ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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8話 想いを背負います!

専用の待機室に案内された俺達。

 

そこは部屋というより広いフロアで、休憩スペースから軽く体を動かすためのトレーニングスペースがある。

もちろん、器具も全て揃っている。

 

体を使うメンバーは俺を含めて、ジャージに着替えて軽い調整を始めていた。

 

木場とゼノヴィアは訓練用の木刀で軽く撃ち合い、俺と小猫ちゃんは軽く組手をしてみる。

 

やっぱりある程度は体を動かしておかないと、試合の時に緊張して動けなくなるかもしれないしな。

 

『よく言う』

 

ドライグが何か言っているがそれは無視。

 

 

部屋に着いた後、一度神器の中に潜ったんだが・・・・・。

 

俺が潜った時には既にイグニスがやらかしていてだな・・・・・歴代の女の子が骨抜きにされていた。(エルシャさんは逃げ切ったみたいだった)

 

流石に酷かったので、無理矢理止めてきた。

 

そしたら、ドライグも一応の回復はしてくれた。

 

 

「・・・・えいっ」

 

「うんうん、良い感じだよ」

 

なんて会話をしながらウォーミングアップをしていると―――

 

 

「邪魔をする」

 

男性が入室してきた。

 

「ライザー!」

 

「お兄様!」

 

その男性の登場に素っ頓狂な声を出すリアスとレイヴェル。

 

そう、その男性とはライザー・フェニックスだった!

 

修学旅行前の『焼き鳥復活計画』以来じゃないか。

 

「よー、様子を見に来てやったぜ。レイヴェルも元気そうじゃないか」

 

言うなり、ライザーはフロアの椅子に座る。

 

俺達のゲームを観戦しに来たんだろうけど、引きこもりは完全に治ったようだな。

 

朱乃がライザーにお茶を淹れ、ライザーがカップに口をつける。

 

「ゲームについて少し話そうと思ってな。今日のゲームはプロの好カード並みに注目を集めている。観客も席を埋め尽くす勢いだしな。ゲームの流れもプロの試合と同じだろうな」

 

あー、そういや、リムジンの中からチラッとドームの方を見たけど凄い人の数だったな。

 

今までの若手のゲームは決まったフィールド内で戦って最終的に王を倒せば勝ちという単純なルールだったけど、プロの試合と同じってことは特殊なルールもつくのだろう。

 

「おまえ達はほとんどプロと同じ舞台で戦うことになる。実戦とは違うエンターテイメント性を強く感じて戸惑うこともあるだろう。だが、これだけの大舞台だ。力を発揮すれば当然、評価にも繋がる。リアス、おまえにとって一つの正念場だ」

 

ライザーは真面目に語っていた。

 

プロとして、先人としての意見を向けてくれていた。

 

ライザーに言われ、リアスは目を細める。

 

「・・・・・私がここまで来れたのは眷属のお陰よ。今まで守ってもらってばかり・・・・・・。だから、この子達を上手く導けていない自分の未熟さに怒りを覚えるわ」

 

リアスも不安なんだな。

 

どんなに気丈に振る舞っていてもリアスだって一人の女の子なんだから仕方がないさ。

 

リアスの言葉を聞き、ライザーが言う。

 

「眷属を導く力、か。それは俺が嫌いな『努力』と経験を積めばある程度のものは得られる。今は未熟でもな。だがな、巡り合い――――良い人材を引き寄せる才能は別だ。この場にいる面子はおまえの持つ巡り合いの良さで集まった眷属だと思うぞ?」

 

「けれど、それは赤龍帝であるイッセーが引き寄せた部分も強いと思うわ」

 

「だが、赤龍帝と出会ったのはおまえの運命だ。違うか? 確かにドラゴンの強者を引寄せるという特性が働いたのかもしれんが、その赤龍帝と出会い、眷属にしたのはおまえだろう?」

 

ライザーは真っ直ぐな目でリアスに言った。

 

「自信を持てリアス。こいつらはおまえの宝だ」

 

おいおいおい・・・・・・

 

ライザー、良いこと言うじゃないか!

 

ヤバいよ!

 

俺、ちょっと泣きそうになったじゃないか!

