アーシアが悪魔になって、一週間くらいが経った日の放課後。
俺達、オカルト研究部員はいつものように部室でくつろいでいた。
すると、部長が俺とアーシアに言ってきたんだ。
「イッセーとアーシアもそろそろ使い魔を持ってみない?」
「使い魔………ですか?」
「そう、使い魔よ。あなたとアーシアはまだ持っていないでしょう?」
使い魔は悪魔にとって、手足となる使役すべき存在。
情報伝達、偵察から追跡、他にも悪魔の仕事で役に立つとのことだ。
部長の手元に赤いコウモリが現れた。
「これが私の使い魔よ」
部長の髪と同じ色でなんか気品がある。
次に朱乃さんの手に小さな鬼が現れる。
「私のはこの子ですわ」
小鬼が使い魔なのか。
あんなのも使い魔にすることが出来るのか。
小猫ちゃんが呼び出したのは白い子猫だ。
「………シロです」
小猫ちゃんだけに子猫が使い魔。
イメージにあってるし、なにより可愛い。
それから、木場の使い魔は小鳥だった。
「イッセー君、僕の解説が適当すぎるよ………」
「さりげに人の心を読むなよ、木場」
まぁ、とにかく俺とアーシア以外の眷属は自分の使い魔を持っているのはみたいだな。
確かに今後の悪魔活動を行う上でも使い魔を持っておくと助かることがあるのかもしれない。
「部長、使い魔ってどこで手にいれるんですか?」
「それは―――――」
部長が言いかけた時だった。
部室の扉がノックされた。
部員は全員揃っているので、来客となる。
ここに部員の以外が来るとは珍しい。
少なくとも俺が悪魔になってからほとんどなかった。
というか、この気配は…………。
「失礼します」
扉を開けて、数人の女子と一人の男子が入ってくる。
「えっと、生徒会の人達だよね?」
そう、美羽の言う通り、彼女たちは生徒会役員会だ。
そして―――――全員から悪魔の気配が感じ取られる。
「やっぱり、生徒会のメンバーも悪魔だったんだな」
「あら? 気づいていたのね、イッセー」
「まぁ、前々から悪魔特有の気配は感じていましたからね」
生徒会メンバーの先頭に立つのは生徒会長の支取蒼那先輩。
眼鏡をかけた知的でスレンダーな美人さんで、男子よりも女子からの人気が高い。
ある意味では学園の二大お姉さまと称される部長や朱乃さんやりも人気がある。
その支取先輩が部長に尋ねた。
「リアス、もしかして彼が以前言っていた?」
「ええ。私の新しい眷属、兵士の兵藤一誠よ。そして、ここにいるが僧侶のアーシア・アルジェントよ。二人とも挨拶なさい」
部長に言われて、俺とアーシアも自己紹介をする。
「はじめまして。リアス・グレモリー様の兵士、兵藤一誠です」
「僧侶のアーシア・アルジェントといいます!よろしくお願いします!」
すると、支取先輩も俺達に自己紹介をする。
「はじめまして。学園では支取蒼那と名乗っていますが、本名はソーナ・シトリーといいます。上級悪魔、シトリー家の次期当主でもあります」
支取先輩も上級悪魔で次期当主………ということは部長と立場が同じか。
部長も上級悪魔グレモリー家の次期当主だしな。
と、ここで支取先輩の視線が美羽へと向けられる。
「彼女は?」
「あ、はじめまして。兵藤一誠の妹の兵藤美羽といいます。よろしくお願いします」
「あなたがそうでしたか。あなたのこともリアスから聞いています。こちらこそよろしくお願いします」
部長、美羽のこと先輩に教えていたのね。
俺から説明する手間が省けたから良いけど。
今度は部長が支取先輩に訊ねた。
「それで、ソーナの用件はなにかしら?」
「そうですね。私も新しい眷属を得たので紹介しようと思いまして。サジ、あなたも自己紹介を」
支取先輩にそう言われて男子生徒が前に出てくる。
この男子の顔には見覚えがある。
確か、最近生徒会に入った追加メンバーだったばずだ。
役職は書記だったかな?
