッセーと手合わせした時に自分の力不足を実感したんだと。そんで、次の日にはタンニーンに頼み込んで修行相手になってもらっているそうだ」

 

マジかよ・・・・・。

 

昨日、サイラオーグさんのオーラが数段上がっていたのはそれでか・・・・・。

 

「あいつは本気でおまえを倒しに来るぞ。他の眷属も相応のレベルアップはしているだろうが、サイラオーグ本人に関しては前回のグラシャラボラス戦、そして先日の手合わせの時とは別人と考えていいだろうぜ」

 

先生の言う通りだ。

 

次のゲームまでにあの人はどこまで力を伸ばしてくるか――――

 

ヤバイな・・・・・・。

 

なんか、体の底から高揚してきたぞ・・・・・・!

 

今からゲームが待ち遠しくて仕方がない!

 

俺が一人高揚しているなか、先生は話を続けていく。

 

「サイラオーグ達は禍の団相手にも戦っているって話だから危険な実戦も積んでいる。『若手を戦にかり出さない』というサーゼクス達の意向も虚しいか。おまえ達みたいに無茶な戦闘に連続で出くわす若手もいるしな」

 

先生が苦笑しながら言う。

 

いや、本当にそう思うよ。

 

今の悪魔業界って戦が珍しいって聞いてるのに、俺達は強敵と出くわしすぎでしょ。

 

俺は出来るだけ平和に生きたいね。

 

モニターに映し出された記録映像を見て、ロスヴァイセさんが言う。

 

「・・・・・・・この『兵士』、記録映像のゲームには出てませんよね?」

 

ロスヴァイセさんの視線の先に映っているのはサイバーな作りの仮面を被った者。

名前も『兵士(ポーン)』ってされている。

 

サイラオーグさんの眷属は女王1、戦車2、騎士2、僧侶2、そして兵士が1。

こちらの陣営と似た構成だ。

 

「記者会見でも記者が兵士について質問をサイラオーグ・バアルに向けていましたね」

 

と、木場が言う。

 

確かに訊かれていたな。

 

でも、会場にはいなかったはずだが・・・・・。

 

「そいつは滅多なことではサイラオーグも使わない兵士だそうだ。情報もほとんど無くてな。仮面を被っていてどこの誰だか分かりもしない。今回、初めて開示された者だ」

 

「ということは俺と同じで初出場?」

 

「そうなるな。噂では兵士の駒を六つか七つを消費したとのことだ」

 

『六つ!? 七つ!?』

 

異口同音で驚愕の声を出す俺達!

 

マジか!

 

となると相当な手練れか潜在能力を持っているってことだな!

 

先生が続ける。

 

「データが揃ってない以上、この兵士には細心の注意が必要となる。こいつはサイラオーグの隠し玉、虎の子・・・・・・いや、サイラオーグの家系的には獅子の子と言った方が良いか?」

 

獅子の子、か。

 

サイラオーグさんのお母さん、ミスラさんは獅子を司るウァプラ家の出だもんな。

 

そういえば、あの治療行為からどうなったのだろう?

 

 

その後はゲームの戦術と相手への対策を話合い、皆で一つ一つ詰めていった。

 

眷属でない美羽達は興味深そうに話を聞き、レイヴェルは一生懸命メモを取っていた。

レイヴェルは勉強熱心だな。

 

 

 

 

 

 

ミーティングも終わった後は帰るだけなので今は部室でゆっくりしている。

 

木場はゼノヴィア、イリナと剣について語ってるし、美羽と朱乃とアーシアとギャスパーは服の雑誌を見ながら何やら話してる。

 

男子のギャスパーが女子に混じって女の子の服(自分用)を選んでいる光景が違和感ゼロなのがあいつの凄いところだと思う今日この頃。

 

レイナと小猫ちゃんはまたスイーツを食べに行くらしく、店をチェックしていた。

 

俺は一人で紅茶を飲んでいる。

 

あ、リアスにミスラさんがどうなったか訊いてみるか。

 

何か情報が入ったかもしれないし。

 

「リアス、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

 

と声をかけてみるが、

 

「・・・・・・・」

 

返事が返ってこない・・・・・・というより、聞こえてないなあれは。

 

机の上に置いてある本の背表紙を見つめながらボーッとしてる。

 

さっきのミーティングではハキハキしてたんだけど・・・・・。

 

「リアス?」

 

「えっ? あ、なにかしら?」

 

「うん、あのさ――――」

 

もう一度声をかけたら、応じてくれたけど・・・・・・。

 

少し慌てたような感じだな。

 

何か悩みごとでもあるのだろうか?

 

 

 

 


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