ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝   作:ヴァルナル

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11話 小猫の願い

魔法陣から木場が帰還してくる。

 

「お疲れ、ナイスファイト」

 

「お疲れさまです、祐斗先輩」

 

戻ってきた木場とハイタッチを交わす俺と他のメンバー。

 

「木場さん、すぐに治療しますね」

 

「ありがとう、アーシアさん」

 

アーシアが木場のもとへと駆け寄り、傷を負った場所に手を当て、回復していく。

 

戻ってきたときに回復を受けられるのは俺達の強みでもあるよな。

 

治療を受けながら木場が真剣な顔で言う。

 

「やはり映像で見た時よりも実力は上がってたね。サイラオーグ・バアルだけでなく、彼の眷属も実力を上げているのは間違いないよ」

 

「主のサイラオーグさんがタンニーンのおっさんのところで修行してるくらいだしな。あの人は眷属からの信頼も厚そうだし、主が自分を磨こうとすれば眷属だって着いていくさ」

 

それは俺達も同じだけどな。

 

『初戦を制したのはグレモリーチーム! さぁ、次の試合はどうなるのでしょうか! 王はダイスを振ってください!』

 

実況の指示に従って再びダイスが振られる。

 

出目は――――リアスが6、サイラオーグさんが4。

 

合計は10!

 

今度は大きい数字だ!

 

『今度の合計数字は10! 両陣営、10までの選手を出せる事になります! 勿論、複数での選出もOKな数字です!』

 

作戦時間が始まり、次の試合に出すメンバーを決める。

 

さて、リアスはどうするつもりだろう?

 

俺や朱乃、王であるリアス自身は数が大きいからこの数字では単独になる。

 

木場はさっき出たから連続で出場出来ないルール上、無理か。

 

ま、今は休んどけよ。

 

また陣地が結界に覆われて外部から遮断される。

 

すると、リアスが口を開く。

 

「手堅くいきましょう。ロスヴァイセ。それとサポートに小猫。2人にお願いするわ」

 

「分かりました」

 

「・・・・・了解です」

 

ダブル戦車ときましたか!

 

戦車は駒価値5だから、二人でちょうど合計が10になる組み合わせだな。

 

二人とも気合いを入れて魔法陣の方の上に乗る。

 

さて、こちらは戦車の二人だが、あちらは何を出してくるか・・・・・・。

 

魔法陣が輝き、二人が転送されていった。

 

 

 

 

 

 

映像に映し出されたフィールドは薄暗い神殿らしき場所だった。

 

あちこちに巨大な柱が立っていて、奥には祭壇らしきものもある。

 

ディオドラの時にあったような神殿だ。

 

・・・・・・嫌な記憶を思い出させるな、このフィールド。

 

気になる相手だが、ライト・アーマーに帯剣と言う装備をした金髪の男と、背丈が三メートルはありそうな巨人。

 

『俺はサイラオーグさまの騎士の一人、リーバン・クロセル。こちらのデカいのは戦車のガンドマ・バラム。この二人でお相手する』

 

『・・・・・・』

 

騎士のリーバン・クロセルが自己紹介をしてくれるが、戦車のガンドラ・バラムは無言のまま。

 

それにしてもデカいな。

 

背丈もそうだけど、全体的にガタイが良い。

 

特に前腕が極太で、小猫ちゃんの胴体よりも大きいんじゃないだろうか?

 

「バラムは怪力が家の特色だったっけ?」

 

「そうだね。記録映像でもガンドマ・バラムの怪力は凄まじかったね」

 

俺の問いに木場が答える。

 

それからもう一つ。

 

俺の記憶が正しければクロセル家は元七十二柱で断絶していたはずだ。

 

ということは、あのリーバン・クロセルは断絶したクロセル家の末裔ってことになるな。

 

現冥界の政府は断絶した末裔が生き残ってないか捜索もしており、人間界に住んでいる悪魔を保護をしている。

 

人間界に住む上級悪魔の仕事の一つがそれで、リアスも過去に何度か保護したことがあると言っていた。

 

『第二試合、開始してください!』

 

審判の合図で試合が開始される。

 

「・・・・相手が相手なので初っぱなから本気で行きます」

 

小猫ちゃんは全身に闘気を纏わせ、猫耳と尻尾を出し、尻尾が二つに分かれた。

 

これは小猫ちゃんの新技で『猫又モードレベル2』というもの。

 

仙術を使って全身に闘気を纏わせる事で一時的にパワーを爆発させる事が出来る。

 

身体能力も上昇するんだ。

 

周囲の気を取り込む訳じゃないから錬環勁気功の奥義とは違うもの。

 

小猫ちゃんに教えてくれと言われたんだけど、あれは体に相当な負荷を強いるから今の小猫ちゃんにはまだ早いんだよね。

 

小猫ちゃんは素早く飛び出してバラムの顔面に一撃!