「はじめまして。ソーナ・シトリー様の兵士となりました、二年の匙元士郎です。よろしくお願いします」
「ほほぅ、俺と同じ兵士か。よろしくな」
これは奇遇!
この学園に俺と同じ『兵士』がいたとは!
しかし、俺がの言葉に匙はため息をついた。
「俺としては、変態エロ三人組の一人であるおまえと同じなんてプライドが傷つくぜ」
「おいおいおい! 会っていきなりそれかよ! いや、間違ってないけどね!」
「おっ? やるか? 俺は駒四つ消費した兵士だぜ? 最近、悪魔になったばかりだが、おまえなんかに負けるかよ」
なんか、すごく挑発的な物言いだが………。
というか、駒四つを消費したってことは、それなりの実力があるってことか?
支取先輩の持つ『兵士』の駒を半分消費したことになるし。
『だが、相手の実力が測れないようではまだまだだな』
ドライグはやれやれといった口調でそう言うが………。
まぁ、それは置いておこう。
だって―――――横で美羽ちゃんがおでこに怒りのマークを浮かべてるんだもの!
「お兄ちゃんをバカにしないで。確かに、お兄ちゃんはすごくエッチだけど、優しくて強いんだ。お兄ちゃんの本質も知らないのに勝手なこと言わないでほしいな」
口調は冷静だが、怒りのオーラが滲み出てる!
ヤバい………これはヤバい!
後ろに『ゴゴゴ………』って文字が見えるもの!
「み、美羽、お、落ち着けって!」
「でも、お兄ちゃんを馬鹿に………」
「た、頼むから落ち着いてくれ!」
俺が必死で説得すると、とりあえず美羽は落ち着いてくれたが………。
お兄ちゃんを庇ってくれるのは嬉しいけど、美羽が怒ると………ね?
突然のことで部室にいる全員が茫然とするも、支取先輩が俺に頭を下げてきた。
「ごめんなさい、兵藤君。私の眷属が無礼を働いてしまって」
「か、会長、なんでそんなやつに頭を下げるんですか!?」
「黙りなさい、サジ。今のはどう見てもあなたが悪いです。あなたも無礼を詫びなさい」
「で、ですが………」
「どうやら、あなたは兵藤君を自分より弱い存在だと思っているようですね。それは大きな間違いです」
「ど、どういうことですか?」
匙が支取先輩に尋ねると、支取先輩はため息をついてから、それに答えた。
「良く聞きなさい。彼、兵藤一誠君は今代の赤龍帝です。駒を八つ消費しても転生しきれず、最終的には魔王ベルゼブブ様の力が無ければ転生出来なかったほどです。それに、彼は神器を使わなくとも主であるリアスを上回る力を持っています。今のあなたでは勝つことはおろか、勝負にすらなりません。瞬殺されます」
「駒八つ!? それに上級悪魔のリアス先輩よりも力が上!?」
会長の言葉に目元を引きつらせながら俺を見る匙。
「そういうことです。そもそも、実力云々の前に初対面の相手に対して無礼すぎます。分かったら、謝りなさい」
そう言って再び俺に頭を下げる支取先輩。
先輩にそう言われて今度は匙も頭を下げてきた。
「す、すまなかった、兵藤」
「二人とも頭を上げてください。腹は立ちましたけど、謝ってくれればそれでいいんで」
「ありがとう、兵藤君。兵藤さんも私の眷属が失礼しました」
「会長さんは悪くないですよ」
支取先輩には笑顔でそう言う美羽だけど、匙にはまだツーンとしていた。
こうして俺達、新人悪魔の顔合わせは終わった。
▽
シトリー眷属との顔合わせが終わった後、俺達グレモリー眷属と美羽はとある森に来ていた。
使い魔の森。
ここはそう呼ばれているらしい。