 

ライザーは自分の言ったことに恥ずかしくなったのか、頬をかきながら続ける。

 

「ま、前回のゲームで負けた俺が言うのもなんだけどな。とにかく応援してるぜ、リアス。―――勝てよ」

 

「ええ、もちろんよ」

 

ライザーの激励にリアスも晴れやかな表情で応じる。

 

リアスは今までも王としての自分に頭を悩ませているようだったから、ライザーのお陰でそれが少し楽になったようだ。

 

「ん? どうした赤龍帝?」

 

俺がライザーの方をジッと見ていると声をかけられた。

 

俺は苦笑しながら答える。

 

「いや・・・・・前会った時とは大違いだな、と。ライザー・・・・・あんた、メチャクチャ良いやつじゃないか!」

 

「う、うるさい! あの事にはもう触れるな! あれは俺の黒歴史なんだよ!」

 

おーおー、慌ててるぜ。

 

ま、確かにあれは黒歴史以外の何物でもないわな。

 

ライザーは咳払いをすると、こちらに拳を突き出してきた。

 

「おまえも早く上級悪魔になって自分の眷属を持て。そして、プロの世界にこい。今度こそおまえに勝ってみせる。プロの本当の怖さを教えてやるよ」

 

「上級悪魔になって自分の眷属ね・・・・・。OKだ。最高のチームを作ってあんたと再戦してやるぜ。もちろん勝つのは俺だけどな!」

 

「いいや、勝つのは俺だ!」

 

俺達はニッと笑って互いの拳を合わせる。

 

全く、人ってここまで印象が変わるもんなのかね?

 

前回までのライザーとは大違いじゃないか。

 

ライザーの視線がレイヴェルに移る。

 

「それから、レイヴェルを頼む。こいつも中々のワガママだが、一途な奴でな。泣かしたら燃やすぞ?」

 

「お、お兄様!? よ、余計なお世話ですわ!」

 

レイヴェルが顔を真っ赤にして返していた。

 

それだけ確認すると「俺も焼きが回ったもんだ」と自嘲しながら退室していった。

 

ありがとな、ライザー。

 

おまえのお陰で眷属全員の気合いが高まったよ。

 

と、心の中で礼を言っていると扉が再び開き、ライザーが顔を出した。

 

「そうだ、言い忘れてた。赤龍帝、さっきサーゼクス様からおまえを呼ぶように言われてたんだった。VIPルームの方でお待ちだ。なんでも見せたいものがあるそうだ」

 

「サーゼクスさんが? 分かった行ってみるよ」

 

見せたいものってなんだろうな?

 

俺は単身、サーゼクスさんの待つVIPルームへと向かった。

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、俺はVIPルームに来ていた。

 

広い上に豪華な家具が揃った部屋で、まさにVIPって感じだ。

 

「悪いね、イッセー君。試合前に呼び出してしまって」

 

サーゼクスさんが朗らかに迎えてくれた。

 

俺は手を横に振って笑う。

 

「いえいえ。ウォーミングアップを済ませて、後は試合開始までゆっくりするつもりだったので。それで、俺に見せたいものというのは? ・・・・・まさか、リアスの幼少期のビデオですか!?」

 

そう!

 

以前話してそれっきりだった、リアスの映像集!

 

俺はまだ見ていない!

 

「それも見せたい! また君と語り合える時を楽しみにしているのだよ! だけど、私も君も中々に時間が合わなくてね・・・・・・。職務を疎かにするとグレイフィアに怒られるし・・・・・・どうしたものか」

 

うーむ、と頭を悩ませるサーゼクスさん。

 

俺も是非とも見てみたいものだ。

 

幼い頃のリアス!

 

写真で見たけど、可愛すぎだろ!

 

「まぁ、リアスの映像集については日を改めよう。それで今回、君に見せたいものはこれだ」

 

サーゼクスさんはテーブルに置いてある円盤を手に取り、俺に見せる。

 

「それはディスク? ビデオか何かですか?」

 

「うむ。君の熱烈なファンが送ってくれたのだよ。それをぜひ見てもらおうと思ってね」

 

サーゼクスさんは頷き、円盤をテレビ備え付けの再生機器らしきものに入れる。

 

そして、テレビのモニターに映像が映し出される。

 

そこにいたのは俺の禁手状態を模した人形を手にした男の子だ。

 

これは・・・・・ホームビデオか?

 

男の子はカメラに向かって口を開く。

 

『おっぱいドラゴン、こんにちは。ぼくはおっぱいドラゴンがだいすきです。いつもみてます。うたもうたえます。こんどのゲーム、ぼくはみにいけないけど、おうちでおうえんしてます。だから、ゲームでかってね』

 

――――っ

 

映像が切り替わり、今度は幼い兄妹が映し出された。

 

『おっぱいドラゴン! だいすき!』

 

『かってね!』

 

次は両親と共に映る子供。

 

『おっぱいドラゴン、おうえんしてます。そっちにいけないけど、ぼくはずっとおうえんしてます』

 

子供達からの応援のビデオレター・・・・・・。

 

映像は何度も切り替わり、たくさんの子供達が俺に応援のメッセージを送ってくれていた。

 

「今日のゲームは冥界全土に生中継されている。会場に来ている者だけではない。テレビの前で多くの子供達が君を見ているんだ」

 

サーゼクスさんは部屋の奥から段ボール箱を持ってきて、机の上に置く。

 

蓋を開けて中を見るとたくさんの手紙が丁寧に入っていた。

 

「読んでもいいですか?」

 

「もちろんだとも」

 