 

 

ドゴンッ!

 

 

豪快な音が鳴るが、バラムは全く怯まず、すかさず反撃に出る。

 

その巨大な腕から繰り出されるスイングはその風圧だけで、周囲に立っている柱を壊してしまう!

 

いくら戦車で頑丈な小猫ちゃんでもまともに受ければアウトだ!

 

小猫ちゃんはそれを身軽にかわして、バラムの体に次々と鋭いパンチを当てていく。

 

気を練った拳を当ててるんだ。

 

体が大きい分、効きにくいがいずれは内部の気を乱し、動けなくすることが出来る。

 

それまで、小猫ちゃんがバラムの拳をくらわなければいけるはずだ。

 

『ぬんっ!』

 

バラムが豪快に腕を振るう。

 

再びブゥゥゥゥンと空気を震わせながら、小猫ちゃんを狙う。

 

だけど、その大振りが小猫ちゃんに当たるわけもなく、小猫ちゃんは素早く避けた。

 

すかさず、その後方からロスヴァイセさんが魔法攻撃のフルバーストを放ち、その全てがバラムを襲う!

 

 

ドドドドドドドドンッ!!!

 

 

あらゆる属性の魔法砲撃で砂塵が舞うが――――その中からぬぅっとバラムが姿を現した。

 

体から煙が上がっているが、これといったダメージは受けていないようだ。

 

「・・・・・魔法に対する防御も高い。何だか最近、この手の相手に出くわしてばかりですね! それなら!」

 

ロスヴァイセさんは京都で相対したヘラクレスのことを言ってるんだろうな。

 

そこでロスヴァイセさんは召喚用の魔法陣を展開し、リーシャから貰ったという魔装銃を取り出すが――――

 

 

ズゥゥゥゥッ!

 

 

ロスヴァイセさんと周囲が突然ブレ出す。

 

何かに押し潰されたかの様に地面が凹み、ロスヴァイセさんが膝を付く!

 

『隙アリだ、お姉さん』

 

バアル側の騎士リーバン・クロセルが目を光らせながら言う。

 

そうか、あいつはそんな能力も持ってた!

 

映像で見た記憶がある!

 

『・・・・・重力操作の能力!!』

 

ロスヴァイセさんが足下に魔法陣を展開させようとする。

 

クロセルは手元に魔方陣を展開させ、ロスヴァイセさんの足を凍らせた!

 

『そう言えば、魔法剣士でしたね!』

 

『俺はクロセル家と魔法使い、人間の血も宿す混血でね! ついでに剣術も得意だ! 重力の方は神器、魔眼の生む枷(グラビティ・ジェイル)の能力さ!』

 

「彼の神器は視界に映した場所に重力を発生させるもの! 彼があなたから視線を外さない限りは能力は続くわ! 気を付けて!」

 

リアスがイヤホンマイクを通してロスヴァイセさんに告げる。

 

ギャスパーの時間停止能力には劣るが、相手の動きを止めるのは厄介なものだ。

 

『さぁ、あなたにはここでリタイヤしてもらう!』

 

クロセルが剣を抜き放ち、ロスヴァイセさんに迫る!

 

重力で動けないロスヴァイセさんは避けられない!

 

『・・・・・いくら重力で動けないとしても!』

 

ロスヴァイセさんは魔法陣を展開。

 

すると、手元にあった魔装銃が消えた。

 

 

なんだ?

 

 

怪訝に思うクロセルと俺達だが、次の瞬間―――――

 

 

ドォォオオオオオオオオオンッ!!!

 

 

上からクロセル目掛けて、一筋の光が降り注いだ!

 

クロセルは咄嗟に回避したのでダメージは与えられなかったが、クロセルの視界から逃れたロスヴァイセさんは重力から抜け出すことができた。

 

『上からの攻撃!? っ! あれは――――』

 

クロセルが上を見上げると一丁の狙撃銃がロスヴァイセさんの手元に落下してきていた。

 

おいおい・・・・・もしかして、これって・・・・・・。

 

『ええ、あなたが話している間に魔装銃をチャージしておきました。あとは魔法を使って遠隔操作で狙撃するだけ。外したのは勿体無いですが、なんとか視界から抜け出せましたね』

 

遠隔操作での狙撃か!

 

木場みたいなことするな!

 

しかも、魔装銃を消すことで相手の注意を反らして対応を遅らせた。

 

流石は北欧主神のお付きを任されるだけはある!