やたらと背の高い巨木がそこらじゅうに生えていて、日の光のほとんどを遮ってしまっている。
雰囲気からして、何が出てきてもおかしくない。
森の中を見渡していると、
「ゲットだぜぃ!!」
「「ひゃ!」」
突然の大声に、アーシアと美羽は可愛い悲鳴声を上げながら俺の後ろに隠れてしまった。
声がした方を見ると帽子を深くかぶり、ラフな格好をしたおっさんがいた。
「俺はマダラタウンのザトゥージ! 使い魔マスターだぜ!」
「ザトゥージさん、連絡しておいた子達を連れてきたわ。イッセー、アーシア、この人は使い魔のプロフェッショナル、ザトゥージさんよ。今日は彼のアドバイスを参考にして、使い魔を手に入れなさい。いいわね?」
「「はい!」」
▽
「ザトゥージさん、使い魔ってどんなやつがオススメですか?」
「そうだな。人によって好みは変わってくるんだが、俺のオススメはこれだぜぃ!」
ザトゥージさんは図鑑の写真を指差して言った。
図鑑には見開きいっぱいに迫力の絵で描かれた一匹のドラゴン。
「あの………これは?」
「おう! そいつは龍王の一角、
「…………」
えーと、確か龍王って魔王並みに強いんだっけ?
ドライグ?
『そうだ。ちなみにティアマットは龍王最強でもある』
無理じゃね?
使い魔のレベル越えてるよな?
『相棒なら、なんとかなるんじゃないか?』
マジで?
『戦って勝てば、使い魔になってくれるのではないか?』
ほほぅ。
じゃあ、ドライグさんよ。
今の籠手の状況は?
『一応、倍加と譲渡は使えるぞ』
おお、使えるようになったのか!
じゃあ、鎧は?
『すまん。まだ、時間がかかる』
うん、それで、魔王クラスと戦うなんて嫌だからな!
そんな俺の気持ちとは裏腹に部長が俺に言ってきた。
「いいわね! イッセー、龍王を使い魔にしなさい!」
「部長、俺に死ねと!?」
「イッセーならなんとか出来るんじゃないの? 伝説のドラゴン同士で意気投合できそうじゃない」
いやいや無理です。
そんなキラキラした眼で見られても困るんですけど………。
俺は無言で首を横に振ると、
「天龍と龍王のセットが見たかったのに…………」
肩を落として心底残念そうにする部長!
そんなに見たかったの!?
「………ボクもお兄ちゃんのかっこいいところ見たいなぁ」
美羽まで!?
我が妹よ、お兄ちゃんに何を求めてるかは知らんが、お兄ちゃんにも出来ることと出来ないことがあるぞ!
見渡すとアーシアを除いた全員がそんな顔をしていて………って、そんなに見たいのか、あんた達は!?
すると、ザトゥージさんが俺の肩に手を置いて遥か向こうにある山を指差した。
「確か、昨日はあの辺りにいたぜぃ。もしかしたら今日もいるかもしれないぜぃ」
「すいません。俺が龍王をゲットしに行くのは確定なんですか?」
「違うのか?」
「違うわ!」と、俺が全力で言いかけた時だった。
なにか巨大な………濃密な力の波動を感じた。
感じた方角を見ると向こうの方で空高く飛ぶものがいた。
おいおいおい………まさかまさかのタイミングなのか?
図鑑の写真を確認してみるが、間違いない。
五大龍王の一角、龍王ティアマット。
図鑑と全く同じ姿だ。
「タイミング良すぎるだろ!? つーか、なんで皆は俺の方を見てくるのかな!? なに、この空気! 行かないとダメですか!?」
『相棒、物は試しだ。やるだけやってみろ』
…………どうやら、俺の味方はいないらしい。
えぇい、ままよ!