俺はいくつかな手紙を手に取り、中を読んでいく。

 

その全てが俺への応援メッセージだった。

 

拙い悪魔文字だけど、想いはしっかりと籠められていて――――

 

サーゼクスさんが言う。

 

「イッセー君、君にお願いがある。今日のゲーム、この子達のためにも戦ってくれないだろうか? この子達は冥界の未来だ。この子達の夢を守ってほしいのだよ」

 

『ふふふ、あなたはこっちの世界でも、悪魔になっても変わらないみたいね。あなたは皆の希望となる存在よ、勇者様♪』

 

『まぁ、おっぱいドラゴンという名前に関しては思うところはあるが・・・・・・。イグニスの言う通りだな』

 

二人の相棒もサーゼクスさんに続いてそう言ってくる。

 

夢を守る・・・・・皆の希望、か。

 

気がつけば、いつの間にかそんな風になってたんだな、俺。

 

「今日のゲーム、負けるわけにはいかないな。リアスのためにも、この子達のためにも」

 

 

だから、俺は全力を以て全ての想いに応えてみせる!

 

 

 

 

 

 

ゲーム開始まであと十分ほど。

 

俺達はドーム会場の入場ゲートに続く通路で控えていた。

 

ゲートの向こうから会場の熱気と明かりがさしこみ、同時に大勢の観客の声も聞こえてくる。

 

俺達の戦闘服はお馴染みの駒王学園の制服。

ただし、耐熱、耐寒、防弾、魔力防御などと、あらゆる面で防御力を高めた特別仕様だ。

通常の制服と比べると頑丈に作られている。

 

アーシアはシスター服。

ゼノヴィアは自前のボディーラインが浮き彫りの戦闘服。

ロスヴァイセさんもヴァルキリーの鎧姿だ。

 

三人ともそちらの方が使いなれていて落ち着くらしい。

作りは俺達と同じだ。

 

ギリギリまで各自のリラックス方法で待機しているなか、俺はリアスに声をかける。

 

「リアス、いけるか?」

 

「全く緊張しないと言えば嘘になるけれど大丈夫よ」

 

「そっか。・・・・・・ちょっと背中をこっちに向けてくれるか?」

 

「?」

 

リアスは怪訝な表情となりながらも俺に背中を向ける。

 

俺はリアスの両肩に手を置き、体の気の巡りを整えていく。

 

「これって・・・・・ライザーとのレーティングゲームでもしてもらったわね」

 

「落ち着くだろ? そこらのマッサージよりはリラックス出来ると自負してるよ」

 

俺が笑ってそう言うとリアスも微笑みを返してくる。

 

それから少しすると会場の方から進行役と思われる人の声が聞こえてくる。

 

『さぁ、いよいよ始まります! 東口ゲートからはサイラオーグ・バアルチームの入場です!!』

 

「「「「わぁぁぁああああああああっ!!!」」」」

 

そのアナウンスに会場が一斉に沸き立った!

 

スゲー声援だ!

 

こっちにまでビリビリ伝わってくる!

 

「・・・・緊張しますぅぅううっ!!」

 

「・・・・大丈夫。カボチャだと思えば怖くないよ、ギャー君」

 

緊張するギャスパーと落ち着いた様子の小猫ちゃん。

 

「ゼノヴィアさん、イリナさんがグレモリー側の応援席で応援団長をやると聞いたのですが」

 

「そのようだぞ。なんでもおっぱいドラゴンのファン専用の一画で応援のお姉さんをすると言っていた。応援団の衣装まで用意してな」

 

というアーシアとゼノヴィアの会話も聞こえてくる。

 

イリナは応援団長ね・・・・・。

 

しかも専用の衣装まで用意しているとは準備が良いことで。

 

レイヴェルもおっぱいドラゴンのファン席側に席が取れたと言っていたな。

 

レイヴェルとイリナは同じ場所にいるんだろうな。

 

となると、美羽とアリスとレイナはヴェネラナさんと一緒にいるのかな?

 

特にアリスは一番こういう空気には慣れてないから、専用の部屋で見てくれている方が俺としても安心できる。

 

アリスは王国の祭典とかで賑やかな場には出てたこともあるけど、今回のはそれとまた違った感じだしね。

 

『そして、西口ゲートからはリアス・グレモリーチームの入場です!!』

 

ついに俺達が呼ばれた。

 

「「「おおおおおおおおおぉぉぉぉっ!!!」」」

 

観客もかなりヒートアップしてるな。

 

さて、俺達も行きますか!

 

皆と視線が合い互いに頷き合う。

 

リアスが皆を見渡して一言だけ言った。

 

「ここまで私についてきてくれてありがとう。――――私達の出番よ。絶対に勝ちましょう!」

 

「「「はいっ!」」」

 

返事をする俺達。

 

そして、ゲートを潜った。

 

ついにゲームが始まる!!

 

 

 

 

 

 


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