 

 

と、ここで小猫ちゃんが俺に通信を入れてきた。

 

『・・・・イッセー先輩、後で膝に乗っても良いですか?』

 

え、えーと、小猫ちゃん?

 

巨人と戦ってる最中に何を言ってるのかな?

 

『・・・・・イッセー先輩が後で膝枕もしてくれたらもっと強くなれます』

 

なんか要求が増えてない!?

 

あれか!

 

デートするって言ったら朱乃がパワーアップした時と同じか!

 

「「「・・・・・・・・」」」

 

うわー、女性陣が無言でこっち見てくる!?

 

半目だよ!

 

多分、応援してくれている美羽達も同じような感じになっているだろう!

 

だ、だが、これは答えないといけない!

 

俺は一旦息を吐いて返答した。

 

「もちろん! 撫で撫でもつける!」

 

すると――――

 

『・・・・・わかりました』

 

小猫ちゃんがそう答えると同時に目がキラーンと光った!

 

しかも、闘気が膨れ上がってる!?

 

小猫ちゃんはそれまでの動きとは比べ物にならない速さでバラムの懐に入り、太い足を掴んだ。

 

そして、そのまま持ち上げて・・・・・・・って、えええええええっ!?

 

あの小さな体であの巨人を持ち上げちゃったよ!?

 

確かに小猫ちゃんは力持ちだけど、ものすごい光景だ!

 

 

ブウゥゥゥゥゥウン!!

 

 

しかも、バラムをグルグル回しだした!?

 

ちょ、バワーアップしすぎだろぉおおおお!!

 

どこにこんなパワーがあった!?

 

「これは・・・・・イッセーパワーね」

 

「ええ。イッセー君への想いが強かったのでしょう。よほど甘えたかったのですわ」

 

リアスと朱乃が何か考察してるんですが・・・・・・。

 

小猫ちゃんはバラムをクロセルの方へと放り投げる!

 

クロセルは目を見開きながら、回避するが、その隙をロスヴァイセさんは見逃さない。

 

『小猫さん! 攻撃は通っていますか!?』

 

『・・・・・はい。もう魔法に対する防御力が展開できないほど、気を乱しました』

 

『了解です! フルバースト、二人ともくらいなさい!』

 

ロスヴァイセさんがクロセルとバラムを囲むように魔法陣を幾重にも展開!

 

 

ドドドドドドオォォォォォォオオオオンッ!!!

 

 

クロセルとバラムに降り注ぐ、先程放ったものよりも強烈な魔法フルバースト!

 

その威力はフィールドを壊さんばかりの威力だ!

 

攻撃が止み、巻き起こった塵芥が巻き起こる。

 

小猫ちゃんがロスヴァイセさんに尋ねた。

 

『どうですか?』

 

『手応えはありました。二人ともリタイヤするだけのダメージは負ったと思います』

 

二人がそんな会話をしていると、舞っていた塵芥が静まる

 

そこにはクロセルが横たわっていたが―――。

 

『・・・・・バラムがいない!?』

 

驚愕する二人。

 

その瞬間、瀕死のクロセルが再び眼を光らせ、ロスヴァイセさんと小猫ちゃんを重力で捕らえる。

 

そこへ血だらけで満身創痍のガンドマ・バラムが―――――。

 

『ぬぅぅぅぅおおおおおおおおおおおっ!!』

 

最後の力を振り絞った巨大な拳が小猫に突き刺さった。

 

小猫ちゃんの小さな体が宙を舞って、そのまま地面へと叩きつけられる。

 

「小猫!!」

 

俺の隣でリアスが悲鳴をあげる。

 

リタイヤの光に包まれるクロセル、バラム、そして小猫ちゃん。

 

ロスヴァイセさんは横たわる小猫ちゃんを抱きかかえた。

 

『小猫さん・・・・・!』

 

『良かった。ロスヴァイセさんが残っていればグレモリーはまだ戦えます・・・・・』

 

『・・・・・ゴメンなさい、小猫さん。私が最後に油断しなければ・・・・・!』

 

『・・・・・謝らないでください、ロスヴァイセさん。嬉しいです。私、役に立てました・・・・・二人も倒せたんですから。・・・・・リアス部長、イッセー先輩・・・・・・勝って――――』

 

それだけ言い残し、小猫ちゃんは転送されていった。

 

ああ・・・・・分かってるよ、小猫ちゃん。

 

後は俺達に任せてくれ。

 

 

『サイラオーグ・バアル選手の騎士、戦車各一名。リアス・グレモリー選手の戦車一名、リタイヤです』

 

 

 

 

 

 

 


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