「分かったよ! やってやらぁぁぁぁぁぁ!」
俺は絶叫しながら、悪魔の翼を広げてティアマットのところまで飛んでいった。
▽
で、ティアマットの近くに来てみたは良いが、
「デカいよなぁ………」
流石にスゴい迫力だ。
それに、全身を覆っている青い鱗が神秘的に感じる。
『言い忘れていたが、ティアマットは俺のことを嫌っていた。気を付けろよ』
その情報、もっと早く言ってくれない!?
そうこうしてると、ティアマットも俺に気づいたようだ。
「悪魔か。それにそのオーラ………なるほど、おまえが今代の赤龍帝というわけか」
「はじめまして。俺は今代の赤龍帝、兵藤一誠だ」
「それで? 赤龍帝の悪魔が私に何の用だ?」
「単刀直入に言う。俺の使い魔になってほしい!」
「は?」
俺の言葉に気の抜けた声を出すティアマット。
そりゃ、初対面の相手からいきなり使い魔になれ、なんて言われたら思考が停止するよな………。
少しの沈黙が続いた後、
「フッ」
「フ?」
「ハハハハ!!」
おお!?
なんか、大笑いしだしたんだけど!
なんだなんだ!?
そんな面白いこと言いましたか!?
ひとしきり笑うとティアマットは俺を見下ろして言った。
「久しぶりに笑った。まさか、この私を使い魔にしたいと言いに来る悪魔がいるとはな。面白いぞ、小僧。…………いいだろう、チャンスをやる」
「チャンス?」
「この私を従えるだけの力量を示せたら、貴様の使い魔になってやる」
マジですか!
てっきり、怒りの炎を浴びせられると思ってたんだけど、意外と話が通じるじゃん!
………ま、まぁ、魔王に匹敵する最強の龍王を禁手なしで戦うとか自殺行為に等しいけどね。
本当ならごめんなさいして帰りたいところだが、ものは試しだ!
「分かった! 俺の力、存分に見せてやる!」
俺の腕が鈍ってなければ、それなりにはやり合える………と思いたい!
少なくとも逃げるくらいはなんとかなる………はず!
俺が構えたところで、ティアマットの周りに無数の魔法陣が展開される。
俺も籠手を展開。
『Boost!』
倍加の音声が籠手から発せられる。
久しぶりの倍加。
こっちの世界に戻ってきてからは神器を使うことがなかったからな。
数年ぶりの使用になるな。
ティアマットが展開した魔法陣から極大の魔力弾が放たれる。
一発一発が大きいうえに速い!
「うおっと!」
俺は大きく横に飛んで攻撃を回避。
すると、遥か向こうまで飛んでいった魔法の弾丸が着弾すると同時に辺りを大きく揺らした!
さ、流石は最強の龍王………まともにくらったらと思うとゾッとするな。
そんな俺の心情などスルーするかのように次々に放たれる魔法の弾丸。
まだ飛ぶのに慣れてないから、全部を避けるのは難しいか!
当たりそうになった魔法の弾丸は拳に気を纏わせて弾くしかない!
全ての攻撃をやり過ごした俺を見て、ティアマットは感嘆の声を漏らす。
「ほう。今のをしのいだか。並の悪魔なら今ので終わっていたんだがな」
「そう簡単に殺られてたまるか! おかえしだ!」
そう言って俺は気弾を連続で放つが、ティアマットは軽快な動きで全てかわしていく。
デカい図体の割りに素早い!
だったら、接近戦ならどうだ!
『分かっているとは思うが、ドラゴンの鱗は非常に硬い。普通に殴ればこちらがダメージを受けるぞ』
ああ、分かってるよ、ドライグ!
俺は硬気功を発動して拳の表面を硬質化させる。
これならドラゴンの鱗だろうと殴れるはずだ!
「接近戦か! 面白い!」
ティアマットもその巨大な拳を振り上げて応じる。
俺とティアマットの殴り合いで生じた衝撃が大気を揺らす!
「中々やるな! 赤龍帝の小僧!」
「これまで、必死で修業してきたからな!」
やっぱり強い。
こっちは今出せる全力を使っているけどティアマットには余裕がある。
禁手じゃないと、このクラスの相手はつらい!
ティアマットの攻撃をギリギリのところで回避しながら攻撃に転じようとする俺だが、少しの攻防の後、とうとうティアマットの巨大な拳が俺を捉えた。
全身を襲う物凄い衝撃!
こいつは受け止めきれねぇ………!
拳の勢いを殺しきれなかった俺は、そのまま地面に叩きつけられた!
「ガハッ!」
叩きつけられた衝撃で、全身に痛みが走る!
なんて、重たい一撃だ………!
痛みを堪えながら何とか立ち上がると、ティアマットが尋ねてきた。
「小僧、神器には禁手というのがあるのだろう? 使わないのか? それとも、まだ至っていないのか?」
「いや、禁手には至っているけど、今は籠手の調整中で使えないんだ」
「そうか、それは残念だ。貴様とならより戦いを楽しめると思ったんだが…………。仕方がない」
「なんか…………ゴメン」
「謝る必要はない。それにその若さでここまでやれるとは私も思ってなかったのでな。正直、驚いている」
「だけど、まだ、あんたを従えるだけの力は見せていない。そうだろ?」
「それは…………そうだな」
「だったら、続けようぜ。ここで諦めたらカッコ悪いしな」
「そうか。だったら見せて貰おうか!」
「ああ!」
俺は地面を強く蹴って飛び上がると、ティアマットと再び空中で対峙する。
………ティアマットに言ったものの、実際にどうするか。
ティアマットも俺の実力を甘く見ていたようだが、明らかに劣勢なのは俺だ。
俺は今出せる力をそれなりに出しているのに対し、相手は力の半分も出していないだろう。
流石は龍王と呼ばれるだけはある、か。
正直、禁手を使えない状態で龍王クラスと長期戦をやるのは得策じゃない。
ドライグ、そろそろいけるか?
『ああ。もう十分力は溜まっているぞ』
十分な力が溜まった合図として籠手の宝玉が光り輝く。
錬環勁気功による強化と赤龍帝の力でいけるか………。
俺は一度目を閉じると、ティアマットに告げた。
「龍王ティアマット。次の一撃で決めてやる」
俺は両手を空に掲げて気を練り始める。
そこに籠められるのは自分のものだけでなく、周囲に漂う気をも巻き込み、より強大で濃密な気の塊を生み出していく。
出来上がるのは俺の体より二回りくらい大きな気弾。
そして――――練りあがった気弾に溜めておいた力を譲渡する!
『Transfer!』
籠手から鳴り響く譲渡の音声。
すると、気弾は元の十倍以上の大きさに膨れ上がる!
「なっ!?」
これにはティアマットも驚愕しているようだ。
こいつなら―――――。
「死ぬなよ、龍王ティアマット! うぉぉぉぉぉぉらぁぁぁぁぁぁぁッ!」
俺は特大気弾をティアマット目掛けて投げ飛ばした!
スピードも十分乗っている!
予想以上のスピードだったのか、ティアマットは反応が遅れ、真正面から特大気弾を受け止める形となる。
「ぐうううううう!!」
あまりの勢いにティアマットはその場に留まることができず、後ろに下がっていく。
そして、ついには山に衝突し、そこで大爆発が起こった。
▽
「流石に疲れたな………」
ティアマットから受けたダメージもあるけど、今の一撃にかなりの力をつぎ込んだからな。
ここまでの力を使ったのが久しぶりってこともあって、疲労が一気に………。
「今の一撃、良い一撃だった」
山の方からティアマットが姿を現す。
体の表面から煙が出ているが、ピンピンしてる。
「………今のを喰らってそのダメージか」
「爆発の寸前に防御術式をはったからな。だが、直撃していれば私も危なかっただろう」
流石は龍王最強。
先ほどは対応に遅れたみたいだけど、その場の判断力が優れている。
ティアマットが言う。
「小僧、兵藤一誠と言ったな?」
「ああ。そうだけど?」
「そうか。ならば兵藤一誠、貴様を認めてやろう」
「へ?」
ティアマットの言葉に、今度は俺が気の抜けた声がを出してしまった。
「だから、貴様を認めると言ったのだ」
「それって俺の使い魔になってくれるってこと?」
「そういうことだ。神器が不調にも関わらず、ここまでの力を発揮したのだ。もし禁じ手を使われていたと考えると………認めざるを得まい。それに貴様はまだ若い。これから、どこまで強くなるのか見てみたくなったと言えば納得するか?」
ま、まぁ、俺としては認めてもらえたみたいで嬉しいんだけどね。
自分から申し込んでおいてなんだけど、こんなに簡単に龍王が使い魔契約を了承して良いものなんだろうか。
ティアマットは魔法陣を展開する。
魔法陣の光がその巨体を包み込むと、体のシルエットが変化していき、ドラゴンの巨体が人間サイズにまで小さくなった。
そして、光が止み姿を現したのは―――――長い青髪の美女。
しかも、モデルと思えるくらいスタイルが良い。
「これが私の人間形態だ、ってどうした? 何を驚いている?」
「驚くって! ドラゴンがいきなりスタイル抜群の美女に変わったんだぞ!? 誰でも驚くわ!」
異世界にもドラゴンはいたけど、こんなことは一度もなかったぞ!
驚く俺を見てティアマットはおかしそうに笑う。
「美女か、そう言われたのは初めてだ」
「そうなのか? ティアマット、すごく綺麗だけど?」
「そうか。とりあえず、そう言ってもらえると私も嬉しい。それから私のことはティアで良い。堅苦しいのは嫌いなんでな」
「そっか。じゃあ、俺のことはイッセーって呼んでくれ」
「了解した。ではイッセー、よろしく頼む」
「ああ。よろしくな、ティア!」
こうして、俺はティアになんとか認めてもらうことが出来た。
▽
「ま、まさか本当に龍王を連れてくるなんて…………」
「こんなことは俺もはじめてだぜぃ」
ティアを連れて部長達の所へ戻ったら、すごく驚かれた。
というか、美羽とアーシア以外のメンバーが引いてた。
君達、少し前まではあんな視線を向けてきたのに、なんだその目は!?
温厚な俺でも怒っちゃうぞ!?
使い魔ゲットしに来たのに、全身がガクガクしてるんだぞ!
生まれたての小鹿みたいになってるんだぞ!
もう少し優しい対応をお願いしたいよ!
と、そうそう。
俺とティアが戦っている間にアーシアも使い魔を獲得していた。
アーシアが腕に抱いているドラゴンの子どもがそれだ。
それを見てティアが関心したように言った。
「
心が清い者にしか懐かない………流石はアーシアだ。
その後、俺は部長の指示に従いながらティアとの契約を行った。
使い魔契約をするための紅い魔法陣が展開され、ティアがそこに入る。
「兵藤一誠の名において命ず。汝、我が使い魔として契約に応じよ!」
ティアがそれに応じると魔法陣の光が一瞬強くなり、消えていく。
契約の儀式が終わると、部長は深く息を吐いた。
「これで、使い魔契約は完了よ。私の眷属が龍王を使い魔にするなんて、思ってもいなかったわ。まぁ、私が言い出したことなのだけど…………」
「こんな無茶はこれっきりにしたいですよ、部長。と、とりあえず帰りませんか? 横になりたいんですけど………」
美羽に支えられながら、体をプルプル震わせる俺を見て、全員が苦笑していた。
こうして、色々あったものの、俺とアーシアは無事に使い魔を得ることが出来たのだった。
というわけで、イッセーの使い魔は龍王ティアマットとなりました!
まぁ、龍王が使い魔ってスゴいデタラメな気がしますが・・・・
次回からライザー編に入ります。
ただ、今日で春休みが終わり、明日から学校が始まります。
資格勉強や定期テスト勉強などで忙しくなります。
なので、更新が遅くなるかもしれません。